カテゴリー: 逸失利益

交通事故で後遺障害になってしまいました。高齢者の場合の逸失利益は,どのように計算すればよいですか?

2016年12月02日
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交通事故で後遺障害になってしまいました。高齢者の場合の逸失利益は,どのように計算すればよいですか?

逸失利益の計算の際には,いつまで働けるかという就労可能年数が問題となりますが,高齢者の場合,これを何歳までとするかが問題になります。




 高齢者の逸失利益 


◆高齢者の逸失利益が認められにくい理由


交通事故で後遺障害が残ったり死亡したりすると,逸失利益の支払いを受けることができます。

逸失利益とは,事故によって働けなくなったことにより,得られなくなってしまった将来の収入のことで,通常は,就労可能年数である18歳から67歳までの間の分の賠償が認められます。

しかし,高齢者の場合,逸失利益が認められにくいケースがあり,また計算方法も若年者とは異なる点があります。

そもそも高齢者の場合,将来にわたって働き続けることが予定されないことが多いですし,もともと高齢ならいつまでの分を逸失利益として認めるか,という問題もあります。

そこで,高齢者が後遺障害を負ったり死亡したりしても,逸失利益が認められないケースが起こってくるのです。






◆高齢者で逸失利益が認められる場合


高齢者でも,逸失利益が認められるケースがあるので,以下ではそれがどのような事例か,具体的に見てみましょう。

まず,事故前に高齢者が実際に働いていたケースです。この場合には,実収入を基準として,高齢者の逸失利益が認められます。

これに対して,実際には働いていなかったケースでは逸失利益が認められない場合が増えてきます。
実際に働いていない高齢者に逸失利益が認められるためには,過去に就労実績があることと,今後就労する蓋然性が高いという2つの要件が必要となります。




たとえば,事故の前年度まで自営業をしていても,すでに廃業しているケースでは逸失利益は認められにくいです。これに対し,過去にサラリーマンとして働いており,技術を持っていて,具体的にある会社に就職する予定があったケースなどでは,逸失利益が認められる可能性があります。






◆高齢者の逸失利益の計算方法



高齢者の逸失利益の計算方法をご紹介します。
逸失利益の計算の際には,いつまで働けるかという就労可能年数が問題となりますが,高齢者の場合,これを何歳までとするかが問題です。

まず被害者の高齢者が67歳以上の場合には,平均余命の2分の1の期間を採用して計算します。
被害者の高齢者が67歳以下の場合には,67歳までの期間か平均余命の2分の1を比較して,長い方を採用します。

たとえば,65歳の男性の場合,平均余命は18.14歳なので,その2分の1は9.7歳です。これに対して現在の年齢と67歳との差は2歳なので,平均余命の2分の1の方が長くなり,こちらが採用されます。
小数点以下は切り捨てるので,就労可能年数は9年となります。




また,採用する基礎収入について,実際に収入がある高齢者の場合には実収入を基準としますが,そうでないケースでは,賃金センサスの男女別年齢別平均賃金を用いることが多いようです。




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 前田 徹)

交通事故に遭い,以前のように働けなくなりました。逸失利益の基礎収入は,どのように計算すれば良いのでしょうか?

2016年12月01日
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交通事故に遭い,以前のように働けなくなりました。逸失利益の基礎収入は,どのように計算すれば良いのでしょうか?

被害者の事故前の基礎収入を基準としますが,属性によって計算が異なります。




基礎収入の計算 


◆逸失利益と基礎収入


交通事故に遭ったとき,後遺障害が残ったり死亡したりした場合には,逸失利益が発生します。
逸失利益とは,事故によって働けなくなったことにより,本来得られるはずだったのに得られなくなった収入のことです。

逸失利益を計算する際には,被害者の事故前の基礎収入を基準とします。

具体的には,以下のとおりの計算方法となります。

逸失利益=事故前の基礎収入×労働能力喪失率×就労可能年数に対応したライプニッツ係数(後遺障害のケース)


そこで,逸失利益計算の際には,基礎収入をどのようにして計算すべきかが問題となります。
この点については,被害者の属性によって異なるので,以下で個別に見てみましょう。







