カテゴリー: 死亡事故

父が交通事故に遭い死亡しました。父の相続人は子である私だけです。 父には多額の借金があります。相続放棄を考えているのですが,賠償はどうなりますか?

2017年11月09日
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父が交通事故に遭い死亡しました。父の相続人は子である私だけです。
父には多額の借金があります。相続放棄を考えているのですが,賠償はどうなりますか?


相続放棄をすると損害賠償請求はほとんどできなくなってしまいます。




 交通事故で親族が死亡した場合:債務の相続



◆相続放棄の効果


相続をすると,現金,預貯金や不動産などの資産を承継しますが,借金などの負債も一緒に相続されてしまいます。

そこで,親などが借金を残して亡くなると,相続人は借金を支払う義務を負うことになります。

借金を支払いたくない場合には,このケースのように,相続放棄をするか,限定承認という方法を利用するしかありません。

相続放棄は,プラスの資産もマイナスの負債も,一切を相続しないことです。




相続放棄をすると,その人は初めから相続人ではなかったことになるので,相続放棄をすると,借金を相続することはなくなります。

ただ,その場合プラスの資産やその他の権利義務の一切も相続できなくなることが問題です。

損害賠償請求権のような権利は,本来相続の対象となりますが,本件のように,被相続人が損害賠償請求権を持っていたときに相続人が相続放棄をすると,被相続人の損害賠償請求権も相続することができなくなってしまいます。







◆限定承認をするのも1つの方法


相続放棄をすると,借金の支払いはしなくて良くなりますが,損害賠償請求権も相続できなくなることが問題です。

この場合,限定承認という方法を利用する方法があります。

限定承認とは,相続財産の中でプラスの資産とマイナスの負債を清算し,全体としてプラスになる場合にそのプラス部分だけを相続する方法です。差し引きした結果,全体がマイナス(債務超過)になる場合には,相続することがありません。

つまり,相続財産が全体としてプラスになったらプラス部分だけを相続できますが,借金を相続する必要はない,ということです。




そこで本件で限定承認をすると,損害賠償請求の結果回収できる金額が借金額を上回る場合には,借金を超過するプラス部分を相続することができます。

一方,損害賠償請求をしたもののそれによる回収金額が被相続人の借金額を下回るときは,相続人が取得するものはありません。







◆相続放棄と限定承認の期間制限


以上のように,本件で借金を免れながら損害賠償請求権も失いたくない場合には,限定承認が有効です。また,明らかに借金額のほうが大きい場合(債務超過の場合)には,相続放棄をしてもよいでしょう。

相続放棄や限定承認をするためには,期間制限があることに注意が必要です。

具体的には「自分のために相続があったことを知ってから3か月以内」に相続放棄または限定承認の申述という手続をする必要があります。

自分のために相続があったことを知ったというのは,基本的に相続開始を知ったことを意味します。ただし,遺産が全くないと信じており,そう信じていたことに正当事由がある場合には,3か月のカウントは開始しません。




本件では,父親に借金があることも損害賠償請求権があることも知っているので,相続開始(父親の死亡)を知ったときから3か月以内に相続放棄か限定承認をしないと,手続ができなくなり,プラスもマイナスも相続することになってしまいます。

また,3か月の期間制限を伸ばしてもらう手続もあります。お早めに,相続放棄か限定承認かを決めて,家庭裁判所で申述の手続をしましょう。







◆遺族固有の慰謝料


なお,被害者の子が相続放棄をしても,お子様固有の慰謝料請求を加害者に対して行うことはできます。相続放棄をしないときに比べると,損害賠償額は大幅に少なくなります。



▼参考記事
・故人に借金がある場合,相続手続きはどのようになりますか。
・慰謝料・死亡事故について(裁判基準)
・親族固有の慰謝料も認める形で解決した事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故での死亡事故における葬儀費用について教えてください。また,人はいずれ亡くなるのですから,葬儀費用が交通事故の賠償の対象となるのはおかしくないですか?

2017年11月08日
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交通事故での死亡事故における葬儀費用について教えてください。また,人はいずれ亡くなるのですから,葬儀費用が賠償の対象となるのはおかしくないですか?




