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2017年11月

交通事故に遭って怪我をしました。しかし,任意保険会社が,私の過失が大きいからといって治療費の対応をしてくれません。どうするのがよいですか?

2017年11月01日
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交通事故に遭って怪我をしました。しかし,任意保険会社が,私の過失が大きいからといって治療費の対応をしてくれません。どうするのがよいですか?

この場合,健康保険を使って症状固定するまで通院を続けるべきです。その後示談交渉をするとき,支払った治療費を損害として計上することができます。もしも御自身が人身傷害保険に加入していれば,それを使って治療することも考えられます。




 治療費 



◆治療を続ける必要性


交通事故に遭ってケガをしたら,入通院によって治療を続けなければなりません。

しかし,本件のように被害者の過失割合が大きい場合には,相手の保険会社が治療費の支払をしないことがあります。

このようなとき,治療をやめるべきではないです。




交通事故のケガで治療をすると,かかった治療費や通院交通費,付添看護費用などの積極損害や入通院慰謝料を損害として計上することができます。しかし,治療を受けなければ,上記のような損害賠償の支払を請求することはできません。

また,交通事故が原因で後遺症が残ることも多いですが,その後遺症について後遺障害の認定を受けるためには,事故直後から病院にかかって「症状固定」するまで継続的に治療を受ける必要があります。

治療を受けなかったり,治療を途中でやめてしまったりすると,後遺障害の等級認定を受けられない可能性も高くなるのです。そもそも,賠償を受けられるかどうかも大切ですが,体が治るかどうかもまた大切です。




このように,治療を受けないと,人身損害に関する多くの損害賠償請求ができなくなってしまうので,大きな不利益を受けます。

なので,相手の保険会社が治療費を支払わないからといって,怪我をしたのに治療を受けないという選択をするべきではないです。







◆健康保険を使って治療を続ける


相手の保険会社が治療費の負担をしない場合,治療費の全額を被害者が負担しなければならないとすると,支払が困難になるケースが出てくるでしょう。


そこで,相手の保険会社が治療費支払いに対応しない場合や治療費を途中で打ち切ってきた場合には,自分の健康保険を利用して通院を継続しましょう。

病院によっては「交通事故のケースでは,健康保険を使えない」と言ってくるところがあるかもしれませんが,交通事故の治療にも健康保険を使うことは可能です。

被害者の方が加入している任意保険に人身傷害保険があれば,それを使うことにより治療費の心配はなくなります。







◆後に加害者に対し,治療費を請求できる


健康保険を使って通院をする場合,通常3割の医療費負担が発生します。

これについては,後に相手に支払請求をすることができます。
治療費は交通事故によって発生した損害なので,加害者に賠償義務があるためです。

ただし,被害者に過失があるときは,過失相殺されます。




そこで,病院で支払をした領収証等の書類はきちんととっておき,後に示談交渉を行うとき,他の損害とともに計上できるようにしておくようにするのがよいでしょう。

相手の保険会社への対応や示談交渉を行うときには,弁護士に依頼すると心強いものです。早めにご相談下さい。




▼参考記事
・加害者の保険会社から治療打ち切りを言われていますが,どうしたらよいでしょうか。
・相手方任意保険,健康保険,労災保険のどれを使えばよいですか。
・治療打ち切りを打診されても




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)
| 治療費 |

交通事故に遭い治療を続け,後遺障害診断書を任意保険会社に送りました。 しばらくして,任意保険会社から審査結果が送られてきました。後遺障害に当たらないなどと書いてあります。 任意保険会社に文句を言ったら,「当社で決めたわけではない。」と言われました。 どういう仕組みで審査しているのですか?

2017年11月02日
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交通事故に遭い治療を続け,後遺障害診断書を任意保険会社に送りました。
しばらくして,任意保険会社から審査結果が送られてきました。後遺障害に当たらないなどと書いてあります。
任意保険会社に文句を言ったら,「当社で決めたわけではない。」と言われました。
どういう仕組みで審査しているのですか?