◆基礎収入の計算方法



@サラリーマンの場合

サラリーマンや公務員などの場合,基礎収入は計算しやすいです。この場合,基本的には交通事故の前年度の実際の収入を基礎収入とします。

事故前年度の源泉徴収票の記載内容を見て,その収入額をそのまま基礎収入とします。

事案によっては,事故前3年分〜5年分などの源泉徴収票や市県民税課税証明書の記載内容を照らし合わせて,それらを平均した数値を基礎収入とすることもあります。




A自営業者の場合

自営業者の場合にも,基本的には事故の前年度の実際の収入を基礎収入とします。この場合,基本的には事故の前年度の確定申告書に記載してある申告所得の記載内容から,基礎収入を割り出します。

なお,申告額と実収入額に違いがある場合に,実収入額だと主張する金額の所得があったことを証明することができれば,実収入額を基準にしてもらうことも不可能ではありませんが,実際の裁判の場面では,ほとんど認められないと思われます。

また,事故前数年分の確定申告書の平均値をとって基礎収入とすることもあります。




B専業主婦の場合

専業主婦の場合でも逸失利益が認められるケースがあります。この場合,サラリーマンなどのケースと異なり,実際の収入がないので,実収入を基礎収入とすることができません。
そこで,賃金センサスの全年齢の女性の平均賃金を使って基礎収入とします。だいたい年収364万円くらいになります(平成26年度調査)。

兼業主婦の場合,実収入が上記の女性の平均賃金以下のケースでは専業主婦と同様,全年齢の女性平均賃金を使いますが,実収入がこれを超える場合には,実収入を基準とします。

専業主夫の場合には,女性の場合と比べて不平等とならないように,全年齢の女性の平均賃金を使って基礎収入とします。




C幼児や学生の場合

被害者が幼児や学生の場合,基礎収入は男女別の平均賃金を使います。
ただ,男女の格差を是正するため,年少の幼児の場合,女児の基礎収入には男女計の平均賃金を用いて基礎収入とすることが多いようです。




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 前田 徹)

逸失利益を算定する際に出てくる賃金センサスとは何ですか?

2016年11月30日
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逸失利益を算定する際に出てくる賃金センサスとは何ですか?

賃金センサスとは,国の厚生労働省が調査している国民の平均賃金をまとめた統計表です。




 賃金センサス 


◆賃金センサスとは


賃金センサスとは,国の厚生労働省が調査している国民の平均賃金をまとめた統計表です。

昭和23年から,毎年調査が行われていて,各事業所の地域や規模ごとに,職種,労働者の性別,学歴や雇用形態などによって分類しています。


賃金センサスには,以下のような項目が記載されています。
@労働者の年齢 A勤続年数 B労働時間数 C給与額と年間賞与額 D事業所の労働者数





◆後遺障害で賃金センサスが必要になるケース


交通事故の後遺障害の計算の際,上記の平均賃金の統計表である平均賃金が必要になるケースがあります。それは,被害者が専業主婦や幼児,学生など年収を確定することが難しい場合です。


逸失利益の計算の際には,事故前の基礎収入の額が基準となりますので,サラリーマンや自営業者などの場合には,実際の収入を基礎収入として利用することができます。

しかし,専業主婦や学生,幼児などの場合には,実際には収入がなく実収入を基準にすることができないので,賃金センサスの平均賃金を使って計算することが必要になります。






◆専業主婦の基礎収入


専業主婦の逸失利益を計算する場合には,賃金センサスを利用しますが,具体的にはどの平均賃金を利用するのでしょうか?
これについては,通常は全年齢の女性の平均賃金を用いて計算します。


兼業主婦の場合には,実際の収入が上記の平均賃金を上回るケースでのみ実収入を基準としますが,実収入がそれより低い場合には専業主婦と同様,全年齢の女性の賃金センサス平均賃金を利用します。

専業主夫のケースでも,主婦の場合と不公平にならないように,全年齢の女性の平均賃金を利用して計算します。

全年齢の女性平均賃金は364万円程度です(平成26年度調査)。






◆幼児の基礎収入


幼児や学生の場合にも,実際の収入がないので平均賃金を利用して計算します。
この場合,全年齢の男女別平均賃金を利用することが原則になります。

ただ,全年齢の女性平均賃金は364万円ですが,これに対して全年齢の男性平均賃金は536万円(平成26年度調査)となっており,同じような男女の幼児が死亡した場合であっても,女児の方が男児よりも逸失利益が少ないということになってしまうので,不公平だという問題があります。

