カテゴリー: 逸失利益

会社役員が交通事故に遭った場合,後遺障害逸失利益はどうなりますか?

2017年09月21日
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会社役員が交通事故に遭った場合,後遺障害逸失利益はどうなりますか?

会社役員にも後遺障害逸失利益が認められますが,基礎収入の算定が問題となります。役員報酬を「労働対価部分」と「利益配当部分」に分けて,「労働対価部分」のみを基礎収入の算定対象とします。





 会社役員 後遺障害逸失利益 



◆会社役員にも後遺障害逸失利益が認められる



後遺障害逸失利益とは,交通事故で後遺障害が残って労働能力が低下するために,本来得られるはずだったのに得られなくなってしまった収入のことです。

後遺障害逸失利益は,事故前に労働をして対価を得ていた人に認められます。そして,その計算は事故前の実際の収入を基礎とします。




そうなると,会社役員の場合にも事故前に役員の仕事をしていたのだから,当然後遺障害逸失利益が認められると考えられます。

ただ,会社役員が支給を受けているのは,労働者の「給料」とは性質が異なります。

役員報酬には,利益配当的な給付が含まれているためです。さらに,会社にお金を残さないために(法人の税務対策),あるいは同族経営の会社では人間関係から,役員報酬を高く設定するということもあります。役員報酬のうちこうした部分は労働対価とはいえないという理屈です。

しかし,会社役員であっても実際に会社に労働力を提供していることも多く,その場合には役員報酬の中に「労働対価部分」が含まれることも事実です。




そこで,会社役員の場合,役員報酬を「労働対価部分」と「利益配当部分」に分けて,「労働対価部分」についての後遺障害逸失利益を計算するというやり方が一般に行われています。







◆労働対価部分はどうやって計算するのか?


後遺障害逸失利益の計算式は,以下の通りです。
事故前の基礎収入×労働能力喪失率×就労可能年数に対応するライプニッツ係数


そこで,後遺障害逸失利益を計算するときには,被害者の事故前の基礎収入を明らかにしなければなりません。

役員報酬の場合「労働対価部分」がいくらになるのかが問題です。もちろん,会社の役員報酬規程などに「労務対価部分は●●円,利益配当部分は●●円」と書いてあるわけはありません。仮に書いてあったとしても,その記載だけで決まるとは考えられません。




これについては、個別のケースに応じて具体的に計算する必要があるのですが、以下のような要素を考慮して決定します。

会社の規模 , 同族会社か否か , 会社の利益状況 , 被害者の地位・ 職務内容 , 被害者の年齢 , 被害者の役員報酬の金額 , 他の役員や従業員の職務内容と報酬や給料の金額
同族会社の場合:親族役員と非親族役員の報酬額の差異 , 事故後の被害者と他の役員の報酬額の推移 , 類似会社における役員報酬の支給状況






◆実際の役員の後遺障害逸失利益についての裁判例


裁判例では,事故当時に63歳であった会社代表取締役の基礎収入として,事故前の月収の6割を認めたものなどがあります(大阪地裁平成13年9月18日)。

また,小規模な会社で社長が他の従業員と同様の労働をしている場合や役員が会社の中心的な研究者であった場合などには,全額を基礎収入とするものもあります。(東京地裁八王子支部平成16年3月25日、大阪地裁平成12年9月7日、東京地判平成23年3月24日など)

御質問とは離れますが,被害者が死亡したときの逸失利益については,死亡とともに役員の地位を失うわけですから,役員報酬全てを基礎収入とすべきだとの見解もあります。




以上のように,会社役員でも後遺障害逸失利益を請求できますし,減額をされないケースもあるので,弁護士に相談することをお勧めします。




▼参考記事
・会社役員の交通事故の解決事例
・逸失利益と後遺障害
・休業損害・逸失利益について




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故に遭った時は無職でした。その場合,後遺障害逸失利益は認められますか?認められるとしたら,それはどのような場合ですか?

2017年09月15日
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交通事故に遭った時は無職でした。その場合,後遺障害逸失利益は認められますか?認められるとしたら,それはどのような場合ですか?

