カテゴリー: 交通事故の損害賠償基準その他

破産手続準備中に交通事故に遭いました。破産しても,賠償してもらうことはできますか?

2017年10月27日
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破産手続準備中に交通事故に遭いました。破産しても,賠償してもらうことはできますか?

破産してしまったら,賠償をしてもらうことはできません。




 破産手続き中の交通事故 



◆破産の効果


借金がかさんで返済が苦しい場合には,自己破産の手続をして免責が許可されれば借金の支払いをしなくてよくなります。


基本的にすべての債務の支払義務がなくなる
からです。ただし,破産をすると,財産もなくなってしまうことが問題です。


すべての財産がなくなるわけではありませんが,生活に最低限必要な財産以外は失います。

具体的には,個別の財産項目で20万円を超える財産があると,その財産は現金に換価されて債権者に配当されてしまいます。交通事故による損害賠償請求権などの権利も同様です。

この場合,管財人が損害賠償請求権を行使して,回収した金額を債権者に配当することになります。







◆賠償金の金額と借金の金額を比較して対応を決定する


それでは,破産手続準備中に交通事故に遭った場合には,どのように対応したら良いのでしょうか?

この場合には,損害賠償金額と借金の金額の兼ね合いで,対応を決めると良いです。




【損害賠償金額が20万円以下の場合】
破産をしても影響はなく,全額受け取ることができます。
この場合,管財人も選任されないので,簡単な同時廃止の手続で破産することもできます。




【借金額が損害賠償金額より明らかに大きい場合】
自己破産すると良いです。
この場合,破産をせずに,自力で損害賠償金を回収しても,結局は借金支払いに消えてしまうので,自己破産によって清算されてしまっても損にはならないからです。




【損害賠償金額が借金額より明らかに大きい場合】
自己破産する必要がありません。
この場合,自己破産をしなくても,回収した賠償金によって借金を支払うことができますし,返済して残った分は自分の手元に残すことができるからです。




このように,自己破産するかどうか迷ったら,損害賠償金額と借金額の大きさを比較して対応を決定すると良いでしょう。(交通事故の点を除けば,管財人が選任される事案ではないという前提でお書きしました。)







◆交通事故を隠して破産してはいけない


自己破産をすると損害賠償ができなくなるので,自己破産するときに交通事故のことを隠して手続しようとする人がいます。

しかし,このようなことは,絶対にしてはいけません。
損害賠償請求権も財産なので,交通事故を隠して破産することは財産隠しに該当します。

自己破産では,財産隠しをすると,免責不許可事由に該当して,免責を受けられなくなってしまう恐れがあります。そうなると,借金を免除してもらうことができなくなってしまい,自己破産をする意味がなくなってしまうからです。




破産手続準備中に交通事故に遭ったときには,自己破産を続けるべきか賠償金回収手続を進めるべきか,迷ってしまうことが多いです。必ず弁護士に相談して下さい。




▼参考記事
・当事務所の交通事故解決事例
・2016年ご相談事例
・他事務所の引継案件・セカンドオピニオン無料相談実施中




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故で自宅介護を前提とした損害賠償が認められないのは,どのような場合ですか?

2017年10月19日
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交通事故で自宅介護を前提とした損害賠償が認められないのは,どのような場合ですか?

施設に入所しているほうが適切な処置を受けられるケース,家に問題があるケース,家族による介護が期待できないケース,病院と連携できていないケースなどです。




 損害賠償:自宅介護 



◆自宅介護と施設介護


交通事故が原因で重大な後遺障害が残った場合,将来にわたって介護が必要になることがあります。
たとえば遷延性意識障害や全身麻痺が残ったような場合です。

このように,全面的な介護が必要になったとき,被害者のその後の生活を,自宅で行うのか施設で行うのかを選択しなければなりません。

一般的に,自宅で介護をする方が,賠償金の金額は高額になります。
この場合,自宅改造費用なども認められるので,1億円を超えることも多くなってきます。







◆自宅介護が認められないケース


ただ,介護が必要になったとしても,自宅介護(を前提とした賠償)が認められるとは限りません。
保険会社だけでなく,裁判をしたときに裁判所から自宅介護(を前提とした賠償)を否定されることもあります。