そこで,女児の中でも年少(幼児など)の場合には,男女の全労働者の平均賃金を用いて基礎収入とすることが多いです。男女の全年齢の平均賃金は479万円(平成26年度調査)なので,これを利用すると,女児と男児の差をある程度埋めることができます。




以上のように,賃金センサスは,主に実際の収入がない人の後遺障害逸失利益を計算する際に利用する基準となるので,これを機会に覚えておきましょう。




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 前田 徹)

交通事故に遭い,後遺障害14級9号(局部の神経症状)と認定されました。 逸失利益の計算はどのようにすればよいですか?

2016年11月29日
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交通事故に遭い,後遺障害14級9号(局部の神経症状)と認定されました。逸失利益の計算はどのようにすればよいですか?


14級9号の場合の逸失利益の計算方法は,後遺障害の逸失利益計算方法に則って行います。後遺障害の等級ごとに利率の目安が定められているので,ぜひ




【逸失利益:後遺障害14級9号の場合の計算方法】



◆後遺障害14級9号で多いのは「むちうち」被害



交通事故の後遺障害14級9号の逸失利益の計算方法をご説明する前提として,後遺障害14級9号がどのような後遺障害のケースなのかを理解しておきましょう。


後遺障害14級9号は,「局部に神経症状を残すもの」という後遺障害です。
身体の一部分にしびれや痛みなどの神経症状が起こるというものです。


後遺障害14級9号に該当するパターンで最も多いのが,頚椎捻挫等のいわゆる「むちうち」です。
比較的軽い人身事故のケースでは,むちうちによって後遺障害が残ることが多くありますが,そのような場合,たいてい後遺障害の等級は14級9号となります。


そこで,14級9号の場合の逸失利益計算方法を知っておくと,交通事故に遭った際,むちうちで後遺障害が残った場合の賠償金計算方法がわかるので,ここで是非とも覚えておきましょう。






◆14級9号の後遺障害逸失利益の計算方法


14級9号の場合の逸失利益の計算方法は,後遺障害の逸失利益計算方法に則って行いますので,以下ではまず,後遺障害逸失利益の計算方法をご紹介します。

一般的な後遺障害逸失利益の計算方法は,以下のとおりです。

事故前の基礎収入×労働能力喪失率×就労可能年数に対応したライプニッツ係数


事故前の基礎収入は,交通事故前の実際の年収を基準としますが,ケースによっては賃金センサスを利用することもあります。労働能力喪失率は,後遺障害の等級ごとに目安が定められており,14級の場合には一般的には5%となります。
これに,就労可能年数である67歳までの年数に対応した中間利息のための特殊な係数であるライプニッツ係数をかけ算することで,逸失利益を求めることができます。




もっとも,被害者が未就労者,すなわち,幼児や学生の場合,18歳から,又は大学卒業時の年齢から計算します。また,被害者が高齢者であって,67歳までの期間よりも平均余命の2分の1の方が長くなる場合は,平均余命の2分の1の期間を労働能力喪失期間とします。



14級9号の場合

「事故前の基礎収入×5%×就労可能年数に対応するライプニッツ係数」が基本の計算式となりますが,むちうちによる後遺障害の場合には,「就労可能年数に対応するライプニッツ係数」は,5年に対応する4.3295が採用されることが多いです。






◆14級9号の逸失利益計算の具体例



それでは,むちうちなどで多い14級9号の逸失利益計算の具体例を見てみましょう。
事故前の年収が500万円で,事故当時40歳だったサラリーマンがむちうちで14級9号に認定されたとします。

この場合,基礎収入は500万円です。就労可能年数に対応するライプニッツ係数は,5年に対応するライプニッツ係数4.3295となります。

そこで,このケースにおける逸失利益は

500万円×5%×4.3295=1,082,375円となります。




以上のように,14級9号の軽いむちうちのケースでも,逸失利益は高額な金額となるので,きちんと計算して請求することが大切です。




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 前田 徹)

損害賠償として逸失利益の計算をする場合,どのように計算すればよいですか?

