カテゴリー: 交通事故その他

交通事故直後,相手の方は「すべて私が悪いから,全部私が払うから。」と言っていました。そのことを任意保険会社の担当者に言ったら,錯誤だとか言っていました。 私の勘違いってことですか? 相手の方は事故直後に間違いなくそう言っていました。勘違いであるわけありません。 どういうことなのでしょうか?

2017年11月07日
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交通事故直後,相手の方は「すべて私が悪いから,全部私が払うから。」と言っていました。そのことを任意保険会社の担当者に言ったら,錯誤だとか言っていました。
私の勘違いってことですか?
相手の方は事故直後に間違いなくそう言っていました。勘違いであるわけありません。
どういうことなのでしょうか?





事故現場で示談をした場合,その内容は有効となります。
ただ,それが錯誤にもとづくものなら,無効になってしまいます。また,示談書や念書などの書類を作成していない場合には,示談成立を主張することができない可能性があります。





 事故現場での示談



◆事故現場での示談も有効



交通事故が起こったら,その場で示談してしまうケースがあります。

また,本件のように,事故現場で加害者が「すべて私が悪い。全部払います」などと言うこともあるでしょう。




このようにして事故現場で示談をした場合,その内容は有効となります。

もちろん,あとでそのような約束をしたかどうかが争いになる可能性はあります。


書面が残っていなければ,たとえ口頭で約束が成立したことが真実であっても,その真実を証拠で立証することができなくなります。

たとえば,その場でいくら支払うかを決めて示談書を作成し,当事者双方が署名押印したものが残っていたら,その内容に従って相手に支払を求めることができます。







◆示談が無効になる場合


事故現場で事故直後に示談したことが立証されているときや,約束したこと自体に争いがなくても,事故現場でした約束(示談)が無効になるケースがあります。

たとえば,本件のような錯誤無効が問題となるケースです。

錯誤無効とは,契約の要素に錯誤があり,それに基づいて契約を行った場合,その契約が無効になることです(民法95条)。




本件では,加害者は事故現場で「私が全面的に悪く,私の過失が100%である」と思い込んでいたから,このような約束をしたと考えられます。ところが,実際には,被害者にも過失があったということになると,錯誤無効の主張が通ってしまう可能性が高いです。

なお,示談の効力が覆される場合に関しては,これ以外にも,詐欺強迫によって示談が行われた場合には詐欺強迫を受けた側が示談の取消しを主張できますし,示談内容が公序良俗に反する場合にも示談が無効になります。







◆示談書などの書類がないと,示談成立を主張できない


示談書を作成していないときは,立証の問題があります。

事故現場で相手が「全額払う」と言っていても,示談書や相手が差し入れた念書でもない限り,その事実を証明することはできません。

相手が「事故現場で,支払うとは言っていない。金額も確定しないので,示談できるはずがありません。」などと言ってきたら,示談したことを証明する証拠がないので,事故現場での約束の内容を前提とした賠償は受けられません。







◆まとめ


本件では,何の書類を作成していなかったときは,事故現場で約束がされたこと自体を立証できず,約束の内容を前提とした解決が望めないことが考えられます。

立証が可能である場合や,事故現場で約束をしたこと自体に争いがない場合でも,事故現場で相手が「全部支払います。」と言っただけで,その時点では具体的な金額は全く確定していませんし,過失割合についても充分な検討がされて約束したとはいえません。

この場合,事故現場での相手の言動をもとに,相手の過失割合を100%として全額の損害賠償を求めることは難しいと考えます。




以上のように,事故現場でのやりとりをもとに,後にトラブルが起こることもよくあります。
お困りの際には,弁護士に相談してみて下さい。




▼参考記事
・示談交渉のポイント
・交通事故と慰謝料のすべて
・短期間で解決した事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故証明書を入手しました。加害者の欄に保険会社の名称が書いてありますが,私が普段話している相手方保険会社とは違うようです。これはどういう事ですか?

2017年11月06日
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交通事故証明書を入手しました。加害者の欄に保険会社の名称が書いてありますが,私が普段話している相手方保険会社とは違うようです。これはどういう事ですか?




