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2018年05月

交通事故の物損事故です。傷の部分を塗装しましたが,ほかの部分と色むらがあるのが分かります。全塗装してもらいたいのですが,賠償してもらえますか?

2018年05月01日
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交通事故の物損事故です。傷の部分を塗装しましたが,ほかの部分と色むらがあるのが分かります。全塗装してもらいたいのですが,賠償してもらえますか?

一般的な物損事故の場合,全塗装を求めることは困難です。全塗装が認められるのは,部分塗装では明らかに美観が損なわれるケース,塗装が車体価格の大部分となっているケース,全塗装でも部分塗装でも費用があまり変わらないケースなど,例外的な場合のみです。




 交通事故 : 物損事故で全塗装が認められるケース 




◆全塗装は,基本的に認められない




交通事故の被害に遭うと,車の塗装がきずつくことが多いです。その場合,車の修理費用として,車の塗装費用を請求することができます。
このとき,部分塗装にするか,全塗装するかが問題となるケースがあります。


部分塗装とは,きずついた部分のみを塗装する方法,全塗装とは車両全体の塗装をすべてやりなおす方法です。

被害者は全塗装を望むことが多いのですが,一般的には,破損した部分の塗装費用しか賠償の対象として認められないです。


全塗装が認められないのは,以下のような理由によります。

・塗装の効用は「車の防さび効果と美観の保持」である。部分塗装と全塗装を比べたとき,多少の光沢や耐久性の差異はあるとしても,部分塗装でも上記の効用を実現することができる

・現代の塗装技術は発展しており,部分塗装の場合でも,再塗装したことがわかりにくく,車の美観を害することはない

・全塗装にすると,破損部分が小さくても車体全部を再塗装しなければならないので,費用が高額になりすぎる

・全塗装を施すと,被害車両は交通事故前より良い状態になり,被害者が過剰に利得することになる


部分塗装にとどめると多少の色むらが発生することがあるのはたしかですが,その程度であればやむを得ないというのが裁判所の一般的な考え方です。







◆全塗装が例外的に認められるケース



ただし,一部には例外的に,全塗装が認められるケースもあります。
たとえば,以下のようなケースで認められることがあるかもしれません。


・特殊な塗装技術が使われているので,部分塗装にすると,他の部分との相違が一見して明白になり,明らかに美観が害される場合

・車体が高額で,その価値の大部分が外装によるものである場合

・損傷箇所が広くなり,再塗装の範囲も大きくなるので,全塗装でも部分塗装でも費用的に大きな差が生じない場合


たとえば,高級外車であるポルシェが車体の大部分を損傷した事案において,部分塗装では破損部分とそれ以外の部分の相違がわからないように復元できないので,全塗装を認めた事例があります(岡山地裁津山支部平成7年4月25日交民集28巻2号671頁)。

近年では,キャンディ・フレークという特殊塗装が施されている車が交通事故に遭った事例において,全塗装が認められたケースもあります(東京地裁平成25年3月6日)。
しかし,その控訴審は,キャンディ・フレーク塗装であっても部分塗装で足りるとしました(東京高裁平成26年1月29日)。



以上のように,交通事故の物損事故で全塗装が認められるケースはかなり例外的です。





▼参考記事
・損害賠償額の計算方法
・賠償金額の基準に注意!
・交通事故と慰謝料のすべて

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(よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤寿康)

大学に通っていたのですが,交通事故の被害に遭って遷延性意識障害になり,それが理由で退学せざるを得ませんでした。これまで大学で過ごした時間や学んだことだけでなく,大学に支払った受験料,入学金,授業料,学生寮の費用は全部無駄になってしまいました。 これらは賠償の対象になりますか。個人事業主の開業費用(投資)が賠償の対象になるのであれば,同様に考えられませんか?

2018年05月02日
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大学に通っていたのですが,交通事故の被害に遭って遷延性意識障害になり,それが理由で退学せざるを得ませんでした。これまで大学で過ごした時間や学んだことだけでなく,大学に支払った受験料,入学金,授業料,学生寮の費用は全部無駄になってしまいました。
これらは賠償の対象になりますか。個人事業主の開業費用(投資)が賠償の対象になるのであれば,同様に考えられませんか?


