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注目の裁判例

 ここでは最近の注目の裁判例を紹介します。  
 

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law-r.gif 2017.02.16 「夫を介護する79歳女子家事従事者の死亡逸失利益」 
 前橋地裁 平成28年6月17日判決(自保ジャーナル1983号)
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law-r.gif 2017.02.06 「17歳女子高校生の死亡逸失利益の基礎収入」
 神戸地裁 平成28年5月26日判決(自保ジャーナル1982号)
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law-r.gif 2016.12.27「高次脳機能障害と企業損害」
 大阪地裁 平成28年1月29日判決(自保ジャーナル1975号)
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law-r.gif 2016.11.21 「後遺障害と適正な通院」
 最高裁平成27年12月17日判決
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law-r.gif 2016.11.14 「死亡事故の因果関係」
 神戸地裁 平成28年1月20日判決(自保ジャーナル1973号)
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law-r.gif 2016.11.07 「休業損害に関する裁判例」
 東京地裁 平成28年3月16日判決(自保ジャーナル1975号)
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law-r.gif 2016.10.25 「労働能力喪失率に関する裁判例」
 仙台地裁 平成27年12月17日判決(自保ジャーナル1970号)
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law-r.gif 2016.10.20 「行動調査の違法性」
 大阪地裁平成28年2月25日判決(自保ジャーナル1973号)
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law-r.gif 2016.10.11 「75歳女性主婦の休業損害・逸失利益」
 東京地裁 平成28年1月22日判決(自保ジャーナル1972号)
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law-r.gif 2016.9.27 「脊柱の変形と労働能力喪失率」
 名古屋地裁 平成28年3月18日判決(自保ジャーナル1974号)
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law-r.gif 2016.9.20 「後遺障害認定後,復職した場合の労働能力喪失率」
 神戸地裁 平成27年9月3日(自保ジャーナル1965号)
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law-r.gif 2016.7.12 「既存の障害と新たな障害の関係について判断した事例」
 東京高裁 平成28年1月20日判決(判例時報2292号)
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law-r.gif 2016.6.27 「過失相殺なしの自転車事故」
 平成27年11月25日判決(自保ジャーナル1966号)
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law-r.gif 2016.6.13 「行動調査」
 名古屋地裁 平成27年11月27日判決(自保ジャーナル1965号)
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law-r.gif 2016.5.3 「14級と12級」
 大阪地裁 平成27年10月6日判決 自保ジャーナル1964号
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law-r.gif 2016.4.18 「夫婦で店を経営していた場合の妻の休業損害」
 東京地裁 平成27年8月21日判決
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law-r.gif 2016.4.10 「示談後に認定された後遺障害等級を前提とした賠償を命じた事例」
 東京地裁 平成27年9月28日判決(自保ジャーナル1961号)
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law-r.gif 2016.3.22 「死亡慰謝料の増額」
 福岡高裁 平成27年8月27日判決(自保ジャーナル1957号)
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law-r.gif 2016.3.7 「過失の判断」
 東京高裁 平成27年8月26日判決(自保ジャーナル1956号)
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law-r.gif 2016.3.4 「死亡事件の慰謝料増額及び生活費控除率」
 福岡高裁 平成27年8月27日判決(自保ジャーナル1957号)
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law-r.gif 2016.2.13 「下肢醜状の逸失利益」
 横浜地裁 平成27年8月31日判決(自保ジャーナル1958号)
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law-r.gif 2016.1.29 「休業損害・逸失利益(高齢者の家事労働)」
 名古屋地裁 平成27年9月30日判決 自保ジャーナル1958号
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law-r.gif 2016.1.19 「複数の事故と後遺障害」
 東京地裁 平成27年6月24日判決(自保ジャーナル1954号)
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law-r.gif 2016.1.05 「高次脳機能障害と入院付添費,将来介護費,家屋改造費」
 大阪地裁 平成24年7月25日判決(自保ジャーナル1884号)
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law-r.gif 2015.12.26 「高次脳機能障害と症状固定後の将来付添費」
 名古屋地裁 平成25年3月19日判決(自保ジャーナル1898号)
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law-r.gif 2015.12.21 「遠方の医療機関における治療関係費」
 横浜地裁 平成25年3月26日判決(自保ジャーナル1895号)
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law-r.gif 2015.12.11 「事故後9ヶ月後の手術と症状固定時期」
 大阪地裁 平成27年3月12日判決(自保ジャーナル1951号)
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law-r.gif 2015.11.20 「醜状痕(12級)神経症状(14級)事例について逸失利益を多く認めた事例」
 神戸地裁平成27年1月20日判決(自保ジャーナル1953号)
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law-r.gif 2015.11.16 「既往障害を有する場合の後遺症認定と訴因減額」
 さいたま地裁:平成27年3月20日判決(自保ジャーナル1946号)
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law-r.gif 2015.11.13 「高次脳機能障害と自宅付添費・将来介護費」
 東京地裁 平成27年3月26日判決(自保ジャーナル1950号))
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law-r.gif 2015.11.09 「男性の外貌醜状と後遺障害逸失利益」
 さいたま地裁平成27年4月16日判決(自保ジャーナル1950号)
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law-r.gif 2015.11.04 「後遺障害1級の将来介護費(施設入所費)」
 広島高裁岡山支部 平成27年4月23日判決(自保ジャーナル1952号)
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law-r.gif 2015.10.30 「高次脳機能障害と自宅付添費・将来介護費」
 東京地裁 平成27年3月26日判決(自保ジャーナル1950号)
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law-r.gif 2015.10.14 「専業主夫の休業損害」
 横浜地裁平成26年2月28日判決(自保ジャーナル1924号)
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law-r.gif 2015.10.04 「無職者の休業損害」
 松山地裁 平成26年2月7日判決(自保ジャーナル1922号)
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law-r.gif 2015.09.17 「脊柱変形と労働能力喪失率」
 さいたま地裁:平成27年4月7日判決(自保ジャーナル1949号)
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law-r.gif 2015.09.25 「重大な結果と過失相殺」
 名古屋地裁平成25年6月28日判決
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law-r.gif  2015.09.07 「高次脳機能障害による等級認定と裁判」
 京都地裁 平成27年3月25日判決
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law-r.gif 2015.08.31 「夫の介護をしていた主婦の休業損害」
 大阪地裁 平成27年3月3日判決
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law-r.gif 2015.08.04 「後遺障害の労働能力喪失率と慰謝料」
 札幌地裁 平成27年2月27日判決
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law-r.gif 2015.07.28 「硬性補装具を必要とする下肢の荷重障害」
 横浜地裁 平成27年1月22日判決
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law-r.gif 2015.07.22 「逸失利益算定における基礎収入」
 神戸地裁 平成26年10月31日判決
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law-r.gif 2015.07.14 「高次脳機能障害と通院付添費・将来介護費」
 東京地裁 平成27年3月25日判決
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law-r.gif 2015.07.06 「高次脳機能障害の逸失利益」
 横浜地裁 平成27年1月29日判決
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law-r.gif 2015.06.29 「醜状痕と逸失利益の算定」
 東京地裁 平成27年2月13日判決
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law-r.gif 2015.06.22 「後遺障害逸失利益の認定」
 福岡地裁 平成27年2月26日判決
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law-r.gif 2015.06.16 「入院・通院・将来の付添看護費用」
 名古屋地裁 平成27年1月14日判決
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law-r.gif 2015.06.09 「死亡との因果関係」
 京都地裁 平成26年10月14日判決
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law-r.gif 2015.06.02 「会社代表者の逸失利益」
 横浜地裁 平成26年10月24日判決