交通事故の後遺障害等級認定は,損害保険料率算出機構というところが行っています。
任意保険会社はその窓口になっているだけなので「当社が決めたわけではない。」というのはそのとおりです。
不服がある場合には,相手の自賠責保険に対し,異議申立てをすることができます。





 後遺障害認定 : 損害保険料率算出機構 



◆後遺障害等級認定を行う機関


交通事故でケガをしたら,さまざまな後遺障害が残ることがあります。

後遺障害が残ったら「後遺障害の等級認定」を受け,その後の後遺障害慰謝料や逸失利益などの損害賠償請求につなげていきます。

後遺障害の審査・認定を行うのは,損害保険料率算出機構の損害調査事務所というところで後遺障害の審査・認定を行っています。そして,損害調査事務所は,その審査・認定の結果を自賠責保険会社や任意保険会社に通知することとなります。







◆任意保険会社の事前認定とは


それでは,本件のように,任意保険会社に後遺障害診断書を提出するのはどうしてなのでしょうか?

それは,任意保険会社が,後遺障害審査の窓口になっているためです。

このように,任意保険会社が損害調査事務所に対し,後遺障害認定の審査を請求する方法を「事前認定」といいます。

事前認定をするとき,任意保険会社は被害者から後遺障害診断書を受けとり,その他の必要書類をそろえて損害調査事務所に送付します。損害調査事務所は任意保険会社に審査結果を通知し,被害者へは任意保険会社からその結果を通知します。

このように,任意保険会社は窓口になっているだけで,自社で後遺障害の認定をしているわけではありません。本件のように「当社が決めたわけではない」というのはそのとおりです。







◆異議申立てとその方法


本件では,後遺障害に当たらないと書かれているということなので,非該当になっていると思われます。

この結果に不服がある場合,再度等級認定を求めることが可能です。

その方法としては,相手の自賠責保険に対して行うほうが良いと考えています。
被害者請求という方法です。

被害者請求とは,被害者が相手の自賠責保険に対し,後遺障害の認定請求等の保険金請求をする方法です。

事前認定の場合,相手の任意保険会社がどのような資料を送付してどのような資料を送付しないのか,被害者側からは明らかになりません。一方,被害者請求であれば,送付する資料は全て被害者が決定することができるのでその意味で透明性がありますし,被害者が自分に有利な資料を追加提出することなども可能となります。




被害者請求をするためには,相手の自賠責保険に連絡をして申請書類一式を取り寄せ,必要書類を作成,収集して,申請を行う必要があり,手間がかかります。

適切に行うためには,弁護士に相談するのが良いです。




▼参考記事
・被害者請求のポイント
・当初,後遺障害が非該当だった依頼者が,当事務所へ依頼し異議申立を行った結果,14級9号を認定され賠償金を獲得した解決事例
・後遺障害等級について




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故証明書を入手しました。加害者の欄に保険会社の名称が書いてありますが,私が普段話している相手方保険会社とは違うようです。これはどういう事ですか?

2017年11月06日
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交通事故証明書を入手しました。加害者の欄に保険会社の名称が書いてありますが,私が普段話している相手方保険会社とは違うようです。これはどういう事ですか?




普段話している相手の保険会社は,相手の任意保険会社です。交通事故証明書に書いてある保険会社は,相手の自賠責保険の会社です。




 自賠責保険会社 



◆任意保険と自賠責保険



自動車の保険には,任意保険と自賠責保険があります。自動車を運転する人なら,両方に加入していることが多いです。


自賠責保険は,すべての自動車にかけておかなければならない,強制加入の保険です。
自賠責に加入していない車を運転するのは犯罪行為でして,罰則も適用されます。


これに対し,任意保険への加入は義務ではありません。加入が任意なので「任意保険」と呼ばれます。

自賠責保険が強制加入なのは,交通事故の被害者に最低限度の賠償を得させることを目的しています。
最低限度の賠償であることから,自賠責保険の限度額は非常に低いですし,物損は補償の対象になりません。


自賠責保険だけしか加入していなければ,事故加害者になったときの損害賠償額に足りない可能性が高いです。そこで多くの人は,自賠責保険に加えて,任意保険にも加入して,事故に備えているのです。










◆任意保険の示談代行サービスについて


任意保険には「示談代行サービス」がついています。

これは,被保険者が交通事故の加害者になったときに,保険会社が被害者との示談交渉を代行してくれるサービスです。

これにより,交通事故を起こしたら,任意保険会社の担当者が被害者と話合いをしてくれるので,加害者自身は被害者と直接やり取りする必要がありません。

このような仕組みがあるため,被害者は相手の任意保険会社の担当者との間で,示談交渉の話合いをすることになるのです。




本件のご質問で,被害者の方が「普段話している保険会社」というのは,相手の任意保険のことです。

これに対し,交通事故証明書には相手の自賠責保険会社名も書いてあるので,交通事故証明書上の相手の保険会社(自賠責保険会社)は,普段話している相手の保険会社(任意保険)とは異なることになります。

なお,両者が同じ保険会社であることもありますが,部署は全く別です。







◆自賠責保険に直接請求することもある


それでは,被害者は相手の自賠責保険と関わることがまったくないのでしょうか?