このような場合,受傷によって意味をなさなくなった支払済みの授業料などの返還を求めることができます。ただし,全額が認められるとは限りません。




 交通事故 : 遷延性意識障害になった場合の学費 




◆学費も損害として認められる




学生の方が交通事故に遭うと,遷延性意識障害となったり身体が麻痺したり高次脳機能障害になったりして,通学を継続できなくなることがあります。
そのようなとき,それまで支払った学費を損害として,加害者に賠償請求できるかが問題となります。

裁判所は,このような場合の学費を損害として認めています。

そのためには,被害者の受傷内容や被害の程度,被害者の年齢や家庭状況などを具体的に検討して,学習の必要性が認められる必要があります。

また,賠償の対象として認められる学費は「妥当な範囲内」であり,全額とは限りません。







◆受傷で無駄になった学費を認めた裁判例



以下では,被害者の受傷によって無駄になった学費の損害賠償を認めた裁判例を,ご紹介します。


【ケース1】
交通事故によって,被害者である短大生が体幹性小脳失調,失調性構音障害で後遺障害5級2号,骨盤骨変形で12級5号の併合4級になり,短大を退学した事案です。

このケースで裁判所は,事故が起こった月から始まる後期分と翌年の前期分の授業料である67万円余を損害として認めました(神戸地裁平成10年7月17日)。


【ケース2】
22歳の被害者が,事故前に普通免許を取るために自動車教習所に通っていましたが,事故によって修了できなくなった事案です。

このケースで裁判所は,教習所代32万円の全額を損害として認めました(東京高裁平成14年6月18日)。






◆本件の検討



特に,ケース1の裁判例は,今回のケースと似ており参考になります。

ただ,上記によっても認められたのは「交通事故後の一定期間の授業料」であり,入学金や受験料などの全額ではありません。
とりわけ,入学金や受験料などは賠償の対象になりにくいと考えられます。

受験料は受験の対価といえますし,入学金は入学する地位の対価という側面もあるからです。

かつて入学金納付期限が早いため,滑り止め校に対しても入学金を納付しておいたところ,その後合格していたことが明らかになった第一志望校に進学した際,滑り止め校に支払った入学金が戻ってこないということが問題となったことがありました。
最高裁判所は入学金返還は不要と判断しました(学納金返還請求訴訟)。


賠償の範囲は「妥当な範囲」に限定されます。

このことからすると,本件でも返還請求できるのは,交通事故後一定期間の授業料に限定される可能性があります。
ただ,本件は遷延性意識障害の事案であり,上記の被害者より後遺障害の程度が重いので,より広い範囲で損害賠償が認められる可能性があります。

なお,ご質問のように個人事業者の開業資金が認められる例がありますが,その場合でも,必ずしも全額が認められるとは限らず,必要かつ相当な範囲に限定されます。


交通事故で無駄になった学費がどこまで損害として認められるかは,ケースによって異なります。お困りの場合には,一度弁護士までご相談下さい。





▼参考記事
・私は個人事業主ですが交通事故に遭い,後遺障害のため事業を継続することができなくなりました。
・交通事故に遭い,家族が遷延性意識障害になりました。どうして何度も転院しなければならないのですか?
また,転院先はどのようにして見つけたり選んだりするのが良いですか?

・交通事故のよくある質問

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(よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤寿康)

交通事故で高次脳機能障害になったら何故リハビリテーションが必要なのでしょうか?

2018年05月07日
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交通事故で高次脳機能障害になったら何故リハビリテーションが必要なのでしょうか?

交通事故で高次脳機能障害になった人にリハビリテーションが必要な理由は、身体的、精神的、社会的という3つの健康を目標とするからです。





 高次脳機能障害 : リハビリテーション 




◆リハビリテーションの目的




そもそもリハビリテーションとは何でしょう?
ストレッチや柔軟体操などで体に負荷をかけて、失った身体機能を徐々に取り戻すための運動だと考えている人も多いのではないでしょうか?