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2017.02.16 「夫を介護する79歳女子家事従事者の死亡逸失利益」
  前橋地裁 平成28年6月17日判決(自保ジャーナル1983号) 
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 今回紹介する裁判例は,夫を介護する79歳女子家事従事者の死亡逸失利益について判断したものです。
 今回の裁判例では,夫を介護する79歳女子家事従事者の死亡逸失利益について,全年齢の女性の平均賃金を基礎にして算出するべきか,70歳以上の年齢の女性の平均賃金(こちらの方が金額が低くなります)を基礎にして算出するべきか,が争点の一つとなりました。

 裁判所は,各証拠や裁判におけるすべての事情を考慮して,以下のように判断しました。

 本件女性は,本件事故発生当時,大きな病気を患うことはなく,夫と同居して,一人で,炊事,洗濯及び買い物等の家事に従事していたこと,このほかにも,本件女性は本件事故発生当時に認知症患者の夫の身の回りの世話をして夫を介護して,夫が経営する店を代わりに経営するなどしており,さらに,子供二人のためにも食事を用意するなどして,家事に従事していたことを認めることができ,これらの事実からすると,本件女性は,生涯を通じて,全年齢の女性の平均賃金に相当する労働を行い得る蓋然性があったと認めることができる。
 したがって,本件女性の死亡逸失利益の基礎収入は,全年齢の女性の平均賃金であると認める。


