カテゴリー: 交通事故その他

交通事故の相手方が,対物全損時修理差額費用特約に加入していました。この特約の内容は何ですか?

2017年09月20日
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交通事故の相手方が,対物全損時修理差額費用特約に加入していました。この特約の内容は何ですか?

対物全損時修理差額費用特約は,相手の車の修理費が相手の車の時価を超えるとき,50万円を限度として修理費の補償を相手方が受けることができる特約です。

相手の車が古い場合や,特殊な車両で修理費用が高額なケースなどで役に立ちます。




 対物全損時修理差額費用特約 



◆対物全損時修理費用特約とは


「対物全損時修理費用特約」と聞いたとき,あまり耳なじみがないと感じられるかもしれません。

これは,交通事故の相手の車の修理費用が車の時価額を超えるとき,その修理費用を補償してもらえる保険です。


相手の車の修理費用は,基本的には対物賠償責任保険から支払われます。
そうだとすると,これを無制限にしておいたら,対物全損時修理費用特約をつけておく必要はないとも考えられます。

しかし,対物賠償責任保険は,法律上の支払義務がある範囲までしか補償されません。


修理費が車両時価を超えるとき,対物賠償責任保険からは車両時価までの支払しかされません。そのため,相手の車が古かったり特殊な仕様であったりして,修理費用が時価を超える場合には経済的全損の扱いとなって,修理費用は認められなくなります。





このとき,加害者が対物全損時修理費用特約に加入していたら,被害者は,車両時価額に加え,実際の修理費用の差額を支払ってもらうことができます。

この場合、修理費と車両時価との差額に加害者の過失割合を乗じた額と限度額のいずれかの低いほうの金額が支払われます。

ただし,事故後一定の期間内に実際に修理をしなければならないなどの必要な条件があることがあるので,注意が必要です。







◆対物全損時修理費用特約の補償範囲


対物全損時修理費用特約をつけていても,無制限に差額が認められるものではありません。
多くの場合,限度額が30万〜50万円となります。

よって,対物全損時修理費用特約をつけていても,必ずしも修理代金の全額が補償されるわけではなく,加害者が相手方に限度額を超えて相手に支払いをする場合には,自己負担となります。

一般に,事故で自動車が損傷したとき,修理費用が車両時価を上回る場合は,被害者が納得しにくいため,トラブルが発生することが多いです。




加害者側の視点からみると,この特約があれば,被害者との示談交渉中,「加害者はここまで譲る」というカード(交渉材料)を用意することができて,円満解決に持ち込みやすくなります。

また,刑事手続の関係で早期に示談を成立させたいときは,法律的に差額の支払義務がなくても,加害者が修理費用を全額負担すると話がしやすいです。




このようなとき,対物全損時修理差額費用特約があると,その特約の範囲内ではありますが,差額を自己負担しなくて良いので助かります。対物全損時修理費用特約をつけても,年間の保険料は数百円しか上がりません。

特に頻繁に運転をする方の場合,備えとして加入しておくのが良いと考えています。




▼参考記事
・交通事故と物損Q&A
・損害賠償額の基準に注意!
・当事務所の交通事故解決事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故に遭いました。私は,搭乗者傷害保険に加入していますが,どのような補償が受けれますか?

2017年09月19日
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交通事故に遭いました。私は,搭乗者傷害保険に加入していますが,どのような補償が受けれますか?

搭乗者傷害保険とは,保険の契約車両に乗っていた人が交通事故で死傷したときに補償を受けられる保険です。

実際に発生した損害額に関わりなく定額が支払われることが普通であり,人身傷害保険など他の保険の支払いがあっても,減額されないので加入するメリットがあります。





 搭乗者傷害保険 



◆搭乗者傷害保険とは


搭乗者傷害保険は,任意保険に加入する際に選べる保険の1つで,交通事故に遭ったとき,契約車両に乗っていた人が補償を受けられる保険です。


交通事故に遭ったとき,事故車両に乗っていた人がケガをしたり死亡したりすると,自分が加入している自動車保険から定まった保険金の支払いを受けることができます。

相手の保険会社と示談交渉が成立しなくても,早期にまとまった補償を受けることができますし,支払いを受けた場合に自動車保険の等級が下がることもありません。

もしものときに,入っていると安心です。







◆搭乗者傷害保険で支払われる保険金


搭乗者傷害保険で支払われるのは,以下のような保険金です。(一例です)