むろん、ストレッチや柔軟体操もリハビリテーションの一種です。
しかし、運動をすることだけがリハビリテーションではありません。

交通事故などで高次脳機能障害になった人が、リハビリテーションのプログラムを自分で考えて行うことはなく、専門の知識を持った医療チームが、患者さん一人ひとりに最適なプログラムを考えて実行するのがリハビリテーションであり、そのプログラムには身体的な運動以外の内容が含まれていることもあるのです。

体だけでなく、心のありよう、ひいては家族との関わり合いや社会復帰した場合に置かれる立場などを含めて、より良く生きることができるようになるための訓練といえば、高次脳機能障害の人のためのリハビリテーションの目的がイメージできると思います。






◆そもそも健康とは




リハビリテーションは、健康な体を取り戻すための訓練ですが、そもそも健康とは何かということを考えると、リハビリテーションの目的がわかります。

ジュネーブに本部のあるWHO(世界保健機関)は、身体的、精神的、社会的という3つの「健康」を定義しています。
つまり、精神的に満ち足りていなかったり、社会から孤立していと、いくら肉体が健康でも本当の意味で健康にはなれないということです。

その逆を考えてみましょう。

心が満ち足りていて、家族や地域社会との交流に生きる喜びを感じる人は、たとえ肉体が完全な状態でなくても、健康を得ることができるのです。
高次脳機能障害は、リハビリテーションによって後遺症が軽くなることはあっても、完治しない病気です。
病気になる前の肉体に100%戻れるかといえば、それはむずかしいでしょう。



しかし、身体的のみならず、精神的、社会的健康も含めた広い意味での健康を目指すなら、高次脳機能障害の人も、健康を手に入れることができるという希望の光が見えてくるのではないでしょうか?

それは、最近提唱されているQOL(Quality Of Life:生活の質)を高めるという動きにも合致しています。

肉体的な健康は量で評価しますが、心の健康は満足感、幸福感、つまり質で評価するので、得ようと思えばたくさんの健康を享受できます。

趣味や生きがい、友人との会話などを通して、高次脳機能障害の人のQOLが高まり、心が満たされて健康になることを願っています。







▼参考記事
・交通事故で頭を打ち,連合野に損傷があると言われました。高次脳機能障害で,どんな症状が出るのでしょうか?
・交通事故による高次脳機能障害が完治しない理由は何ですか?
・交通事故の注目の裁判例

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(よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)

交通事故で高次脳機能障害になった人のリハビリテーションとチームについて教えていただけますか?

2018年05月09日
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交通事故で高次脳機能障害になった人のリハビリテーションとチームについて教えていただけますか?

交通事故で高次脳機能障害になった人が入院すると、医学的リハビリテーションのほかにも、生活訓練、就労支援などのためのリハビリテーションがチームで行われます。





 高次脳機能障害 : リハビリテーションとチームアプローチ 




◆3種類のリハビリテーションとチームアプローチ




交通事故に遭うなどして高次脳機能障害を発症すると、受傷して間もない時期からリハビリテーションが始まります。

もちろん、絶対安静にしていなければならない期間はリハビリテーションを行いませんが、受傷後数日間を経て症状が安定したら、ベッドの上でリハビリテーショが始まります。

この時期のリハビリテーションを、医学的リハビリテーションと呼びます。この他に,生活訓練のためのリハビリテーション、就労支援のためのリハビリテーションがあります。

たとえば,日常生活で必要な動作を習得するには、生活訓練のためのリハビリテーションが必要になりますし、退院後、職場復帰を希望する人に対しては、就労支援のためのリハビリテーションを行います。

これら3種類のリハビリテーションは、医学的リハビリテーションを終了したら生活訓練や就労支援のためのリハビリテーションを開始するというように決まっているわけではなく、同時に行うこともあります。いずれのリハビリテーションも、実施するにあたってはチームアプローチと呼ばれる方法を取ります。共通の目的のために、異なる専門職が課題解決のために協働(きょうどう)して取り組むのが、チームアプローチです。

チームアプローチでだいじなことは、基本的に専門職同士は平等な関係で互いに意見を述べ合い、それぞれの特性を生かすために働くということです。
チームの誰かがリーダーとなるトップダウンでもなければ、大勢のスタッフの意見を上の者がまとめるボトムアップでもありません。







