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交通事故知識ガイド下肢及び足指

第1楔状骨骨折・足の舟状骨骨折・舟状骨剥離骨折・立方骨圧迫骨折・二分靱帯損傷・踵骨前方突起骨折

第1楔状骨骨折の解説

足根骨-第1楔状骨骨折

第1楔状骨骨折

「踵」は踵骨(しょうこつ)
「距」は距骨(きょこつ)
「距滑車」は距骨滑車(きょこつかっしゃ)
「舟」は舟状骨(しゅうじょうこつ)
「1楔」は第1楔状骨(けつじょうこつ 「内側楔状骨」ともいいます。)
「2楔」は第2楔状骨(「中間楔状骨」ともいいます。)
「3楔」は第3楔状骨(「外側楔状骨」ともいいます。)
「立」は立方骨(りっぽうこつ)
「中足」は中足骨(ちゅうそくこつ)で、第1中足骨から第5中足骨まであります。
「基」は基節骨(きせつこつ)
「中」は中節骨(ちゅうせつこつ)
「末」は末節骨(まつせつこつ)

リスフラン関節脱臼を伴わない、単独での楔状骨骨折が発生する例は稀です。

参考:リスフラン関節脱臼骨折の解説

第1楔状骨は、舟状骨及び第1中足骨と関節して内側縦アーチのかなめとなっている部位で、普段は地面に接触しません。したがいまして、通常、第1楔状骨は舟状骨と第1中足骨の間で、両方の骨からの圧迫を受けています。

第1楔状骨が骨折すると、この圧迫力の大きさから、骨折部も不安定になるでしょう。ギプスや足底板による固定を行って癒合を待つという治療が考えられます。脱臼があるときは、手術による固定を行うことも考えられます。

第1楔状骨骨折の後遺障害認定のポイント

1 関節の機能障害や、痛みによる神経症状を原因とする後遺障害が視野に入ります。
2 具体的には、関節の機能障害として「1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」(12級7号)に該当する可能性があります。
3 また、痛みの神経症状として「局部に頑固な神経症状を残すもの」(12級13号)や「局部に神経症状を残すもの」(14級9号)に該当する可能性があります。

足の舟状骨骨折の解説

足の舟状骨骨折

足の舟状骨骨折

舟状骨骨折が単独で発生することは稀です。ショパール関節やリスフラン関節の脱臼に伴って発生することが多いです。
交通事故では、バイクの転倒時に、足関節の捻挫に伴って舟状骨骨折が発生することがあります。
癒合せず、偽関節に至ってしまっているときは、手術が行われることもあります。

参考:ショパール関節・リスフラン関節脱臼骨折の解説

足の舟状骨骨折の後遺障害認定のポイント

舟状骨骨折が単独で発生したものの、転位(ずれ)が少ないときは、骨が癒合すれば、後遺障害を残すことは少ないです。
痛みがあるときは、3D-CTで骨が歪んで癒合していること(変形癒合)を立証し、神経症状で「局部に神経症状を残すもの」(14級9号)又は「局部に頑固な神経症状を残すもの(12級13号)に該当する可能性があります。

舟状骨剥離骨折の解説

舟状骨剥離骨折

舟状骨剥離骨折

足の舟状骨は、足の土踏まずの内側の頂点に位置しています。湾曲している形が船底に似ていることから、舟状骨と呼ばれるようになりました。

足の舟状骨のアーチ

上の図の緑の曲線は足部の縦のアーチを示しております。内側縦アーチの頂点には舟状骨があり、アーチを支えています。
舟状骨には、オレンジ色で示した後脛骨筋腱が付着しており、後脛骨筋腱は、内側縦アーチの形状を保つはたらきをしています。
後脛骨筋腱と舟状骨は共働して、歩行時の蹴り出しの際や、体重を支える際に重要な役割を担っています。

舟状骨の剥離骨折

後脛骨筋腱が強く引っ張られることにより舟状骨が剥離骨折したことを示す図です。

足関節部底屈の状態(足首を伸ばした状態)で爪先からの強い外力を受けることにより、舟状骨剥離骨折が発症するようです。
舟状骨剥離骨折が生じると、舟状骨部分の圧痛、腫れがみられます。足首の捻挫と合併することが多く、症状が捻挫と似ていることから、見過ごされてしまう危険があります。