死亡事故の場合,葬儀費用の一定額までは,交通事故にもとづく損害として賠償の対象となります。標準額は150万円までですが,事案によってはより高額の費用が認められる例もあります。




 死亡事故 : 葬儀費用 



◆交通事故と葬儀費用の因果関係


死亡事故が発生した場合,被害者の葬儀を行う必要があります。

このとき,葬儀費用が交通事故にもとづく損害として認められるのかが問題です。

人はいずれ必ず亡くなり葬儀を行うことになるのだから,ご質問のように,葬儀費用が賠償の対象にならないという考えもあるでしょう。




しかし,交通事故がなかったら,そのタイミングでその内容の葬儀を行うことはなかったわけです。


このことから,葬儀費用と交通事故には因果関係が認められています。

ただ,かかった葬儀関係費用全額が認められるわけではなく,交通事故と因果関係のあるとされる損害の内訳や金額には限度があります。







◆葬儀費用に含まれる損害と標準額


それでは,一般的に死亡事故が発生した場合,どこまでの損害賠償が認められるのでしょうか?

基本的に含まれるのは,火葬料や埋葬料,祭壇代,法名代,読経代,お布施,花代,葬儀広告にかかった費用と49日までの法要にかかった読経代や回向料などです。

これに足して,仏壇購入費や墓地の設置費用なども,葬儀代に含まれることもあります。




葬儀費用の限度額は,裁判基準では150万円です。


そこで,一般的に,150万円を超える葬儀費用をかけたとしても,それを超える部分については自己負担となります。

これらの費用に対し,香典返しや弔問客の接待費用などは,遺族固有の支出と考えられるので,損害の内容には含まれません。







◆150万円を超えて認められるケースがある


葬儀費用の限度額の標準額は150万円ですが,それを超えた金額が認められる例もあります。


仏壇購入費用や墓地の設置費用について,基本の葬儀費用とは別途の損害として賠償を認めた裁判例もありますし,遺体搬送料が葬儀費用と別の損害として認められた例もあります。


大阪地裁平成14年5月14日判決では,加害者側が被害者に対して「葬儀費用を支払う」と言っていたことから安心して葬儀を実施したことなどを評価して,300万円の葬儀費用を認めました(ただし,実際に葬儀関係のためにかけた費用は約750万円に達していました。)。

大阪地裁平成12年8月25日判決では,530万円程度の葬儀費用がかかった事案において,180万円を損害と認定しています。

高知地裁平成12年5月18日判決では,女子高生2人が死亡した事案において,事故の態様や被害者の年齢等も考慮して,それぞれに対し185万1895円,212万9393円の葬儀費用を認めました。


このように,死亡事故の葬儀費用は,標準額はあっても事案によっても異なる判断が行われるため,個別の対応が必要です。弁護士に相談してみて下さい。




▼参考記事
・葬儀関係費用
・死亡事故被害者の救済
・交通事故被害のない社会と技術進歩




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

死亡事故における生活費控除について教えてください。

2017年10月20日
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死亡事故における生活費控除について教えてください。

生活費控除とは,被害者が死亡したことによって生活費がかからなくなるので,その分を逸失利益から控除することです。




 生活費控除 



◆死亡逸失利益とは


生活費控除というのは,死亡逸失利益に関して問題になるものです。

死亡逸失利益とは,被害者が死亡したことによって得られなくなった将来の減収のことです。




交通事故で被害者が死亡すると,その後働くことができなくなります。そうすると,本来得られたはずの収入が得られなくなるということになります。また,年金を受給していた方が交通事故で死亡すると,年金の支給がストップします。交通事故にあわなければ,支給され続けたはずです。

これらは,交通事故によって発生した損害です。
そこで,被害者が死亡すると,死亡逸失利益が損害として発生することになります。




死亡逸失利益のうち労働分を計算するときには,被害者の事故前の年収を基準にします。そして,将来の収入は,労働ができる年数分だけ発生するはずですから,請求できる年数は,就労可能年数分です。

一般的に,就労可能年齢は67歳とされているので,死亡逸失利益として,67歳までの減収分を算定できることになります(事案によって異なりますので,常に67歳までというわけではありません。以下も同様です。)。

死亡逸失利益の年金分を計算するときは,被害者の年齢における平均余命までの年金を計算します。逸失利益の対象となる年金とならない年金がありますが,ここでは割愛します。







◆生活費控除とは


被害者が御存命であれば,収入が得られたはずである一方,生活費も必要となります。したがいまして,得られた収入がすべて手元に残るわけではありません。

そのため,死亡逸失利益を算定するとき,67歳までの収入や平均余命までの年金を全て計上した後,生活費を控除することになります。

生活費を控除せずに全額の逸失利益を損害として賠償させると,被害者遺族が根拠なく利得することになるという理由で,このようなことが行われています。

このように死亡逸失利益算定の場面で生活費を控除することを,生活費控除といっています。




さて,一口に生活費を控除するといっても,実際に被害者のかたが御存命であれば,どの程度の生活費が必要であったのかを具体的に算定するのは無理というものです。そこで,生活費控除を行うときには,生活費控除率という割合を用いているのが実情です。

生活費控除率は,被害者の性別や被扶養者の有無などにより,異なってきます。










◆生活費控除の割合


それでは,具体的な生活費控除率の割合はどのくらいになるのでしょうか?