そういうわけではありません。
被害者は,相手の自賠責保険に対し「被害者請求」という方法で直接保険金を請求することができます。

たとえば,仮渡金請求をしたいときや後遺障害認定を申請するときには,被害者請求の方法で,相手の自賠責保険に対して請求を行うことができます。

交通事故の損害賠償手続内で,相手の自賠責保険会社名が必要になることもあります。
任意保険と自賠責保険の役割の違いを理解して,加害者の保険会社は両方とも把握しておくことが大切です。





▼参考記事
・損害賠償額の基準に注意!
・交通事故の問題解決の流れ
・当事務所の交通事故解決事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故直後,相手の方は「すべて私が悪いから,全部私が払うから。」と言っていました。そのことを任意保険会社の担当者に言ったら,錯誤だとか言っていました。 私の勘違いってことですか? 相手の方は事故直後に間違いなくそう言っていました。勘違いであるわけありません。 どういうことなのでしょうか?

2017年11月07日
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交通事故直後,相手の方は「すべて私が悪いから,全部私が払うから。」と言っていました。そのことを任意保険会社の担当者に言ったら,錯誤だとか言っていました。
私の勘違いってことですか?
相手の方は事故直後に間違いなくそう言っていました。勘違いであるわけありません。
どういうことなのでしょうか?





事故現場で示談をした場合,その内容は有効となります。
ただ,それが錯誤にもとづくものなら,無効になってしまいます。また,示談書や念書などの書類を作成していない場合には,示談成立を主張することができない可能性があります。





 事故現場での示談



◆事故現場での示談も有効



交通事故が起こったら,その場で示談してしまうケースがあります。

また,本件のように,事故現場で加害者が「すべて私が悪い。全部払います」などと言うこともあるでしょう。




このようにして事故現場で示談をした場合,その内容は有効となります。

もちろん,あとでそのような約束をしたかどうかが争いになる可能性はあります。


書面が残っていなければ,たとえ口頭で約束が成立したことが真実であっても,その真実を証拠で立証することができなくなります。

たとえば,その場でいくら支払うかを決めて示談書を作成し,当事者双方が署名押印したものが残っていたら,その内容に従って相手に支払を求めることができます。







◆示談が無効になる場合


事故現場で事故直後に示談したことが立証されているときや,約束したこと自体に争いがなくても,事故現場でした約束(示談)が無効になるケースがあります。

たとえば,本件のような錯誤無効が問題となるケースです。

錯誤無効とは,契約の要素に錯誤があり,それに基づいて契約を行った場合,その契約が無効になることです(民法95条)。




本件では,加害者は事故現場で「私が全面的に悪く,私の過失が100%である」と思い込んでいたから,このような約束をしたと考えられます。ところが,実際には,被害者にも過失があったということになると,錯誤無効の主張が通ってしまう可能性が高いです。

なお,示談の効力が覆される場合に関しては,これ以外にも,詐欺強迫によって示談が行われた場合には詐欺強迫を受けた側が示談の取消しを主張できますし,示談内容が公序良俗に反する場合にも示談が無効になります。







◆示談書などの書類がないと,示談成立を主張できない


示談書を作成していないときは,立証の問題があります。

事故現場で相手が「全額払う」と言っていても,示談書や相手が差し入れた念書でもない限り,その事実を証明することはできません。

相手が「事故現場で,支払うとは言っていない。金額も確定しないので,示談できるはずがありません。」などと言ってきたら,示談したことを証明する証拠がないので,事故現場での約束の内容を前提とした賠償は受けられません。