自宅介護が争われるのは,被害者が現在は施設入所中で,ゆくゆくは施設を退所して在宅介護に移行する予定であると被害者側が主張しているときが多いです。




自宅介護が認められないのは,以下のようなケースです。

(1)施設に入所しているほうが適切なケース

自宅よりも施設にいるほうが,適切な処置や治療を受けられる場合が挙げられます。

被害者の状態によっては,急に危篤状態に陥ったり肺炎が起きる危険性が高かったりすることもあります。こういった問題が起こったとき,病院でないとすぐに対処することができません。

そこで,施設に入所している方が適切であり,自宅介護(を前提とした賠償)が認められにくくなります。




(2)家に問題があるケース

次に,家に問題があるケースもあります。

たとえば,賃貸住宅に居住している場合には,自宅を介護に適した形に改造することは難しいです。
自宅であっても,たとえばマンションの一室に住んでいる場合には,大規模な改装をすることは難しいでしょう。

また,家が古すぎて,改造のために費用がかかりすぎる場合もあります。このような場合には,自宅介護が適していないと判断されます。




(3)家族による適切な介護が期待できないケース

介護をする家族に問題があるケースも考えられます。

介護は,「やる気」だけで行えるものではありません。重労働ですし,相応の技術や知識を備えることも必要です。また,職業介護人を雇うとしても,家族自身が亡くなってしまっては介護をする人がいなくなってしまいます。

たとえば家族が高齢の親一人しかいない場合などには,親自身が介護することが難しいと判断されることがありますし,また親が亡くなった後,誰が介護をするのかという問題があります。家族に介護への理解が足りない場合などにも,自宅介護(を前提とした賠償)は認められにくいです。




(4)病院と連携できていないケース

病院との連携が取れていないケースでも,自宅介護を否定されやすいです。

定期的に往診に来てくれる病院や,緊急時にすぐに受け入れてくれる入院先が確保されないと,何かあったときに不安なので,自宅介護を認めてもらいにくいです。




▼参考記事
・高次脳機能障害で将来介護費の金額はいくら認められますか?
・将来介護費について
・交通事故で遷延性意識障害になり,裁判で将来介護費について請求を行い解決した事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故に遭いました。現在治療中です。物損については既に示談済みで,過失割合1対9で示談しました。過失割合について合意したのですから,人身損害についても1対9になることは既定と考えて良いのでしょうか?

2017年09月25日
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交通事故に遭いました。現在治療中です。物損については既に示談済みで,過失割合1対9で示談しました。

過失割合について合意したのですから,人身損害についても1対9になることは既定と考えて良いのでしょうか?




この場合,人身損害については1対9とは異なる過失割合が認定される可能性があります。




 過失割合 (物損事故と人身事故) 



◆物損部分と人身損害は,別に示談することが多い



交通事故で被害に遭ったら相手の保険会社に対して賠償金の請求を行いますが,物損と人身損害が発生していたら,その両方を支払ってもらう必要があります。

このとき,物損と人損については別々に示談を行うことが多く,物損に関する示談交渉が先行することが多いです。示談書も別に取り交わします。

ですので,通常は先に物損の示談を済ませて,後に症状固定となった後で人身損害についての示談交渉を開始します。




物損の示談と人身損害の示談は基本的に別の話合いなので,人身損害の示談における過失割合は,物損部分での示談内容に拘束されることはありません。

実際に,物損の示談時には,相手の保険会社が被害者側の過失割合を小さくしてくれても,人身損害の示談交渉をするときには,それより大きな過失割合を主張されてしまうケースはよくあります。

ただ,物損時には被害者対加害者が1対9だったものが,人損時には4対6になるなどの極端な違いが発生することは通常ありません。




物損の示談をするときにも,人身損害の示談をする場合に適用されるであろう割合を予想して,それと似通った数値を適用しますし,物損時の過失割合と人身損害時の過失割合が一致することも,もちろんありえることです。







◆保険会社が物損の過失割合を低くする理由


それでは,保険会社はどうして物損時の示談交渉をするとき,被害者の過失割合を小さくすることがあるのでしょうか?