普段話している相手の保険会社は,相手の任意保険会社です。交通事故証明書に書いてある保険会社は,相手の自賠責保険の会社です。




 自賠責保険会社 



◆任意保険と自賠責保険



自動車の保険には,任意保険と自賠責保険があります。自動車を運転する人なら,両方に加入していることが多いです。


自賠責保険は,すべての自動車にかけておかなければならない,強制加入の保険です。
自賠責に加入していない車を運転するのは犯罪行為でして,罰則も適用されます。


これに対し,任意保険への加入は義務ではありません。加入が任意なので「任意保険」と呼ばれます。

自賠責保険が強制加入なのは,交通事故の被害者に最低限度の賠償を得させることを目的しています。
最低限度の賠償であることから,自賠責保険の限度額は非常に低いですし,物損は補償の対象になりません。


自賠責保険だけしか加入していなければ,事故加害者になったときの損害賠償額に足りない可能性が高いです。そこで多くの人は,自賠責保険に加えて,任意保険にも加入して,事故に備えているのです。










◆任意保険の示談代行サービスについて


任意保険には「示談代行サービス」がついています。

これは,被保険者が交通事故の加害者になったときに,保険会社が被害者との示談交渉を代行してくれるサービスです。

これにより,交通事故を起こしたら,任意保険会社の担当者が被害者と話合いをしてくれるので,加害者自身は被害者と直接やり取りする必要がありません。

このような仕組みがあるため,被害者は相手の任意保険会社の担当者との間で,示談交渉の話合いをすることになるのです。




本件のご質問で,被害者の方が「普段話している保険会社」というのは,相手の任意保険のことです。

これに対し,交通事故証明書には相手の自賠責保険会社名も書いてあるので,交通事故証明書上の相手の保険会社(自賠責保険会社)は,普段話している相手の保険会社(任意保険)とは異なることになります。

なお,両者が同じ保険会社であることもありますが,部署は全く別です。







◆自賠責保険に直接請求することもある


それでは,被害者は相手の自賠責保険と関わることがまったくないのでしょうか?

そういうわけではありません。
被害者は,相手の自賠責保険に対し「被害者請求」という方法で直接保険金を請求することができます。

たとえば,仮渡金請求をしたいときや後遺障害認定を申請するときには,被害者請求の方法で,相手の自賠責保険に対して請求を行うことができます。

交通事故の損害賠償手続内で,相手の自賠責保険会社名が必要になることもあります。
任意保険と自賠責保険の役割の違いを理解して,加害者の保険会社は両方とも把握しておくことが大切です。





▼参考記事
・損害賠償額の基準に注意!
・交通事故の問題解決の流れ
・当事務所の交通事故解決事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故の加害者の刑事裁判の弁護人から嘆願書にサインしてほしいと言われました。 サインすると賠償に影響が出ませんか?

2017年10月31日
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交通事故の加害者の刑事裁判の弁護人から嘆願書にサインしてほしいと言われました。
サインすると賠償に影響が出ませんか?


賠償には影響しません。加害者の刑が軽くなる可能性が高くなります。




 刑事裁判:嘆願書 



◆嘆願書とは


加害者が刑事裁判にかかっている場合,加害者やその弁護人から「嘆願書」を書いてほしいと依頼されることがあります。

嘆願書とは,どのような意味を持った書類なのでしょうか?

これは,被害者の立場から「加害者の罪を軽くして下さい」とお願いする書類です。提出先は,検察官や裁判官です。

既に刑事裁判になっているのであれば,裁判所に提出することが予定されているはずです。










◆嘆願書があると,加害者の情状が良くなる


加害者は,どうして被害者に対して嘆願書を書くよう依頼するのでしょうか?

それは,被害者による嘆願書があると,加害者の刑罰が軽くなる可能性が高くなるためです。

刑事手続では,被害者の処罰感情が被告人(加害者)の情状に影響します。
被害者が厳罰を望んでいたら情状は悪くなって刑罰は重くなる方向に動きますし,反対に,加害者を許していたら,刑罰は軽くなる方向に動きます。




被害者が「加害者の罪を軽くして下さい」と望んでいる場合には,単に許しているよりもさらに被害感情が薄いということですから,加害者にとっては非常に良い情状となります。

たとえば,もともとは懲役刑(実刑)相当のケースでも,嘆願書があると執行猶予がつく可能性がありますし,もともと懲役刑(執行猶予相当)のケースでは,罰金刑が選択される可能性などが出てきます。




そこで,被害者の立場からすると,真に加害者を許しており,加害者の罪が軽くなっても構わないとお考えなのであれば嘆願書を書いてもかまいませんが,加害者を許すことができず,厳罰に処してほしいとお考えなのであれば,嘆願書を書くべきではありません。







◆加害者の刑事罰と民事賠償は無関係


それでは,嘆願書を書くことにより,被害者の加害者に対する民事賠償に影響はあるのでしょうか?