●死亡事故

搭乗者が死亡したケースで,満額の保険金が支払われます。


●シートベルト装着者特別保険金

死亡事故で,搭乗者がシートベルトをつけていた場合,死亡保険金とは別途,その30%に相当する金額が上乗せされます。


●後遺障害が残ったケース

交通事故によって搭乗者に後遺障害が残った場合,後遺障害の程度によって保険金の4%〜100%が支払われます。


●重度後遺障害特別保険金・重度後遺障害介護費用保険金

重度の後遺障害が残り,介護が必要な場合,後遺障害保険金と別に支払われます。


●医療保険金

搭乗者が交通事故の受傷によって入通院をしたとき,定額計算で支払われます。





◆人身傷害補償保険との違い


搭乗者傷害保険は,人身傷害補償保険とよく似ていますが,以下のような違いがあります。


●補償対象が異なります。
搭乗者傷害保険:契約車両に乗車していた場合にのみ適用
人身傷害補償保険:契約者やその家族が,契約車両以外の車に乗っていた場合にも適用

●補償内容も異なります。
搭乗者傷害保険:死亡事故の場合〇円,後遺障害〇級の場合〇円,入院1日〇円などの定額計算
人身傷害補償保険:実際に発生した損害を計算


このことにより,複雑な計算が不要な搭乗者傷害保険の方が,スムーズに支払いを受けられますが,搭乗者傷害保険だけでは,補償額が不十分になる可能性があります。

また,人身傷害補償保険は損益相殺の対象になりますが,搭乗者傷害保険は対象になりません。




以上のように,搭乗者傷害保険と人身傷害補償保険は似ているけれども異なる点があり,両方加入するメリットもあります。交通事故に万全の備えをするためには、両方加入しておくのが良いです。




▼参考記事
・後遺症と保険について
・当事務所の交通事故解決事例
・動画でみる交通事故の解説




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)



交通事故の被害者ですが,加害者からの謝罪がありません。相手の保険会社に加害者の謝罪を要請しましたが,状況は変わらず,,,どうしても謝罪してもらいたいのですが,どうすればよいですか?

2017年09月13日
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交通事故の被害者ですが,加害者からの謝罪がありません。相手の保険会社に加害者の謝罪を要請しましたが,状況は変わらず,,,どうしても謝罪してもらいたいのですが,どうすればよいですか?

相手に強制的に謝罪させる手段はありません。相手の刑事事件の捜査や起訴の手続が進むと、謝罪してもらえる可能性が上がります。




 加害者からの謝罪 



◆謝罪を強制させることはできない



交通事故に遭って,相手の態度が悪いと被害者としては「許せない」と感じるものです。

この場合,「どうしても謝罪してほしい」と考えることも多いでしょう。




ただ,法律上,制的に謝罪をさせる手段はありません。また,謝罪は気持ちがこもっていてこそ意味のあるものであり,強要して「すみませんでした」と言わせても,何の価値もないものです。

裁判をしても,相手に謝罪させる命令を出してもらうことなどは不可能です。謝罪請求権というものがありません。







◆加害者の態度が慰謝料の金額に反映される可能性がある


ただ,そうであっても加害者が「一切謝罪をしない」という不遜な態度が,損害賠償に影響する可能性があります。

具体的には,慰謝料が増額されることがあります。

慰謝料には相場はありますが,治療費のように固まっているものではありません。事案によってある程度柔軟に算定されます。

ここで,加害者に全く反省がなく謝罪も一切せず被害者が怒っても当然という場合,そのことによって慰謝料が増額されることがあります。







◆刑事事件と関連して謝罪を受けられる可能性がある


また,加害者が刑事事件の被疑者となって捜査が進んでいるときや,起訴されたときは,加害者の方から謝罪の申出をしてくることがあります。

交通事故が起こったとき,結果が重大な場合や被疑者に反省がない場合などには,検察官の判断で加害者を起訴して刑事裁判にすることがあります。検察官が起訴するか不起訴とするかについて,被害者感情も考慮に入れて判断します。