2016年11月28日
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損害賠償として逸失利益の計算をする場合,どのように計算すればよいですか?

逸失利益の計算方法は,請求する逸失利益の種類によって異なってきます。




【逸失利益の計算方法】




◆2種類の逸失利益



逸失利益の計算方法は,請求する逸失利益の種類によって異なります。


逸失利益とは交通事故によって得られなくなった将来の収入のことですが,交通事故で逸失利益が認められるのは,後遺障害が残ったケースと死亡事故のケースです。


そこで,以下では後遺障害が残った場合と死亡事故の場合に分けて,逸失利益の計算方法をご説明します。






◆逸失利益の計算方法



@後遺障害が残った場合

交通事故で後遺障害が残った場合,以下の計算式によって計算します。

事故前の基礎収入×労働能力喪失率×就労可能年数に対応するライプニッツ係数


事故前の基礎収入とは,被害者が交通事故に遭う前に得ていた実際の収入のことです。
逸失利益計算の際には,年収を基準とします。

たとえば,サラリーマンの場合には源泉徴収票の記載内容をもとに基礎収入を決定しますし,個人事業者の場合には確定申告書の記載内容を見て基礎収入を決定します。
専業主婦や学生,幼児などが被害者になった場合には,実際の収入がないので,賃金センサスの平均賃金を用いて基礎収入とします。


労働能力喪失率とは,後遺障害の等級ごとに定められた割合です。

基本的には,一番高い等級である1級のケースでは100%,一番低い等級である14級のケースでは5%となります。

ライプニッツ係数とは,中間利息を控除するための特殊な係数のことです。
逸失利益を受け取る場合,将来の分もまとめて受け取ることになるため,その間の利息を控除する必要があり,ライプニッツ係数をかけることが必要になります。

逸失利益の計算は,基本的には就労可能年数までの分となりますが,就労可能年数は67歳までとされているので,事故当時の年齢から67歳までの年数に対応するライプニッツ係数を利用して逸失利益を計算します。

なお,高齢者の場合には,「平均余命の2分の1」と「67歳までの年数」のどちらか長い方を採用します。





A死亡事故の場合

次に,交通事故で死亡してしまった場合の逸失利益計算方法をご紹介します。

事故前の基礎収入×(1−生活費控除率)×就労可能年数に対応したライプニッツ係数


死亡事故の場合,後遺障害のケースとは異なり,交通事故によって完全に働けなくなるので労働能力喪失率は常に100%となり,その計算は不要です。

ただし,死亡した場合には事故後の生活費がかからなくなるので,生活費を控除する必要があります。

生活費控除率は,被害者の属性によって異なり,概ね以下のような基準となっています。

・被害者が一家の支柱のケースでは,30〜40%
・被害者が女性のケース(主婦や独身者,幼児)では,30〜45%
・被害者が男性のケース(独身者や幼児)では50%


また,死亡事故の場合でも,逸失利益を一括で受け取ることになるので,中間利息を控除するために,やはり,事故当時の年齢から67歳までの就労可能年数に対応したライプニッツ係数をかけて調整する必要があります。

(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 前田 徹)



交通事故でよく聞く,逸失利益とは何ですか?

2016年11月25日
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交通事故でよく聞く,逸失利益とは何ですか?

逸失利益とは,交通事故で後遺障害が残ったり死亡したりすることによって,それまでとは同じように働けなくなる結果,得られなくなった利益のことです。





【逸失利益】



◆逸失利益とは


逸失利益とは,交通事故で後遺障害が残ったり死亡したりすることによって,それまでとは同じように働けなくなる結果,得られなくなった利益のことです。

わかりやすく言うと,交通事故によって働けなくなって収入が減るので,その賠償を相手に求めることができる,ということです。


たとえば,交通事故で死亡してしまったら,その人は事故後働いて収入を得ることができません。そこで,相手に対して逸失利益として,将来得られるはずだった収入を計算して賠償請求することができるのです。