◆チームアプローチに必要な専門職とは



高次脳機能障害の人にリハビリテーションを行うためのチームアプローチに必要な専門職の例を挙げます。

・医師(主治医・医療科目の異なる他の医師が加わることもある)
・看護師(日々の看護を行う看護師のほかに、帰宅支援のための看護師が加わることもある)
・理学療法士(略称:PT)
・作業療法士(略称:OT)
・言語聴覚士(略称:ST)
・生活支援員
・心理の専門家
・職業指導員
・ソーシャルワーカー
・地域









◆患者さんが介護保険を利用する場合




さらに、高次脳機能障害になった人が、退院後に介護保険によるサービスを受けることを望んでいる場合は、介護保険制度に関する施設や法人の担当者と連絡を取る必要があります。

たとえば、退院後に介護保険を使ってリハビリテーションを続けたいという希望がある場合は、デイケアなどの利用が考えられますが、どのようなリハビリテーションをどのくらいの負荷をかけて行うのが良いかということは、介護職の人にはわかりません。

そのため、ケアマネージャーなどの専門職は、病院内のリハビリテーションチームと連絡を取って情報収集をする必要があります。

この場合、介護職は、病院におけるチームと協働するのではなく、連携(れんけい)することになります。








▼参考記事
・交通事故のリハビリテーション・高次脳機能障害における理学療法士の役割って何ですか?
・頭(脳)に怪我を負われた方の解決事例
・交通事故による後遺障害の解説

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(よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)

交通事故で高次脳機能障害になった人の医学的リハビリテーションとは何ですか?

2018年05月10日
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交通事故で高次脳機能障害になった人の医学的リハビリテーションとは何ですか?

交通事故で高次脳機能障害になった人に対して医療施設内で行うリハビリテーションが、医学的リハビリテーションです。





 高次脳機能障害 : 医学的リハビリテーション 




◆医学的リハビリテーションプログラムとは?




医療機関が、交通事故などで高次脳機能障害になった人に
行うリハビリテーションのことを医学的リハビリテーションと言います。

医学的リハビリテーションを行うにあたっては、医師だけでなく、さまざまな専門職がチームに加わる必要があります。

それらの専門職は、常に顔を合わせて一緒に仕事をしているとは限りませんので、一般的には以下のようなプロセスでリハビリテーションを行います。


まず、リハビリテーションの到達目標を定めて、プログラムを立案します。
次に、専門職がリハビリテーションを実施します
一定の期間を経たところで、リハビリテーションチームが顔を合わせてカンファレンスを開き、リハビリテーションの結果を評価します。

到達目標に対してどの程度クリアできたか、プログラムは適切だったかなどを評価した結果、必要であれば、リハビリテーションプログラムを変更します。
そして、新しいリハビリテーションプログラムを実施します。

立案・計画→実施→評価→計画の見直し・立案→実施→再評価・・・というサイクルは、高次脳機能障害の人がその医療機関でリハビリテーションを受けている間、続きます。








◆記憶障害に対するリハビリテーション




高次脳機能障害における記憶障害は、入院中に患者さんと病院スタッフが行う会話でもある程度わかりますし、記憶検査を行って、記憶障害の種類を特定することもあります。

高次脳機能障害の患者さん自身が、記憶障害に気付いていないことも珍しくありません。

見たり聞いたりしたことを忘れてしまい、次に同じ経験をしたときに、初めて見た、初めて聞いたと感じることがありませんか?

それをもっとひんぱんに繰り返すのが記憶障害であり、自分が忘れっぽくなったという認識を持てないのです。

医療スタッフは、高次脳機能障害の人に対して、記憶障害のリハビリテーションを受ける必要性を理解してもらうように努める一方、家族が患者本人に対してリハビリテーションの必要性を説くことも重要です。


記憶障害に対するリハビリテーションの目標は、高次脳機能障害によって低下した記憶力を改善することですが、残念ながら完全に元通りに記憶力が回復することはむずかしく、生活するにあたって混乱をおこさずに社会に適応できるようになることを長期目標として、リハビリテーションを行います。

記憶障害が元通りに治らなくても、まめにメモを取って、だいじなことを忘れないように努力するといった代替手段(だいたいしゅだん)も、記憶障害をカバーする方法として有効です。






▼参考記事
・交通事故に遭い,高次脳機能障害で精神障害者保健福祉手帳を申請する際に,条件などあるのでしょうか?
・交通事故が原因で高次脳機能障害を発症しました。職場復帰における問題点は何ですか?
・自転車での交通事故の解決について

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(よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)

高次脳機能障害による注意障害における医学的リハビリテーションについて教えていただけますか?