加害者が謝罪し,被害者がそれを受け入れたという事情があると,その判断に影響してきます。




刑事裁判になると,被告人となった加害者は,懲役刑となるおそれもあり,どうにかして刑を軽くしたいと考えます。ここでもっとも効果的な方法は,被害者と示談をすることです。

刑事裁判では,被害者と示談ができて示談金を支払った場合や,被害者から「加害者の刑を軽くしてください」という「嘆願書」が提出されると,加害者の刑を軽くする事情として考慮することがあるからです。

そこで,加害者が刑事裁判になると,相手の方から被害者に連絡をして謝罪をしてきて,「示談をして下さい」と言ってくるのです。

もちろんこうしたとき,示談を受け入れるかどうかは被害者次第ですから,応じなければならないということはありません。また,嘆願書についても,頼まれたからと言って書かなければならないものでもありません。




▼参考記事
・加害者の態度に納得できないのですが,どうすればよいですか?
・事故後の人生
・刑事裁判(手続)で意見を述べたい
・慰謝料・後遺症・増額事由について(裁判基準)




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故での示談交渉で,私が普段やり取りしている保険会社の担当者はどこの保険会社ですか?病院の人は「自賠責の人」と呼んでいます。

2017年09月06日
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交通事故での示談交渉で,私が普段やり取りしている保険会社の担当者はどこの保険会社ですか?病院の人は「自賠責の人」と呼んでいます。

ご質問者様がふだんやり取りしている人は,任意保険会社の人なので,自賠責保険会社の人とは異なります。




 任意保険と自賠責保険の違い 



◆交通事故の2種類の保険



交通事故に遭ったら,相手の保険会社の担当者と話合いをして,賠償金額を決定します。

このときの相手は,「自賠責保険」とは異なります。
事故後,被害者が示談交渉をする相手となるのは,加害者が加入していた任意保険の保険会社です。




交通事故の自動車保険で,加害者が加入しているものは,自賠責保険と任意保険の2種類があります。

病院対応をしたり被害者が示談交渉をしたりするのは任意保険の担当者であり,自賠責保険と示談交渉をすることはありません。







◆自賠責保険とは


まず,自賠責保険とはどのような保険なのかを見てみましょう。

これは,交通事故の被害者が,最低限度の補償を受けるための保険です。

自賠責保険は,自動車を所有する人なら全ての人が加入しなければならない,強制加入の保険です。自賠責保険に加入せずに自動車を運転すると,違法です。




このように,加入を強制することにより,交通事故が起こったとき,最低限自賠責保険からは保険金が支払われるようにして,被害者を守ろうとしています

そして,交通事故被害者の治療費は損害の一部ですから,自賠責保険による支払対象となります。ですが,自賠責保険は示談交渉の窓口にはなりません。







◆任意保険とは


次に,任意保険についてご説明します。

任意保険は,車の所有者やドライバーが,自賠責保険のほかに,任意に加入する保険です。法律上は加入するもしないも自由で任意なので,任意保険と呼ばれます。

任意保険に加入するのは,自賠責保険だけでは交通事故の損害賠償に足りないことが多いためです。

たとえば,死亡事故が起こった場合には1億円以上の損害が発生することもありますが,自賠責の限度額は3000万円なので,それを超過する費用については,加害者が自己負担しないといけません。

そのようなことになると大変なので,多くの人は自己判断で任意保険に加入しています。







◆任意保険は示談交渉を代行する


それでは,被害者がどうして任意保険の担当者と示談交渉をするのでしょうか?

