カテゴリー: 交通事故その他

交通事故のニュースで聞く,危険運転致死傷罪の一類型である高速度運転致死傷とはどのような犯罪なのでしょうか?

2017年03月17日
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交通事故のニュースで聞く,危険運転致死傷罪の一類型である高速度運転致死傷とはどのような犯罪なのでしょうか?

「その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為」と規定されています。




▼対象となる交通事故のニュース
「運転手に懲役3年6月 鳥取トンネル3人死傷事故で京都地裁 「制御困難な高速度認識あった」」

  危険運転致死傷罪


平成26年7月13日午前6時半ごろ、鳥取県智頭町のトンネル内で車を時速約140キロで走行させ、対向車線に出て防護柵などに衝突,3人を死傷させる交通事故がありました。

自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)の罪に問われた京都市の会社員(25)の裁判員裁判で、京都地裁は、懲役3年6月(求刑懲役6年)の判決を言い渡しました。
 

では、危険運転致死傷罪の一類型である高速度運転致死傷とはどのような犯罪なのでしょうか。





◆そもそも危険運転致死傷罪とは


危険運転致死傷罪とは,酩酊運転など類型的に高い危険性を帯びた運転行為により人を死傷させた場合に適用されます。

危険な運転行為に故意があり,死傷の結果については故意がないことが前提になっています。自動車の運転により人を死傷させる行為等に関する法律により,人を負傷させた場合は15年以下の懲役,人を死亡させた場合は1年以上の有期懲役と定められています。







◆高速度運転致死傷とは


自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条第2号は,「その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為」と規定しています。


「進行を制御することが困難な高速度」とは,速度が速すぎるため,自車を進路に沿って走行させることが困難な速度,当該速度で走行を続ければ,ハンドルやブレーキの操作のわずかなミスによって自車を進路から逸脱させて事故を発生させることになると認められる速度のことを言います。

進行制御が困難かどうかは,道路の状態・状況のほか,車両の走行性能,貨物の積載状況なども考慮して判断されます。なお,客観的事情に照らして判断すべきであり,運転時における運転者の心身の状態等の個人的事情については考慮しないとした裁判例があります(千葉地判平16・5・7)。






◆本件についてみると


本件事故現場は,最高速度が時速50キロメートルに規制されており,黄色のセンターラインで区分された片側1車線の対面通行道路であり,トンネルの出口手前で緩やかな左カーブとなっていました。




事故当日には強い雨が降っており,トンネル内の路面も湿潤していました。そして,トンネル内で車(ニッサンスカイライン)の速度を急激に上げ,事故で停止する10秒前には時速144.2キロメートルで走行し,ブレーキを踏んだことにより,車がスリップして右側対向車線にはみ出し,右前方に暴走して道路右側の歩道に衝突する結果を起こしたことから,「進行を制御することが困難な高速度」であったと裁判所は認定したようです。










◆終わりに


危険運転致死傷罪に該当する類型は,人の生命身体にとって高い危険性を帯びており,重大な結果を発生させます。運転手の方には,くれぐれも安全運転を心がけていただきたいと思います。




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 根來 真一郎)

玉突き事故に巻き込まれてしまいました。私は誰に損害賠償を請求すれば良いのでしょうか?

2017年03月15日
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玉突き事故に巻き込まれてしまいました。私は誰に損害賠償を請求すれば良いのでしょうか?

基本的には,玉突き事故の原因となった車(玉突きの最後尾の車)の運転手に賠償請求することになります。ただし,他の運転手に急ブレーキ等の過失がある場合には,その運転手に対しても賠償請求をすることができます。




▼対象となる交通事故のニュース
「車5台絡む事故、1人死亡1人重体 熊本の九州道」

  玉突き事故:損害賠償 



◆はじめに


高速道路等での玉突き事故は,数多く起きています。今年の2月28日にも,熊本県の高速道路で,車5台が絡む玉突き事故が起きています。1人が死亡,1人が重体,7人が怪我をするという,非常に痛ましい事故でした。




もし玉突き事故に巻き込まれてしまった場合,いったい誰に対して損害賠償を請求すれば良いのでしょうか。

ここでは,場面を分けてお話をしたいと思います。







◆追突した車のみに過失があった場合


例えば,道路が渋滞していた,信号が赤だった,といった理由で停止していたにも関わらず,後ろから車両が追突してきて,玉突き事故が起きたような場合を想定してみましょう。