【コメント】
 高齢女子家事従事者の逸失利益の算定にあたっては,基礎収入の評価が重要な争点となります。

 家事従事者の死亡逸失利益については,原則として,死亡した年の全年齢女性平均賃金を基礎にして算出しますが,高齢者の場合には,年齢,家族構成,身体状況及び家事労働の内容等に照らし,生涯を通じて,全年齢の女性の平均賃金に相当する労働を行い得る蓋然性が認められないときには,死亡した年の当該女性の学歴計・年齢別平均賃金を参照して,基礎とする収入額を減額されることが多くみられます。

 もっとも,今回の判例の女性のように,家事労働の内容を重視して,全年齢の平均賃金を基礎に逸失利益が算出されることもあるため,裁判においては,年齢だけではなく,事故当時に,その者が行っていた家事労働の内容といった点も重要になってきます。
 

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2017.02.06 「17歳女子高校生の死亡逸失利益の基礎収入」
  神戸地裁 平成28年5月26日判決(自保ジャーナル1982号) 
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 今回は,17歳女子高校生の死亡逸失利益について賃金センサス男女計平均を基礎収入にして計算した裁判例をご紹介します。

  被害者(17歳女子高校生)は,被告が運転する乗用車に同乗していました。被害者は,被告が先行車を追い抜こうとしたときに中央分離帯等に衝突して横転した事故で,死亡しました。そこで,被害者の家族が,被告に対して損害賠償請求した事案です。

 本件では,過失相殺の有無や,損害額について争いがありました。以下では,損害額のうち,逸失利益の基礎収入に関する裁判所の判断をご紹介します。

 被告側は,基礎収入は賃金センサスの女性の全年齢平均353万9300円(女子学歴計全年齢平均)とすべきだと主張しました。これに対して,裁判所は,おおむね次のような判断をして,基礎収入を賃金センサスの男女の全年齢平均468万9300円(男女学歴計全年齢平均)としました。
 

  1.  被害者については,①高校に在籍し,単位の取得状況も順調だった,②親の海外赴任に伴い,海外に居住し,現地の小学校に通い,友人関係も含め,現地に溶け込んだ生活をしていた,③被害者は,親との間で大学進学が話題に上ることはあったが,具体的な受験準備等は始めていなかったことが認められる。
  2.  このような事情に鑑みれば,逸失利益を算定するにあたっての基礎収入は,平成25年賃金センサス男女計・学歴計・全年齢平均の468万9300円とし,生活費控除率を45%とするのが相当である。


 本件のように学生の死亡逸失利益を算定するときは,基礎収入の金額によって逸失利益の金額が大きく異なるため,基礎収入額を慎重に検討する必要があります。たとえば,被害者の方が高校生の場合で,大学に進学する可能性が高かったときには,基礎収入は大卒の全年齢平均賃金で検討することになります。
 

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2016.12.27 「高次脳機能障害と企業損害」
  大阪地裁 平成28年1月29日判決(自保ジャーナル1975号) 
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 今回紹介する裁判例は,交通事故によって高次脳機能障害を負った72歳の会社代表者について,自賠責が認定した5級よりも低い9級の高次脳機能障害であると認定した裁判例です。 
 本件は上記に加え,被害者が休業中,会社が被害者に支払った役員報酬を損害と認めた点も特徴的です。

 裁判所は高次脳機能障害について

  • 記憶力に問題があるが,1人で交通規範にしたがって,自動車の運転をし,高速道路の利用もできていること
  • 被害者の尋問によれば,他社との意思疎通にも問題がないと認められること

を認定し,高次脳機能障害は残存するものの「その程度が重大出るということはでき」ないと判断し,9級の高次脳機能障害と判断しました。

 また,被害者が代表を務める会社について

  •  役員報酬が月額12万5000円と多額でなく,全額が労務の対価であることを認めた上で
  • 被害者の休業期間も役員報酬が支払われていた

として,休業期間の役員報酬相当額を会社の損害として認めました。

【コメント】

 自賠責において高次脳機能障害が認定されていても,裁判において,加害者側が高次脳機能障害の存在や等級を争ってくるという事例もあります。
 被害者が障害と向き合い,懸命に努力しながら職場復帰したにもかかわらず,加害者側から「職場復帰」という事実だけを捉えて,高次脳機能障害の程度が低いなどと主張されることもあります。高次脳機能障害はいわば「目に見えない障害」ですから,裁判において自賠責で認定されている等級を十分に立証できるかという観点から訴訟提起するかを検討する必要があります。