これは,任意保険に示談代行サービスがついているからです。

任意保険会社は,被害者に対する賠償金の金額が決まったら,その賠償金の支払をしますので,賠償金がいくらになるかについて,利害関係を持ちます。そこで,任意保険は,加害者の代わりに被害者との示談交渉を行います。

また,任意保険は自賠責保険の分も一旦支払い,後に自賠責保険分を自賠責保険会社から回収するということも行います。そこで,被害者は,任意保険と示談交渉をすると,自賠責保険の負担分についてもまとめて任意保険会社から受けとることができます。

病院職員の方の中には,このような区別を意識せず,自賠責保険の担当者とやり取りしているという言い方をする方もいらっしゃいます。




任意保険会社と示談交渉をするとき,相手は賠償金の減額のためにいろいろな主張をしてくるものです。対応に困ったときには弁護士に相談しましょう。




▼参考記事
・保険会社との示談交渉で,賠償金0円提示→704万円を受け取った解決事例
・保険会社の思うツボにはならない!
・保険会社の助言




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故で入院しました。付添看護費用とは何ですか?

2017年09月01日
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交通事故で入院しました。付添看護費用とは何ですか?

付添看護費用とは,入通院で必要になる看護師や近親者による看護に対して認められる費用です。職業看護師による付添のケースと近親者による付添のケースで,認められる金額が変わります。




 付添看護費用 


◆付添看護費用とは


付添看護費用とは,交通事故後の治療において,看護人による看護を受けたときに認められる費用です。

交通事故に遭って病院に入通院すると,看護が必要になることが多いです。入院すると,基本的に毎日看護を受けることになりますし,通院においても付添人が必要になるケースがあります。また,自宅療養のケースであっても付添看護が必要なケースが存在します。




このように,付添看護が必要になったときに付添看護費用が損害として認められ,加害者から支払を受けることができます。







◆入院付添費


付添看護費用には,入院付添費があります。
入院付添費は,基本的に入院中に付添看護が行われると,その日数分認められます。

金額は,職業看護人がつく場合と近親者がつく場合とで異なり,職業看護人がつく場合には実費が損害となりますが,近親者がつく場合には,1日あたり6500円(裁判基準)として計算されます。自賠責基準や任意保険の基準では1日あたり4100円です。




被害者が自分で示談交渉をしていると,相手の保険会社は入院付添費を含めずに示談金を計算してくることが多いので,注意が必要です。示談をするときには,必ず入院日数分の入院付添費が入っているかどうか確認し,入っていないときは,入院付添費が計上されていない理由を聞く必要があります。

といいますのは,付添いの必要性があったかが問題となるからです。医師の指示の有無,受傷の程度,被害者の年齢等により,付添いの必要性があると認められれば,損害として計上できるということになります。







◆通院付添費


付添看護費用には,通院付添費があります。
これは,被害者の通院に付き添った場合に認められる費用です。通院付添費も,必要性があるときのみ認められます。

通院付添費が認められるのは,被害者が1人で通院することが困難なケースです。
たとえば,被害者が高齢者や幼児などの子どもである場合や,被害者のけがの程度が激しく1人で通院ができない場合などが該当します。


通院付添費の金額は,職業看護人を雇った場合には実費となり,近親者が付き添った場合には,1日あたり3300円(裁判基準)となります。自賠責基準,任意保険基準では1日当たり2050円です。







◆自宅付添費


交通事故後,自宅療養する場合でも付添看護費が認められるケースがあります。

これが認められるのは,要介護状態になった場合や,被害者の手の届かない部位にガーゼの交換を行う必要性があった場合など,特にその必要性があるときです。

金額は,職業看護人を雇った場合には実費となり,近親者が付き添う場合,裁判基準では「必要かつ相当な額」がケースに応じて認定されます。自賠責基準や任意保険基準では,1日あたり2050円となります。




以上のように,交通事故で被害に遭ったら,付添看護費用の請求漏れがないようにしなければなりません。自分でうまく対処できない場合には,弁護士に相談しましょう。




▼参考記事
・主婦の入通院付添費は,どのように計算されますか?
・通院付添費について(裁判基準)
・入院付添費について(裁判基準)
・学生・生徒・幼児の学習費・保育費・通学付添費について(裁判基準)




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故で労災を使うメリットは何ですか?