完全に停止している車に追突した場合,追突した車の運転手に100%の過失があるので,その運転手が損害賠償責任を負うこととなります。

したがって,追突された車の運転者や,玉突き事故に巻き込まれた車の運転者は,追突した車の運転者に対し,損害賠償請求をすることになります。




この図の例だと,Aさん,Bさんは,Cに対して損害賠償請求をすることになります。








◆追突された車(後ろから二番目の車等)にも過失があった場合


例えば,上の図のB車が,前方に停車しているA車に直前で気づき(前方不注意),急ブレーキをかけたことにより,C車がB車に追突し,その結果,玉突き事故が起こってしまった場合を想定してみましょう。

この場合には,追突されたB車の運転手にも一定の過失(通常,一般道路だと3割,高速道路だと5割の過失があるとされます)があるので,Bも損害賠償責任を負うこととなります。したがって,Aさんは,Cだけでなく,Bに対しても損害賠償請求をすることができます。




なお,賠償金の両取りはできませんが,Aさんは,B・Cの両方に対して請求することはできます。この場合,B・Cは,2人で連帯して,Aさんに対して賠償金を支払うこととなります(簡単に言うと,賠償金が支払われないリスクが半減するイメージです。)。






◆おわりに


このように,玉突き事故に巻き込まれてしまった場合,基本的には玉突き事故の原因となった車(玉突きの最後尾の車)の運転手に対して損害賠償請求をすることになりますが,追突された車(後ろから二番目の車等)にも過失がある場合には,その運転手に対しても賠償請求をすることができます。


玉突き事故を起こしてしまった加害者側から考えると,被害車両のすべてに賠償をしなければならない(=被害者が多数存在する)ので,非常に高額な賠償責任を負う可能性が高いと言えます(任意保険に入っていても,対人賠償保険に上限を定めていた場合,その上限を超えてしまう可能性もあります。)。


▼参考記事
・交通事故ブログ
「弁護士が交通事故の被害にあうとどうなるのか その1【まさかの追突事故?!編】」
・解決事例005
「非該当でも弁護士費用特約使用により保険金の増額をした事例」




(弁護士法人よつば総合法律事務所  弁護士 村岡 つばさ )

危険運転致死傷罪の一類型である信号無視運転致死とは,どのような犯罪なのでしょうか?

2017年03月08日
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危険運転致死傷罪の一類型である信号無視運転致死とは,どのような犯罪なのでしょうか?

危険運転致死傷罪とは,酩酊運転など類型的に高い危険性を帯びた運転行為により人を死傷させた場合に適用されます。




▼対象となる交通事故
「女子高生がトラックにはねられ死亡、運転手の男を現行犯逮捕」

  危険運転致死傷罪


2017年2月2日,大阪市西淀川区の交差点で,自転車に乗っていた高校生(16)がトラックにはねられ、頭を強く打って死亡しました。
警察は,トラック運転手が赤信号を意図的に無視したとして,危険運転致死罪の疑いで送検しました。





◆そもそも危険運転致死傷罪とは

危険運転致死傷罪とは,酩酊運転など類型的に高い危険性を帯びた運転行為により人を死傷させた場合に適用されます。危険な運転行為に故意があり,死傷の結果については故意がないことが前提になっています。

自動車の運転により人を死傷させる行為等に関する法律により,を負傷させた場合は15年以下の懲役,人を死亡させた場合は1年以上の有期懲役と定められています。







◆信号無視運転致死とは


自動車の運転により,人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条第5号は,「赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」と規定しています。


「赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視」とは,およそ赤色信号に従う意思のないことを意味します。赤色信号であることの確定的な認識がない場合であっても,信号の規制自体に従うつもりがないため,その表示を意に介することなく,たとえ赤色信号であったとしてもこれを無視する意思で進行する行為も含まれます(最決平20・10・16)。

「重大な交通の危険を生じさせる速度」か否かは,交差する道路や対向車線を信号表示に従って進行する車両,あるいは,道路を信号表示に従って横断する歩行者の存在等も加味して判断されます。判例では,赤色信号を無視して時速20kmで交差点内に進入した事案について,「重大な交通の危険を生じさせる速度」であったと認定したものがあります(最決平18・3・14刑集60巻3号363頁)。 