2018年05月11日
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高次脳機能障害による注意障害における医学的リハビリテーションについて教えていただけますか?

高次脳機能障害で注意障害になると、間違い探し、パズル、ゲーム、課題を与えて調べてもらうなどの医学的リハビリテーションを行います。





 高次脳機能障害 : 注意障害 




◆注意障害は気づきにくい後遺症



交通事故による高次脳機能障害による後遺症のひとつに、注意障害があります。
注意障害の症状はさまざまで、患者さん自身やそのご家族が、注意障害に気付かないこともあります。

注意という言葉には、気を配る、気を付けるといった意味があります。
注意障害になるということは、すなわち、周囲に気を配ったり、気を付けて行動することができなくなるということです。

つまり,注意ができなければ、社会生活を送ろうとすると、周囲と対立し、衝突が起こることが増え、生きづらさを感じるようになります。

しかし、家族は、この人は昔からこういう性格だったと思っていたり、事故によるショックで落ち込んでいるだけで、じきに治ると信じたりするので、注意障害の発見が遅れることが良くあります。






◆注意障害による主な症状



注意障害になると、次のような症状が現れます。


・自分が置かれている状況を判断しないで行動するので、周囲に驚かれたり迷惑がかかる。
・他の人に興味を持ってつきまとう。
・やるべき作業に集中して長時間取り組むことができない。
・落ち着きがない。
・横になったまま動かないなど、活動性が低下して、ぼうっとしている時間が長い。








◆注意障害に効果的なリハビリテーション



注意障害の患者さんに対して行うリハビリテーションは、間違いさがし、パズル、トランプなどのゲーム、電卓を使った計算などがあります。
さらに高度な認知を伴う作業としては、電話帳を調べる、郵便番号を調べる、交通路線を調べるなどの訓練を行うこともあります。

一般に、高次脳機能障害を発症した人に対するリハビリテーションは、可能な限り早期に始めるべきだというのが定説ですが、注意障害に関してはその限りではありません。
なぜなら、高次脳機能障害になった直後は、意識障害を起こしていることが多いからです。

意識障害があり、注意障害も疑われる場合は、意識障害から回復してから、注意障害改善のためのリハビリテーションを検討します。


訓練の初期には、個室でリハビリテーションを行います。
この時期は、あまり強い刺激を与えない方が良いので、担当スタッフは決まった人が行い、与える課題は、短期間で無理なくこなせる簡単なものが中心となります。
やがて、高次脳機能障害の人が、与えられた課題をクリアできるようになると、より大きな負荷を与えるリハビリテーションを導入します。

つまり、特定のスタッフではなく、複数のスタッフによるリハビリテーションプログラムを組んだり、マンツーマンのリハビリテーションではなく、グループによるリハビリテーションをします。

複数の人と一緒にリハビリテーションをする、リハビリテーションの時間ごとに違う担当者が来るといった環境は、高次脳機能障害で注意障害になった人に、より多くの負荷を与えますが、それでも注意を維持できるようになれば、注意障害が改善されていることを意味します。







▼参考記事
・交通事故で高次脳機能障害になったことに気が付くまで
・高次脳機能障害による遂行機能障害を克服して,仕事を再開することはできますか?
・交通事故と治療Q&A

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(よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)

高次脳機能障害による社会的行動障害における医学的リハビリテーションとは何ですか?

2018年05月14日
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高次脳機能障害による社会的行動障害における医学的リハビリテーションとは何ですか?