2017年08月31日
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交通事故で労災を使うメリットは何ですか?

労災を利用すると,自賠責保険から受けとることができる保険金の金額が増えます。また,重過失減額がないので,自分の過失割合が高い場合に便利です。さらに,相手が無保険でも治療費の心配をせずに病院に通うことができます。

労災から支給を受けた場合には損益相殺を行いますが,費目拘束があるので,被害者にも過失があるときにはメリットがあります。





 交通事故 労災保険 


◆交通事故でも労災を利用できる



業務中に起こった事故については,労災保険を利用することができます。

業務中だけではなく,通勤中や帰宅途中であっても,仕事からの連続性がある限り,労災適用の対象になります。

労災が適用されたら,労災保険を利用して病院に入通院をすることができます。







◆自賠責保険から多くの保険金を受け取れる


交通事故で労災を利用すると,どのようなメリットがあるのでしょうか。

まず,自賠責保険から,多くの保険金を受けとることができます。


交通事故のけがの治療費は,通常の場合,まずは自賠責保険分から充当されます。ただし,自賠責保険の傷害の限度額は120万円です。この120万円の中から,治療費や入通院慰謝料などの傷害関係の賠償金が支払われますが,120万円を超える部分は自賠責保険からは支払われません。




治療費が高額になると,その分慰謝料などに充てられる金額が減ってしまい,全額の支払を受けられなくなることもあります。しかし,ここで労災を利用して治療費を支払ったら,入通院慰謝料などに充てられる金額が上がります。

ただし,労災も自賠責保険に療養(補償)給付について求償を求めることができます。自賠責保険に対する被害者請求と労災保険の求償があり,その合計額が120万円を超えているときは,被害者と労災保険に按分比例での支払が行われます。







◆重過失減額がない


自賠責保険には,重過失減額があり,被害者側に重過失があると,自賠責基準から損害賠償金を減らされてしまいます。


具体的には,被害者の過失が70%以上のとき,傷害部分の自賠責損害賠償金は20%の減額となります。また,後遺障害部分や死亡に至ったときの自賠責損害賠償金は,被害者の過失が70%以上80%未満であれば20%の減額,80%以上90%未満の過失であれば30%の減額,90%以上の過失があると,50%の減額となります。

これに対し,労災保険の場合には重過失減額がないので,被害者側に過失があっても,治療関係費の心配をする必要はありません。







◆任意無保険でも治療関係費については不安はない


労災保険は相手に支払ってもらうものではないので,相手が任意保険に加入していなかったり,相手が不明(ひき逃げ)であったりしても利用できます。

このようなケースでは,労災を利用して治療をすることに大きなメリットがあります。治療関係費の心配をせずに治療を受けることができます。







◆損益相殺と費目拘束


たとえば,過失割合が8対2で,損害は治療費100万円,慰謝料は100万円であると算定され,治療費は全て任意保険会社が病院に直接支払済みであるとします(あくまで教室事例です。)。

この場合,損害額は全部で200万円ですが,過失相殺の結果被害者が受けられる賠償額は160万円です。して,治療費100万円は損害賠償の関係では全て既払いとして扱われますので,最終的に被害者が受ける賠償額は60万円です。治療費の名目で支払われた100万円が,慰謝料にも影響しています。




一方,全く同じ事例で,治療費100万円は労災保険から支出されているとします。この場合も,本来,被害者が賠償を受けることができる損害額は160万円のはずです。

しかし,労災保険から支払われた治療費(療養(補償)給付)は,治療費のみに充てられますので,慰謝料額から療養(補償)給付を控除することはできません(このようなことを費目拘束といいます。)。その結果,被害者が最終的に受けられる賠償額は,慰謝料100万円×8割=80万円となります。




このように,労災保険給付には費目拘束というルールがある関係で,被害者側にも過失があるときには,賠償面でメリットがあります。

以上のように,交通事故でも労災を利用するといろいろなメリットを得られます。
労災申請を会社に遠慮する必要はないので,業務中や通勤中に事故に遭ったら利用を検討しましょう。





▼参考記事
・相手方任意保険,健康保険,労災保険のどれを使えばよいですか。
・労災と自賠責で後遺障害等級が異なることはありますか。
・保険会社は被害者の味方ではありません!