無職の場合,基本的には後遺障害逸失利益が認められませんが,労働能力と労働意欲があって,就労の蓋然性がある場合には,認められる可能性もあります。




 後遺障害逸失利益 



◆基本的には,無職の人には認められない


後遺障害逸失利益とは,交通事故の後遺障害によって労働能力が低下して,得られなくなってしまった将来の収入のことです。

後遺障害が残ると身体が不自由になるため,それまでと同じようには働けなくなり,本来得られるはずだった収入が失われてしまうという考え方です。

後遺障害逸失利益は,就労可能年齢である67歳までの分が認められるのが一般的です。




このようなことから,後遺障害逸失利益は,交通事故前に現実に働いて収入があった人に認められるのが基本です。

無職無収入の人には当然認められませんし,収入があっても株式や不動産収入だけで生活している人は,後遺障害が残って労働能力が下がったとしても,将来の減収が生じるとは考えられないので,認められません。







◆無職者でも後遺障害逸失利益が認められるケース


それでは,交通事故当時に無職だったなら,どのような場合でも後遺障害逸失利益を支払ってもらうことができないのでしょうか?

無職といっても,いろいろな状態があります。はじめから働く意欲がない人,働く能力が無い人などもいますが,たまたま失業中だったということもありますし,就職活動中であったり既に内定していたりすることもあります。




このように,「実際に就労意欲があって就労する能力がある人」についてまで,一律に「後遺障害逸失利益は認めない」とするのは不合理です。

そこで,以下のようなケースでは事故当時無職であっても,後遺障害逸失利益が認められます。

・就労意欲がある ・就労能力がある ・事故当時において、実際に就労する蓋然性があった

たとえば,たまたま失業中で就職活動中だったケース,すでに内定をもらっていたケースなどでは,無職者であっても後遺障害逸失利益を払ってもらいやすいです。





◆基礎収入の考え方


無職者が後遺障害逸失利益を請求するとき,「基礎収入」をどのように計算すべきかが問題です。実際に働いていた人であれば,事故前の実収入を基礎としますが,無職だった人にはそのような収入がないからです。

この場合,失業者であれば失業前の収入を基準としますし,そうでない場合には賃金センサスの平均賃金を用いて計算することが多いです。

また,平均賃金を使って計算するとき,就労の蓋然性の証明の程度によっては,平均賃金の100%ではなく,8割や7割などに減額されることもあります。




以上のように,無職者であっても後遺障害逸失利益が認められる可能性があります。
相手から「支払いができない」と言われて納得できないと感じているなら,弁護士に相談することをお勧めします。




▼参考記事
・失業中の交通事故。交渉の結果,休業損害が認められた解決事例
・休業損害・逸失利益について
・休業損害・無職者について(裁判基準)




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故の死亡逸失利益の計算における生活費控除率とは何ですか?

2017年07月07日
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交通事故の死亡逸失利益の計算における生活費控除率とは何ですか?

生活費控除率とは,死亡逸失利益の計算のときに,被害者の生活費として必要だった金額を差し引くための割合のことです。




 生活費控除率 

◆生活費控除率とは


交通事故で死亡すると,相手に対して逸失利益を請求することができます。

逸失利益とは,死亡したことにより,将来得られるはずだったのに得られなくなってしまった収入のことです。逸失利益を計算するときには,就労可能年数に対応する収入の計算をします。

しかし,死亡すると,本来かかるはずだった生活費が不要になります。

そこで,逸失利益からは,この不要になった生活費の分を差し引かなければなりません。そのために生活費控除を行います。そして,生活費控除率とは,この生活費の控除を行うための計算割合です。