高次脳機能障害で社会的行動障害が認められる場合は、簡単な目標と計画、実行を繰り返して、不適切な言動が現れないように訓練する医学的リハビリテーションを行います。





 高次脳機能障害 : 社会的行動障害 




◆生きやすさの鍵は社会的行動障害の改善



社会的行動障害は、交通事故が原因の高次脳機能障害で良く発症する後遺症の一つですが,本人が後遺症を自覚していない一方で周囲に迷惑をかけてしまい、結果的に多くの人を巻き込んで社会に大きな影響をおよぼす後遺症です。

社会的行動障害を改善するリハビリテーションは、高次脳機能障害の人の生活の質を高めて尊厳を維持することになるので、非常に重要な取り組みとなります。

つまり、社会的行動のリハビリテーションが成功すれば、高次脳機能障害の人が、より生きやすさを感じることを意味します。







◆社会的行動障害の主な症状



社会的行動障害という後遺症は、ひとことで言うなら、人格の変化という言葉で表すことができます。
高次脳機能障害になる前とは、まったく違った人格が現れるのが、社会的行動障害の特徴ですが、これから述べる症状のすべてが現れるわけではありません。

感情をコントロールできなくなり(感情失禁)、ふさわしくない場面で笑ったり怒ったりします。
時には、感情を爆発させて暴れ、暴力を伴うこともあります。
その反対に、意欲が低下して何も行動を起こそうとしない抑うつの状態になるケースもあります。
欲求を抑えられず、むやみに食べ続けたり、必要のない物品を購入する行動を伴うこともあります。






◆社会的行動障害に対する効果的なリハビリテーション



高次脳機能障害による社会的行動障害に人にリハビリテーションを行うには、環境を整えることが重要です。

情報量を限定し、多くの人が周囲にいない落ち着いた環境づくりをします。
社会的行動障害の人は、インプットする情報量が多すぎると症状が悪化するので、疲れないような静かな環境を作りましょう。

リハビリテーションは、到達しやすい目標を定め、計画を立てて計画を実行するといった訓練を行います。
このリハビリテーションは、目標にゴールすることだけでなく、その過程で適切な態度や言葉遣い、行動が取れるかどうかが評価されます。

ですから、リハビリテーションの最中に、患者さんが社会的行動障害が原因と思われる適切でない言動を取った場合、リハビリテーションは中断され、患者さんにリハビリテーションの場から離れてもらうか、担当者がいなくなります。
このようにして、自分が取った行動とそれに対する評価を知ることで、より適切な行動を取ることを覚えていきます。



問題解決のための行動は、患者さんにひとりで考えさせるのではなく、リハビリテーション担当者も一緒になって、問題解決のための行動を検討します。






▼参考記事
・交通事故による高次脳機能障害で,障害者手帳は申請できますか?
・交通事故問題解決の流れ
・交通事故と弁護士費用特約のすべて

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(よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)

交通事故の逸失利益の労働能力喪失期間について質問です。よく「平均余命の半分」といいますが,平均余命が「17.22年」とか「12.14年」などとなっている場合,「平均余命の半分」は,具体的にはどうなりますか?

2018年05月15日
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交通事故の逸失利益の労働能力喪失期間について質問です。よく「平均余命の半分」といいますが,平均余命が「17.22年」とか「12.14年」などとなっている場合,「平均余命の半分」は,具体的にはどうなりますか?

このように,平均余命の半分について小数点以下が発生するときには,小数点以下を切り上げて計算します。




 交通事故 : 逸失利益 




◆労働能力喪失期間とは




交通事故に遭うと,「逸失利益」という損害が発生することがあります。

逸失利益とは,交通事故で後遺障害が残ったことや死亡したことにより,将来得られるはずだったのに得られなくなってしまった収入のことです。

後遺障害が残ると,労働能力が低下した分,生涯年収が低下すると考えられますし,死亡すると,それ以降の収入を一切得られなくなってしまうので,そういった減収分を損害として相手に請求できるのです。

このときに問題となるのは「労働能力喪失期間」です。減収が発生するのは,労働能力を失った期間である労働能力喪失期間に限られるからです。

一般的に,労働能力喪失期間は,67歳までと考えられています。ただ,すでに高齢となっている労働者の場合には,67歳までとすることが不合理であるケースも考えられます。