これについては,基本的にないと考えてよいです。
刑事裁判と民事賠償はまったくの別手続なので,加害者の刑が軽くなっても賠償額が低くなることはありません。

突然,加害者の弁護士から「嘆願書」が送られてきたら,嘆願書を書いても良いのか,わからなくなってしまうことがあるかもしれません。被害者側も,親身になって考えてくれる,交通事故問題に強い弁護士に相談してみることをお勧めします。




▼参考記事
・刑事裁判で意見を述べたい
・被害者は当事者ではない?
・交通事故賠償の主導権を被害者に取り戻す




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故の加害者が刑事裁判になりました。検察官から被害者参加の希望があるかと質問されました。これはどういうことなのでしょうか?

2017年10月30日
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交通事故の加害者が刑事裁判になりました。
検察官から被害者参加の希望があるかと質問されました。これはどういうことなのでしょうか?

一部の犯罪の被害者は,加害者の刑事裁判に参加できることがあります。
その制度のことを被害者参加制度といいます。
被害者参加制度では,被害者が加害者の刑事裁判に参加して意見を述べたり証人尋問や被告人尋問をしたりすることができます。




 被害者参加制度 



◆被害者参加制度とは


被害者参加制度とは,犯罪の被害者が加害者の刑事裁判に参加することができる制度です。

刑事裁判は,基本的に国家機関が被告人を裁く手続です。
民事的な問題を解決するための手続ではないので,基本的に被害者は関与しません。




ところが,被害者は加害者の裁判に関心を持っていることが多く,被害者保護の観点からも,被害者を蚊帳の外にしている刑事裁判の制度が問題視されるようになりました。

そこで,平成20年12月1日から,被害者参加制度が導入されて,一部の犯罪について,被害者が加害者の裁判に参加できるようになりました。







◆被害者参加制度が適用される犯罪


被害者参加制度が適用される犯罪は,以下のとおりです。

・殺人,傷害,傷害致死,危険運転致死傷,強盗致死傷など,故意に人を死傷させた犯罪
・強姦(強制性交等罪),強制わいせつなどの性犯罪
・逮捕・監禁の罪,誘拐や人身売買の犯罪
・過失運転致死傷罪,危険運転致死傷罪などの犯罪


そこで,交通事故を起こした加害者に過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪が適用されると,被害者は被害者参加をすることができるのです。







◆被害者参加するかどうかは選択出来る


被害者参加ができるケースでも,実際に加害者の刑事裁判に参加するかどうかは被害者の自由です。
関わりたくない場合には,無理に被害者参加する必要はありません。







◆被害者参加制度で被害者ができること


被害者参加制度では,被害者は以下のような行為をすることができます。


(1)在廷権
被害者には在廷権が認められますので,公判期日に出席できます。
傍聴席ではなく,当事者として検察官の隣の席に座ることが認められます。

(2)検察官に対する説明請求権
被害者は,検察官の権限行使に対して意見を言うことができますし,意見を実現できないとき,被害者は検察官に理由説明を要求することができます。

(3)証人尋問
被害者は,刑事裁判の情状証人に対し,自ら尋問を行うことができます。

(4)被告人質問
被告人本人に対し,情状や犯罪事実について,直接質問をすることが認められます。

(5)最終意見陳述(被害者論告)
被告人の罪や刑罰について意見を述べて,求刑することができます。








◆被害者参加制度で弁護士を利用できる


被害者が1人で被害者参加制度を利用することには不安を感じる方が多いです。
どのように進めて良いかわからないこともあるでしょう。

被害者参加制度では,被害者側も弁護士をつけることができます。
対応に迷ったときには,被害者支援に力を入れている弁護士に依頼することをお勧めします。




▼参考記事
・被害者参加人の代理人として,刑事裁判に参加
・被害者参加手続と交通事故について
・刑事裁判の被害者参加制度に関与し,民事の損害賠償請求の裁判をし,ご遺族に適正な賠償がなされた解決事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

父が交通事故に遭い死亡しました。父の相続人は子である私だけです。父の遺品を整理していましたら,父宛ての数千万円もの金額の請求書が見つかりました。 ですが,もう15年以上前に借り入れたもののようで,時効なのではないかと思います。初めから相続放棄すると賠償に影響が出るそうなので,消滅時効の通知を出してしまい,時効じゃないと分かったら相続放棄しようと思います。この方法で大丈夫ですか?

