カテゴリー: 死亡事故

妻が交通事故で死亡しました。30年年連れ添ってきましたが,実は戸籍の届出をしないままでした。子はなく,妻の両親も祖父母も既に他界し,妻にきょうだいはいません。賠償はどうなりますか?

2017年09月11日
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妻が交通事故で死亡しました。30年年連れ添ってきましたが,実は戸籍の届出をしないままでした。子はなく,妻の両親も祖父母も既に他界し,妻にきょうだいはいません。賠償はどうなりますか?

この場合,相手の保険会社に対し,扶養の利益を侵害されたことについて賠償金を請求することができますし,ご相談者の固有の慰謝料請求もできます。
また,相続財産管理人選任の申立てを行うことも考えられます。





 死亡事故 内縁の配偶者 



◆内縁の配偶者とは


本件のご相談者のようなケースを「内縁の配偶者」といいます。

内縁の配偶者とは,婚姻届出をしていない配偶者のことです。届けを出していないので,戸籍は別になっていますし名字も異なりますが,戸籍の点を除けば夫婦そのものです。「事実婚」ともいわれます。




事実婚であっても,戸籍の届出をした法律婚と同じ扱いを受けられることも多いです。

たとえば内縁の配偶者であっても遺族年金を受けとることができますし,内縁夫婦関係を解消するには法律婚の解消と同様に財産分与請求をすることもできます。







◆内縁の配偶者には相続権がない


しかし,交通事故で内縁の配偶者が死亡したときの内縁の配偶者の地位は,法律婚の配偶者と異なります。内縁の配偶者には,法律上の配偶者と異なり「相続権」がないためです。


死亡した配偶者の損害賠償請求権も相続することができないため,死亡した配偶者の逸失利益や慰謝料などを相手に請求することができません。







◆内縁の配偶者が相手に請求できる賠償金


そうなると内縁の配偶者の場合,相手に何の請求もできなくなってしまうのでしょうか?

実際には,そのようなことはありません。以下で請求できる権利についてご説明します。




【扶養請求権】
内縁関係にある場合,配偶者によって扶養されていることがあります。
その場合,交通事故で配偶者が死亡すると,扶養を受けられなくなります。

そこで,このように扶養を受けることができる利益を侵害されたことを理由に,加害者に対して損害賠償請求ができると判断した判例があります(最高裁平成5年4月6日)。

本件でも,ご相談者が妻に扶養されていた事情があれば,加害者に賠償請求できる可能性があります。




【慰謝料】
内縁の配偶者の場合,死亡した配偶者自身の慰謝料を相続することはできませんが,内縁の配偶者自身の固有の慰謝料が認められます。

民法では,不法行為によって被害者が死亡したときに配偶者の固有の慰謝料を認めていますが,内縁の配偶者もこれに準じて取り扱われるからです。裁判例にも,こういった内縁の配偶者の慰謝料を認めたものがあります(東京地裁平成18年2月7日、大阪地裁平成21年9月30日など)。

そこで,ご相談者の場合にも,加害者に対してご自身の慰謝料を請求することが可能です。










◆相続財産管理人制度の利用の可能性


御質問の事例では,被害に遭われた方には相続人がいないと思われます(本当にいないかどうかは別途調査が必要です。)。そうであれば,被害者自身の慰謝料や死亡逸失利益などを請求する権利を相続する人もいないことになります。


このように相続人が存在しないとき,死亡した人の財産(慰謝料請求権や死亡逸失利益請求権といった損害賠償請求権も財産です。)を管理する人を選任するという制度があります。相続財産管理人選任申立てという手続です。

この手続をすると,相続財産管理人が被害者の損害賠償請求権を行使して賠償金を受けます。相続財産管理人の業務が終了したとき,相続財産管理人の手元に残った財産は国に納めるのが原則です。