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

好意同乗とはなんですか?

2017年08月30日
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好意同乗とはなんですか?

好意同乗とは,友人などが好意で,かつ多くの場合無償で車に乗せてくれるケースのことです。好意同乗の場合には,被害者が運転者に対して請求できる賠償金の金額が減額されるのかを問題とすることがあります。




 好意同乗 損害賠償請求 



◆同乗者は,運転者に賠償金の請求ができる


交通事故が起こったら,相手の車の運転者に対して賠償金の請求ができるイメージがありますが,賠償請求の対象は,それに限定されません。

助手席などに乗せてもらっていて事故に遭った場合には,運転者に対して賠償金の支払請求をすることができます。

運転者には,運行供用者責任が発生することもありますし,そうでないケースであっても不法行為責任が発生するためです。

運転者の過失によって同乗者に損害が発生している以上,同乗者は運転者に対して損害賠償請求ができるということになります。







◆好意同乗の場合に賠償金が減額されるか


助手席などに人を乗せるとき,運転者が好意によって乗せてあげることがあります。

たとえば,どこかに行くときについでに送っていってあげたり,路上で歩いているのを見つけて拾ってあげたりするようなケースです。そういう場合,通常は無償で車に乗せています。

このように,好意・無償で車に乗せてあげた場合にも,そうでない場合と同じように賠償金が発生すると考えるべきかどうかが問題になります。


このような好意・無償で車に乗せてあげるケースのことを好意同乗と言いますが,好意同乗の場合には,同乗者が運転者に請求できる賠償金の金額を減額すべきと考えられています


この場合,被害者に過失があるわけではありませんが,被害者が車に乗せてもらっていたという被害者側の事情によって賠償金を減額するので,過失相殺を類推適用することによって,賠償金の減額を行います。







◆被害者に帰責性(責任)が必要とされる


ただ,好意同乗の場合に,常に賠償金が減額されるわけではありません。

かつては,好意・無償で同乗があった場合,比較的広く好意同乗による賠償金減額が行われましたが,最近ではこれが認められる例は狭くなってきています。具体的には,被害者側に帰責性(責任)がない限り,好意同乗による減額を認めない取扱になっています。

たとえば,同乗者が運転者にしきりに話しかけるなどしたり,運転を妨害したりして危険を高めた場合や,運転者が飲酒しているのを知っていてあえて同乗していたような場合に減額が認められます。

これらのケースでは,被害者にも事故の発生や損害の拡大に対し,責任があると考えられるからです。



単に車に乗せてもらっていたというだけでは,賠償金の減額が行われる理由になりません。
相手の保険会社から,好意同乗を理由に賠償金の支払を拒絶をされてお困りでしたら,弁護士に相談しましょう。





▼参考記事
・助手席に乗っていた交通事故に遭った解決事例
・弁護士費用特約のよくある誤解(同乗者でも利用できる場合があります。)
・ひとりひとりに合った適切な解決方法をご提案




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故に遭い,賠償金を受領しました。所得税や相続税は発生するのでしょうか?

2017年08月29日
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交通事故に遭い,賠償金を受領しました。所得税や相続税は発生するのでしょうか?