1つには,物損の金額は人身損害に比べて少額になることが多いためです。もともとの金額が小さいので,被害者の過失割合を小さくしても,保険会社が負担する金額は大きく変化しません。

また,被害者の過失割合を小さくすると,被害者が納得して示談をしてくれやすいので,示談交渉にかける労力やコストを抑えることも可能です。




保険会社にしてみると,物損では被害者の過失割合を小さくして早期に示談を成立させ,後に高額な人身損害部分についての示談をするときには,被害者の過失割合を大きく主張して支払い額を減らすことに,合理性があるのです。







◆物損の示談における過失割合に拘束されるケース


以上に対し,物損の示談における過失割合が,人身損害の示談の過失割合を拘束する場合もあります。

それは,物損の示談書や免責証書において,人身損害部分も含めた過失割合を確認する条項が入っている場合です。

ただ,通常こうした条項が入っていることは少ないので,おそらく本件でも,人身損害の解決の際に過失割合が物損示談成立時の1対9の過失割合に拘束されることはないでしょう。




今回のご相談のように,物損の示談時には1割にしてもらえても,人身損害の示談時にはより大きな過失割合を主張されてしまう可能性があります。

逆に,物損の示談を成立させたときにはスピードを優先させたため,詳細な検討がなされずに過失割合が決められており,一方,人身損害の解決時には過失割合を詳細に検討した結果,物損解決時に合意した過失割合より被害者に有利になるという例も珍しくはありません。




対応に困ったときや納得できない場合には、弁護士に相談すると良いでしょう。




▼参考記事
・物損の示談において気を付けるべきことは何ですか?
・ポイントを見極める!その3 示談交渉のポイント
・過失割合が争点となり,早期に証拠提出し交渉した結果,賠償金0円提示から240万円を獲得した解決事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

将来介護費について教えてください。自宅介護と施設介護ではどのように異なりますか? 職業介護費用が認められる場合は,どのようなときですか?

2017年09月14日
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将来介護費について教えてください。自宅介護と施設介護ではどのように異なりますか? 職業介護費用が認められる場合は,どのようなときですか?

自宅介護の場合,自宅改装費用なども認められるため,施設介護よりも賠償金が高額になることが普通ですが,家族に介護の負担がかかります。

職業介護費用が認められるのは,医師の指示がある場合や,症状の内容程度からして特に必要があるケースです。




 将来介護費 



◆将来介護費とは


将来介護費とは,交通事故で被害者に重大な後遺障害が残り,日常で必要な動作をするために介助が必要になったときの将来の介護費用です。

たとえば,交通事故の後遺障害で遷延性意識障害になってしまった場合や身体に麻痺が残った場合,重度の高次脳機能障害になった場合などに認められます。




将来介護費用が認められるのは,原則として後遺障害の中でも,要介護の1級と2級のケースです。

ただし1級や2級に至らなくても,重度の高次脳機能障害が残ったときに認められるケースも珍しくはないです。







◆自宅介護と施設介護


将来介護費用を計算するときには,どのような介護を受けるのかが問題となります。

まず,自宅介護か施設介護かを決めなければなりません。

自宅介護とは,被害者を自宅で生活させて,近親者が自宅で介護する方法です。
これに対し,施設介護とは,被害者を施設入所させて,介護を施設に任せる方法です。




自宅介護の場合,自宅をバリアフリーにするための自宅改装費用や通院用の介護車両,介護用のベッドなどの介護用品などの費用も支払われるため,施設介護よりも将来介護費用が高額になります。ただ,自宅介護にすると近親者の負担は非常に重くなります。

これに対し,施設介護の場合には,金額的には自宅介護よりは少なくなることが多いですが,近親者の負担は軽いです。







◆職業介護費用と近親者の介護


自宅介護を行う場合,職業介護人を雇うのか,近親者が介護をするのかも問題となります。

職業介護人を雇う場合,相手に対して実費を請求できるので,1日あたり1万〜3万円程度の費用が認められます。これに対し,近親者が介護をする場合には,1日あたり8000円となり,金額が下がります。