裁判の基準では,以下のとおりとされていますが,具体的事案で異なって判断されています。

●被扶養者が1人の場合     :40%
●被扶養者が2人以上いる場合  :30%
●被扶養者がいない場合    :@女性の場合 30% A男性の場合 50%


なお,死亡逸失利益(年金分)を算定する際は,これらより生活費控除率を高くすることが多いです。死亡逸失利益は,67歳までの収入や平均余命までの年金額に(1−生活費控除率)を乗じて算定します。

ただ,被害者遺族が任意保険会社と示談交渉をするときには,生活費控除率が上げられてしまうかもしれません。適正な生活費控除を行うためには弁護士に相談しなければならないことがあります。弁護士に相談してみて下さい。




▼参考記事
・逸失利益・生活費控除率について(裁判基準)
・死亡事故の場合における生活費控除率
・死亡された方の解決事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

妻が交通事故で死亡しました。30年年連れ添ってきましたが,実は戸籍の届出をしないままでした。子はなく,妻の両親も祖父母も既に他界し,妻にきょうだいはいません。賠償はどうなりますか?

2017年09月11日
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妻が交通事故で死亡しました。30年年連れ添ってきましたが,実は戸籍の届出をしないままでした。子はなく,妻の両親も祖父母も既に他界し,妻にきょうだいはいません。賠償はどうなりますか?

この場合,相手の保険会社に対し,扶養の利益を侵害されたことについて賠償金を請求することができますし,ご相談者の固有の慰謝料請求もできます。
また,相続財産管理人選任の申立てを行うことも考えられます。





 死亡事故 内縁の配偶者 



◆内縁の配偶者とは


本件のご相談者のようなケースを「内縁の配偶者」といいます。

内縁の配偶者とは,婚姻届出をしていない配偶者のことです。届けを出していないので,戸籍は別になっていますし名字も異なりますが,戸籍の点を除けば夫婦そのものです。「事実婚」ともいわれます。




事実婚であっても,戸籍の届出をした法律婚と同じ扱いを受けられることも多いです。

たとえば内縁の配偶者であっても遺族年金を受けとることができますし,内縁夫婦関係を解消するには法律婚の解消と同様に財産分与請求をすることもできます。







◆内縁の配偶者には相続権がない


しかし,交通事故で内縁の配偶者が死亡したときの内縁の配偶者の地位は,法律婚の配偶者と異なります。内縁の配偶者には,法律上の配偶者と異なり「相続権」がないためです。


死亡した配偶者の損害賠償請求権も相続することができないため,死亡した配偶者の逸失利益や慰謝料などを相手に請求することができません。







◆内縁の配偶者が相手に請求できる賠償金


そうなると内縁の配偶者の場合,相手に何の請求もできなくなってしまうのでしょうか?

実際には,そのようなことはありません。以下で請求できる権利についてご説明します。




【扶養請求権】
内縁関係にある場合,配偶者によって扶養されていることがあります。
その場合,交通事故で配偶者が死亡すると,扶養を受けられなくなります。

そこで,このように扶養を受けることができる利益を侵害されたことを理由に,加害者に対して損害賠償請求ができると判断した判例があります(最高裁平成5年4月6日)。

本件でも,ご相談者が妻に扶養されていた事情があれば,加害者に賠償請求できる可能性があります。




【慰謝料】
内縁の配偶者の場合,死亡した配偶者自身の慰謝料を相続することはできませんが,内縁の配偶者自身の固有の慰謝料が認められます。

民法では,不法行為によって被害者が死亡したときに配偶者の固有の慰謝料を認めていますが,内縁の配偶者もこれに準じて取り扱われるからです。裁判例にも,こういった内縁の配偶者の慰謝料を認めたものがあります(東京地裁平成18年2月7日、大阪地裁平成21年9月30日など)。

そこで,ご相談者の場合にも,加害者に対してご自身の慰謝料を請求することが可能です。










◆相続財産管理人制度の利用の可能性


御質問の事例では,被害に遭われた方には相続人がいないと思われます(本当にいないかどうかは別途調査が必要です。)。そうであれば,被害者自身の慰謝料や死亡逸失利益などを請求する権利を相続する人もいないことになります。