◆本件についてみると,


現場は信号機と横断歩道がある交差点だったようです。


そして,防犯カメラの映像などから,トラックが交差点に進入するかなり前に信号が赤に変わっていたことが判明しました。そのため警察は,トラック運転手が「赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視」したと判断したようです。
また,具体的なスピードなどの詳細な事実は記事には記載されておりませんが,「重大な交通の危険を生じさせる速度」であったと,警察が総合的に判断したものと思われます。






◆終わりに


危険運転致死傷罪に該当する類型は,人の生命身体にとって高い危険性を帯びており,重大な結果を発生させます。運転手の方には,くれぐれも安全運転を心がけていただきたいと思います。




▼参考記事
「死亡事故被害者の救済」
解決事例064「横断歩道上で発生した死亡事故について裁判で7000万円」

(弁護士法人よつば総合法律事務所  弁護士 根來真一郎 )


お酒を飲んでも,一晩寝れば,翌朝に運転しても大丈夫でしょうか?

2017年03月03日
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お酒を飲んでも,一晩寝れば,翌朝に運転しても大丈夫でしょうか?

飲んだお酒の量・睡眠時間・体質等にもよりますが,お酒を飲んだ翌朝の運転が飲酒運転に当たるとして処罰されたケースもあるので,注意が必要です。



▼対象となる交通事故
「酒気帯び運転で車に追突 県教委、男性教諭を免職「寝たので大丈夫」」

 一度寝たのに飲酒運転? 飲酒翌日の運転に要注意


◆飲酒運転


昨年の8月,埼玉県で61歳の男性が,酒気帯び運転で事故を起こしたとして逮捕されました。
事故を起こした男性は,「一度寝ているので,事故を起こさなければ大丈夫だろう」と考え,車を運転したと供述しています。

事故を起こしたお酒を飲んでから,身体からアルコールが抜けるまでには,一定の時間がかかります。

どれくらいの時間が経てば車を運転して良いのかという点は,飲んだお酒の量や個人差(性別・体格・お酒の強さ等)にもよるので,明確に申し上げることはできません。


一般には,体重約60sの成人男性が,アルコール1単位(ビール中瓶1本程度)を飲んだ場合,アルコールが抜けるまで,約3時間〜4時間かかると言われています。







◆事案


ここでは,実際に沖縄で起きた事件を紹介したいと思います。
この事件は,お酒を飲んでから12時間程度経過していたにも関わらず,基準値を超えるアルコール量を体内に保持していたとして,酒気帯び運転として処罰された(懲役8ヵ月,執行猶予3年)という事件です。


時系列は以下の通りです。
【事件前日 PM19:00〜22:00頃】
Aは,事件前日の19時頃から,350ミリリットル入りの缶ビールを4本と,大きめのグラスに泡盛と水の割合が,7:3から8:2程度の泡盛の水割りを1杯飲み,22時過ぎに就寝した。

【事件当日 AM5:00頃】
Aは午前5時頃起床し,入浴等した後,午前6時30分過ぎ頃に,自動車を運転して勤務先に向かった。

【事件当日 AM8:00頃】 
Aは,午前8時頃,勤務先での打ち合わせを終え,勤務先から建築工事現場に行くため再度自動車を運転したところ,午前9時23分頃,車両との追突事故を起こした。

【事件当日 AM10:21頃】
現場に到着した警察官がAに飲酒検知を行ったところ,Aから,呼気1リットルにつき0.39ミリグラムのアルコールが検知された。


酒気帯び運転として処罰されるのは,呼気1リットルあたり0.15mg以上もしくは血液1ミリリットルあたり0.3mg以上のアルコールを保有した状態で車両を運転した場合です。

Aさんから出た0.39mgという数値は,この基準を大きく上回る数値であることからも,お酒が抜けるまでにかなりの時間がかかることが分かると思います。







◆法的責任


飲酒運転をしてしまった場合の法的責任については,以前,このブログで記事を書いていますので,そちらをご参考ください。「飲酒運転の加害者は,その後どんな処分が科されるのですか?」

上の事案のように,お酒を飲んでからかなりの時間が経過していたにも関わらず,酒気帯び運転とされたケースもあるので,お酒を飲んだ翌朝の運転は,注意が必要です。通勤などで必要な方も多いと思われますが,お酒を飲んだ翌日,特に翌朝の運転は控えるようにしましょう。







(弁護士法人よつば総合法律事務所  弁護士 村岡 つばさ)

千葉県は全国と比較して,交通事故が多いのでしょうか?