2017年10月26日
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父が交通事故に遭い死亡しました。父の相続人は子である私だけです。父の遺品を整理していましたら,父宛ての数千万円もの金額の請求書が見つかりました。

ですが,もう15年以上前に借り入れたもののようで,時効なのではないかと思います。初めから相続放棄すると賠償に影響が出るそうなので,消滅時効の通知を出してしまい,時効じゃないと分かったら相続放棄しようと思います。この方法で大丈夫ですか?




この方法は危険です。借金を相続しないことを確実にするためには,時効援用をする前に限定承認をしておくのが望ましいと考えます。




 法定単純承認と時効援用 



◆法定単純承認とは


相続放棄をすると,その人ははじめから相続人ではなかったことになるので,借金を相続する必要がなくなります。

ただ,相続放棄をすると権利も相続することができないので,父親の損害賠償請求権も相続することができません。

そこで,本件のように消滅時効を援用してから相続放棄をすることができるのかが問題です。

ここで問題になるのが「法定単純承認事由」です
法定単純承認事由とは,その事由があると当然に単純承認が成立してしまい,相続放棄ができなくなってしまうことです。

単純承認が成立すると,一切の条件をつけずにすべての権利義務を相続することになるので,借金も相続することになります。







◆法定単純承認が成立する場合


法定単純承認が成立するのは,以下のようなケースです。

(1)相続財産を処分した場合
相続財産を処分すると,法定単純承認が成立します。たとえば相続財産を壊したり売却したりした場合です。ただし,財産の価値を保全するための保存行為であれば,法定単純承認は成立しません。

したがって,消滅時効の援用が保存行為に当たるのであれば,御質問のような方法も視野に入ってきます。後でお書きします。

(2)背信行為をした場合
相続財産を隠したり,限定承認をするときに財産目録に虚偽の記載をしたりなどの背信的行為をした場合にも,法定単純承認が成立します。

(3)熟慮期間が経過した場合
熟慮期間の3か月が経過すると,相続を単純承認したものとみなされ,相続放棄や限定承認ができなくなります。







◆時効援用が財産の処分行為に該当するおそれがある


借金を相続したときに,消滅時効の援用をすると,それが「財産の処分行為」とみなされる可能性があります。
時効援用は相続を前提とする行為だからです。

そこで,時効援用通知を送って実は時効が成立していなかったことがわかったとしても,すでに法定単純承認が成立しており,相続放棄をすることが認められない可能性が高くなります。

一方,時効の援用は保存行為に当たるとする見解も存在します。
ただし,戦前の判例ですが,時効の援用は保存行為ではなく処分行為であるとするものもあります(大審院判決大正8年6月24日民録25輯1095頁)。




法律の世界では,このように幾つかの見解が存在するのは珍しいことではありません。その中で最高裁判所の判例が示されれば,それに従っていけばよいことになります。

「消滅時効の援用は保存行為に当たるか,したがって単純承認事由に当たらないか。」について最高裁判所が判断したことはないと思われます。

したがって,時効の援用が処分行為に当たるとされ,法定単純承認事由に当たる(もはや相続放棄も限定承認もできない。)と判断されるリスクを考慮する必要があると考えます。




本件では,まずは消滅時効を援用してから後に相続放棄をしようと思っても,認められないおそれがあるため,借金を確実に免れたいなら,初めから相続放棄をすべきです。ただし,この借金は時効になっている可能性もありますから,限定承認をしておくのが望ましいです。

相続放棄をしてしまうと,損害賠償請求権も相続できなくなることが確定してしまうからです。

もし,相続するか相続放棄するか限定承認するかどうか決められないなら,熟慮期間伸長の申立てをして3か月より長く延ばしてもらい,その間に相続放棄や限定承認するかどうかを決定しましょう。




▼参考記事
・故人に借金がある場合,相続手続きはどのようになりますか?
・死亡された方の解決事例
・死亡事故と弁護士




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故に遭い,家族が遷延性意識障害になりました。どうして何度も転院しなければならないのですか? また,転院先はどのようにして見つけたり選んだりするのが良いですか?