その場合には,「平均余命の2分の1」を労働能力喪失期間として,逸失利益を計算します。
平均余命とは,「その年齢の人が,平均してあと何年生きるか」という年数です。
厚生労働省が発表している簡易生命表により,決定します。








◆平均余命の2分の1の計算方法



ところが,簡易生命表を見ると,平均余命は,小数点以下2ケタまで記録されています。
これを2分の1にすると,さらに細かい小数点以下の数値が発生してしまいます。
この場合,小数点以下をどのように処理するかが問題です。

小数点以下を切り上げると労働能力喪失期間が長くなり,被害者にとって有利になりますが,反対に,小数点以下を切り下げると加害者側に有利になります。

四捨五入する考え方もありますし,もしくは,小数点以下を月数や日数に直して正確に計算することも,一応考えられます。


結論として、平均余命の2分の1を計算するときには,小数点以下は切り上げて計算するのが通例です。

たとえば75歳男性の平均余命は12.14年ですが,その2分の1(労働能力喪失期間)を計算するときには,6.07を切り上げて7年とします。

このように,逸失利益の計算で重要な「平均余命の2分の1」の考え方についても,実務上用いられている算定方法があります。

交通事故に遭って適切な賠償金を計算するために,まずは一度,弁護士までご相談下さい。





▼参考記事
・交通事故の年金逸失利益とは何ですか?
・絶対失敗しない事務所の選び方
・交通事故のよくある質問

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(よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤寿康)

交通事故の死亡逸失利益についてです。交通事故被害に遭った時点で被害者は老齢年金受給可能な年齢になっていませんでしたが,受給可能な年齢になってから年金請求をしたならば,確実に受給できました。この場合,労働逸失利益のほか,年金逸失利益も賠償の対象になりませんか?

2018年05月16日
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交通事故の死亡逸失利益についてです。交通事故被害に遭った時点で被害者は老齢年金受給可能な年齢になっていませんでしたが,受給可能な年齢になってから年金請求をしたならば,確実に受給できました。この場合,労働逸失利益のほか,年金逸失利益も賠償の対象になりませんか?

この場合,年金逸失利益も損害賠償の対象になる可能性が高いです。




 交通事故 : 年金逸失利益 




◆死亡逸失利益には,年金も含まれることがある




交通事故で被害者が死亡すると,「死亡逸失利益」を加害者に対して請求することができます。

死亡逸失利益とは,生存していれば得られたのに,被害者が死亡してしまったことにより得られなくなってしまった収入のことです。

後遺障害が残った場合には,年金受給権が失われないので逸失利益は認められませんが,死亡すると,その後年金を受け取れなくなりますので,逸失利益が認められます。


ただし,どのような年金であっても逸失利益が認められるわけではありません。
年金に逸失利益が認められるかどうかは,以下のような観点から判断されます。

@年金の給付目的が,受給者の生活維持のみか,遺族の生活維持も目的としているか
A保険料の支払いをしたのは受給者本人か(年金受給に対価性があるか)
B年金給付の確実性








◆逸失利益として認められる年金



上記のような基準があるので,そもそも,逸失利益の認められる年金が限られます。

老齢年金(老齢基礎年金,老齢厚生年金)や障害年金(障害基礎年金,障害厚生年金),退職年金,労災の障害補償年金,障害特別年金については逸失利益性が認められますが,遺族年金(遺族基礎年金,遺族厚生年金)については逸失利益性が否定されます。

老齢年金や障害年金は,受給者のみならず遺族の生活維持も目的としたものであり,受給者本人が保険料を支払って対価性があります。

これに対し,遺族年金は,受給者に一身専属的なものであり,受給者自身が保険料を支払っておらず,対価性がないとの理由で,逸失利益性を否定されています。







◆受給前の年金に逸失利益性が認められるケース



それでは,年金受給前に死亡したケースでも,年金が逸失利益として認められるのでしょうか?