◆まとめ


本件では,何の書類を作成していなかったときは,事故現場で約束がされたこと自体を立証できず,約束の内容を前提とした解決が望めないことが考えられます。

立証が可能である場合や,事故現場で約束をしたこと自体に争いがない場合でも,事故現場で相手が「全部支払います。」と言っただけで,その時点では具体的な金額は全く確定していませんし,過失割合についても充分な検討がされて約束したとはいえません。

この場合,事故現場での相手の言動をもとに,相手の過失割合を100%として全額の損害賠償を求めることは難しいと考えます。




以上のように,事故現場でのやりとりをもとに,後にトラブルが起こることもよくあります。
お困りの際には,弁護士に相談してみて下さい。




▼参考記事
・示談交渉のポイント
・交通事故と慰謝料のすべて
・短期間で解決した事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故での死亡事故における葬儀費用について教えてください。また,人はいずれ亡くなるのですから,葬儀費用が交通事故の賠償の対象となるのはおかしくないですか?

2017年11月08日
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交通事故での死亡事故における葬儀費用について教えてください。また,人はいずれ亡くなるのですから,葬儀費用が賠償の対象となるのはおかしくないですか?




死亡事故の場合,葬儀費用の一定額までは,交通事故にもとづく損害として賠償の対象となります。標準額は150万円までですが,事案によってはより高額の費用が認められる例もあります。




 死亡事故 : 葬儀費用 



◆交通事故と葬儀費用の因果関係


死亡事故が発生した場合,被害者の葬儀を行う必要があります。

このとき,葬儀費用が交通事故にもとづく損害として認められるのかが問題です。

人はいずれ必ず亡くなり葬儀を行うことになるのだから,ご質問のように,葬儀費用が賠償の対象にならないという考えもあるでしょう。




しかし,交通事故がなかったら,そのタイミングでその内容の葬儀を行うことはなかったわけです。


このことから,葬儀費用と交通事故には因果関係が認められています。

ただ,かかった葬儀関係費用全額が認められるわけではなく,交通事故と因果関係のあるとされる損害の内訳や金額には限度があります。







◆葬儀費用に含まれる損害と標準額


それでは,一般的に死亡事故が発生した場合,どこまでの損害賠償が認められるのでしょうか?

基本的に含まれるのは,火葬料や埋葬料,祭壇代,法名代,読経代,お布施,花代,葬儀広告にかかった費用と49日までの法要にかかった読経代や回向料などです。

これに足して,仏壇購入費や墓地の設置費用なども,葬儀代に含まれることもあります。




葬儀費用の限度額は,裁判基準では150万円です。


そこで,一般的に,150万円を超える葬儀費用をかけたとしても,それを超える部分については自己負担となります。

これらの費用に対し,香典返しや弔問客の接待費用などは,遺族固有の支出と考えられるので,損害の内容には含まれません。







◆150万円を超えて認められるケースがある


葬儀費用の限度額の標準額は150万円ですが,それを超えた金額が認められる例もあります。


仏壇購入費用や墓地の設置費用について,基本の葬儀費用とは別途の損害として賠償を認めた裁判例もありますし,遺体搬送料が葬儀費用と別の損害として認められた例もあります。


大阪地裁平成14年5月14日判決では,加害者側が被害者に対して「葬儀費用を支払う」と言っていたことから安心して葬儀を実施したことなどを評価して,300万円の葬儀費用を認めました(ただし,実際に葬儀関係のためにかけた費用は約750万円に達していました。)。

大阪地裁平成12年8月25日判決では,530万円程度の葬儀費用がかかった事案において,180万円を損害と認定しています。

高知地裁平成12年5月18日判決では,女子高生2人が死亡した事案において,事故の態様や被害者の年齢等も考慮して,それぞれに対し185万1895円,212万9393円の葬儀費用を認めました。


このように,死亡事故の葬儀費用は,標準額はあっても事案によっても異なる判断が行われるため,個別の対応が必要です。弁護士に相談してみて下さい。




▼参考記事
・葬儀関係費用
・死亡事故被害者の救済
・交通事故被害のない社会と技術進歩




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

父が交通事故に遭い死亡しました。父の相続人は子である私だけです。 父には多額の借金があります。相続放棄を考えているのですが,賠償はどうなりますか?

2017年11月09日
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父が交通事故に遭い死亡しました。父の相続人は子である私だけです。
父には多額の借金があります。相続放棄を考えているのですが,賠償はどうなりますか?