◆逸失利益が認められる交通事故の種類


逸失利益は,どのような交通事故の場合に認められるのでしょうか?
それは,交通事故で怪我をして後遺障害が残ったケースと死亡したケースです。


交通事故で後遺障害が残ると,その分身体が不自由になるので,それまでと同じようには働けなくなって労働能力が失われたと考えられるので,その減収分が逸失利益として認められます。
後遺障害は高い方(重い方)から1級から14級までの等級がありますが,どの等級に該当する場合でも逸失利益は認められます。
ただ,等級が低い場合には労働能力喪失率が低くなって,逸失利益の金額も少なくなります。




逸失利益が認められるもう1つの類型が死亡事故です。
交通事故が原因で死亡してしまった場合には,事故後まったく収入を得ることができなくなるので,やはりその減収分を逸失利益として請求することができます。



これらのケースに対し,交通事故の中でも,後遺障害が残らない人身事故では逸失利益は発生しませんし,物損事故でもやはり逸失利益は認められません。







◆逸失利益が認められる人


交通事故で後遺障害が残ったり死亡したりした事案でも,必ずしも逸失利益が認められるとは限りません。
被害者の属性によっては,逸失利益が認められないことがあります。



逸失利益とは,事故によって得られなくなった将来の収入のことなので,逸失利益が認められるためには基本的に事故前に実際に収入があったことが必要です。

たとえばサラリーマンや自営業者,アルバイトの人などの場合には逸失利益が認められます。
また,専業主婦の場合,実際には収入がなくても家事労働に経済的な価値があると認められるので,逸失利益を請求することができます。この場合,基礎収入としては賃金センサスを利用します。

さらに,学生や幼児の場合にも,逸失利益が認められることがあります。
その場合にも,賃金センサスを用いて計算します。




これらのケースに対して,無職無収入の人は,基本的には逸失利益は認められません。
また,不動産収入で暮らしているような不労所得の人も,収入があっても逸失利益が認められません。


この場合,交通事故によって労働能力を喪失したことによって減収があったことにはならないからです。





(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 前田 徹)

相手方保険会社に醜状痕(傷跡)の後遺障害について逸失利益を認めないと言われています

2016年06月21日
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相手方保険会社に醜状痕(傷跡)の後遺障害について,逸失利益を認めないと言われています。
仕事に与える具体的な影響を検討します。

【醜状痕(傷跡)の後遺障害について】


■逸失利益
後遺障害が認定された場合,将来にわたり,労働に支障を来すのものと考えられます。将来就労する際に,事故がなければ得られるはずであったのに,事故によって得ることができなくなった利益を逸失利益といいます。

逸失利益は,基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間という計算式により求められます。



■醜状痕(傷跡)
醜状痕(傷跡)については,7級〜14級までの後遺障害の認定の可能性があります。このうち,12級以下の(それより上の等級と比較すれば)傷跡が小さいあるいは目立ちにくい場合,保険会社は労務に影響がない等と主張してくることが多いです。

確かに醜状痕は,体の機能の障害ではありませんので,身体動作の面では支障がないかもしれません。しかし,対人生活を送る上では人と対面すること,傷跡を見られることは不可欠であり,これによる影響を慎重に検討するべきです。



■労務への影響@

職業の内容によっては,労務に直接影響する場合があります。例えば,アナウンサーやモデル,ホステスなどの職業は外貌を商売道具にしていることが多いと考えられます。

また,営業マンについて,営業で会った初対面の人が傷のことを尋ねたり,顔を見つめることが多くあること,精神的苦痛が大きく,人と会うのに気が重くなり,消極的になる等仕事の能力低下をもたらし,ひいては昇進,昇給にも影響を及ぼしかねないことを理由として労務への影響を肯定した裁判例(名古屋地方裁判所平成3年1月25日)などもあります。

また,就職活動や転職活動への影響も考慮する必要があります。


■労務への影響A

傷跡の内容によっては,仕事への直接的な影響を指摘できなくとも,勤労意欲の減少,労働効率の低下,ひいては昇進・昇給への影響といった可能性も十分に考えられます。

もし,事故から相当程度時間が経過している場合には,現在の状態をトータルで顧みて,労務にどのような影響を与えているか,整理してみることが有用です。


■判例

実際の裁判例においては,醜状痕の逸失利益について,限定的に認めるものも多くみられますし,逸失利益を抑えながら慰謝料を増額するものも見られます。


■まとめ

醜状痕はともすれば,日常生活にも影響を及ぼし,被害は大きいと言える一方,主張の方法によっては適正な賠償を受けられない可能性もあります。上記の点を踏まえて具体的に検討することが必要です。



