(2)交通事故の事件屋(謎の代理人)は今はほとんど存在しない

最終更新日: 2016年10月27日

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執筆: 弁護士 大澤一郎

「山口組顧問弁護士」山之内幸夫著(角川新書)を読み,興味深かった箇所をまとめつつ,2016年時点の私(普通の弁護士)の感覚で異論・反論をまとめてみました。(その2)

交通事故の事件屋は今はほとんど存在しない

「山口組顧問弁護士」山之内幸夫著(角川新書)の中で交通事故の示談屋の話が出てきます。
久保さんという名前で登場する事件屋で,代理人として登場し,休業損害月額50万円をでっちあげるという事案です。

謎の代理人が出てきた場合

昔は,交通事故被害にからんで「代理人」と称する謎の人物がよく出てきたらしいです。しかし,現在では保険会社は交通事故被害に関して「代理人」との交渉自体をほとんど受け付けません。(家族等が代理人の場合は別です)

もし,「謎の代理人」が出てきた場合には,保険会社は保険会社側の弁護士に対応を一任することが多いでしょう。

弁護士は,「代理人」とは交渉しませんというような通知書を送付するかもしれません。また,保険会社側から被害者に対して,裁判所での調停・裁判を申立することもあります(債務不存在確認の調停・訴訟)。

休業損害をでっちあげた場合

実際に仕事を休んでもいないのに休業損害をでっちあげているような可能性がある場合,保険会社は調査を開始します。調査会社に調査を依頼し,被害者の行動を尾行するかもしれません。各種関係先に事実確認を行い裏付調査をするかもしれません。調査の結果,「クロ」だと判明した場合には,警察への申告もあり得ます。

嘘の請求は絶対に禁止です

当事務所では交通事故の被害者側の案件を多くお取扱いしています。
その中でいつもお話しをしているのが,「嘘の請求は絶対に禁止」ということです。

事案によっては,事実を前提とした評価が分かれる事案もあります。例えば,骨折はしているものの,仕事に復帰可能か復帰不可能かが争われているというような場合には「骨折していて仕事に復帰不能」と主張することは何もおかしいことではなりません。

ただし,「そもそも事故前に仕事もしていなかったのに,仕事を休んでいると虚偽の事実を伝えて休業損害を請求する」と嘘をつくのは詐欺になってしまいます。嘘の請求は絶対に禁止です。

(3)山之内幸夫元弁護士の指摘で共感・納得できる部分に続くに続く

【本記事へのよくある質問と回答】

Q不正請求に関する相談で最近多いものは何がありますか?
A整骨院の不正請求の相談は比較的多いです。交通事故被害者が知らないうちに整骨院の請求が水増しされていたり、交通事故被害者が不正請求に加担していると疑われるような事案もあります。
Q整骨院の不正請求で多いパターンはどのようなパターンですか?
A通院していないのに通院したことに記録上なっているというパターンが多いです。
Q整骨院の不正請求の場合、どのようになりますか?
A(1)整骨院の費用の返金、(2)調査費用の返金を求められることが多いです。また、悪質な場合には詐欺罪での刑事告訴がされることがあります。
Q整骨院の不正請求をしてしまった可能性があります。どうすればよいですか?
Aまずは事実関係を正確に把握しましょう。その上で、事実経緯を正直に保険会社に伝えて協議をしましょう。
Qどのような経緯で整骨院の不正請求は発覚しますか?
A他の患者さんでも同じような不正請求を整骨院がしていることがきっかけで発覚することがあります。また、調査会社が個別に現地調査などを行い、通院をしていないのに費用だけが請求されているということで発覚することもあります。
Q整骨院ではなく病院でも不正請求はありますか?
A全くないとは断定できませんが、相談としてはほとんどありません。

執筆: 弁護士 大澤一郎