また,介護を行うとき,できれば近親者がすることが望ましいという考えがあるため,どのような場合でも職業介護人による介護が認められるわけではありません。

自宅介護で職業介護人が必要であると判断されるのは,たとえば医師の指示がある場合や症状の程度が重くて(24時間監視が必要なケースなど)家族が対応できない場合,家族が仕事をしていて近親者による介護ができない場合,日中に介護できない場合などです。




このように,将来介護費用を請求するときには,「どのような介護体制を敷くのか」から検討しなければなりません。

自分たちでは適切に判断できないときには、弁護士に相談することをおすすめします。




▼参考記事
・将来の介護費用について
・将来介護費について(裁判基準)
・将来介護費について主張・立証して解決した交通事故事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

夫が交通事故に遭いました。ひとまず命は取り留めましたが,自分で考えて判断することはできません。30年連れ添ってきましたが,実は戸籍の届出をしないままでした。              子はなく,夫の両親も祖父母も既に他界しています。夫にはきょうだいやいとこもいるようですが,私は面識がなく,夫とも長年連絡を取ったことはないと思います。これから私が連絡を取るのは気が引けてしまいます。賠償についてはどうなりますか。

2017年09月12日
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夫が交通事故に遭いました。ひとまず命は取り留めましたが,自分で考えて判断することはできません。30年連れ添ってきましたが,実は戸籍の届出をしないままでした。

子はなく,夫の両親も祖父母も既に他界しています。夫にはきょうだいやいとこもいるようですが,私は面識がなく,夫とも長年連絡を取ったことはないと思います。これから私が連絡を取るのは気が引けてしまいます。賠償についてはどうなりますか。




この場合,成年後見人の選任申立てをして,賠償請求を進めることをお勧めします。




 成年後見人制度 



◆判断能力がないとき,本人が請求することができない


ご相談のケースのように,交通事故が起こると,被害者が意識不明になってしまったり,自分で考えて判断をすることができなくなったりすることがあります。

交通事故の損害賠償請求は,原則的に被害者ご本人が行うべきものです(被害者が死亡したときは別です。)。




上記のように意識不明のときや判断能力が失われたときは,被害者が自分で損害賠償請求を行うことができません。

かといって,内縁の配偶者には示談交渉の代理権はありませんし,遠方の兄弟,従姉妹が見つかったとしてもやはり代理権があるものではないので,このままでは賠償金の請求ができなくなってしまいます。







◆成年後見人とは



成年後見人とは,判断能力が低下した(失われた)本人の代わりに財産管理をしたり,身上監護をしたりする職務を行う人です。認知症の高齢者のケースなどでよく利用されますが,それ以外でも本人の判断能力がなければ利用可能です。

成年後見人には,損害賠償請求権の行使についても本人の代理権が認められるので,選任したら本人に代わって成年後見人が損害賠償の請求を行い,賠償金の支払を受けることができます。

本件のように,本人に判断能力が失われたり低下したりして,適切に自分の財産管理や権利の行使ができなくなった場合「成年後見人制度」を活用する方法が効果的です。







◆成年後見人の申立て方法


成年後見人を選任するためには,家庭裁判所に「成年後見人の選任申立て」をしなければいけません。


手続としては,「成年後見人選任の申立書」を作成し,病院の診断書や戸籍謄本などの必要書類を揃えて,申立て費用の800円分の収入印紙を添えて家庭裁判所に提出したら,その後家庭裁判所で調査が行われて,要件が認められたら成年後見人を選任してもらうことができます。

申立時に候補者を立てることができるので,もし夫の親族が了承をするのであれば,内縁の配偶者自身が自分を候補者として申立てをすることも可能です。候補者がいない場合や成年後見人の成り手について親族間で争いがある場合には,弁護士や司法書士などの専門職の人の中から後見人が選ばれることもあります。




ご相談者の場合にも,まずはお住まいの管轄の家庭裁判所宛に,成年後見人選任申立てをすることから始めることになります。成年後見人の役割は交通事故に関するものだけではないので,弁護士に相談してみてください。




▼参考記事
・成年後見人に関してかかった費用は損害として認められますか?
・ご家族が成年後見人となり,成年後見人からの依頼を受けて解決した事例
・高次機能障害の場合,成年後見申立が必要ですか?




