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脳室の変形と高次脳機能障害

脳室の変形と高次脳機能障害

最終更新日:2023年6月27日

監修者:よつば総合法律事務所
代表弁護士 大澤 一郎

Q頭部外傷で脳室が変形し、高次脳機能障害となることはありますか?
Aあります。脳室が変形している所見があると、高次脳機能障害の可能性が高まります。
頭部外傷

高次脳機能障害とは

高次脳機能障害とは脳損傷による認知障害全般です。様々な認知障害だけではなく、行動障害や人格変化を伴うことが多いです。症状には記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがあります。

脳室とは

脳室(のうしつ)とは脳の内部にある空間です。脳室の中は脳脊髄液で満たされています。

脳室の役割

ヒトの脳は、大脳、小脳というようにいくつかの部分に分かれています。それぞれの脳の間には脳室と呼ばれるすき間があります。脳室は、頭の左右に1つずつある側室および第3脳室、第4脳室と合わせて4つあります。

脳室は、「脳脊髄液を生産して脳を外部からの衝撃から守る」という重要な役割を持っています。

それぞれ独立した組織である大脳や小脳等が、摩擦によって傷付かないためにも、脳室は不可欠な存在です。

脳脊髄液とは

それぞれの脳室は、脳脊髄液が流れる通路でつながっています。

脳脊髄液は、全部の脳室を合わせると100~150mlです。
1日の脳脊髄液の産生量は約500mlです。1日に3~4回も、古い脳性髄液が静脈に吸収され、新しい脳脊髄液が脳室を満たします。

頑丈な入れ物に入っている液体の中に満たされている個体は、入れ物が衝撃を受けても、液体のなかでゆらゆら動きます。脳脊髄液があることで脳は大きな衝撃を回避できます。

脳室と高次脳機能障害の関係

高次脳機能障害は診断が難しい病気の一つです。もっとも、MRI(核磁気共鳴画像法)やCT(コンピューター断層撮影法)により、脳の損傷の部位や程度を判断することが可能です。

脳室は脳脊髄液に満たされた空間です。レントゲン検査では写りませんが、MRIによる撮影が可能です。MRIで撮影した脳室の形状に異常が見つかり、高次脳機能障害の診断につながることもあります。

もともとは空間であって、空間に脳脊髄液という液体があるのが脳室です。
空間ということは、衝撃を受けるとたやすく変形する可能性があるということを意味します。

つまり、MRIやCTで撮影した脳室が変形していたら、脳内に血腫がある、腫瘍などの病変があるなどの可能性が否定できないということです。

たとえば、脳に血腫ができたら、脳の組織が血腫で圧迫されます。脳室は小さくなって反対側に偏ります。一方、脳に委縮があったら、脳の容積が以前より減るので脳室は広がります。

脳室は本来は左右対称形です。画像で側室が左右非対称に映っていれば、変形していることが容易にわかります。

このように、脳室の状態を画像診断で観察することにより、脳の組織に何が起きているかを観察することができるのです。

MRIなどの画像による脳組織の診断が画期的な進歩を遂げる以前は、脳脊髄液を穿孔により採取して組織を分析し、疾患を特定するために用いました。しかし、現在では画像診断が主流です。脳室の変形があると高次脳機能障害の可能性が高まります。

まとめ:脳室の変形と高次脳機能障害

頭部外傷で脳室が変形している所見があると高次脳機能障害の可能性が高まります。

(監修者 弁護士 大澤 一郎

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