2017年03月01日
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千葉県は全国と比較して,交通事故が多いのでしょうか?

千葉県の交通事故死者数は,平成28年度で愛知県の212人に次いで全国ワースト2位となっています。




 千葉県:交通事故発生状況 



◆千葉の交通事故死185人 全国ワースト2位


皆さんは,千葉県が交通事故の発生件数が多い都道府県であることをご存知でしょうか?

千葉県警は,平成29年1月16日に,平成28年に千葉県内で起きた交通事故の発生状況のデータを発表しました。千葉県の交通事故死者数は,前年から5人増えて185人となり,愛知県の212人に次いで全国ワースト2位となっています。




今回は,そんな交通死亡事故の多い千葉県において,どのような交通死亡事故が多く発生しているのかをご紹介していきます。

今後わたしたちが悲惨な交通事故に遭わないためには,どのように注意をしたらいいのでしょうか?








◆高齢者の道路横断中の事故が多発


平成28年中の交通事故死者数185人のうち,高齢者は99人で,全体の53.5%を占めています。年齢層別死者数は,以下の通りです。

  ・子ども:3人(1.6%)     ・40歳代:12人(6.5%)
  ・高校生:2人(1.1%)     ・50歳代:21人(11.4%)
  ・29歳以下:23人(12.5%) ・60〜64歳:13人(7%)
  ・30歳代:12人(6.5%)


また,高齢者の状態については,99人中,歩行者が60人,自転車利用者14人,二輪車乗車中5人,四輪車乗車中20人となっています。高齢歩行者の死者60人中41人が道路横断中の事故となっています。

千葉県警のホームページによると,夜間,道路横断中の事故が大変目立っているとのことです。
歩いて外出される際には,明るい色の服を着用したり,反射シール等を身につけるなど,ドライバーから発見されやすい服装を心掛けるとともに,道路を横断する際には左右の安全確認をしっかり行うことが重要です。

また,ドライバーの方も,夜間,運転される際には速度を控え,横断歩道以外でも道路横断者がいることに十分注意するなど,安全運転を心がけましょう。




 




◆18時,20時ころに交通死亡事故が多発


交通死亡事故の発生時間帯は,日没周辺が多い傾向があります。平成28年も,18時台の死亡事故が13件を数えました。20時台も10件発生しています。


薄暮時から夜間にかけて歩行者等を早期発見し,交通事故を防止するためにも,前照灯をハイビームに切り替えることを心掛けましょう。対向車や先行車のいないところでは,ハイビームに切り替えることが基本であり,こまめな切り替えをすることが重要です。
※ただ,平成28年は,午前10時台にも14件の交通死亡事故が発生しており,千葉県警は原因を分析しています。



 



◆原因は前方不注意が最も多い


千葉県警は,交通死亡事故を起こした原因についてもデータを発表しています。1位は,前方不注意54件(29.7%)でした。2位は,運転操作ミス32件(17.6%),3位は,安全不確認31件(17%)と続いています。


交通事故は,被害者になっても加害者になっても大変な思いをすることになってしまいます。日ごろから十分に注意をして,事故防止を心掛けていきましょう。




▼参考記事
当事務所の交通事故解決事例
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」

「千葉で交通事故被害者の救済活動をするということ」

(弁護士法人よつば総合法律事務所  弁護士 大友 竜亮 )

運転者の不注意により店舗に車を衝突させてしまった場合,運転者にはどのような法的責任が生じ得るのでしょうか?