2017年10月25日
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交通事故に遭い,家族が遷延性意識障害になりました。どうして何度も転院しなければならないのですか?
また,転院先はどのようにして見つけたり選んだりするのが良いですか?


遷延性意識障害になると,症状改善のための治療ができないので寝たきりになることが多く,病院でもなすべき処置がなくなるので,転院を促されることがあります。

また,入院後3ヶ月が経過すると保険の点数が減ってしまうため,転院を促されます。良い転院先を見つけるには,弁護士に相談したりソーシャルワーカーに相談したりすると良いでしょう。




 遷延性意識障害:転院 



◆病院が転院を促してくる理由



交通事故で被害者が遷延性意識障害になったら,入院治療するのが通常です。

ところが,入院から3ヶ月くらい経とうというころ,病院側から転院を促されることが多いです。被害者の家族が次の病院を探しても,3ヶ月くらい経ったらまた転院を促されることが多いです。

このように遷延性意識障害の患者が何度も転院を促されるのは,どうしてなのでしょうか?





まずは,病院に入院していても,なすべき処置がなくなることが問題です。

遷延性意識障害になると,寝たきりの状態になって回復する見込みが乏しくなってしまいます。特に症状固定をすると,あとは生命維持だけが目的となります。すると,リハビリ型ではない病院の場合,対応していないからという理由で転院を促されます。




次に,保険の点数の問題があります。

患者が入院して3ヶ月(90日)が経過すると,保険の点数が下がってしまうのです。3ヶ月を超えて同じ患者を受け入れていると病院の収入が下がります。そこで,3ヶ月を過ぎた頃に,転院を促される例が多いです。次の病院に行っても,やはり3ヶ月が経とうという頃に転院を促されることになります。


このように,病院を転々とする遷延性意識障害の患者やご家族の方はとてもたくさんおられます。







◆良い転院先の探し方


それでは,3ヶ月での転院を迫らず,長期間患者を診てくれる理解のある病院はないのでしょうか?

そういった病院は,あります。
ただ,探すのは大変です。探しても,順番待ちだったりすることもあります。

転院先を探すためには,いくつかの方法が考えられます。




まずは,交通事故問題に強い弁護士に相談をすることが役立ちます。弁護士は,多くの遷延性意識障害の案件を扱っているので,そうした患者を受け入れてくれる病院についても詳しくなっているからです。




また,自治体の保健センターや福祉課などに相談に行くこともできます。ソーシャルワーカーや,今入院している病院の医師に相談して,情報を聞くことも考えられます。ソーシャルワーカーは地域医療との連携関係を持っているので,市内や都道府県内の病院に転院先がないか,調べてくれることがあります。





さらに,遷延性意識障害の家族の会などで,他の患者の家族に相談してみるのも1つの方法です。
今まで実際に転院を繰り返した経験があることが多いので,確実性の高い情報を得ることを期待できます。




▼参考記事
・病院選びはどのようにしたらよいですか。
・交通事故にあってしまった場合,どこの病院へ行けばよいのでしょうか?
・遷延性意識障害になってしまった方の解決事例

(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故の間接損害,反射損害とは何ですか?

2017年10月24日
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交通事故の間接損害,反射損害とは何ですか?




間接損害とは,事故の直接の被害者ではない者に発生した損害のことです。
間接損害は,固有損害と反射損害に大きく分けられます。
固有損害は,たとえば,会社の代表取締役が被害者となった場合に会社が被る損失などが典型例となります。
反射損害とは,交通事故の被害に遭った役員や従業員が働けなかった期間,会社が給料等を支払ったため企業に発生した損害です。