交通事故の損害賠償金には基本的に所得税はかかりませんが,人身事故の死亡保険金には所得税がかかることがあります。




 交通事故の賠償金:所得税・相続税の課税 


◆交通事故の損害賠償金には所得税がかからない


交通事故で被害に遭ったら,相手の保険会社から賠償金を支払ってもらうことになりますが,相手から支払われる賠償金に所得税がかかるのかが問題です。


賠償金の金額は高額になるため,所得税が課税されると,被害者の手元に残る金額が大きく下がってしまう
からです。

ここで,国税庁によると,交通事故の損害賠償金には所得税が課税されないとされています。

そこで,交通事故により,相手と示談が成立して,治療費や休業損害,慰謝料や逸失利益などの支払を受けても,それに対して所得税が発生することはありません。

ただし,損害賠償金のうち,被害者の所得計算上,「必要経費」に入るお金を補てんしてもらうというものがあれば,その限度では所得税が課税されることがあります。






◆損害賠償金には相続税がかからない


交通事故では,死亡事故もあります。その場合,遺族が被害者の損害賠償請求権を相続することになりますが,相手から支払を受ける賠償金に相続税が課税されるのかが問題になります。


この点,本来であれば,被害者の損害賠償請求権は相続されている債権ですから,相続税の対象になるはずです。ただ,国税庁は,遺族が相続する被害者死亡の損害にもとづく賠償金については,相続税が課税されないとしています。

そこで,死亡事故で遺族が相手から支払を受ける賠償金に対しては,相続税が課税されません。




ただし,交通事故に遭い,相手と示談交渉をしていた最中に,被害者の方が別の原因で死亡したケースでは異なる取扱いになります。この場合,すでに発生している損害賠償請求債権が遺族に相続されることになるので,原則通り相続税が課税されてしまいます。

死亡事故の場合と不均衡があるようにも感じられますが,制度上そのような取扱いになっているので,注意が必要です。






◆人身傷害保険の死亡保険金について


交通事故で被害者が死亡すると,遺族は被害者が加入していた保険からいろいろな種類の保険金を受けとることが多いです。この場合,相続税課税の対象になる保険とならない保険があります。



たとえば,車両保険の保険金は課税の対象になりませんが,人身傷害保険の死亡保険金は,課税の対象になることが多いです。

以上のように,交通事故の損害賠償金への課税方法は,一般には知られておらず,分かりにくいことが多いです。自分では判断できない場合には,法律や税金の専門家に相談しましょう。




●参考記事
・交通事故と弁護士費用のすべて
・交通事故解決事例
・弁護士が入ると賠償額が上がる!




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

通院にタクシーを使用したいのですが,タクシー代も交通費として認められますか?

2017年06月23日
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通院にタクシーを使用したいのですが,タクシー代も交通費として認められますか?

交通事故後の通院では,タクシー代が交通費として認められる場合と,認められない場合があります。認められる場合は,特にタクシー利用の必要性があるケースです。




 通院交通費:タクシー 



◆交通費は損害賠償金に含まれる


交通事故に遭って怪我をしたら,治療のために通院が必要になります。

このとき,徒歩で病院に行けないことも多く,そういった場合には電車やバス,自家用車やタクシーなどの乗り物によって通院をします。

この場合,電車代やバス代などの交通費が発生しますが,これらの交通費は交通事故の損害に含まれ,相手に支払ってもらうことができます。


交通事故がなければ交通費を支払って病院に行くこともなかったのですから,交通費は交通事故と因果関係のある損害と言えるからです。







◆原則的には公共交通機関が基準となる


交通費が交通事故の損害に含まれるなら,病院に通院するためのタクシー代も損害の内容となって相手に請求出来るとも思えます。

しかし,タクシー代はいつでも請求できるわけではありません。交通事故の損害賠償金は,交通事故と相当因果関係のある範囲内に限定されます。そこで,タクシーを使う必然性がないのにタクシーで通院をしても,それは交通事故によって発生した損害とは言えず,賠償の範囲に含まれなくなってしまいます。


交通事故による損害として認められる交通費は,原則として電車やバスなどの公共交通機関を使ったものとなります。
単に「タクシーの方が楽だから」と思って闇雲にタクシーを利用して通院しても,それは賠償範囲に含まれず自腹になってしまうおそれがあるので注意しましょう。





◆タクシー代が認められる基準



それでは,交通事故後の通院でタクシー代が認められることはないのでしょうか?
実際にはそのようなことはなく,通院にタクシー利用の必要があれば,タクシー代も損害として認めてもらうことができます。