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故に遭い,保険金の手続きをしたいのですが,加害者の任意保険と,私の人身傷害保険の関係はどうなりますか?

2017年09月08日
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交通事故に遭い,保険金の手続きをしたいのですが,加害者の任意保険と,私の人身傷害保険の関係はどうなりますか?

人身傷害保険から先に支払を受けた場合には,その分相手に請求できる損害賠償金から減額されます。ただし,その場合,まずは被害者の過失割合に相当する分に充当されるため,被害者の損害をすべて回収できます。

一方,加害者の任意保険から先に支払を受けたときは,被害者が受けとる人身傷害保険金が減少することがあります。





  人身傷害保険と相手の任意保険から受ける金額の関係



◆損益相殺とは


交通事故には,損益相殺という考え方があります。

損益相殺とは,交通事故を原因として何らかの利益を受けた場合,その利益分を相手に請求できる賠償金の金額から差し引くことです。




たとえば,自賠責保険や無保険車傷害保険,労災保険や政府保障事業によるてん補金などは,損益相殺の対象となり,これらから受領した金銭があれば,その分相手に請求できる金額が減ります。

ただし,どの程度減少するかの考え方は複雑なので,きちんと専門家にチェックしてもらうのが良いです。







◆人身傷害保険とは


では,人身傷害保険とは,どのようなものかを確認しておきましょう。

これは,自動車保険の特約の1つです。

交通事故で人身損害が発生したときに,保険契約者の治療費や逸失利益,精神的損害(慰謝料)などについて計算をして,算出された損害額についての支払いを受けることができます。

契約者の過失の有無を問わず,契約者の受け取る保険金は同一です。ただし,その金額は,保険契約の約款に定められた金額になります。







◆人身傷害保険を先に受けとった場合の問題点


人身傷害保険についても損益相殺の対象になります。
これを先に受けとったら,どのような計算方法によって相手の任意保険から支払われる賠償金が減額されるのかが問題です。これについては,つい最近までいくつかの考え方が対立していました。

代表的なものは,絶対説と訴訟基準差額説です。

絶対説は,過失相殺を行った後の賠償金額から人身傷害保険の金額を差し引きます。

これに対し,訴訟基準差額説の場合,過失相殺前の賠償金額に人身傷害保険の金額を充当します。そこで,被害者は自分に過失があっても,過失相殺された以上の金額を人身傷害保険と相手の保険会社から受けとることができて,被害者が受けとる金額は高額になります。




たとえば,総損害額が4000万円,人身傷害保険金が1000万円、被害者の過失割合が10%のケース(400万円)を見てみましょう。この場合,被害者が相手の保険会社に請求できる金額は3600万円です。

絶対説の場合,人身傷害保険金が3600万円から引かれるので,被害者が相手に請求できる金額は2600万円となります。被害者が受けとる合計金額は3600万円(1000万円+2600万円)です。人身傷害保険に加入した意味はほとんどありません。

これに対し,訴訟基準差額説の場合,人身傷害保険金が4000万円から引かれるので,被害者が相手に請求できる金額は3000万円となります。被害者が受けとる金額の合計額は4000万円(1000万円+3000万円)です。

このように,訴訟基準差額説なら,損益相殺が行われてもなお,全ての損害を回収することができます。







◆加害者の任意保険から先に受けとった場合の問題点


同じように,総損害額が4000万円,人身傷害保険金が1000万円,被害者の過失割合が10%のケース(400万円)を想定します。加害車の任意保険からは3600万円を回収した後,過失分の400万円を人身傷害保険から回収できるとも考えられます。


ところが,この場合,人身傷害保険に対して保険金請求をすると,加害者の任意保険から受けた賠償額は,差し引かれてしまいます。

人身傷害保険金1000万円から,加害者の任意保険からの支払額である3600万円が差し引かれます。マイナスです。つまり,人身傷害保険金からは1円も支払われません。

しかし,加害者の任意保険から3600万円を受け取ったのが示談交渉によってではなく,判決によって先に受け取ったのであれば,人身傷害保険金額は過失分の400万円となります。この場合は,被害者は損害をすべて回収することができたことになります。




人身傷害保険と相手の任意保険から受ける金額の関係については,非常に理解しにくいところです。保険会社担当者も,きちんと理解しているとは限りません。人身傷害保険会社の約款によって異なることもあります。

専門家の力を借りて進めるのが一番良いです。




▼参考記事
・人身傷害保険を利用し,損害金を増額して解決した事例
・人身傷害保険について
・弁護士 川ア 翔の交通事故に対するスタンス




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故で通院中ですが,症状固定とはなんですか?