2016年12月22日
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2016年12月,埼玉県和光市で,コンビニエンスストアに車が突っ込み,店内にいた従業員に怪我を負わせるという事故が起きました。事故を起こしてしまった71歳の男性によると,駐車する際にアクセルとブレーキを踏み間違えたことが事故の原因でした。運転者の不注意により店舗に車を衝突させてしまった場合,運転者にはどのような法的責任が生じ得るのでしょうか。

店舗に車を衝突させてしまった場合,刑事責任を負う可能性があるだけでなく,非常に高額な賠償責任を負う可能性があります。




▼対象となる交通事故(産経ニュースより)
「埼玉・和光のコンビニに車突っ込む 71歳男運転、バイト店員の17歳少年重傷」

 運転操作ミスで,建造物を損壊した場合 


◆刑事責任

(1)死傷者が出てしまった場合
運転者は刑事処分(7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金)を受ける可能性があります(自動車の運転により人を処罰させる行為等の処罰に関する法律第5条)。

(2)死傷者が出なかった場合
単純な物損事故とは異なり,転者の著しい不注意により建造物(店舗,住宅等)を損壊した場合には,刑事処分(6月以下の禁錮又は10万円以下の罰金)を受ける可能性があります(道路交通法第116条)。


ただし,「著しい不注意」のハードルはかなり高いので,アクセル・ブレーキの踏み間違えだけだと,これに当たらない可能性が高いと思われます。

なお,道路交通法が適用されるには,事故が起こった場所が「道路」上であることが必要です(道路交通法2条1項1号)。コンビニエンスストアの駐車場のうち,通路部分は「道路」に当たるが,駐車区画は「道路」に当たらないとする裁判例があるので,具体的な事故の態様・場所によっては,駐車場内での運転ミスでも道路交通法の適用を受ける可能性があるので,注意が必要です。






◆民事責任


運転者は不法行為(民法709条)責任を負い,損害を受けた人に対して損害賠償金を支払うこととなります。

(1)死傷者が出なかった場合
店舗の営業者に対して賠償金を支払うこととなります。
この場合,支払わなければならない(可能性がある)損害としては,下記項目が挙げられます。

・店舗の修理費用
・商品の販売価格(商品が壊れる,汚れるなどして売れなくなった場合)
・休業中の店舗収入,従業員の給料,集客回復費用(修理等により休業した場合)
・減少した売上(店舗を縮小した場合)
・弁護士費用の一部(損害額の一割程度)

店舗の損壊状況や売上状況にもよりますが,運転ミスによりペットショップに乗用車を衝突させてしまったという事案で,2200万円弱の損害を認定した裁判例もあります(ただし,既に任意保険会社により1700万円程度が支払われていたため,実際の認容額は500万円程度でした)。



(2)怪我人が出てしまった場合
店舗の営業者に対する損害賠償に加えて,怪我をした人に対しても賠償金を支払うこととなります。
この場合,怪我をした人に支払わなければならない(可能性がある)損害としては,下記項目が挙げられます。

・治療費,交通費
・休業損害(仕事できなかった期間の給料等)
・後遺障害による逸失利益(後遺症が残った場合)
・後遺障害慰謝料(同上)
・入院,通院慰謝料
・弁護士費用の一部(損害額の一割程度)

これらは通常の交通事故と同様です。もし被害者が亡くなってしまったような場合には,遺族に対して死亡逸失利益や慰謝料を支払うこととなり,更に高額な賠償責任を負うこととなります。





◆おわりに


このように,店舗に車を衝突させてしまった場合,刑事責任を負う可能性があるだけでなく,非常に高額な賠償責任を負う可能性があります。

任意保険に加入している方でも,対物保険の上限額がある場合,店舗の損壊状況・売上状況によってはその上限を超えてしまう可能性もあるので,注意が必要です。




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 村岡 つばさ)

無免許運転で交通事故を起こした事件の危険運転致傷罪の一類型である未熟運転致傷罪とは,どのような犯罪なのでしょうか?

2016年12月21日
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無免許運転で事故を起こし同乗者にけがをさせたとして,未熟運転致傷の疑いで,福岡県の建設作業員の少年(16)が福岡地検に送致されました。
では,危険運転致傷罪の一類型である未熟運転致傷罪とはどのような犯罪なのでしょうか?