 間接損害・反射損害 



◆間接損害とは


交通事故が起こったとき,損害を受けるのは直接の被害者だけではありません。

たとえば,会社の代表者や役員などが交通事故に遭って仕事ができなかったために,契約締結の機会などを逃して会社に減収が発生することなどもあります。




このように,直接の被害者ではないものに発生する損害のことを,間接損害といいます。







◆反射損害とは


代表者や役員,従業員などが交通事故に遭ったときであっても,会社としてはそれらの被害者に対し,給料や報酬を支払う義務を負います。しかし,実際には被害者は会社のために働いていません。
そこで,このような給料や報酬等の支払自体を損害と考えます。これが,反射損害です。

反射損害は,間接損害の1種です。

ただ,間接損害という場合には,「被害があったことによる会社の利益減少分」も含むので(これは反射損害には含まれない),反射損害より間接損害の方が広い概念となります。

反射損害に含まれない「会社の利益減少分」のことを,固有損害ともいいます。







◆間接損害や反射損害は,どこまで認められるのか?


それでは,企業に間接損害や反射損害が発生した場合,相手に請求することができるのでしょうか?

この点,反射損害については,被害者本人に休業の必要性が肯定できる限り,原則的に認められるものと考えられています。これに対し,間接損害の中でも固有損害については,簡単には認められません。

固有損害の請求が認められるかどうかについては,被害者と会社が経済的に一体であるかどうかという観点から判断されます。経済的に一体の場合には,被害者個人の損害と会社に発生した損害を同視しやすいからです。

経済的一体性があるかどうかについては,会社の資本金額や売上高,従業員数等の企業規模,被害者の地位や業務内容,権限や会社財産と個人財産の関係,株主総会・取締役会の開催状況などを総合的に考慮して判断します。




たとえば,法人とはいっても1人会社で,社長の個人営業と変わらない場合などには間接損害が認められやすいです。反対に,被害者が会社の単なる一従業員であった場合には,基本的に間接損害(固有損害)は認められにくくなります。




以上のように,交通事故の損害は,直接の被害者以外に発生することもあります。
弁護士のアドバイスを求めるのも良いと思います。





▼参考記事
・妥協しない〜間接損害〜
・弁護士は本音で本当のことを書いた事務所の選び方
・当事務所の解決事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

アディーレ業務停止までの経緯と今後

2017年10月16日
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アディーレ業務停止までの経緯と今後

2017年10月11日,アディーレ法律事務所が業務停止2ヵ月の懲戒処分となりました。今回の業務停止までの経緯や過去の懲戒処分をまとめました。


(1)2017年10月11日から2か月の業務停止の懲戒処分(2017年10月11日)。
過去には,景品表示法違反(有利誤認)に当たるとして措置命令(2016年2月16日)。弁護士会の戒告処分(2010年10月5日)もあり。

(2)今後,日弁連への審査請求の申立,裁判所への訴訟提起等で処分内容について争われる。


(3)お客様への影響を抑える努力がアディーレ,弁護士会共に必要不可欠。





■アディーレに依頼済のお客様が緊急に確認すべき事項

 アディーレ業務停止までの経緯と今後 


(1) 2010年10月5日

東京弁護士会から戒告の懲戒処分がなされました。法人破産の案件に関する不適切な処理がその理由です。懲戒理由の詳細は自由と正義2011年1月号に掲載されています。



(2) 2016年2月16日

消費者庁から景品表示法違反(有利誤認)に当たるとして措置命令を受けました。内容は,過払い金返還請求の着手金を今だけ無料や割引にすると期間限定のキャンペーンのように繰り返し宣伝し,実際は5年近く続けていたという案件です。

消費者庁HP
http://www.caa.go.jp/representation/pdf/160216premiums_1.pdf



(3) 2016年12月から2017年2月ころ

東京弁護士会,札幌弁護士会,神奈川県弁護士会で懲戒審査に付す旨の決定がなされました。他方,懲戒しないという判断をした弁護士会も多数ありました。



(4) 2017年10月11日

東京弁護士会から業務停止2ヵ月の懲戒処分がなされました。元代表社員の石丸幸人会員は業務停止3ヵ月となりました。消費者庁から景品表示法の措置命令を受けたこと,日本弁護士連合会の弁護士等の業務広告に関する規定にも抵触するというのが理由です。

