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交通事故知識ガイド下肢及び足指

後十字靱帯損傷

後十字靱帯損傷の解説

膝関節-後十字靱帯損傷

右膝の図です。

前十字靱帯と後十字靱帯は、いずれも膝関節の中にあります。大腿骨と脛骨を結んでいる、膝関節が前後に動揺することを防止している重要で強靭な靱帯です。
後十字靭帯は膝の中央付近で、前十字靭帯と交差するように、大腿骨のやや前方から脛骨の上端部後方へ走行しています。
後十字靭帯は、脛骨上部を後方に押し込む強い外力が加えられたときに損傷することが多いです。

交通事故では、バイク事故のほか、膝をダッシュボードで打ちつけて脛骨が後方に強制的に押し込まれることにより発生することが多く、このような受傷機転を「dashboard injury(ダッシュボード損傷)」と呼んでいます。
ただし、後十字靭帯だけを単独で損傷する例はほとんどありません。多くは、膝蓋骨骨折、脛骨顆部骨折、内側側副靱帯損傷などを伴います。

運転中の膝関節

後十字靭帯損傷は、前十字靭帯損傷と比べ、機能障害の自覚や痛みが少ないのが特徴です。後十字靭帯自体には、痛みを感じる神経がありません。

とはいえ、痛みと腫れは出現します。自覚症状は、膝蓋骨骨折等の痛みが中心となります。

後十字靭帯が損傷しているかどうかの診断は、①後方引き出しテスト、②ストレスXP撮影などで診断します。

①後方引き出しテスト(posterior drawer test)

股関節

仰向けになった状態で股関節を45度曲げ、膝90度曲げます。

後十字靭帯断裂があるときは、脛骨上端を後方に押すとぐらつきます。
ただし、急性期にこれを行いますと膝窩部に激痛が生じますが、これは後十字靭帯が痛いのではなく、膝関節に痛みが生じています。

後方引き出しテストで大まかな診断が可能ですが、損傷の程度を確認するためには、単純X線写真、CTスキャン、関節造影、MRI等の検査を行います。
大腿骨と脛骨の位置関係はX線やCTで分かりますが、靱帯断裂部位を撮影できるのはMRIです。

②ストレスXP撮影

ストレスXP撮影

この写真はストレスXP撮影を行っているところを写したものです。

後十字靭帯損傷の有無及びその程度を確認するときは、脛骨を後方に押し出し、ストレスをかけた状態でXP撮影を行います。
断裂がある場合、脛骨が後方に押し出された状態が写ります。

膝を90度屈曲すると、下腿の重みで脛骨が後方に落ち込むのですが、この落込みが10mm以上あるときは、後十字靱帯が断裂していることが疑われます、断裂していることが判明したときは、再建手術を行うことも選択肢に入ってきます。
再建手術は、自家組織のハムストリング腱、膝蓋腱などを編み込んで、アンカーボルトで留めるというもので、難易度は高いものだそうです。

一方、後十字靭帯の単独損傷においては、可動域が狭くなったり及び筋力が低下したりするのを防ぐため、大腿四頭筋(腿の前面の筋肉です。)の訓練を中心とした保存療法が行われます。スポーツ活動に支障をきたすとか、日常動作に不自由が生じるとかいうときには、再建を行うこともあります。

後十字靱帯損傷の後遺障害認定のポイント

1)後十字靱帯損傷の治療は、保存療法が中心です。完全断裂に至っておらず、部分断裂にとどまっていれば、硬性装具の装着を装着してハムストリング(腿の裏)や大腿四頭筋(腿の前)を強化することで、一定の改善が得られます。とはいえ、劇的な効果が即座に出るものではないようです。

後十字靱帯の手術は非常に難しく、実際に手術が行われることはほとんどないように思います。

膝関節に動揺があるときは、装具が装着されます。

装具後十字靱帯に損傷や断裂があることは、MRIで立証します。
それによって膝関節に動揺が生じていることは、ストレスXP撮影を行い、その検査結果は「健側に比較して○mmの膝関節動揺が認められる」などと記載してもらいます。

2)常時硬性補装具の装着を必要とする程度のものは、「1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの」(8級7号)に準ずる関節の機能障害となることがあります。

3)動揺関節により労働に支障があるが、常時硬性補装具の装着を必要とするわけではなく、ときどき必要とする程度のものは、「1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」(10級11号)に準ずる関節の機能障害となることがあります。

4)動揺関節で通常の労働には固定装具の装着の必要があるわけではないが、重激な労働等に際してのみ必要のある程度のものは、「1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」(12級7号)に準ずる関節の機能障害となることがあります。

参考リンク