未熟運転とは「進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為」のことを言います。




▼対象となる交通事故(西日本新聞より)
「未熟運転の疑いで書類送検、福岡 16歳無免許、4人けが」

 無免許運転 


◆未熟運転致傷罪について


危険運転致傷罪は,酩酊運転など類型的に高い危険性を帯びた運転行為により人を負傷させた場合に適用されます。法定刑は,15年以下の懲役と定められています。

そして未熟運転とは,運転者の意思によっては的確な制御が困難な状態で自動車を走行させる行為のうち,「進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為」のことをいいます(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条第3号)。
進行を制御する技能を有するかは,運転装置を操作する初歩的技能を有するかによって判断されます。

 
本件では,少年は制限速度50キロメートルの県道を約100キロメートルで走行し,中央線をはみ出したため急ハンドルをきった結果,自動車をブロック塀に衝突させました。さらに,少年が「運転は初めてだった」と供述していることから,運転装置を操作する初歩的技能がなく,未熟運転致傷罪に該当すると判断されたと考えられます。
 
なお,少年は無免許でしたが,無免許であっても未熟運転とは認められないことがあります。京都府亀岡市で小学生の列に自動車が突っ込み,10人が死傷した事故では,運転者は無免許でしたがある程度の運転技能を有していたことが認められ,未熟運転とは認められませんでした。






◆損害賠償請求について


少年は,自動車をブロック塀に衝突させています。仮にブロック塀が損傷し,損害が発生していた場合,ブロック塀の所有者は,誰に損害賠償を請求することができるのでしょうか

本件は事故を起こしたのが少年であるので,まずは財力があると考えられる両親に損害賠償請求をすることが考えられます。

民法714条は責任無能力者の監督義務者の責任を定めていますが,本件の16歳の少年が責任無能力者であるとは考えにくく,民法714条による両親への損害賠償請求は認められる確率は極めて低いでしょう。

また,民法709条は不法行為による損害賠償を定めていますが,少年の供述が事実であれば,初めて車を運転した少年の起こした本件事故について,両親が予見をすることは不可能であり両親に過失が認められず,民法709条による両親への損害賠償請求も認められる確率は低いでしょう。




すると,本件では少年に対し,民法709条が定める不法行為による損害賠償を請求していくこととなります




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 根來 真一郎)

飲酒運転の加害者は,その後どんな処分が科されるのですか?

2016年12月20日
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飲酒運転の加害者には,その後どんな処分が科されるのですか?

酒気帯び運転による交通事故は,刑事上・民事上・行政上の重い責任が科されるものとなっています。

 飲酒運転の法的責任 



◆酒気帯び運転の車,歩行者はね別の車に衝突


平成28年12月15日午前6時頃,横浜市神奈川区の交差点で乗用車が信号を無視し,横断歩道を渡っていた派遣社員の男性(30)をはね,その後前方に止まっていた別の乗用車に衝突するという事故が起きました。

この事故で,男性は骨盤を折るなどの重傷を負い,衝突された乗用車に乗っていた男性ら2人も軽症です。
事故を起こした乗用車を運転していた加害者の呼気からは,基準値を超えるアルコールが検出されていました。

飲酒運転に対する法規制が平成26年に改正されていますが,今回の事故を起こした加害者にはどのような法的責任が生じるのでしょうか。






◆危険運転致傷罪(自動車運転死傷処罰法第3条),12年以下の懲役が科されるおそれ


今回の事故を起こした加害者は,飲酒運転をしています。

自動車運転死傷処罰法第3条によると,アルコールや薬物,又は病気のために正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転し,その結果,人を負傷させたという場合,危険運転致傷罪とし,1年以上12年以下の懲役に処すると定めています。


したがって,今回の事故が上記の危険運転致傷罪に当たるかどうかは,「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」で運転していたかどうかの判断によることになります。
「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」とは,アルコールや薬物,又は病気のために、自動車を運転するのに必要な注意力・判断能力・操作能力が相当程度低下して,危険である状態のことを言います。




アルコールの影響による場合には,道路交通法の酒気帯び運転罪になる程度のアルコールが体内にある状態であれば、通常はこれに当たります。すなわち,血中アルコール濃度では0.3mg/ml以上,呼気中アルコール濃度では0.15mg/l以上の状態であれば,通常は「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」に当たります。

今回の事故を起こした加害者の体内アルコール量は分かりませんが,血液1ミリリットル中にアルコールが0.3ミリグラム以上ある場合や,呼気1リットル中アルコールが0.15ミリグラム以上ある場合には,「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」に当たり,1年以上12年以下の懲役が科されることになります。