このように相続人が存在しないとき,死亡した人の財産(慰謝料請求権や死亡逸失利益請求権といった損害賠償請求権も財産です。)を管理する人を選任するという制度があります。相続財産管理人選任申立てという手続です。

この手続をすると,相続財産管理人が被害者の損害賠償請求権を行使して賠償金を受けます。相続財産管理人の業務が終了したとき,相続財産管理人の手元に残った財産は国に納めるのが原則です。




しかし,特別縁故者に対する財産分与の申立てという制度があります。

これは,相続人なくして死亡した人と特別の関係にあった人が,相続財産管理人の手元に残った財産を自己に分与することを求める手続です。

家庭裁判所が特別縁故者であると認めれば,ある程度の財産の分与が認められます(事故による賠償金が全て分与されるとは限りません。)。内縁の配偶者ではありませんが,この方法によったのではないかと思われる裁判例が公表されています(大津家審昭和52年9月10日家裁月報30巻2号141頁)。

死亡事故における相続財産管理人制度の利用の例はあまりないようです。




このように,交通事故で被害者が死亡したとき,内縁の配偶者であっても何の請求もできないということはないので,諦める必要はありません。まずは弁護士に相談してみてください。




▼参考記事
・相続人以外の同居親族もいた死亡事故の解決事例
・死亡事故の無料法律相談Q&A
・死亡事故被害者の救済




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

死亡事故の慰謝料(死亡慰謝料)について適正な金額を教えてください。

2016年06月09日
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死亡事故の慰謝料(死亡慰謝料)について適正な金額を教えてください。
死亡慰謝料の金額については,目安となる一定の基準金額はあるものの,具体的な事情
 によって慰謝料の金額が増減額されることがあります。

【死亡慰謝料の金額】



■死亡慰謝料の金額はいくらか
死亡慰謝料の金額については,目安となる一定の基準額があります。
裁判所の判断基準としてよく使用される損害賠償額算定基準(平成28年版・いわゆる「赤い本」)によると,死亡慰謝料の金額は,一家の支柱であれば2800万円,母親・配偶者であれば2500万円,その他は2000〜2500万円という目安があります。なお,「その他」とは,たとえば独身の男女,子供,現に職業に就いていない68歳以上の老齢者等が該当します。
このように,被害者の家族構成や生活状況によって,死亡慰謝料の基準金額が変わってきます。

■死亡慰謝料の基準額から増減される
死亡慰謝料の基準金額は,具体的な事情によって増減額されることがあります。そのため,慰謝料が増額される事情がある場合には,慰謝料の増額を求める主張を忘れずにする必要があります。
たとえば,酒酔い運転が原因の事故や,ひき逃げ事故,加害者が事故後に責任を認めず被害者側の名誉を傷つける言動をとった事故など,加害者の悪質性が強い場合には,死亡慰謝料が増額されることがあります。

■死亡慰謝料が増額された裁判例
加害者の悪質性等を理由に死亡慰謝料が増額された事例として,たとえば次のような裁判例があります。(福岡高裁平成27年8月27日判決)。
被害者は,68歳の男性で,年金受給者ですでに仕事はしていませんでした。
被害者は,青信号交差点を自転車に乗って横断していたところ,赤信号無視で交差点に進入してきた加害者の車に衝突されました。被害者は事故が原因で死亡したため,被害者の妻と子らのが加害者に損害賠償請求をしたという事案です。
裁判所は,加害者が操舵段階で明らかに客観的事実と異なる事実を説明した点や,裁判段階で不誠実な対応をとったことなどを考慮して,死亡慰謝料のうち被害者分を2150万円と認定しました。

■自賠責の基準
自賠責保険金の支払基準として,死亡による損害について被害者1名につき3000万円という基準があります。
この自賠責保険でいう3000万円という金額は,死亡慰謝料の基準金額ではなく,葬儀費用,および逸失利益,死亡慰謝料,遺族の慰謝料を合わせた総額の支払限度額ですので,混同しないようにしましょう。
なお,自賠責保険の基準金額は,一般的に弁護士が関与したときの基準よりも低額であることが多いので,何も知らないまま自賠責保険の基準に近い金額で示談しないよう注意が必要です。


(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 今村 公治)
プロフィール
弁護士法人よつば総合法律事務所
地域最大級の弁護士14名が所属しております。事務所名の「よつば」は事務所に関わる人が皆幸せになるようにとの思いから名付けました。お気軽にご相談ください。
柏事務所:千葉県柏市(柏駅徒歩3分)
千葉事務所:千葉市(千葉駅徒歩3分)

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