足関節をギプスで固定し、剥離した骨片が舟状骨と癒合するのを促します。

舟状骨剥離骨折の後遺障害認定のポイント

1 保存療法が行われないまま時間が経過すると、後脛骨筋腱のはたらきで、剥離された骨片は大きく移動してしまいます。そうなると、手術を行い、ねじで固定するといったことも考えなければなりません。
2 そのような場合、関節の機能障害(可動域制限)を理由とする後遺障害や、痛みの神経症状を理由とする後遺障害の可能性があります。
3 具体的には、関節の機能障害として「1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」(12級7号)に該当する可能性があります。
4 また、痛みの神経症状として「局部に頑固な神経症状を残すもの」(12級13号)や「局部に神経症状を残すもの」(14級9号)に該当する可能性があります。

立方骨圧迫骨折の解説

立方骨圧迫骨折

立方骨圧迫骨折はくるみ割り骨折とも呼ばれています。立方骨は、足の甲の中央からやや外側に位置しており、遠位部で第4・第5中足骨(薬指、小指の根元)と連結し、近位部は踵骨と連結して関節を形成しています。

立方骨圧迫骨折
立方骨圧迫骨折

立方骨は足の外側縦アーチ形状の要となる骨で、体重が乗ったときに、他の骨とともに衝撃を吸収する役割を果たしています。

外力によって足関節が外側に捻る動作を強制されること(いわゆる外返し捻挫)により、立方骨は、第4・第5中足骨と踵骨によって挟まれ、踵骨・立方骨関節面の軟骨下骨が潰されて骨折に至るというメカニズムです。立方骨が挟まれて骨折するというメカニズムをたとえて「くるみ割り骨折」とも呼ばれます。

具体的な例としては、階段を踏み外すといったことで足首が外側に捻られたときに生じることがあります。
交通事故では、自転車・バイクと自動車の出合い頭の衝突事故で生じることがあります。
治りにくい捻挫だと診断されて放置されることも少なくないとのことです。腫れがひどかったり3週間以上痛みが続いたりする場合は、立方骨圧迫骨折を含む足根骨の骨折を疑ってもらいましょう。その結果、立方骨圧迫骨折が見つかることもあります。

レントゲンでは、踵骨と立方骨との関節面に沿って骨折線が認められます。
初期のレントゲンで発見できないときでも、骨萎縮が始まる約3週間後にレントゲン撮影を行うと、見つかることがあります。

立方骨圧迫骨折の後遺障害認定のポイント

1 見落とされることが多いです。
立方骨圧迫骨折の発生メカニズムが足関節捻挫と類似しています。したがって、初診時には足関節捻挫と診断され、その後は立方骨圧迫骨折のための治療が行われないことも多いです。
足関節捻挫と診断されたものの、疼痛が続き、歩行困難が続いているときは、立方骨骨折や踵骨前方突起骨折などが起きている可能性もありますから、足関節だけでなく、足部のレントゲン撮影をしてもらうべきでしょう。

2 適切な治療により後遺障害に至ることはなく治癒することが多いです。
受傷後、徒手整復を行い、ギプス固定し、ギプスを外した後は硬性アーチサポート(足底の形状を固定する板状のものです。イメージとしては、中敷きに近いです。)で外側縦アーチを保持し続けるといった治療がされていれば、3か月程度で骨は癒合します。このとき、通常、骨折部に疼痛が残ったり偏平足になったりすることはありません。
つまり、相当強度のものでない限り、後遺障害に至ることはほとんどありません。

3 後遺障害認定の可能性もあります。
ひどい足関節捻挫と診断され、この骨折が見過ごされたときは、リハビリを続けても疼痛は軽減しないままです。相当期間が経過した段階で立方骨骨折が発見されても、陳旧性になっており、骨癒合を目指した保存療法を施しても、それが奏功するとは限りません。
手術が選択されることも少なく、残存症状は後遺障害等級として認定されるかどうかが問題となってきます。
疼痛が残存するだけでは、後遺障害等級の認定は容易ではないかもしれません。
変形性骨癒合や偏平足に至っていることを、XP、3D化したCT、MRIなどで立証できるかどうかを確認する必要があります。
これらの立証に成功すれば、14級9号「局部に神経症状を残すもの」または12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」となる可能性があります。