東京弁護士会HP
https://www.toben.or.jp/message/seimei/post-481.html



今後,上記の処分が維持されるか変更になるかは,日本弁護士連合会への審査請求,効力停止申立,裁判所での訴訟などで争われることとなるかと思われます。







◆お客様への影響を抑える努力が必要


2017年10月11日から2か月間,アディーレ法律事務所は業務停止となりました。

そのため,現在,アディーレに依頼している多数のお客様は非常に困った状態となってしまっています。というのも,業務停止中は一切の業務が原則できなくなってしまいますので,お客様の側からすると,「ある日突然弁護士と連絡がとれない」「ある日突然法律事務所と連絡がとれない」という状況になってしまうからです。




(1)各弁護士会で臨時電話相談窓口を設置
東京弁護士会では臨時電話相談窓口を設置しています。
電話番号は03−6257−1007です。受付時間は午前9時から午後5時までで土日祝日は除きます。

また,千葉県弁護士会でも相談窓口を設置する見込みです(10月14日時点での情報)





(2)各法律事務所でも案件を引き継ぎ

各法律事務所でも,困っているお客様のために案件を引き継ぐでしょう。

ただし,事案の現在の状況がどのような状況なのかなど不明な点があると案件の引継ぎがしにくいことがあるかもしれません。特に,期間制限(時効期間,控訴期間,上告期間,期限の利益喪失)には要注意です。

また,裁判事案の場合,期日に出頭しないと不利な判断をされてしまう可能性もありますので,その点も注意が必要です。





(3)弁護士費用について

アディーレに既に着手金を支払っている場合,その着手金の返還を受けられるのかどうかという点は課題が残ります。





(4)その他

いずれにしても,アディーレに依頼したお客様,現在依頼中のお客様が一番の被害者です。

アディーレも弁護士会も各弁護士も,さらなる被害拡大につながらないような配慮をすることによって,業界に対する信頼を維持・確保することに努めるべきだと考えます。




注 今回の業務停止2ヵ月の懲戒処分は弁護士法人に対するものです。そのため,仮に,懲戒処分を受けていない個人弁護士とお客様との間にも委任契約が存在する場合には,個人弁護士とお客様との間の委任契約は法人の懲戒処分によりどのような扱いとなるか,また,どのような扱いが妥当かという点は今後の議論を待つ必要があるかと思います。



▼参考記事
・アディーレ業務停止までの経緯と今後
・アディーレに依頼済のお客様が緊急に確認すべき事項




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)

アディーレに依頼済のお客様が緊急に確認すべき事項

2017年10月16日
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アディーレに依頼済のお客様が緊急に確認すべき事項 

2017年10月11日,アディーレ法律事務所が業務停止2ヵ月の懲戒処分となりました。依頼済のお客様のうち,特に緊急ですべき行動をまとめました。

1 消滅時効期間に注意!
2 裁判の不服申立期間に注意!
3 分割払いの期限の利益喪失に注意!
4 被告事件の裁判の第1回に注意!





■アディーレ業務停止までの経緯と今後

 アディーレに依頼済のお客様:確認すべき事項 




◆時効期限の確認


法律上請求できる権利には消滅時効という制度があります。

一定期間が経過してしまうと権利を主張できなくなってしまいます。現在は時効ではないものの,業務停止2ヵ月の間に期間が経過してしまう可能性があります。

時効期限は微妙な問題が多いので専門家に相談した方がよいです。




以下の権利などは特に要注意です。

(1)過払い金返還請求権の消滅時効 
 一般には最終取引日から10年など

(2)交通事故の加害者への損害賠償請求権(任意保険会社への請求権)の消滅時効
 事故日から3年,症状固定日から3年など

(3)交通事故の自賠責保険への請求権の消滅時効
 事故日から3年,症状固定時から3年など

(4)残業代請求の消滅時効
 各支払日から2年など

(5)その他
 権利の種類に応じて1年,2年,3年,5年などの期間があります。また,期限内に請求書を送付済であったとしても,請求書が相手に届いた後6ヵ月を経過するとやはり権利の全部又は一部が時効となってしまうということもありますので,要注意です。