2017年09月04日
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交通事故で通院中ですが,症状固定とはなんですか?

症状固定とは,交通事故のけがの治療が終了し,それ以上けがの状態の改善が期待できない状態のことです。症状固定時は,交通事故の損害賠償金計算の基準になる重要な時点です。




 症状固定 



◆症状固定とは


症状固定とは,それ以上治療を続けてもけがの状態の改善が期待できなくなった状態のことです。

交通事故後の入通院による治療は,症状固定時まで行われます。

交通事故の入通院治療は,症状固定するまで継続する必要があります。







◆症状固定は誰が決めるのか


症状固定したかどうかについては,誰がどのようにして決めるのでしょうか?

これについては,基本的には,病院の担当医師が,医学的な観点から決定します。

交通事故後,通院治療が長引いてくると,相手の保険会社から「そろそろ症状固定です」などと言われて,通院をやめるように言われることがありますが,相手の保険会社が症状固定したかどうかを判断する権限を持つわけではないので,相手からこのようなことを言われても,通院をやめる必要はありません。

症状固定前に通院をやめると,適切な治療を受けられなくなるだけでなく,相手から支払を受けられる賠償金の金額が大きく減って,賠償面でも不利益を受ける可能性が高いです。

仮に通院をやめるとしても,必ず病院の医師に「症状固定したかどうか」を確認し,医師が「症状固定した」と判断してからにするのが原則です。







◆症状固定時までの治療費が支払われる


症状固定は,交通事故の治療の節目になる重要な時点ですが,損害賠償金の計算の基準時にもなります。

事故後の治療に関しては,治療費や通院付添費,通院交通費などの費用を支払ってもらうことができますが,これらの費用の支払は,原則として,症状固定時の分までしか受けられません。

症状固定後は治療してもけがの状態の改善が期待できないので,症状固定後の治療は交通事故との因果関係がないと考えられているためです。

症状固定後に治療を受ける場合,その治療費は賠償の対象とならず,自己負担になるのが原則です。







◆症状固定時の症状が後遺障害等級認定審査の対象となる


症状固定は後遺障害とも密接な関係があります。

症状固定とは,それ以上治療を継続しても症状の改善が期待できない状態なので,その時点で残っている症状が後遺障害として認定されるかどうかが審査されます。




そして,後遺障害の等級認定を受けるためには,症状固定まで通院治療を継続する必要があります。この意味でも,交通事故後,症状固定時まで確実に入通院による治療を継続することが大切です。治療を途中でやめると,後遺障害の等級認定も受けられなくなるおそれがあります。

本来であれば適切に後遺障害が認定されて後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できたかもしれないのに,これらが賠償の対象となる余地がなくなってしまいます。後遺障害が認定されたときとそうでないときとでは,賠償金に大きな差が出てきます。




以上のように,症状固定は交通事故の治療や損害賠償金計算において非常に大きな意味を持つ時点です。医師が症状固定と判定する前に治療終了と言われて困っているなら,弁護士に相談することをおすすめします。




▼参考記事

・ポイントを見極める! その1【通院のポイント】
・症状固定・後遺障害の等級認定
・交通事故問題解決の流れ




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故に遭いました。損害賠償には時効があると聞きましたが,どういうことですか?

2017年08月24日
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交通事故に遭いました。損害賠償には時効があると聞きましたが,どういうことですか?