相続放棄をすると損害賠償請求はほとんどできなくなってしまいます。




 交通事故で親族が死亡した場合:債務の相続



◆相続放棄の効果


相続をすると,現金,預貯金や不動産などの資産を承継しますが,借金などの負債も一緒に相続されてしまいます。

そこで,親などが借金を残して亡くなると,相続人は借金を支払う義務を負うことになります。

借金を支払いたくない場合には,このケースのように,相続放棄をするか,限定承認という方法を利用するしかありません。

相続放棄は,プラスの資産もマイナスの負債も,一切を相続しないことです。




相続放棄をすると,その人は初めから相続人ではなかったことになるので,相続放棄をすると,借金を相続することはなくなります。

ただ,その場合プラスの資産やその他の権利義務の一切も相続できなくなることが問題です。

損害賠償請求権のような権利は,本来相続の対象となりますが,本件のように,被相続人が損害賠償請求権を持っていたときに相続人が相続放棄をすると,被相続人の損害賠償請求権も相続することができなくなってしまいます。







◆限定承認をするのも1つの方法


相続放棄をすると,借金の支払いはしなくて良くなりますが,損害賠償請求権も相続できなくなることが問題です。

この場合,限定承認という方法を利用する方法があります。

限定承認とは,相続財産の中でプラスの資産とマイナスの負債を清算し,全体としてプラスになる場合にそのプラス部分だけを相続する方法です。差し引きした結果,全体がマイナス(債務超過)になる場合には,相続することがありません。

つまり,相続財産が全体としてプラスになったらプラス部分だけを相続できますが,借金を相続する必要はない,ということです。




そこで本件で限定承認をすると,損害賠償請求の結果回収できる金額が借金額を上回る場合には,借金を超過するプラス部分を相続することができます。

一方,損害賠償請求をしたもののそれによる回収金額が被相続人の借金額を下回るときは,相続人が取得するものはありません。







◆相続放棄と限定承認の期間制限


以上のように,本件で借金を免れながら損害賠償請求権も失いたくない場合には,限定承認が有効です。また,明らかに借金額のほうが大きい場合(債務超過の場合)には,相続放棄をしてもよいでしょう。

相続放棄や限定承認をするためには,期間制限があることに注意が必要です。

具体的には「自分のために相続があったことを知ってから3か月以内」に相続放棄または限定承認の申述という手続をする必要があります。

自分のために相続があったことを知ったというのは,基本的に相続開始を知ったことを意味します。ただし,遺産が全くないと信じており,そう信じていたことに正当事由がある場合には,3か月のカウントは開始しません。




本件では,父親に借金があることも損害賠償請求権があることも知っているので,相続開始(父親の死亡)を知ったときから3か月以内に相続放棄か限定承認をしないと,手続ができなくなり,プラスもマイナスも相続することになってしまいます。

また,3か月の期間制限を伸ばしてもらう手続もあります。お早めに,相続放棄か限定承認かを決めて,家庭裁判所で申述の手続をしましょう。







◆遺族固有の慰謝料


なお,被害者の子が相続放棄をしても,お子様固有の慰謝料請求を加害者に対して行うことはできます。相続放棄をしないときに比べると,損害賠償額は大幅に少なくなります。



▼参考記事
・故人に借金がある場合,相続手続きはどのようになりますか。
・慰謝料・死亡事故について(裁判基準)
・親族固有の慰謝料も認める形で解決した事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故に遭い,後遺障害になりました。障害年金とはなんですか?

2017年11月10日
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交通事故に遭い,後遺障害になりました。障害年金とはなんですか?

交通事故で高次脳機能障害になった場合,障害の程度によって障害年金が支給されます。発症時に加入していた年金の相談窓口に問い合わせましょう。




 高次脳機能障害 : 障害年金 



◆障害年金について知ろう


交通事故で頭部を強打したことが原因で発症する高次脳機能障害は,完治しない病気,すなわち生涯に渡り後遺症が残る病気なので,医療費や介護費用の負担が患者さんに重くのしかかります。

事故の被害者だった場合,加害者に損害賠償金を請求し,そのお金を医療費に充てることが考えられます。

症状によっては,後遺障害等級を申請し,申請が認められれば,等級に応じた保険金を受け取ることができます。




ところで,もう一つ,高次脳機能障害の人が公的な支援金を受け取る方法があるのをご存知ですか?