(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 粟津 正博)

相手方保険会社に味覚・嗅覚の後遺障害について逸失利益を認めないと言われています

2016年06月20日
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相手方保険会社に味覚・嗅覚の後遺障害について,逸失利益を認めないと言われています。
仕事に与える具体的な影響を検討します。

【味覚・嗅覚の後遺障害】



■逸失利益
後遺障害が認定された場合,将来にわたり,労働に支障を来すのものと考えられます。
将来就労する際に,事故がなければ得られるはずであったのに,事故によって得ることができなくなった利益を逸失利益といいます。逸失利益は,基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間という計算式により求められます。
 



■逸失利益と後遺障害
醜状痕(傷跡)については,12級か14級の後遺障害の認定の可能性があります。

保険会社は,味覚や嗅覚の脱失について,労務に影響がないため逸失利益は無いと主張してくることがあります。
すなわち,上述のとおり,逸失利益は,後遺障害が,将来労務へ与える影響を考慮したものであり,日常生活に与える影響は含まれないというものです。


■労務への影響@

例えば調理師等飲食に従事する仕事であれば,これらの後遺障害は労務に多大な影響を与えますし,喪失率も喪失率表以上の割合で認められるケースもあると思われます。他にも,溶剤を使用する職人や警備員なども具体的な仕事への影響がある可能性があります。
また,主婦である場合には,家事労働に重大な影響を及ぼすものと考えます。

裁判例でも,主婦の嗅覚脱失の後遺障害(12級12号)につき,主婦としてガス管理,料理等に影響を及ぼすことを考慮し,労働能力喪失率を14%,喪失期間を67歳までとして逸失利益を算定した例(横浜地方裁判所昭和56年1月26日)などがあります。


■労務への影響A

その他の職業についても,逸失利益の性質上労務に影響を与えないケースも考えられますが,当該後遺障害の具体的な内容・程度,被害者の性別・年齢・職業,事故前後の稼働状況,被害者が従事する職業の性質からみた当該障害による収入減収ないしその恐れの有無・程度,将来の昇給・昇任・転職等における不利益な取扱いの恐れの有無等を具体的に検討して,将来与える影響を吟味すべきです。
実際の裁判例では,労働能力喪失表を参考にとどめ,これよりも低い数字にとどまるものの逸失利益を認めているものもあります。



■慰謝料
また,嗅覚や味覚の後遺障害は,日常生活の様々な面で不利益を及ぼす他,食事等の重要な愉しみを奪うことにも直結するものですから,このような不利益は慰謝料増額事由として十分に斟酌されるべきであるといえるでしょう。


■まとめ

嗅覚味覚の後遺障害については,逸失利益の趣旨に立ち返り,職務への具体的な影響を検討することが重要であるといえるでしょう。

(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 粟津 正博)

逸失利益の基本的な算出方法について教えてください

2016年06月17日
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逸失利益の基本的な算出方法について教えてください
逸失利益は,基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間という計算方法により求められます

【逸失利益の算出方法】


■計算式
後遺障害が認定された場合,将来にわたり,労働に支障を来すのものと考えられます。将来就労する際に,事故がなければ得られるはずであったのに,事故によって得ることができなくなった利益を逸失利益といいます。
逸失利益は,基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間という計算式により求められます。

■基礎収入
上で述べたとおり,逸失利益は,将来にわたって得られるはずであった利益を計算する作業になります。
そこで,この計算にあたっては,事故前年度の収入が将来にわたって得る利益として参照されることが多いです。事故前年度の収入が将来増減することが明らかであれば,この点が考慮されるべきことは当然です。
このような理由から,基礎収入の算出のために,事故前年度の収入資料を確認します。給与所得者であれば源泉徴収票,事業所得者であれば確定申告資料,その他に住民税納税通知書,通帳の写しなども資料として用いることが考えられます。なお,給与明細や休業損害証明書のみにより事故前年度の収入を計算する場合,賞与や年間の所得の変動が反映されない可能性がありますので注意が必要です。
事業所得者や会社役員の基礎収入については相手方保険会社と争いになることがあります。