損害賠償請求権には,3年の時効があります。交通事故の種類によって,時効の起算点が異なりますが,示談交渉や損害賠償の手続は,3年の時効の期間内に行う必要があります。




 損害賠償請求権の時効 


◆交通事故の損害賠償請求権


交通事故で被害に遭ったら,加害者との間で示談交渉をします。加害者が任意保険会社に加入していたときは,通常,任意社との間で示談交渉をします。


示談交渉は,損害賠償問題の解決手段の1つです。




交通事故の被害者には,いろいろな損害が発生します。たとえば病院での治療費もかかりますし,通院のための交通費もかかります。仕事を休んだら休業損害も発生しますし,後遺障害が残ったら慰謝料や逸失利益も発生します。

このような損害については,事故の加害者に請求することができます。過失によって交通事故を起こすことは,民法上の不法行為に当たるからです。

したがいまして,交通事故の示談交渉は,不法行為にもとづく損害賠償請求権の行使をしている最中だともいえます。相手から支払を受ける示談金は,不法行為にもとづく損害賠償の性質をもつお金です。







◆損害賠償請求権の時効


ただ,損害賠償請求権には,時効があります。

具体的には,損害及び加害者を知ってから3年間となっています。そこで,ひき逃げで加害者不明などのケースではない限り,損害賠償請求権は3年で消滅してしまいます。

また,加害者が不明な場合でも,事故後20年が経過すると,当然に損害賠償請求権が消滅してしまいます。このことを,損害賠償請求権の除斥期間といいます。







◆交通事故ごとの時効の起算点


それでは,この3年の時効は,いつからカウントするのでしょうか?
これについては,事故の類型によって異なります。

まず,物損事故のケースでは,交通事故が発生した日の翌日から3年です。

人身事故で,傷害事故の場合には,後遺障害が残ったかどうかによって考え方が異なります。
後遺障害がない場合には,交通事故日の翌日から3年です。後遺障害が残った場合には,症状固定の日の翌日から3年となります。

人身事故の場合でも,死亡事故のケースでは,死亡日の翌日から3年が時効期間となります。




そこで,交通事故後相手と示談交渉をするときには,基本的に,上記期間内に示談をまとめてしまうことが必要になります。







◆3年以内に示談ができない場合


ケースによっては,上記の時効期間内に相手と示談交渉をすることが難しいことがあります。

その場合には,一部の損害について先に示談をして,残りを後に請求することとしたり,裁判をしたりなど,いくつかの対処方法があります。任意保険会社に時効中断のための承認を求めるという方法もあります。

自分で適切に対処できないと,時効が完成して不利益を受けかねません。困ったときには,弁護士に相談することをおすすめします。




参考記事
・交通事故の注目の裁判例「損害賠償請求権の除斥期間の起算点」
・よつばの交通事故への想いとこだわり「あきらめないって大事」
・短期間で解決した事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故に遭い,自宅や車の改造が必要になりました。改造費は損害として認められますか?

2017年06月26日
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交通事故に遭い,自宅や車の改造が必要になりました。改造費は,損害として認められますか?

自宅改装費や車の改造費については,必要性に応じて相当額が認められています。
具体的な金額については,個別に判断されています。





 改造費 



◆自宅改装費、車の改造費とは


交通事故に遭って重大な怪我をしてしまったら,今までの自宅に住みにくくなることがよくあります。

たとえば,歩行が難しくなったときなどには,玄関の段差をなくしてバリアフリーにしなければなりませんし,お風呂やトイレも改装する必要があります。植物状態になった被害者を自宅で介護するときには,介護に適した仕様にするための改装も必要です。

同様に,足が不自由になった場合などには,障害があっても運転できるように車も改造しないといけません。

このように交通事故での重大な怪我の影響で,自宅改装費や車の改造が必要となった場合の改造費は,交通事故の損害として認められます。交通事故の損害賠償の対象になるのは,交通事故と因果関係のある損害です。




そして,交通事故による怪我がなければ,このような自宅改装や車の改造は不要だったわけですから,これらにかかった費用は交通事故による損害と認められるのです。
ただし,自宅改装や車の改装は,どのようなものでも認められるわけではありません。交通事故と相当な因果関係にあるものに限られるので,交通事故とは無関係なものや不必要なものは賠償範囲に含まれないのです。

そして,必要性があるかどうかについては,被害者の受傷内容や後遺障害の程度,内容などに照らして判断されます。







◆自宅改装費が認められた事例


次に,具体的に自宅改装費が認められた事例をご紹介します。


【ケース1】
名古屋地裁平成14年11月1日では,高次脳機能障害,四肢麻痺が起こった被害者の事例で,家の全面的な改装を損害と認めました。この被害者は,日常生活が全くできないほとんど寝たきり状態となっており,後遺障害の等級は1級でした。