それは,障害年金です。

年金というと,高齢者向けの給付金というイメージがあるので,家族が高次脳機能障害を発症しても,障害年金の受給資格があるかどうか調べずに,受給しない人がいるのは残念です。

では,どのような場合に高次脳機能障害の患者さんが障害年金を受け取れるか,解説します。










◆障害年金を受給できる条件


怪我をして高次脳機能障害を発症してから1年半が経過した時点で,障害等級1級から3級までの障害がある場合,「精神障害」を理由に障害年金を受給する資格があります。

障害等級による受給資格は,発病当時に加入していた年金の種類によって異なります。




【国民年金】

障害等級1級と2級の方に受給資格があります。

年金の種類は「障害基礎年金」で,支給額は平成29年4月に改定されました。
支給年額は,障害基礎年金1級が974,125円,障害基礎年金2級が779,300円 です。

18歳の年度末である3月31日を過ぎていない子どもがいる場合は,子どもの人数に応じて年金が加算されます。子どもに1級または2級に該当する障害がある場合は,20歳まで加算されます。




【厚生年金】

高次脳機能障害を発症した時に厚生年金もしくは共済年金に加入していて,国民年金・厚生年金保険障害等級表1,2,3級に相当する後遺障害傷害が残った場合は,障害基礎年金および障害厚生年金または障害共済年金の対象になります。

なお,障害等級が3級に満たない場合でも「障害手当金」が支給される場合があるので,厚生年金の事務所に問い合わせてください。

また,受傷時に公的年金に加入していなかった20歳未満の人に対する救済制度として,年金未加入でも障害基礎年金の受給資格が認められています。該当する方は,お住まいの市町村役場の国民年金課に問い合わせてください。




障害年金受給開始後に結婚した場合は,配偶者や子どもも年金加算対象となるので,忘れずに申請しましょう。




▼参考記事
・高次脳機能障害と法律事務所Q&A
・高次脳機能障害を負われた方の解決事例
・交通事故ご相談事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)

交通事故による高次脳機能障害で,障害年金を申請する際に注意すべきことは何かありますか?

2017年11月13日
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交通事故による高次脳機能障害で,障害年金を申請する際に注意すべきことは何かありますか?

交通事故で高次脳機能障害になり障害年金を申請する場合は,日常生活でどのような支障がでているか医師に書面などで伝え,充実した後遺障害診断書を書いてもらいましょう。




 高次脳機能障害 : 障害年金申請手続き 



◆障害年金の申請はむずかしい?



障害年金の申請は手続きが複雑で,ようやく書類を提出しても不受理の場合も多いと言われています。

なぜ,障害年金は受給がむずかしいと思われがちなのでしょうか?

障害年金受給資格の審査は,ほぼ書類のみで行われますが,年金の制度が複雑であることと,提出種類が多いこととから,申し立てをしても書類が差し戻されることが珍しくありません。また,書類が整って審査をした結果,年金が支給されない事例も比較的多いのです。

つまり,年金制度の複雑さ,提出する書類の煩雑さゆえに障害年金の申請は敷居が高いと思われがちなのです。




実際に,交通事故で高次脳機能障害になった方およびそのご家族で,障害年金の申請をためらっている方も多いのではないでしょうか?

さらに高次脳機能障害の場合は,障害年金を受給する理由が精神障害であるということも,年金受給の敷居を高くしています。

事故に遭うまでは普通の生活をしていた家族が,たとえ高次脳機能障害という病気のせいではあっても,精神障害者であると認めたくないという気持ちも理解できます。

しかし,障害年金は国が制定した公的年金制度であり,生涯に渡って受けとることができるのですから,高次脳機能障害で受給資格がある方は,年金申請の手続きを行いましょう。







◆診断書作成は入念に


高次脳機能障害の人が障害年金を受給する場合,その根拠は「症状性を含む器質性精神障害」と認定されたということです。

なんとなくわかったようなわからないような表現ですが,精神疾患はどの程度の障害があるか,IQ(知能指数)を除いては数値などで客観的に判断できません。




そこで,高次脳機能障害の人の障害年金の審査にあたって,認定するかどうかの判断にもっとも大きな影響を与えるのが診断書です。

診断書の裏面には,「日常生活能力の判定欄」と,「日常生活能力の程度欄」があります。むろん,障害年金の申請者やその家族が書くのではなく、医師が記入します。しかし,主治医であれ,精神疾患の専門医であれ,患者さんの日常のふるまいをことこまかに観察しているわけではありません。