ちなみに,この加害者のアルコール量が上記の数値よりも少なく,「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」に当たらない場合には,自動車運転死傷処罰法第5条の過失運転致傷罪として,1年以上7年以下の懲役もしくは禁固または100万円以下の罰金が科されることになります。






◆被害者3人から民事上の責任を追及されうる


今回の事故により,横断歩道を渡っていた派遣社員の男性と,前方に止まっていた別の乗用車に乗っていた男性ら2人が怪我を負っています。


今回の事故は,飲酒の影響の有無にかかわらず,事故を起こした加害者の過失(相当の注意を欠いたこと)によって発生したものであり,加害者には民事上の責任として,不法行為による損害賠償義務が生じます。

加害者が賠償しなければならない費用として考えられるものについて,@3人共通のもの,A横断歩道を渡っていた派遣社員の男性に対するもの,B前方に止まっていた乗用車に乗っていた男性らに対するものの3つに分けて説明します。

@3人共通のもの
治療費用、入院雑費や入通院交通費などの入通院に伴い支出する費用及び慰謝料などがあります。

A横断歩道を渡っていた派遣社員の男性
この男性は骨盤を折るなどの重傷を負っていることから,休業損害(交通事故により受けた傷害の症状が固定するまでの療養の期間中に,傷害及びその療養のため休業し,又は十分に稼働することができなかったことから生ずる収入の喪失のことを言います。)及び後遺障害による逸失利益(被害者の身体に後遺障害が残り,労働能力が減少するために,将来発生するものと認められる収入の減少のことを言います。)などが考えられます。

B前方に止まっていた乗用車に乗っていた男性ら
衝突された車両の修理費用などが考えられます。



このように,今回の加害者は3人から損害賠償請求をされるおそれがあり,その場合には多額の損害賠償義務を負う可能性があります。






◆免許の停止・取消し


飲酒運転をした者は,行政上の責任も負います。

運転者の状況によって,免許の停止処分か免許の取消処分がなされ得ます。
呼気1リットル中アルコール0.15mg以上0.25mg未満の状態であれば,免許の停止処分がなされ得ます。

呼気1リットル中アルコール0.25mg以上の状態もしくは,アルコールの影響により正常な運転ができないおそれのある状態には,免許の取消処分がなされ得ます。






◆酒気帯び運転の法的責任は重い


このように,酒気帯び運転による交通事故は,刑事上・民事上・行政上の重い責任が科されるものとなっています。



(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 大友竜亮)

交差点での交通事故で,被害者にも過失はあるのですか?

2016年11月24日
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交差点で青信号を直進しようとしたところ,前からきた車が急に左折してきてぶつかってしまいました。私からすると避けようのない事故だったのですが,それでも過失はあるのですか?

状況によっても異なりますが,過失があると判断される場合も多いです。




【交差点での交通事故:過失割合】




◆交差点は交通事故が多い


交差点は交通事故が多いです。左右前方車が行き交うため事故も多くなります。

また,それら車の動きに加え横断歩道等を横断中の歩行者や自転車などもいますのでなおさら交通事故が多くなります。







◆千葉県での交通事故多発地点


平成27年度では,千葉県において1万9000件もの交通事故が発生しています(千葉県警察本部ホームページ参照)。平成26年の都道府県別道路交通事故の発生件数では,千葉県は9番目になっています。

ちなみに,日本損害保険協会ホームページに掲載されている平成26年の千葉県交通事故多発交差点は以下のとおりになっています。

1位:幕張公園前交差点(千葉市花見川区幕張町4丁目417番地25)
2位:千葉西警察署入口交差点(千葉市美浜区真砂2丁目1番地1号)
3位:園生十字路交差点(千葉市稲毛区園生町1042番地)

1位から3位まで千葉市が占めております。


日本損害保険協会ホームページには,上記交差点で事故が多い背景まで解説されていてとても興味深いです。

1位の幕張公園前交差点の場合には,件数が多い事故類型として「右折車と直進者の事故」が挙げられ,その原因として「対向車線を直進してくる車両を見落として衝突した」などという分析が記載されています。

