カテゴリー: 慰謝料

会社役員が交通事故に遭った場合,役員報酬は賠償してもらえないって本当ですか?

2016年06月24日
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 相手方保険会社に,会社役員が交通事故に遭った場合,役員報酬は逸失利益として賠償しないと言われています。
 労務の対価としての支給部分について具体的に検討します。

【会社役員の役員報酬】


■逸失利益
後遺障害が認定された場合,将来にわたり,労働に支障を来すのものと考えられます。将来就労する際に,交通事故がなければ得られるはずであったのに,事故によって得ることができなくなった利益を逸失利益といいます。逸失利益は,基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間という計算式により求められます。
このうち基礎収入の考え方について役員報酬をどのように算定すべきかが問題となります。

■役員報酬
役員報酬は,定款に定めている場合には,定款の規定により,定めていない場合には株主総会の決議によって一定額が支給されますが(会社法第361条,387条),実際には,株主総会で支払限度額のみを決め,取締役会などに具体的な支払金額を一任することなども多く行われています。
賠償しないという保険会社の主張は,会社の形態によっては役員報酬を自由に決定できる点や,役員報酬が法人税との兼ね合いで多額であるケースがあること,実質的な利益配当部分を含むことなどを根拠としていることが多いです。
利益配当の実質を有する部分や,親族の情誼的に交付される部分,法人税の負担を軽減するための加算部分は,労務としての対価性を有しないから,将来の労務に関する逸失利益はないというものです。

■労務の対価@
当然役員報酬という名目であるからといって,これを一律に基礎収入に参入しないとすべきではありません。逸失利益の趣旨から,当該役員報酬が労務の対価としての性質を有する部分を検討すべきです。
過去の裁判例では,@会社の規模,A当該役員の地位・職務内容,B役員報酬の額,C他の役員・従業員の職務内容と報酬給料額,D事故後の当該報酬の推移などが検討されています。
 
■労務の対価A

例えば,A当該役員が実際の労務を行っていること,それが会社の利益のために必要なことは労務としての対価を有する方向に考えられます。
BC当該役員報酬の額が他の同程度の職務内容の役員従業員の報酬給料と照らして著しく高額でないことは労務としての対価を有する方向に考えられます。
D事故後に役員報酬が減額していることは労務としての対価を有する方向に考えられます。
以上のような観点から,当該役員報酬が労務としての対価としての性質を有する部分を具体的に検討すべきです。

■裁判例
実際の裁判例では,役員報酬のうち労務としての対価性がある部分をその何%としたり,賃金センサスを参照したり,同程度の職務内容の従業員の給料と同額としたものなどもあります。

■証拠となる資料
労務対価性の証拠となる資料は,確定申告書や会社の決算書類,株主総会議事録,当該役員の職務内容についての陳述書などが考えられます。

■まとめ
交通事故は,役員報酬が逸失利益として認められるか否かによって,賠償金額も大きく変わってきます。
一度は専門家に資料を検討してもらうことをお勧めします。

(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 粟津 正博)

傷害慰謝料の基準の変更(赤い本2016年)

2016年04月28日
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 2016年の赤い本で傷害慰謝料の基準はどのように変わりましたか。
 傷害慰謝料基準の別表T,別表Uの表現が変更となっています。

◆別表Tについて
従来の基準は,「通院が長期にわたり,かつ不規則である場合には実日数の3.5倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることがある」という基準でした。2016年の赤い本では「傷害慰謝料については,原則として入通院期間を基礎として別表Tを使用する。通院が長期にわたる場合は,症状,治療内容,通院頻度を踏まえて実通院日数の3.5倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることもある。」と変更されました。

◆別表Tの変更のポイント@
症状・治療内容・通院頻度という要素を実質的に考慮して判断をすることが明示されました。今までも,交渉・裁判等では症状・治療内容・通院頻度を加味した判断がなされてきていますので,その内容を明記したものとなります。

◆別表Tの変更のポイントA
「目安とすることがある」を「目安とすることもある」と変更しています。3.5倍の基準は例外的な基準であることをより明確にしたものと考えられます。

◆別表Tの変更のポイントB
「不規則」という表現を削除しています。不規則という表現の持つ意味があいまいであるために削除したものと考えられます。

◆別表Uについて
従来の基準は,「むち打ち症で他覚所見がない場合には別表Uを使用する。この場合,慰謝料算定のための通院期間は,その期間を限度として,実治療日数の3倍程度を目安とする」という基準でした。2016年の赤い本では,「むち打ち症で他覚所見がない場合等は入通院期間を基礎として別表Uを使用する。通院が長期にわたる場合は,症状,治療内容,通院頻度を踏まえ,実通院日数の3倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることもある。」と変更されました。

◆別表Uの変更のポイント@
むちうち症で他覚所見がない場合「等」という表現に変更となりました。軽度の挫傷・打撲などの場合にはむち打ち症でない場合であったとしても別表Uが使用される確率が高くなります。

◆別表Uの変更のポイントA
原則は通院期間という点がより重視されました。3倍の基準を使用するのは「通院が長期にわたる場合」との限定がされています。また,3倍という基準を「目安とすることもある」と記載して,3倍という基準が例外的であることを示しています。

◆変更についてのまとめ


  • 原則は入通院の期間があることがより強調されています。3.5倍,3倍の基準は例外的な扱いであることがより明確になっています。

  • 打撲・挫傷など,これまで「むちうちで他覚所見がない場合」に明確に当たらなかったような事案であったとしても,今後は別表Tではなく,別表Uを利用することになる機会が多くなるでしょう。



(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)
プロフィール
弁護士法人よつば総合法律事務所
地域最大級の弁護士14名が所属しております。事務所名の「よつば」は事務所に関わる人が皆幸せになるようにとの思いから名付けました。お気軽にご相談ください。
柏事務所:千葉県柏市(柏駅徒歩3分)
千葉事務所:千葉市(千葉駅徒歩3分)

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