死亡逸失利益を計算するときには,
基礎収入×就労可能年数に対応するライプニッツ係数×(1−生活費控除率)で計算します。

そこで,生活費控除率が多ければ多いほど,死亡逸失利益の金額は減ってしまうことになります。







◆生活費控除率の割合


次に,生活費控除率の割合を見てみましょう。
これについては,自賠責保険基準と任意保険基準,弁護士・裁判基準で異なる割合が採用されています。

(1)自賠責基準
自賠責基準での生活費控除率は,以下のとおりです。被害者に被扶養者がいるかいないかで区別されます。
・被害者に被扶養者がいる場合 35%
・被害者に被扶養者がいない場合 50%





(2)任意保険基準
次に,任意保険基準による生活費控除率を見てみましょう。
これについては各任意保険会社によっても異なりますが,概ね次のような数字が採用されています。

任意保険基準では,被害者に被扶養者がいたかどうかや,被扶養者の人数によって生活費控除率が異なります。

・被害者に被扶養者が3人以上いる場合 30%
・被害者に被扶養者が2人いる場合 35%
・被害者に被扶養者が1人いる場合 40%
・被害者に被扶養者がいない場合 50%




(3)弁護士・裁判基準

それでは,慰謝料が最も高額になる弁護士・裁判基準ではどのようになるのでしょうか?

弁護士・裁判基準では,被害者が一家の大黒柱であったかなかったかによって,異なる割合が採用されています。また,任意保険基準と同様,被扶養者の有無や数によっても生活費控除率が異なります。

《被害者が一家の大黒柱であったケース》
・被扶養者が1人 40%
・被扶養者が2人以上 30%



《被害者が一家の大黒柱ではなかったケース》

・女性の場合 30%
・男性の場合 50%





以上のように,生活費控除率が大きくなると逸失利益が半額になることもあるので,生活費控除率がどのくらいになるかは重大な問題です。

弁護士・裁判基準を使うと被害者にとって有利になるケースが多いので,弁護士に相談してみてください。




▼参考記事
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:死亡事故の場合における生活費控除率
・解決事例:死亡された方の解決事例
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:交通事故被害がない社会




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故で死亡した場合,逸失利益の計算方法はどうなりますか?

2017年07月06日
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交通事故で死亡した場合,逸失利益の計算方法はどうなりますか?

交通事故で被害者死亡による逸失利益は,以下のような計算方法となります。
 基礎収入×就労可能年数に対応するライプニッツ係数×(1−生活費控除率)





 死亡逸失利益


◆死亡逸失利益とは



交通事故が原因で被害者が死亡すると,逸失利益が発生します。

逸失利益とは,交通事故で死亡してしまって働けなくなったために,得られなくなってしまった収入のことです(年金を受け取ることができなくなったことによる逸失利益も考えられますが,ここではお書きしません。)。




事故前にもともと働いていた人は,労働によって収入を得ていましたが,事故で死亡すると,その収入が失われます。そこで,本来なら就労可能年数まで働いて得られたはずの収入は,損害として認められています。これが,死亡逸失利益です。

死亡逸失利益が認められるのは,基本的に事故前に働いていた人ですが,子どもや主婦の場合でも逸失利益が認められます。







◆死亡逸失利益の考え方


交通事故の死亡逸失利益は,どのようにして計算するのでしょうか?
まずは,被害者の基礎収入を算定します。その上で,就労可能年数分の収入を計算します。

ただ,実際に収入を得るときには,毎年少しずつお金を得ていくものですが,賠償金として支払われる場合には一括で受けとることになるので,その分の中間利息を控除しなければなりません。

また,被害者には生活費が必要だったはずですが,死亡すると生活費は不要になるので,その分も差し引く必要があります。



そこで,死亡逸失利益の計算式は,以下のようなものとなります。
事故前の基礎収入×就労可能年数に対応する中間利息控除指数(ライプニッツ係数)×(1−生活費控除率)




◆基礎収入とは


以下で,計算に用いられる要素をもう少し詳しく見てみましょう。

逸失利益の基礎収入は,原則的には交通事故前の現実の収入を基準とします。


たとえばサラリーマンや自営業者などの場合には,わかりやすいです。
被害者が子どもや主婦などであった場合には,賃金センサスの全年齢の男女や男性,女性の平均賃金を使って基礎収入を計算します。