そして,タクシー利用の必要があるかどうかについては,以下のような基準で判断されます。
・医師の指示によってタクシーを利用した
・他に利用できる公共交通機関がない
・被害者が歩行困難でタクシー利用の必要性が高い
・タクシー利用によって得られる利便性や時間的なメリットが大きい
・被害者に外貌醜状などがあって、公共の場で通院すると精神的苦痛が大きい


裁判例でも,上記のようなケースではタクシー代を損害として認める傾向があります。

交通事故後,自己判断でタクシーを利用すると,後でその利用分の支払を受けられずに不利益を受けるおそれがあります。

タクシーを利用して損害内容として認められるかどうか不安がある場合には,弁護士に相談してから行動することをおすすめします。




▼参考記事
・交通事故HP:交通事故と慰謝料のすべて
・交通事故HP:損害賠償額の計算方法
・交通事故HP:賠償金額の基準に注意!


(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)




交通事故のニュースで聞く,危険運転致死傷罪の一類型である高速度運転致死傷とはどのような犯罪なのでしょうか?

2017年03月17日
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交通事故のニュースで聞く,危険運転致死傷罪の一類型である高速度運転致死傷とはどのような犯罪なのでしょうか?

「その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為」と規定されています。




▼対象となる交通事故のニュース
「運転手に懲役3年6月 鳥取トンネル3人死傷事故で京都地裁 「制御困難な高速度認識あった」」

  危険運転致死傷罪


平成26年7月13日午前6時半ごろ、鳥取県智頭町のトンネル内で車を時速約140キロで走行させ、対向車線に出て防護柵などに衝突,3人を死傷させる交通事故がありました。

自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)の罪に問われた京都市の会社員(25)の裁判員裁判で、京都地裁は、懲役3年6月(求刑懲役6年)の判決を言い渡しました。
 

では、危険運転致死傷罪の一類型である高速度運転致死傷とはどのような犯罪なのでしょうか。





◆そもそも危険運転致死傷罪とは


危険運転致死傷罪とは,酩酊運転など類型的に高い危険性を帯びた運転行為により人を死傷させた場合に適用されます。

危険な運転行為に故意があり,死傷の結果については故意がないことが前提になっています。自動車の運転により人を死傷させる行為等に関する法律により,人を負傷させた場合は15年以下の懲役,人を死亡させた場合は1年以上の有期懲役と定められています。







◆高速度運転致死傷とは


自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条第2号は,「その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為」と規定しています。


「進行を制御することが困難な高速度」とは,速度が速すぎるため,自車を進路に沿って走行させることが困難な速度,当該速度で走行を続ければ,ハンドルやブレーキの操作のわずかなミスによって自車を進路から逸脱させて事故を発生させることになると認められる速度のことを言います。

進行制御が困難かどうかは,道路の状態・状況のほか,車両の走行性能,貨物の積載状況なども考慮して判断されます。なお,客観的事情に照らして判断すべきであり,運転時における運転者の心身の状態等の個人的事情については考慮しないとした裁判例があります(千葉地判平16・5・7)。






◆本件についてみると


本件事故現場は,最高速度が時速50キロメートルに規制されており,黄色のセンターラインで区分された片側1車線の対面通行道路であり,トンネルの出口手前で緩やかな左カーブとなっていました。




事故当日には強い雨が降っており,トンネル内の路面も湿潤していました。そして,トンネル内で車(ニッサンスカイライン)の速度を急激に上げ,事故で停止する10秒前には時速144.2キロメートルで走行し,ブレーキを踏んだことにより,車がスリップして右側対向車線にはみ出し,右前方に暴走して道路右側の歩道に衝突する結果を起こしたことから,「進行を制御することが困難な高速度」であったと裁判所は認定したようです。










◆終わりに


危険運転致死傷罪に該当する類型は,人の生命身体にとって高い危険性を帯びており,重大な結果を発生させます。運転手の方には,くれぐれも安全運転を心がけていただきたいと思います。




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 根來 真一郎)
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