 被害者が会社役員の場合,役員報酬は支払われているが,本人は休業せざるを得なかったというケースもあります。その場合,被害者本人に休業損害はありませんが,会社に損害があるというかたちになります。
 本件では,上記のようなケースに関して明確に判示したものとして参考になると思われます。

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2016.11.21 「後遺障害と適正な通院」
  最高裁平成27年12月17日 
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 今回は,後遺障害の残存を主張していたが,事故後12日間受診していなかった等の理由から事故と受傷の因果関係を否認された事案をご紹介します。

 裁判所は,以下の理由から,事故から傷害を負ったという被害者の供述の信用性がなく,事故と受傷の因果関係を否定しました。

  • 本件事故により本件傷害を負ったのであれば,より早期に受診の必要性を感じる痛み等の症状を自覚してしかるべきと考えられるところ…被害者はこれ(病院)を受診しなかった
  • 被害者が…受診するまで,本件事故以前と同様の業務に従事しており,委員を受診したのは本件事故前から予約していた薬剤処方の目的であったこと
  • 本件事故が比較的軽微なものであったこと

 交通事故で受傷し,通院が終了した段階で後遺障害の認定を申し立てることになりますが,通院歴や治療の経過・内容,医師の診断等の客観的事実を総合して判断することになります。

 その中で当然通院をどのようにしていたのかということも考慮要素の一つとされることになりますので,仕事が忙しいから等の理由から不調があるのに無理をして通院を減らすということはできるだけ避けた方が良いかもしれません。

 もっとも,無理に数多く通院したからと言って後遺障害が認定されるわけではありません。あくまでも痛みを我慢して通院することを控えると,総合考慮をする際の一要素とした結果,今回の判決のように事故と受傷との因果関係を否定される可能性があるということです。

 適切な賠償を受けるためには適切な方法で通院することも大事ですので,事故後早期に弁護士に相談することをお勧めいたします。

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2016.11.14 「死亡事故の因果関係」
  神戸地裁 平成28年1月20日判決(自保ジャーナル1973号) 
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 今回紹介する裁判例は、対向車に衝突された63歳男性が右椎骨動脈血栓症で死亡したことについて、以下の理由で、事故との因果関係を認めたという事案です。

 被害者は事故前から脳に動脈硬化症があり、その程度は高度に硬化しており、約70%狭窄の状態でもありました。

  • A医師は、右椎骨動脈が動脈硬化を起こしていたことを前提に、ストレスによる血栓の発生により死亡した可能性を指摘し、
  • C医師は、もともと糖尿病等に起因する動脈硬化が存在することを前提に事故による血圧上昇が関与した可能性を指摘しました。
  • D医師も、動脈硬化の存在を指摘上で、素因の関与が相当大きいとしました。

 これらのことから、裁判所は,被害者の脳動脈硬化症が今回の死亡の原因となった右椎骨動脈血栓症の発生に影響しているといわざるをえないとしました。

 また、被害者に精神的ストレスがかかったことについても、本件事故態様が、時速約40から50キロメートルで走行していた被害車両の右前角部と、時速約50から55キロメートルで走行していた加害車両の右前角部とが衝突して、被害車両が押し戻されてガードレールに衝突して停止したという事故態様であり、双方がブレーキをかける間もなく衝突に至っていること、被害車両の前部が大きく破損していることからすると、相当程度の衝撃が被害車両に加わったといえます。

 そして、被害車両の右側後部座席に乗車していた被害者は、なんの前触れもなく上記衝撃を受け、衝突直後、「なんや」と叫んだり、今まで聞いたことがないような大きな声で、「痛い、痛い」などと叫びだしたという被害者の言動からも、被害者は、本件事故によって驚愕等の精神的ストレスがかかったといえるとしました。

 これらのことから、裁判所は、被害者は事故以前から右椎骨動脈に動脈硬化があった状態で、本件事故による精神的ストレスにより、血圧の変化や血液凝固能の亢進が生じ、右椎骨動脈血栓症を発症したと認めるのが相当であるとして、因果関係を肯定しました。
 なお、事故前にあった脳動脈硬化症について素因減額を50%した上で認定しています。