交通事故多発交差点は10位まで発表されていますので,ご興味ある方は,日本損害保険協会ホームページをぜひご覧ください。







◆過失割合の決め方


過失割合はどのように決めるかというと,損害賠償額算定基準(いわゆる赤い本)や民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準という本を元に決定される場合が多いです。

これらの本には,事故の想定パターンが何種類も掲載されており,この事故だったらこの過失割合,というように,原則的な過失相殺率が記載されています。



裁判所もこれらの本を基準に過失割合を決定することが多いため,保険会社も弁護士もこの本の基準を参考にして過失割合の交渉をします。







◆交差点での過失割合


交差点での過失割合は,その交差点に信号があったのか,交差点の道路幅はどうなったのかなどによって過失割合が変わっていきます。

事故の加害者が交差点の信号を無視した結果衝突したような場合には,交差点での事故であっても過失割合は100:0です。
しかし,それ以外のパターンだと交差点での過失割合は100:0にはならない場合がほとんどです。


質問の場合の事故だと,基本の過失割合は15:85になります。

ただし,事故状況によって過失割合に修正がかかることも多いため,過失割合について疑問をもった場合には,弁護士に相談することをおススメします。




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 前原 彩)

子どもをチャイルドシートに乗せないまま,交通事故に遭ってしまったらどうなりますか?

2016年11月22日
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子どもを車に乗せている際に,後ろから追突され,子どもが怪我をしました。
追突で私は完全な被害者なはずなのに,加害者の保険会社は,「チャイルドシートに乗せてなかった私が悪い」と言ってきます。これってどうなんですか?


チャイルドシートに乗っていなかった子どもが怪我をした場合,過失があると判断されてしまう場合があります。




【チャイルドシートの重要性】



◆チャイルドシートって?


日本では6歳未満の乳幼児を車両に乗せる場合には,乳幼児の安全を確保するために,乳幼児を座席に固定して座らせるチャイルドシートの着用が義務付けられています。


6歳未満の子どもを車に乗せているにもかかわらずチャイルドシートに乗せていなかった場合,1点減点になります。







◆チャイルドシートの使用率


JAFのデータによると,6歳未満の子どものチャイルドシート乗車率は,62.7%という意外な結果が出ています。1歳未満だとその数字は85.2%に上りますが,1歳〜4歳だと64.4%,5歳だと38.1%にまで下がります。
(JAF 交通安全とエコ全国調査データ2015年より引用)




自動車乗車中の幼児の死亡事故のうち,チャイルドシードと使用していなかった場合の死亡率は使用していた場合より3倍高いというデータもありますので(国土交通省自動車総合安全情報より引用),小さな子どもがいる場合には,必ずチャイルドシートに乗せてあげましょう。







◆チャイルドシートに乗せていなかった場合に過失になる!?


では,そのチャイルドシートに子どもを乗せていなかったときに交通事故に遭あった場合,チャイルドシートに乗せていなかったことが何らかの過失になるのでしょうか。



◆裁判例上過失になっている場合も多い


・チャイルドシートの乗せられていなかった2歳2カ月の幼児について,チャイルドシートに乗っていなかったことを理由として5%の過失が認められた事例(名古屋地裁平成21年2月25日判決)。

・センターラインオーバーの対向車に衝突された際,チャイルドシートに乗せられていなかった2歳の子ともが,頭蓋骨骨折等で死亡した事案について,チャイルドシートを装着することのできない後部座席に,大人が介添えもできない位置関係で着席していたことから5%の過失があるとした事例(大阪地裁平成15年9月24日判決)。


チャイルドシートは子どもの大事な命を守ってくれるものであるうえ,追突やセンターラインオーバーなど,本来であれば10:0になる事故であるにもかかわらず,チャイルドシートをしていなかったための,こちらにも過失があるとされる場合がありますので,6歳未満の子どもを車に乗せる際には,絶対にチャイルドシートを使用しましょう。




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 前原 彩)

プロフィール
弁護士法人よつば総合法律事務所
地域最大級の弁護士14名が所属しております。事務所名の「よつば」は事務所に関わる人が皆幸せになるようにとの思いから名付けました。お気軽にご相談ください。
柏事務所:千葉県柏市(柏駅徒歩3分)
千葉事務所:千葉市(千葉駅徒歩3分)

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