■労働能力喪失率
労働能力喪失率とは,当該後遺障害によりどれだけ労働能力を喪失したか(就労が不可能となったか)を割合で示したものです。労働能力喪失率の認定に際しては,国の定める労働能力喪失立表が参照されることが多く,実務上も自賠責機関の認定した等級と同表の喪失率に基づいて解決がされることが多いです。
もっとも,当該障害の具体的内容及び被害者の具体的な仕事の内容との相関関係を加味して具体的に認定がされるべきことはいうまでもありません。

■労働能力喪失期間
労働能力喪失期間とは,当該後遺障害によりどれだけの期間労働能力を喪失するかの期間を言います。原則として67歳まで就労可能であると考え,67歳までの期間を計算します。もっとも,職務の内容により,より長く就労が可能であったり,後遺障害の内容により期間がより短くなると考えられるケースがあります。

■まとめ
逸失利益は,将来の可能性を論じるものですので,他の損害項目と比較して,より詳細に職務内容と後遺障害の内容との関係を検討する必要があります。また,症状固定から一定期間が経過している場合には,現実的に固定後どのような支障が労務に出ているのかを検討することも非常に有効です。

(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 粟津 正博)

自営業者の逸失利益について教えてください

2016年06月17日
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自営業者の逸失利益について教えてください
確定申告書等を元に基礎収入を算出して計算します

【自営業者の逸失利益】


■逸失利益
後遺障害が認定された場合,将来にわたり,労働に支障を来すのものと考えられます。将来就労する際に,事故がなければ得られるはずであったのに,事故によって得ることができなくなった利益を逸失利益といいます。
逸失利益は,基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間により求められます。自営業,事業所得者の場合,計算の基礎とすべき基礎収入をどのように計算すべきか,しばしば問題になります。

■計算方法
上で述べたとおり,逸失利益は,将来にわたって得られるはずであった利益を計算することというフィクションの世界になりますが,正確な数字は(事故に遭ってしまったので)誰にもわかりません。そこで,この計算にあたっては,事故前年度の収入を参照して,将来にわたって得るはずの利益を推測することが多いです。なお,事故前年度の収入が将来増減することが明らかであれば,この点が当然考慮されるべきです。

■自営業者の事故前年度収入
実務上,自営業者の事故前年度の収入の認定には,税務上の確定申告書を使用することが多いです。
すなわち,まず確定申告書第一表の所得金額が事故前年度の収入になりますので,この金額を参照します。ただし,利子や配当等は,事故がなくても得られるはずの収入と考えられますので,この金額から控除しなければなりません。

■固定経費の加算
上記所得金額は,経費を既に差し引いたものですが,営業をしなくても計上されると考えられる経費(固定経費といいます。)は,上記所得金額に加算します。通常後遺障害により,営業が縮小すれば,経費もかからなくなるものですが,固定経費のみは固定の金額として被害者の負担となるものだからです。固定経費の例としては,地代家賃や減価償却費,損害保険料などがあげられます。経費については,白色申告収支内訳書,青色申告決算書などから計算します。

■まとめ
以上のとおり,自営業者の場合,給与所得者と異なり,基礎収入の計算に一定の作業が必要です。相手方保険会社との交渉では,固定経費の判断について争いになるケースが散見されます。
特に,申告書上低い所得金額となっている例が見受けられますが,このような場合,将来の手取り金額や,固定経費の判断をしっかりと行う必要があります。また,被害者本人の寄与率や所得金額の変動が大きい場合(事故前年度の収入が極端に多かった又は少なかった)など争いになるケースも多いですので,是非専門家にご相談ください。




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 粟津 正博)
プロフィール
弁護士法人よつば総合法律事務所
地域最大級の弁護士14名が所属しております。事務所名の「よつば」は事務所に関わる人が皆幸せになるようにとの思いから名付けました。お気軽にご相談ください。
柏事務所:千葉県柏市(柏駅徒歩3分)
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