◆ライプニッツ係数とは


ライプニッツ係数とは,中間利息を控除するための特殊な係数です。

中間利息控除とは,お金を先に受けとることによって運用利益を先に受けとってしまうことになるので,その分の利息を差し引くことです。

ライプニッツ係数については表にまとまっているので,その表に記載してある就労可能年数に対応する数字を使って計算します。







◆生活費控除率とは


生活費控除率とは,事故で死亡したことによって生活費がかからなくなる分を控除するときの割合のことです。

生活費控除率が高いと,受けとる逸失利益が少なくなります。
生活費控除率は,被害者がどのような属性の人であったかによって異なる数字が採用されるので,ケースバイケースの認定が必要です。







▼参考記事
・交通事故HP:死亡事故被害者の救済(解決事例含む)
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:被害者参加人の代理人として,刑事裁判に参加
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:死亡事故による慰謝料
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:死亡事故の場合における生活費控除率




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故で醜状痕が残り,後遺障害の等級がつきました。醜状痕でも逸失利益は認められますか?

2017年07月05日
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交通事故で醜状痕が残り,後遺障害の等級がつきました。醜状痕でも逸失利益は認められますか?

交通事故の怪我が完治せずに醜状痕が残り,外貌醜状として後遺障害が認定されることがあります。外貌醜状だからという理由だけで逸失利益が認められないということはありません。




 醜状痕 逸失利益 


◆外貌醜状とは


交通事故の怪我が原因で,顔や頭などの露出部分に醜状痕が残るケースがあります。

このような場合,「外貌醜状」として後遺障害の認定を受けることができます。外貌というのは,頭部,顔面部,頸部のような,上肢及び下肢以外の日常露出する部分のことです。




外貌醜状の後遺障害が認められるには,顔面や頭部,頸部のうち,日常露出している部分に醜状が残ることが必要です。
髪の毛などで隠れる場合には,日常露出している部分とはいえないので外貌醜状とは認められません。







◆外貌醜状の後遺障害の等級


それでは,外貌醜状が認定されると,どの程度の後遺障害が認められるのでしょうか?
その等級を確認していきます。
外貌醜状で認定を受けられる可能性のある後遺障害等級は,以下の3つです。
(1)7級12号:外貌に著しい醜状を残すもの

(2)9級16号:外貌に相当程度の醜状を残すもの

(3)12級14号:外貌に醜状を残すもの




◆外貌醜状で後遺障害が認定される要件


以下では,それぞれに認定される要件を見てみましょう。



(1)7級12号 著しい醜状を残すもの
著しい醜状として7級12号が認定されるための要件は,以下の通りです。

・頭部に手のひらの大きさ(手指は含みません。)以上の瘢痕が残った
・頭蓋骨に手のひら大以上の瘢痕が残った
・顔面部に,鶏卵大以上の瘢痕が残った
・顔面部に10円硬貨大以上の組織陥没が残った
・頸部に,手のひら大以上の瘢痕が残った





(2)9級16号 相当程度の醜状を残すもの
相当程度の醜状を残すものとして9級16号が認定されるための要件は,以下の通りです。

・顔面部に長さ5センチメートル以上の線状痕が残った




(3)12級14号 醜状を残すもの
醜状を残すものとして12級14号の後遺障害は,以下のようなケースで認定されます

・頭部に鶏卵大面以上の瘢痕が残った
・頭蓋骨に鶏卵大面以上の欠損が生じた
・顔面部に,10円硬貨大以上の瘢痕が残った
・顔面部に3センチメートル以上の線状痕が残った
・頸部に,鶏卵大面以上の瘢痕が残った








◆逸失利益が問題になる理由


外貌醜状で後遺障害が認定された場合には,逸失利益が認められるかどうかが問題になりやすいです。
外貌に問題が起こるだけなので,労働能力には影響しないのではないかという問題があるからです。




ただ,モデルなどの人の目に触れる仕事をしている方は,外貌に醜状が残ると仕事ができなくなったり制限されたりします。営業マンのケースなどでも,外貌に醜状が残ると不利になるでしょう。




外貌醜状のケースでも逸失利益を請求できる事案は少なくありません。
交通事故が原因で外貌醜状が残った場合,相手の保険会社から「逸失利益は発生しない」と主張されても即座に受け入れる必要はありません。弁護士に相談してみてください。




▼参考記事
・解決事例:頭部外傷後の傷跡について9級16号の後遺障害が認められた事例
・解決事例:顔に怪我を負われた事例
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:被害に遭われた方の将来を考える

(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故後も収入の減少はありませんでしたが,逸失利益は認められますか?