二分靱帯損傷の解説

二分靭帯損傷

二分靭帯損傷

二分靭帯損傷は骨折ではありませんが骨折と同時に発症することも多いです。
特に、発生機序が似ているほか、二分靭帯損傷が発生したときに、二分靭帯の牽引力によって踵骨前方突起などの剥離骨折に至ることもあります。

足首の関節は一般的に足関節(そくかんせつ)と呼ばれます。足関節は、腓骨、脛骨及び距骨によって構成されています。解剖学的には距腿関節といいます。足首を捻挫するということは、通常、距腿関節部分が捻挫するということであり、その部分は、上の図の青い丸で囲んだところ(距骨の上に脛骨と腓骨が乗っています。)です。

ところが、足関節捻挫は常に距腿関節の捻挫であるとは限らず、別の部位の捻挫であることもあります。その中でも、上の図のオレンジ色で示したY字型の二分靱帯が損傷することが多いです。

二分靭帯は、かかとの部分にある踵骨(しょうこつ)から二方向に分かれ、立方骨と舟状骨を結んでいます。ショパール関節に存在する靭帯ということになります。 前足部を巻き込むようにして内側に捻ることにより、二分靱帯が損傷したり断裂したりすることがあります。たとえば、バレーボールの最中にジャンプし、つま先から着地してそのまま内側に捻るとなどといったことにより二分靱帯が損傷します。このとき、靭帯の牽引力が強く作用することにより、踵骨の剥離骨折(踵骨前方突起骨折)が生じることがあります。

ただの捻挫だと考えられていたものの、実際には二分靭帯が付着している踵骨、立方骨または舟状骨で剥離骨折が起こっていることもあり、そうしたときは、傷病名はこれらのいずれかの骨の剥離骨折となります。 診断は、XP検査が中心ですが、色々な角度からの撮影をしないと見逃されることが多いです。小さな剥離骨折では、CTも効果的です。超音波検査を行って剥離骨折が発見されることもあります。

二分靱帯損傷で、損傷部が腫れ上がっているときは、足関節の捻挫と見分けるのは困難です。 しかし、足関節捻挫と二分靱帯損傷では圧痛部位が異なることから、その判別は可能です。

治療としては、最初はギプスでの固定を行い、次に包帯での固定に切り替えて二、三週間程度経過すると、腫脹や痛みは緩和され、後遺障害を残すことなく治癒します。
剥離骨折の治療は約4週間から6週間のギプス固定で全治しえますが、骨片が大きければねじなどを用いて固定する手術が行われることもあります。

足関節捻挫と診断され、湿布薬の処方のみがされたままであったときは問題です。
MRIで二分靱帯の損傷や断裂が確認されたときは、歩行時の疼痛が後遺障害の対象になりえます。

二分靭帯損傷の後遺障害認定のポイント

1 当然ですが、治療で完治させることが目標となります。
しかし、受傷から6か月が経過してから発見されたときなどは、「局部に神経症状を残すもの」(14級9号)、「局部に頑固な神経症状を残すもの」(12級13号)に該当する可能性があります。

2 足根骨のいずれかの剥離骨折が発生することもあります
足関節を捻挫したとき、靱帯や腱の牽引力が強く作用することにより、足根骨のいずれかの剥離骨折(踵骨前方突起骨折など)が発生することも多くあります。

踵骨前方突起骨折の例でいいますと、これは、足関節に強い内返し捻挫が起こったとき、踵骨前方突起に付着する二分靱帯に強力な牽引力が加わり、この靱帯の引っ張りで踵骨前方突起が引き剥がされることにより生じる剥離骨折です。
踵骨前方突起の症状は、踵骨前方と舟状骨との間の部分に生ずる圧痛、腫脹、皮下出血、荷重歩行時の疼痛などです。ときには底屈動作の制限もみられます。

治療は、4~6週のギプス固定が行われ、これにより全治が可能です。ときに歩行時痛や内反動作の制限が残存することもありますが、これに対しては、外固定を行って安静を保つこと及び踵骨前方突起の部位にステロイド剤や居所麻酔を注入することが有効です。