しかし,特別縁故者に対する財産分与の申立てという制度があります。

これは,相続人なくして死亡した人と特別の関係にあった人が,相続財産管理人の手元に残った財産を自己に分与することを求める手続です。

家庭裁判所が特別縁故者であると認めれば,ある程度の財産の分与が認められます(事故による賠償金が全て分与されるとは限りません。)。内縁の配偶者ではありませんが,この方法によったのではないかと思われる裁判例が公表されています(大津家審昭和52年9月10日家裁月報30巻2号141頁)。

死亡事故における相続財産管理人制度の利用の例はあまりないようです。




このように,交通事故で被害者が死亡したとき,内縁の配偶者であっても何の請求もできないということはないので,諦める必要はありません。まずは弁護士に相談してみてください。




▼参考記事
・相続人以外の同居親族もいた死亡事故の解決事例
・死亡事故の無料法律相談Q&A
・死亡事故被害者の救済




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

死亡事故の慰謝料(死亡慰謝料)について適正な金額を教えてください。

2016年06月09日
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死亡事故の慰謝料(死亡慰謝料)について適正な金額を教えてください。
死亡慰謝料の金額については,目安となる一定の基準金額はあるものの,具体的な事情
 によって慰謝料の金額が増減額されることがあります。

【死亡慰謝料の金額】



■死亡慰謝料の金額はいくらか
死亡慰謝料の金額については,目安となる一定の基準額があります。
裁判所の判断基準としてよく使用される損害賠償額算定基準(平成28年版・いわゆる「赤い本」)によると,死亡慰謝料の金額は,一家の支柱であれば2800万円,母親・配偶者であれば2500万円,その他は2000〜2500万円という目安があります。なお,「その他」とは,たとえば独身の男女,子供,現に職業に就いていない68歳以上の老齢者等が該当します。
このように,被害者の家族構成や生活状況によって,死亡慰謝料の基準金額が変わってきます。

■死亡慰謝料の基準額から増減される
死亡慰謝料の基準金額は,具体的な事情によって増減額されることがあります。そのため,慰謝料が増額される事情がある場合には,慰謝料の増額を求める主張を忘れずにする必要があります。
たとえば,酒酔い運転が原因の事故や,ひき逃げ事故,加害者が事故後に責任を認めず被害者側の名誉を傷つける言動をとった事故など,加害者の悪質性が強い場合には,死亡慰謝料が増額されることがあります。

■死亡慰謝料が増額された裁判例
加害者の悪質性等を理由に死亡慰謝料が増額された事例として,たとえば次のような裁判例があります。(福岡高裁平成27年8月27日判決)。
被害者は,68歳の男性で,年金受給者ですでに仕事はしていませんでした。
被害者は,青信号交差点を自転車に乗って横断していたところ,赤信号無視で交差点に進入してきた加害者の車に衝突されました。被害者は事故が原因で死亡したため,被害者の妻と子らのが加害者に損害賠償請求をしたという事案です。
裁判所は,加害者が操舵段階で明らかに客観的事実と異なる事実を説明した点や,裁判段階で不誠実な対応をとったことなどを考慮して,死亡慰謝料のうち被害者分を2150万円と認定しました。

■自賠責の基準
自賠責保険金の支払基準として,死亡による損害について被害者1名につき3000万円という基準があります。
この自賠責保険でいう3000万円という金額は,死亡慰謝料の基準金額ではなく,葬儀費用,および逸失利益,死亡慰謝料,遺族の慰謝料を合わせた総額の支払限度額ですので,混同しないようにしましょう。
なお,自賠責保険の基準金額は,一般的に弁護士が関与したときの基準よりも低額であることが多いので,何も知らないまま自賠責保険の基準に近い金額で示談しないよう注意が必要です。


(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 今村 公治)
プロフィール
弁護士法人よつば総合法律事務所
地域最大級の弁護士14名が所属しております。事務所名の「よつば」は事務所に関わる人が皆幸せになるようにとの思いから名付けました。お気軽にご相談ください。
柏事務所:千葉県柏市(柏駅徒歩3分)
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