まず,死亡時に受給資格があった場合には,将来年金を受け取ることが確実といえます。

そのため,特に受給開始までの期間が短い場合には,逸失利益性が認められやすいです。ただ,受給が可能になるまでの年数があまりに大きい場合は認められないことが多いです。

受給開始までの期間が短く逸失利益として認められても,死亡時から受給開始年齢までの年金保険料を控除される可能性はあります。また,60〜67歳までの労働による死亡逸失利益を請求する場合,働いている間の年金支給停止も考えないといけないので,その分も減額されます。

死亡当時に年金受給資格がなかった場合には,逸失利益性が否定されることが多いです。

本件では,「受給開始年齢になったら確実に年金を受給出来るはずだった」ということですので,受給に必要な保険料を払い込んでいたと考えられます。そこで,年金逸失利益が認められる可能性が高いといえます。








▼参考記事
・交通事故に遭い,後遺障害14級9号(局部の神経症状)と認定されました。逸失利益の計算はどのようにすればよいですか?
・破産手続準備中に交通事故に遭いました。破産しても,賠償してもらうことはできますか?
・賠償金額の基準に注意!

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交通事故の加害者が不起訴になりましたが,納得できません。加害者が罰金の略式命令を受けたことが納得できないときは何か方法はありますか?

2018年05月17日
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交通事故の加害者が不起訴になりましたが,納得できません。加害者が罰金の略式命令を受けたことが納得できないときは何か方法はありますか?

不起訴処分に納得できない場合には,検察審査会に審査申立てをすることができます。
罰金刑を受けて確定したときには,審理のやり直しはできません。確定前であっても,被害者からの不服申立て手段はありません。





 交通事故 : 不起訴 




◆不起訴処分とは




交通事故の加害者には「過失運転致死傷罪」「危険運転致死傷罪」などの犯罪が成立することがあります。

その場合,捜査が行われ,捜査が進むと,検察官が加害者を起訴するか不起訴にするか決定します。
起訴されたら,加害者は刑事裁判の被告人となり,裁判で裁かれることになり,最終的には,有罪であれば処罰されます。

これに対し,不起訴になると,加害者の事件は刑事裁判になりませんし,加害者が処罰されることもありません。

刑事的には,不問に付されることになってしまいます。








◆検察審査会への申立て




このような不起訴処分に納得できない被害者の方も多いと思います。

その場合,検察審査会に対し,審査の申立てをすることができます。

検察審査会とは,犯罪の被害者や告発人が、検察官による不起訴処分が不当であると申し出たときに,起訴が相当であるかどうか審査する機関です。

検察審査会に審査請求できるのは,告訴人や告発人です。
検察審査会を組織するのは,選挙権を持つ国民から選ばれた11人の検察審査員です。
申立てを受けると,検察審査会はその事件について審査を行い,起訴が相当かどうか,判断します。

検察審査会が「起訴相当」と判断した場合,検察官は,被疑者を起訴するかどうか,再検討しなければなりません。検察官が再度不起訴にした場合,検察審査会は,2度目の審査をすることができます。

2度目の審査においても8人以上の検察審査員が「起訴」と決定した場合には,検察官の意図にかかわらず,被疑者が強制的に起訴されます。このとき,被疑者を訴追するのは検察官ではなく,指定弁護士となります。

このように,交通事故で被疑者が不起訴になって不満があるならば,まずは管轄の検察審査会に対する審査申立てをするという方法があります。








◆略式命令を受けたら,更なる刑罰を与えることはできない




検察審査会への申立てができるのは,起訴前に限られます。

刑事手続には「一事不再理」という法的な決まりがあり,いったん刑事裁判を受けた場合には,同じ事件で再度刑事裁判にすることはできないことになっています。

たとえ略式命令であっても,裁判を受けて処罰された以上,一事不再理がはたらいて,再度審理することは認められません。

略式命令に不服があれば正式裁判請求という手続によることができますが,この請求ができるのは,被告人と検察官だけです。


交通事故の被害者は,加害者の刑事事件との兼ね合いでも慎重な対応が必要となるケースがあります。対応に迷われたときには,弁護士までご相談下さい。





▼参考記事
・交通事故の知識〜損害賠償額の計算方法〜
・警察の対応に納得がいかないのですがどうすればよいですか?
・交通事故の被害者ですが,加害者からの謝罪がありません。どうしても謝罪してもらいたいのですが,どうすればよいですか?

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