3 単なる足関節捻挫と診断され、踵骨前方突起骨折が見逃されることもあります。
見過ごされたまま陳旧化すると、損傷した靭帯は常に緩んだ状態となってしまい、疼痛が長期にわたります。
このような状態になったときは、ステロイド剤や局所麻酔剤などの注射にすることにより疼痛の軽減を図ります。疼痛が改善しないときは、剥離した骨片が小さいときは骨片切除手術を実施し、剥離した骨片が大きいときはねじでの固定手術を実施することがあります。
しかし、6か月以上経過した後に見つかったときは、疼痛または機能障害の後遺障害申請が視野に入ります。
具体的には、関節の機能障害として「1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」(12級7号)に該当する可能性があります。また、痛みの神経症状として「局部に頑固な神経症状を残すもの」(12級13号)や「局部に神経症状を残すもの」(14級9号)に該当する可能性があります。

踵骨前方突起骨折の解説

踵骨前方突起骨折

踵骨前方突起骨折

立方骨圧迫骨折同様、足関節捻挫として見過ごされやすいものに、踵骨前方突起骨折(しょうこつぜんぽうとっきこっせつ)があります。
踵骨が立方骨と接する部分の上部が前方突起と呼ばれます。ここに二分靭帯が付着しています。

大きな外返し捻挫に伴う外力と、踵骨前方突起に付着している二分靱帯の張力が強くはたらいて前方突起が裂離骨折するというメカニズムです。同じ作用が立方骨や舟状骨に働いたときは、これらの骨が骨折します。
つまり、二分靭帯損傷は、次のいずれかに分かれます。

  1. 靭帯そのものの損傷
  2. 踵骨前方突起の剥離骨折
  3. 立方骨の剥離骨折
  4. 舟状骨の剥離骨折

歩行者、自転車またはバイクと自動車との衝突事故で、足の外返し捻挫が起きたときなどに発生します。
足の外側、正確には踵骨前方部と舟状骨との間の部位が大きく腫れ、限局性の圧痛がみられます。
受傷直後に足関節捻挫と診断され、その後の経過で腫れがひき、痛みも軽くはなったものの、体重を掛けたり足を捻ったりすると痛みを感じるときは、この骨折が疑われます。

ほかにも、距骨外側突起骨折、立方骨圧迫骨折などは、足関節捻挫と診断されたまま見過ごされやすい骨折です。足部を側面からXPで撮影すると、これらの部位が距骨と重なっていることもあり、見つかりにくくなっています。 踵骨前方突起骨折は、単なる二分靭帯損傷と誤診されることも多くあります。 外側靭帯や二分靭帯などの損傷ないし断裂と診断されても、3週間以上痛みと腫れが続くようでしたら、足部の骨の骨折を疑う必要があります。圧痛部位を中心に数方向からのXP撮影やCT撮影を行い、踵骨前方突起、立方骨関節面、距骨外側突起先端などに骨折がないか調べます。

新鮮例に対してでしたら、4週間から6週間程度のギブス固定により、後遺障害を残すことなく完治しえます。 陳旧例では、外側縦アーチを保持するための硬性アーチサポートを装用します。

硬性アーチサポート

(硬性アーチサポートとは、足底の形状を固定する板状のものです。イメージとしては、靴の中敷きに近いです。) それでも疼痛が改善しないときは、ねじを用いての固定手術や、骨片切除手術を行います。

踵骨前方突起骨折の後遺障害認定のポイント

1 大きな捻挫として見過ごされることが多いです。
踵骨前方突起骨折は、ほとんどの場合、大きな捻挫として見過ごされ、放置され陳旧化してしまいます。
見過ごされたまま陳旧化すると、疼痛や、場合によっては機能障害が残ることがあります。

そのような陳旧症例に対しても、ステロイド剤や局所麻酔剤などの注射による保存療法により疼痛の軽減が得られます。それでも疼痛が改善しないときは、剥離した骨片の切除手術やねじを用いた整復固定手術が行われます。

2 6か月の治療期間を超えた段階では、疼痛や機能障害を理由とする後遺障害認定の可能性があります。具体的には、関節の機能障害として「1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」(12級7号)に該当する可能性があります。また、痛みの神経症状として「局部に頑固な神経症状を残すもの」(12級13号)や「局部に神経症状を残すもの」(14級9号)に該当する可能性があります。

参考リンク