2017年07月04日
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交通事故後も収入の減少はありませんでしたが,逸失利益は認められますか?

収入の減少がない場合,基本的には逸失利益は認められませんが,本人の努力によって収入減少が起こらないようにしているようなケースでは,逸失利益が認められることもあります。




 逸失利益 


◆逸失利益とは


逸失利益とは,交通事故で後遺障害が残った場合,労働能力の低下により減少してしまった分の収入のことです。

交通事故に遭って後遺障害が残ると,その分労働能力が失われます。


すると,その分得られる収入が減るので,その分が損害となります。そこで,その得られなくなった収入を逸失利益として,相手に支払い請求することができます。

逸失利益とは,事故によって得られなくなった収入なので,事故前に収入があった人に認められるのが基本です。逸失利益は,各後遺障害の等級に定められた労働能力喪失率を基準として計算します。







◆収入減少がないなら逸失利益は認められない


逸失利益は,失われた収入のことです。そこで,後遺障害が残ったことによって労働能力が失われて,収入が減少することが前提となっています。


実際に収入減少がない場合には,基本的に逸失利益は認められません。
過去の最高裁の判例でも,収入減少がない場合には逸失利益を認めないとするものがあります(最判小昭42.11.10)。







◆収入減少がなくても逸失利益が認められるケース


ただ,実際の収入減少がなくても,それが被害者本人の努力によって維持されているケースがあります。

この場合,本来なら労働能力が失われて収入が減少しているはずです。もし,逸失利益を認めなかったら,努力をしない方が損害賠償金を多くもらえることになって不合理です。そこで,事故後収入減少がなくても逸失利益が認められる例はあります。

たとえば,最判小昭和56.12.22では,特段の事情がある場合には,実際の収入減少がない場合にも逸失利益を認める余地があると判断しています。

具体的には,以下のような場合に収入減少がなくても逸失利益を認める余地があるとしています。

●収入が減収しないように本人が特に努力しているだけであり,本来なら減収が起こっている
●今後の昇給・昇任・転職などの際に,不利益取扱を受ける可能性がある


上記の基準を参考にして、ケースバイケースで逸失利益の有無が判断されることになります。

たとえば,バイク便勤務の男性が事務職に転職して増収になったケースで,それは本人の特別の努力と幸運によるものであるから,逸失利益を認めた事案(東京地裁平14.8.28)や,信用金庫の営業係長の事案で,減収が起こっていないのは本人の努力によるものである上,将来の昇進などに対する影響が予想される場合に逸失利益を認めたケース(東京地裁平20.3.11)などがあります。




このように,減収がない場合でも逸失利益が認められる可能性はあります。しかし,その判断はケースバイケースで、非常に難しいです。弁護士に相談することをおすすめします。




▼参考記事
・交通事故HP:逸失利益と後遺障害
・交通事故HP:交通事故の逸失利益
・交通事故HP:交通事故による後遺障害の解説




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故で後遺障害になってしまいました。高齢者の場合の逸失利益は,どのように計算すればよいですか?

2016年12月02日
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交通事故で後遺障害になってしまいました。高齢者の場合の逸失利益は,どのように計算すればよいですか?