自宅改装費として認められた改装内容は,家の増改築費用,外装,内装の改装,屋根瓦の吹き替えや解体工事などで,認められた金額は1459万円です。




【ケース2】
次に,自宅改装費と車の改造費が両方認められた事例をご紹介します。
横浜地裁平成4年8月20日判決では,後遺障害の等級が1級の事例において,家屋の建て替え費用と自動車改造費を認めました。


自宅については,改装だけではなく建て替え費用が認められています。かかった費用総額は2229万円でしたが,認容されたのは1560万円でした。内容としては,家屋建築費用,私道改造費用,仮住居の家賃,引っ越し費用や登記費用などが認められています。
自動車改造費としては,110万円が認められました。




このように,自宅改装費や車の改造費も,かなり高額な費用が損害として認められています。困ったときには,弁護士に相談しましょう。




▼参考記事
・交通事故HP:賠償金額の基準に注意!
・交通事故HP:弁護士が入ると損害賠償額が上がる!
・よつばの交通事故子への「想い」と「こだわり」:賠償の大きな要素 慰謝料について




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交差点での交通事故の過失割合はどのような割合になりますか?

2017年04月13日
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交差点での交通事故の過失割合はどのような割合になりますか?

交差点上で交通事故が起こる場合には,信号機がある交差点のケースと信号機がない交差点のケースがあり,状況によって過失割合が異なります。




 交差点での交通事故の過失割合 



◆信号機のある交差点上の事故


交差点上で交通事故が起こる場合には,信号機がある交差点のケースと信号機がない交差点のケースがあるので,以下では分けて解説します。



(1)直進車同士の事故
信号機のある交差点上で,直進車同士の事故の場合,信号機の色によって過失割合が異なります。

【一方が,一方がの場合】
青の自動車「0」「100」赤の自動車

【一方が黄色,一方がの場合】
黄色の自動車「20」「80」赤の自動車

【どちらも信号の場合】
双方共に「50」「50」です。




(2)右折車と直進車の事故
信号機のある交差点上の事故には,右折車と直進車の事故もありますので,この場合の過失割合を確認しましょう。直進車同士の事故と同様,信号機の色によって過失割合が異なります。


【直進車も右折車もともに,信号機がの場合】直進車「20」「80」右折車

【直進車が黄色で進入し,右折車が青で進入して黄色で右折した場合】
直進車「70」「30」右折車

【直進車も右折車も,黄信号で交差点に進入した場合】
直進車「40」「60」右折車

【直進車が,右折車がの場合】
直進車「100」「0」右折車

【直進車がで進入し,右折車が青で進入した後交差点内で赤に変わってしまった場合】
直進車「90」「10」右折車

【直進車が,右折車が黄色で進入して交差点内で赤になってしまった場合】
直進車「70」「30」右折車

【直進車も右折車もの場合】
直進車「50」「50」右折車










◆信号機のない交差点上の事故


次に,信号機のない交差点上の直進車同士の事故を見てみましょう。


【同じ幅の道路の事故】
同幅員の場合,双方が同じくらいの速度なら,左側走行の車が優先されるので,左側走行車「40」「60」右側走行車となります。

【一方通行違反がある場合】
違反のない車「20」「80」一方通行違反の車となります。

【一方の道路幅が明らかに広い場合】
同程度の速度なら,道路幅の広い車「30」「70」道路幅の狭い車

【一時停止規制がある場合】
同程度の速度なら,規制のない側の車「20」「80」規制のある側の車

【一方が優先道路の場合】
優先される側の車「10」「90」劣後する車




なお,信号機のない交差点上の事故の場合,一方が減速・徐行するとその過失割合が下がるケースがあります。交差点では,信号のあるなしにかかわらず非常に事故が多いので,交通ルールを守ってよく注意することが大切です。




▼参考記事
よつば総合法律事務所:「交通事故の過失相殺とは」

(弁護士法人よつば総合法律事務所  弁護士 佐藤 寿康 )

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