■慰謝料
死亡慰謝料は,被害者の家族構成や,加害者の態度等,具体的な事情によって増減されます。
死亡慰謝料の目安は,被害者が一家の支柱の場合2800万円,母親・配偶者の場合2500万円,その他の場合2000~2500万円となっています。(※裁判実務に基づく賠償額の基準が掲載されている本「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称「赤い本」)の基準です。)
上記の基準はあくまで目安ですので,ご遺族のお気持ちや個別事情を可能な限り反映した慰謝料額を請求する必要があります。
■逸失利益
死亡逸失利益は,被害者が事故に遭わなければ得ることができたであろう収入のことをいいます。
<計算式> 基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年数に応じたライプニッツ係数
死亡逸失利益は,事案によって,基礎収入額をいくらとみるか,生活控除率を何割とるか等について争いになり,計算方法によって賠償額に大きな差が出てくるところです。
■葬儀費用
裁判実務の基準ですと,葬儀費用は150万円程度が原則です(ただし,実際にかかった金額が150万円以下の場合は実際に支出した額になります。)。
なお,香典や香典返しの金額は考慮しません。
■その他(治療費等)
事故後の治療費,交通費など,事故に遭わなければ発生しなかった損害について,上記の他にも加害者に請求できるものがあります。
死亡事故の場合,被害者は事故状況を説明できません。そのため,加害者の一方的な説明によって被害者に不利な事故態様とされてしまわないようにしなければなりません。
また,加害者の刑事裁判にご遺族の方の意見を反映させる「被害者参加」という手続きがあります。当事務所でも,被害者参加代理人として,多くのご遺族の方とともに刑事裁判に関与しています。
■千葉県の交通事故の状況について
平成27年中の千葉県での交通事故発生件数は1万8650件でした。
そして,交通死亡事故は177件発生しており,死者数は180人と,全国3位の多さでした。千葉県では1年でこれだけ多くの方が交通事故の被害に遭われています。
このように,交通事故でご家族などを亡くしたり,怪我を負ったりした方のために,様々な制度や支援が用意されています。
■捜査段階における制度
1 被害者連絡制度
ひき逃げ事件,交通死亡事故等の重大な交通事故事件については,警察が被害者またはそのご遺族に対する捜査状況等について連絡をする「被害者連絡制度」というものがあります。
これにより,重大な交通事故事件の被害者は,事件を担当している捜査員から捜査状況や加害者の氏名,年齢等加害者の情報,加害者の処分状況,起訴・不起訴などの処分結果を聞くことができます。
なお,重大な交通事故とは,①死亡ひき逃げ事件,②ひき逃げ事件,③死亡または全治3カ月以上の傷害を言った事件,④危険運転致死傷罪等に該当する事件,のことを言います。
2 被害者等通知制度
被害者やご遺族の方に,事件の処分結果,刑事裁判の結果,加害者が受刑中の場合には刑務所における処遇状況やその出所時期などを通知してもらえる被害者等通知制度というものがあります。通知を受けるためには,事件の担当検察官等に対し,通知を希望する旨伝える必要があります。
なお,事件の性質によっては,通知を希望したとしても,検察官の判断により通知されない場合があります。
■公判段階における制度:被害者参加制度
1 被害者参加制度とは
公判,つまり刑事裁判において,被害者やそのご遺族の方が,参加できる制度のことを被害者参加制度といいます。この制度ができる前は,被害者やご遺族の方は,単に加害者の刑事裁判を傍聴することしかできませんでしたが,平成20年12月から,裁判に参加できるようになりました。
2 被害者参加制度の対象事件
被害者参加できる事件には一定の制限がありますが,過失運転致死傷罪は被害者参加の対象事件となっていますので,交通事故事件において加害者が被害者を死傷させ刑事裁判になっている場合は,裁判板書の許可を得た上で,被害者やそのご遺族は被害者参加することができます。
3 被害者参加できる人
被害者ご本人,被害者の法定代理人,被害者がお亡くなりになった場合や心身に重大な故障がある場合には被害者の配偶者,直系親族,兄弟姉妹がその対象となります。
4 被害者参加するための手続き
被害者やご遺族,または被害者の法定代理人や委託を受けた弁護士から,事件を担当する検察官に対し,刑事裁判に参加したい旨を申し出てください。
その上で,担当検察官から裁判所に対し,被害者参加の希望があった旨の連絡がなされます。そして裁判所から,被害者参加の許可がなされれば参加できるようになります。
なお,申し出ができる時期は,起訴後からその事件の裁判が終結されるまでの間になります。上訴審から参加することも可能です。
■被害者参加の内容
では,被害者参加とは実際にどのようなことができるのでしょうか。
以下に詳しく見ていきましょう。
1 公判期日に出席することができます
被害者参加をすれば,裁判が開かれる日に,被害者として法廷に加わることができます。被害者参加制度がなかった時代は,被害者は一傍聴者として傍聴席から裁判を傍聴することしかできませんでしたが,被害者参加制度ができてからは,法廷の中に入ることができるようになりました。
2 検察官の活動に対し意見を述べたり,検察官の活動に対する説明を受けたりすることができます
検察官に対して,検察官の証拠調べの請求や論告・求刑などの検察官の活動に対し被害者やご遺族としての要望を伝えることができます。また,検察官の意見と被害者やご遺族の意見が違う場合には,検察官の意見はどうしてそういう意見なのか説明を求めることができます。
3 証人尋問をすることができます
被害者参加した場合,その事件の証人に対し尋問をすることができます。
ただし,尋問できる事項については一定の制限があり,証人尋問の場合には,情状に関する質問のみ行うことができます。
例えば,加害者の監督人として加害者の家族が証人として証言する場合には,その家族が本当に監督人としての能力を有しているのか,加害者を今後監督できるのかなどの証明力を争うために尋問をすることができます。
4 被告人に質問をすることができます
被害者参加した場合,裁判所の許可を得て被告人(加害者)に対し,被害者やご遺族自身の意見を述べるために必要な内容について,被告人に質問することができます。
証人への質問とは異なり,被告人(加害者)に対しては,質問事項に制限はなく,犯罪事実に関わることに関する質問も可能です。
5 意見陳述をすることができます
被害者参加した場合,裁判所の許可を得て,事実または法律の適用について意見を述べることができます。被害者やご遺族が,検察官のように,被告人(加害者)の求刑について意見を述べることもできます。
ただし,意見を述べる範囲は訴因(起訴状に記載された犯罪事実)の範囲に限られるため,起訴されていない余罪などについて意見を述べることはできません。
このように,被害者参加をすれば,裁判の各場面で,裁判に参加することができるようになります。
また,ご自身でこれらの活動を行うのがためらわれる場合には,被害者参加代理人といって,ご自身の代わりに被告人への質問を行ったり,意見陳述を行ったりする弁護士をつけることも可能です。
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