逸失利益の計算の際には,いつまで働けるかという就労可能年数が問題となりますが,高齢者の場合,これを何歳までとするかが問題になります。




 高齢者の逸失利益 


◆高齢者の逸失利益が認められにくい理由


交通事故で後遺障害が残ったり死亡したりすると,逸失利益の支払いを受けることができます。

逸失利益とは,事故によって働けなくなったことにより,得られなくなってしまった将来の収入のことで,通常は,就労可能年数である18歳から67歳までの間の分の賠償が認められます。

しかし,高齢者の場合,逸失利益が認められにくいケースがあり,また計算方法も若年者とは異なる点があります。

そもそも高齢者の場合,将来にわたって働き続けることが予定されないことが多いですし,もともと高齢ならいつまでの分を逸失利益として認めるか,という問題もあります。

そこで,高齢者が後遺障害を負ったり死亡したりしても,逸失利益が認められないケースが起こってくるのです。






◆高齢者で逸失利益が認められる場合


高齢者でも,逸失利益が認められるケースがあるので,以下ではそれがどのような事例か,具体的に見てみましょう。

まず,事故前に高齢者が実際に働いていたケースです。この場合には,実収入を基準として,高齢者の逸失利益が認められます。

これに対して,実際には働いていなかったケースでは逸失利益が認められない場合が増えてきます。
実際に働いていない高齢者に逸失利益が認められるためには,過去に就労実績があることと,今後就労する蓋然性が高いという2つの要件が必要となります。




たとえば,事故の前年度まで自営業をしていても,すでに廃業しているケースでは逸失利益は認められにくいです。これに対し,過去にサラリーマンとして働いており,技術を持っていて,具体的にある会社に就職する予定があったケースなどでは,逸失利益が認められる可能性があります。






◆高齢者の逸失利益の計算方法



高齢者の逸失利益の計算方法をご紹介します。
逸失利益の計算の際には,いつまで働けるかという就労可能年数が問題となりますが,高齢者の場合,これを何歳までとするかが問題です。

まず被害者の高齢者が67歳以上の場合には,平均余命の2分の1の期間を採用して計算します。
被害者の高齢者が67歳以下の場合には,67歳までの期間か平均余命の2分の1を比較して,長い方を採用します。

たとえば,65歳の男性の場合,平均余命は18.14歳なので,その2分の1は9.7歳です。これに対して現在の年齢と67歳との差は2歳なので,平均余命の2分の1の方が長くなり,こちらが採用されます。
小数点以下は切り捨てるので,就労可能年数は9年となります。




また,採用する基礎収入について,実際に収入がある高齢者の場合には実収入を基準としますが,そうでないケースでは,賃金センサスの男女別年齢別平均賃金を用いることが多いようです。




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 前田 徹)

交通事故に遭い,以前のように働けなくなりました。逸失利益の基礎収入は,どのように計算すれば良いのでしょうか?

2016年12月01日
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交通事故に遭い,以前のように働けなくなりました。逸失利益の基礎収入は,どのように計算すれば良いのでしょうか?

被害者の事故前の基礎収入を基準としますが,属性によって計算が異なります。




基礎収入の計算 


◆逸失利益と基礎収入


交通事故に遭ったとき,後遺障害が残ったり死亡したりした場合には,逸失利益が発生します。
逸失利益とは,事故によって働けなくなったことにより,本来得られるはずだったのに得られなくなった収入のことです。

逸失利益を計算する際には,被害者の事故前の基礎収入を基準とします。

具体的には,以下のとおりの計算方法となります。

逸失利益=事故前の基礎収入×労働能力喪失率×就労可能年数に対応したライプニッツ係数(後遺障害のケース)


そこで,逸失利益計算の際には,基礎収入をどのようにして計算すべきかが問題となります。
この点については,被害者の属性によって異なるので,以下で個別に見てみましょう。







◆基礎収入の計算方法



@サラリーマンの場合

サラリーマンや公務員などの場合,基礎収入は計算しやすいです。この場合,基本的には交通事故の前年度の実際の収入を基礎収入とします。

事故前年度の源泉徴収票の記載内容を見て,その収入額をそのまま基礎収入とします。

事案によっては,事故前3年分〜5年分などの源泉徴収票や市県民税課税証明書の記載内容を照らし合わせて,それらを平均した数値を基礎収入とすることもあります。




A自営業者の場合

自営業者の場合にも,基本的には事故の前年度の実際の収入を基礎収入とします。この場合,基本的には事故の前年度の確定申告書に記載してある申告所得の記載内容から,基礎収入を割り出します。