そこで重要なのは,家族による意見書の提出です。

感情的にならず,日常生活でどのような行動を取っているかを客観的に書面にしたため,提出しましょう。
食事は適切に摂っているか,気候に応じて適切な衣服を選び,身の周りを清潔に保っているか,家族と意思の疎通ができるか,感情の起伏,危険を回避できるなどについて,医師に書面で伝えます。

私たちは,日頃歯を磨く,顔を洗うなど,何の苦労もせずに何気なく日常の動作をこなしていますが,高次脳機能障害の人にとっては,それらの事ができない,もしくは本人ができていると思っていても,はたから見るとまったく違う動作になっていることがあります。

そのような日常生活の能力について,もっとも良く知っているのは家族です。
診断書の作成にあたっては,高次脳機能障害の人の日常を良く観察して,診断書を書く医師に正しく伝えてください。




▼参考記事
・医師などの外部専門家との連携体制充実 〜障害年金に特化した社会保険労務士との連携〜
・兼業主婦が高次脳機能障害になり,保険会社提示額0円から7600万円獲得した事例 〜高次脳機能障害の専門医をご紹介〜
・弁護士が本音で本当のことを書いた事務所の選び方




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)

交通事故で高次脳機能障害になった人の日常生活能力の基準は何ですか?

2017年11月14日
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交通事故で高次脳機能障害になった人の日常生活能力の基準は何ですか?

交通事故で高次脳機能障害になった人の日常生活能力の判断基準は,障害年金の申請にあたって提出する精神疾患診断書の,日常生活能力の判定欄で判断します。

具体的にどのような生活能力を判定するのか,解説いたします。





 高次脳機能障害 : 日常生活能力の判断基準 



◆働いていることと,完全な社会復帰は分けて考えよう


交通事故で高次脳機能障害になった方が障害年金の申請をする場合,働いていれば,それだけ日常生活能力があると判断されます。


むろん,事故に遭う前に勤めていた会社で仕事を再開し,立派に職務をこなしている方もいらっしゃるでしょう。

しかし,障害年金の申請をする方は,働いていても違和感を覚えたり,職場の同僚や上司と人間関係をうまく築けず悩んでいるのではないでしょうか?




高次脳機能障害の患者さんにとって,働くことがすなわち社会復帰ではなく,社会復帰のためのトレーニングと考えた方が良い場合もあります。

仕事を持ち,働いていたら障害年金を受け取る資格はないとあきらめることはありません。

完全に社会復帰するためのリハビリテーションとして,現在の仕事を行っているならば,高次脳機能障害であるがゆえの精神疾患を理由に,障害年金を申請できます。







◆診断のかなめ 日常生活能力とは?


障害年金の申請にあたって提出する精神疾患診断書には,日常生活能力の判定欄があります。
具体的にどのような生活能力を判定するのか,解説いたします。


以下の診断項目は,いずれも「助言や指導がなくてもできる」,「時には助言や指導が必要である」,「一人ではできないが助言や指導があればできる」,「助言や指導があってもできない」といったランクで障害の程度を判断します。


【適切な食事ができるかどうかをチェック】

与えられた食事を食べるだけでなく,配膳などの準備ができる,適切な量を摂る,バランスの良い食事を摂れるなどの点を審査します。

【身体や身の周りを清潔に保持できるか?】
洗面や入浴,洗髪などを自分で行って身体を清潔に保ち,着替えができ,自分の部屋の片づけや掃除ができるかどうかを審査します。

【他人と意思の伝達ができるか,集団行動ができるかなどをチェック】

【規則的に通院や服薬を行っているか,自分の病状等を主治医に伝えることができるかをチェック】

【金銭管理と買い物が適切かをチェック】
自分でお金を適切に管理してやりくりがほぼできるかどうかを審査します。
買い物に関しては,一人で買い物ができ,かつ計画的に買い物ができるかどうかが審査のポイントです。

【社会性についてチェック】
たとえば,公共施設を一人で利用できるか,社会生活に必要な手続きを一人でできるかなどが審査されます。

【身辺の安全を保ち,危機に直面した時は状況に応じて対応できるかがチェック】
たとえば,危険を感じた時に周囲の人に援助を求めるなどの対応も審査の対象です。


なお,この欄に記述された内容だけを根拠に,障害年金の申し立てが受理もしくは不受理になることはありません。

▼参考
http://www.nenkin-seisin.jp/14068510572378




▼参考記事
・自賠責における高次脳機能障害認定の入口の3要件
・高次脳機能障害について
・高次脳機能障害と相談




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)


高次脳機能障害に対する就労支援は,どのようなものがありますか?