◆裁判の不服申し立て期間の確認


裁判で判決が出た事案の場合,判決文を受領してから2週間経過すると不服申立ができなくなってしまいます。

アディーレに判決文が届いている場合,お客様が判決文を受領していなくても2週間の計算がスタートしてしまいますので要注意です。

不服申し立て(控訴・上告)をするかどうかは専門家に相談して早急に決めた方がよいです。







◆分割払いの期限の利益喪失に注意


現在,アディーレで任意整理和解済の場合,分割払いの弁済代行をアディーレが行っているお客様がいるかと思います。

分割払いについて1〜2回支払いを怠ると期限の利益を喪失して一括払いとなってしまいます。

そのため,分割払いの支払い状況がどのようになっているか,詳細がわからない場合には各債権者に自ら問い合わせるなどの対応が必要かもしれません。







◆被告事件の裁判の第1回に注意


裁判を起こされた方の場合,被告事件の第1回期日に出頭せず,かつ,書面の提出もしない場合,自動的に原告の主張通りの判決がなされてしまうことがあります。

そのため,被告事件を依頼している方で第1回期日前の方は,裁判所に問い合わせをするなどして現在の状況を確認した方がよいです。




▼参考記事
・アディーレに依頼済のお客様が緊急に確認すべき事項
・アディーレ業務停止までの経緯と今後




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)

交通事故の相手方が,対物全損時修理差額費用特約に加入していました。この特約の内容は何ですか?

2017年09月20日
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交通事故の相手方が,対物全損時修理差額費用特約に加入していました。この特約の内容は何ですか?

対物全損時修理差額費用特約は,相手の車の修理費が相手の車の時価を超えるとき,50万円を限度として修理費の補償を相手方が受けることができる特約です。

相手の車が古い場合や,特殊な車両で修理費用が高額なケースなどで役に立ちます。




 対物全損時修理差額費用特約 



◆対物全損時修理費用特約とは


「対物全損時修理費用特約」と聞いたとき,あまり耳なじみがないと感じられるかもしれません。

これは,交通事故の相手の車の修理費用が車の時価額を超えるとき,その修理費用を補償してもらえる保険です。


相手の車の修理費用は,基本的には対物賠償責任保険から支払われます。
そうだとすると,これを無制限にしておいたら,対物全損時修理費用特約をつけておく必要はないとも考えられます。

しかし,対物賠償責任保険は,法律上の支払義務がある範囲までしか補償されません。


修理費が車両時価を超えるとき,対物賠償責任保険からは車両時価までの支払しかされません。そのため,相手の車が古かったり特殊な仕様であったりして,修理費用が時価を超える場合には経済的全損の扱いとなって,修理費用は認められなくなります。





このとき,加害者が対物全損時修理費用特約に加入していたら,被害者は,車両時価額に加え,実際の修理費用の差額を支払ってもらうことができます。

この場合、修理費と車両時価との差額に加害者の過失割合を乗じた額と限度額のいずれかの低いほうの金額が支払われます。

ただし,事故後一定の期間内に実際に修理をしなければならないなどの必要な条件があることがあるので,注意が必要です。







◆対物全損時修理費用特約の補償範囲


対物全損時修理費用特約をつけていても,無制限に差額が認められるものではありません。
多くの場合,限度額が30万〜50万円となります。

よって,対物全損時修理費用特約をつけていても,必ずしも修理代金の全額が補償されるわけではなく,加害者が相手方に限度額を超えて相手に支払いをする場合には,自己負担となります。

一般に,事故で自動車が損傷したとき,修理費用が車両時価を上回る場合は,被害者が納得しにくいため,トラブルが発生することが多いです。




加害者側の視点からみると,この特約があれば,被害者との示談交渉中,「加害者はここまで譲る」というカード(交渉材料)を用意することができて,円満解決に持ち込みやすくなります。

また,刑事手続の関係で早期に示談を成立させたいときは,法律的に差額の支払義務がなくても,加害者が修理費用を全額負担すると話がしやすいです。




このようなとき,対物全損時修理差額費用特約があると,その特約の範囲内ではありますが,差額を自己負担しなくて良いので助かります。対物全損時修理費用特約をつけても,年間の保険料は数百円しか上がりません。

特に頻繁に運転をする方の場合,備えとして加入しておくのが良いと考えています。




▼参考記事
・交通事故と物損Q&A
・損害賠償額の基準に注意!
・当事務所の交通事故解決事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)
プロフィール
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地域最大級の弁護士14名が所属しております。事務所名の「よつば」は事務所に関わる人が皆幸せになるようにとの思いから名付けました。お気軽にご相談ください。
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