なお,申告額と実収入額に違いがある場合に,実収入額だと主張する金額の所得があったことを証明することができれば,実収入額を基準にしてもらうことも不可能ではありませんが,実際の裁判の場面では,ほとんど認められないと思われます。

また,事故前数年分の確定申告書の平均値をとって基礎収入とすることもあります。




B専業主婦の場合

専業主婦の場合でも逸失利益が認められるケースがあります。この場合,サラリーマンなどのケースと異なり,実際の収入がないので,実収入を基礎収入とすることができません。
そこで,賃金センサスの全年齢の女性の平均賃金を使って基礎収入とします。だいたい年収364万円くらいになります(平成26年度調査)。

兼業主婦の場合,実収入が上記の女性の平均賃金以下のケースでは専業主婦と同様,全年齢の女性平均賃金を使いますが,実収入がこれを超える場合には,実収入を基準とします。

専業主夫の場合には,女性の場合と比べて不平等とならないように,全年齢の女性の平均賃金を使って基礎収入とします。




C幼児や学生の場合

被害者が幼児や学生の場合,基礎収入は男女別の平均賃金を使います。
ただ,男女の格差を是正するため,年少の幼児の場合,女児の基礎収入には男女計の平均賃金を用いて基礎収入とすることが多いようです。




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 前田 徹)

逸失利益を算定する際に出てくる賃金センサスとは何ですか?

2016年11月30日
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逸失利益を算定する際に出てくる賃金センサスとは何ですか?

賃金センサスとは,国の厚生労働省が調査している国民の平均賃金をまとめた統計表です。




 賃金センサス 


◆賃金センサスとは


賃金センサスとは,国の厚生労働省が調査している国民の平均賃金をまとめた統計表です。

昭和23年から,毎年調査が行われていて,各事業所の地域や規模ごとに,職種,労働者の性別,学歴や雇用形態などによって分類しています。


賃金センサスには,以下のような項目が記載されています。
@労働者の年齢 A勤続年数 B労働時間数 C給与額と年間賞与額 D事業所の労働者数





◆後遺障害で賃金センサスが必要になるケース


交通事故の後遺障害の計算の際,上記の平均賃金の統計表である平均賃金が必要になるケースがあります。それは,被害者が専業主婦や幼児,学生など年収を確定することが難しい場合です。


逸失利益の計算の際には,事故前の基礎収入の額が基準となりますので,サラリーマンや自営業者などの場合には,実際の収入を基礎収入として利用することができます。

しかし,専業主婦や学生,幼児などの場合には,実際には収入がなく実収入を基準にすることができないので,賃金センサスの平均賃金を使って計算することが必要になります。






◆専業主婦の基礎収入


専業主婦の逸失利益を計算する場合には,賃金センサスを利用しますが,具体的にはどの平均賃金を利用するのでしょうか?
これについては,通常は全年齢の女性の平均賃金を用いて計算します。


兼業主婦の場合には,実際の収入が上記の平均賃金を上回るケースでのみ実収入を基準としますが,実収入がそれより低い場合には専業主婦と同様,全年齢の女性の賃金センサス平均賃金を利用します。

専業主夫のケースでも,主婦の場合と不公平にならないように,全年齢の女性の平均賃金を利用して計算します。

全年齢の女性平均賃金は364万円程度です(平成26年度調査)。






◆幼児の基礎収入


幼児や学生の場合にも,実際の収入がないので平均賃金を利用して計算します。
この場合,全年齢の男女別平均賃金を利用することが原則になります。

ただ,全年齢の女性平均賃金は364万円ですが,これに対して全年齢の男性平均賃金は536万円(平成26年度調査)となっており,同じような男女の幼児が死亡した場合であっても,女児の方が男児よりも逸失利益が少ないということになってしまうので,不公平だという問題があります。