2017年11月15日
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高次脳機能障害に対する就労支援は,どのようなものがありますか?

高次脳機能障害になり,もとの職場で働くことが困難な場合,就労支援事業や,就労継続A型・B型などの支援を通じて働くことができます。




 高次脳機能障害 : 就労支援 



◆高次脳機能障害でも働きたい!


交通事故などが原因で,高次脳機能障害を発症すると,対人関係がうまく構築できない,感情の起伏が激しい,最近のできごとを記憶できない,発話が困難になるなどの症状が現れます。

高次脳機能障害の症状は,損傷した脳の部位によって異なるため,上記に挙げた症状をすべて発症することもあれば,それ以外の症状が現れることもあります。

いずれにせよ,このような症状が顕著に現れた場合,一般企業での就労は困難を伴うことは想像に難くありません。




高次脳機能障害の方に典型的な症状の一つに,感情爆発があります。

周囲の空気を読まずに,自分が思っていることをズバッと言ってしまうのです。それが正論ではあっても,周囲の雰囲気とそぐわない言動であれば,あの人は変わっている・・と煙たがられてしまうでしょう。

そのような症状がある場合,高次脳機能障害を発症する前の職場に戻ることは困難といわざるを得ないでしょう。

怪我が治って退院した後,職場復帰を希望してもかなわない失望感は想像して余りあります。かといって,仕事に就かずに家でぶらぶらしていても,社会から自分が阻害されたように思えて精神的に落ち込みがちになります。

仕事に就いて充実した日々を送りたいが,高次脳機能障害のために働く場が見つからないという方に,公的な就労支援について説明いたします。







◆就労移行支援事業


障害者総合支援法(旧 障害者自立支援法)に定められた就労支援事業で,一般企業に就職を希望する高次脳機能障害などの障害がある人に対して,働くために必要な訓練や就職活動の支援などを行って,就労に必要な知識や能力の向上をめざします。

就労移行支援事業の対象になる人は,障害のある人で,一般企業で雇用されることが可能と見込まれる人です。

各地に設立されている就労移行支援事業所で学びながら,スキルアップし,一般企業への就職をゴールとします。

通所型の福祉サービスですが,障害者手帳を持っていなくても,地方自治体の判断または医師の診断などによって,就労移行支援事業所への通所が可能になります。

企業の探し方,ハローワークへの登録などの支援を行うほか,履歴書作成や企業の面接をサポート,就職後も職場に定着するように、企業へ訪問して実習生をサポートします。

なお,就労支援事業所の支援は,おおむね2年間で,その間に就職先を決めるという流れになっています。就労支援事業所に通所する間,賃金は支払われず,収入に応じて規程の料金を納める決まりです。







◆就労継続A型


高次脳機能障害が重度であり,一般企業で働くことが困難な場合は,就労継続A型の支援を検討すると良いでしょう。

就労支援A型では,事業者と障害者が雇用契約を結び,国が定めた最低賃金が支払われます。
社会保険に加入するので,社会的な地位を確立することができます。

就労継続A型に該当するのは,就労移行支援事業を利用したが就職できなかった人,特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが就職できなかった人,企業を離職し,現在雇用関係にない人などです。







◆就労継続B型


就労継続A型の仕事に就くことがむずかしい場合は,就労継続B型で働くことを検討します。

就労継続B型は,雇用契約を結ばないので,社会保険への加入はありません。
労働への対価は,工賃として支払われます。




▼参考記事
・高次脳機能障害の就労支援機関には,どのようなものがありますか?
・社会復帰のために誰に相談すればよいでしょうか?
・交通事故で高次脳機能障害を発症したものの,本人の努力と勤務先の配慮もあり職場復帰をし,将来治療費・労働能力喪失率を認められる形で解決した事例




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