そこで,女児の中でも年少(幼児など)の場合には,男女の全労働者の平均賃金を用いて基礎収入とすることが多いです。男女の全年齢の平均賃金は479万円(平成26年度調査)なので,これを利用すると,女児と男児の差をある程度埋めることができます。




以上のように,賃金センサスは,主に実際の収入がない人の後遺障害逸失利益を計算する際に利用する基準となるので,これを機会に覚えておきましょう。




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 前田 徹)

交通事故に遭い,後遺障害14級9号(局部の神経症状)と認定されました。 逸失利益の計算はどのようにすればよいですか?

2016年11月29日
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交通事故に遭い,後遺障害14級9号(局部の神経症状)と認定されました。逸失利益の計算はどのようにすればよいですか?


14級9号の場合の逸失利益の計算方法は,後遺障害の逸失利益計算方法に則って行います。後遺障害の等級ごとに利率の目安が定められているので,ぜひ




【逸失利益:後遺障害14級9号の場合の計算方法】



◆後遺障害14級9号で多いのは「むちうち」被害



交通事故の後遺障害14級9号の逸失利益の計算方法をご説明する前提として,後遺障害14級9号がどのような後遺障害のケースなのかを理解しておきましょう。


後遺障害14級9号は,「局部に神経症状を残すもの」という後遺障害です。
身体の一部分にしびれや痛みなどの神経症状が起こるというものです。


後遺障害14級9号に該当するパターンで最も多いのが,頚椎捻挫等のいわゆる「むちうち」です。
比較的軽い人身事故のケースでは,むちうちによって後遺障害が残ることが多くありますが,そのような場合,たいてい後遺障害の等級は14級9号となります。


そこで,14級9号の場合の逸失利益計算方法を知っておくと,交通事故に遭った際,むちうちで後遺障害が残った場合の賠償金計算方法がわかるので,ここで是非とも覚えておきましょう。






◆14級9号の後遺障害逸失利益の計算方法


14級9号の場合の逸失利益の計算方法は,後遺障害の逸失利益計算方法に則って行いますので,以下ではまず,後遺障害逸失利益の計算方法をご紹介します。

一般的な後遺障害逸失利益の計算方法は,以下のとおりです。

事故前の基礎収入×労働能力喪失率×就労可能年数に対応したライプニッツ係数


事故前の基礎収入は,交通事故前の実際の年収を基準としますが,ケースによっては賃金センサスを利用することもあります。労働能力喪失率は,後遺障害の等級ごとに目安が定められており,14級の場合には一般的には5%となります。
これに,就労可能年数である67歳までの年数に対応した中間利息のための特殊な係数であるライプニッツ係数をかけ算することで,逸失利益を求めることができます。




もっとも,被害者が未就労者,すなわち,幼児や学生の場合,18歳から,又は大学卒業時の年齢から計算します。また,被害者が高齢者であって,67歳までの期間よりも平均余命の2分の1の方が長くなる場合は,平均余命の2分の1の期間を労働能力喪失期間とします。



14級9号の場合

「事故前の基礎収入×5%×就労可能年数に対応するライプニッツ係数」が基本の計算式となりますが,むちうちによる後遺障害の場合には,「就労可能年数に対応するライプニッツ係数」は,5年に対応する4.3295が採用されることが多いです。






◆14級9号の逸失利益計算の具体例



それでは,むちうちなどで多い14級9号の逸失利益計算の具体例を見てみましょう。
事故前の年収が500万円で,事故当時40歳だったサラリーマンがむちうちで14級9号に認定されたとします。

この場合,基礎収入は500万円です。就労可能年数に対応するライプニッツ係数は,5年に対応するライプニッツ係数4.3295となります。

そこで,このケースにおける逸失利益は

500万円×5%×4.3295=1,082,375円となります。




以上のように,14級9号の軽いむちうちのケースでも,逸失利益は高額な金額となるので,きちんと計算して請求することが大切です。




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 前田 徹)

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