 このように、事故と症状との因果関係が問題になる場合は、事故前の持病の内容や程度、医師の意見、事故態様や車の損傷状況から事故によるストレスの大きさ等を丁寧に立証していくことが重要となります。

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2016.11.07 「休業損害に関する裁判例」
  東京地裁 平成28年3月16日判決(自保ジャーナル1975号) 
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 今回は,仕事を休んでいない生保プランナーの休業損害を,営業売上の減少等から,肯定した裁判例をご紹介します。
 
 被害者(男性 生保プランナー)は,乗用車を運転,停止中に,乗用車に追突され,頸椎捻挫,腰椎捻挫等の傷害を負いました。
 その後,被害者は,1年10か月通院し,頸椎捻挫後の頸部痛及び腰椎捻挫後の腰部痛についてそれぞれ自賠責の後遺障害等級14級9号に該当するとして併合14級が認定されました。  
 本件では,争点の1つとして,休業損害が争われました。
 原告は,実際の営業売上減収(手数料の減少)を理由として,休業損害を請求しました。
 被告は,実際の休業がなかったことや原告の収入の変動が元々大きかったことから,原告の減収と事故の関連性がないと主張していました。

 裁判所は以下のとおり,判断して,休業損害の発生を肯定しました。

1 原告の生保プランナーという職業は,

  1. 接待や付き合い,地域活動などに参加し,交友関係を広げ,深めていく,
  2. 上記の活動の中から,保険に興味を持った者から,個人の場合は生活状況等の聞き取りを行い,法人の場合は経営状況等の聞き取りを行う,
  3. 聞き取った内容を基に,個人や法人に適した保険契約のプランを提案する,
  4. プランに納得してもらえれば,契約の申し込みを受けるというものである

2 ①から④の保険契約の販売の流れに鑑みれば,接待等の件数が減少すれば,保険契約の販売件数や金額が減少する可能性が高い

3 本件事故前12か月に44件(1か月平均3.67件)あった接待等(①)の件数は,本件事故後8か月で10件(1か月平均1.25件)に減少し,その結果,本件事故前12か月に119件(1か月平均9.92件)あった商談(②ないし④)の件数は,本件事故後8か月で30件(1か月平均3.75件)に減少している。

4 原告は,本件事故により,接待等の件数を減少させざるを得ず,それにより商談の件数も減少し,その結果,保険契約の販売件数・金額が減少し,初年度手数料をはじめとする報酬額の減少をもたらしたと認められるから,休業損害の発生自体は肯定することが相当である。

 休業損害は,事故前の収入を基礎として受傷によって休業したことによる現実の収入減として算定されますが,実際に休業がない場合,収入減がない場合などは問題になることが多いです。

 本件では,原告において,生保プランナーの仕事の形態・保険の販売の流れをいちから丁寧に立証し,実査の接待や商談の減少なども指摘することで,減収が事故によるものであると認められ,休業損害の発生が肯定されました。今回,参考になる事例としてご紹介させていただきます。

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2016.10.25 「労働能力喪失率に関する裁判例」
  仙台地裁 平成27年12月17日判決(自保ジャーナル1970号)
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 今回は,後遺障害等級併合14級の認定を受けた被害者について逸失利益の金額が争点の1つとなった裁判例をご紹介します。
  被害者(30代 男性 整体師)は,乗用車で交差点を進行中に,左側一時停止道路から進行してきた加害車両に衝突され,頚椎捻挫,左手関節の損傷等の傷害を負いました。
 
 その後,被害者は,約9か月通院し,頚部及び左手関節に神経症状を残したとして,それぞれの部位について自賠責の後遺障害等級14級9号に該当するとして併合14級が認定されました。  
 
 本件では,被害者側がTFCC損傷等の損傷を残していると主張し,逸失利益の労働能力喪失率,労働能力喪失期間が争いになりました。
 
 後遺障害等級14級の場合には,労働能力喪失率は5%であるのが通常です。ところが,本件では,裁判所は,おおむね次のような判断をして,労働能力喪失率を14%としました。
 

  1.  被害者について左手関節のTFCC損傷が生じた可能性は否定できない。
  2.  原告の職業は整体師であるところ,被害者は,本件事故による左手首の後遺障害により,左手首を掌屈すること,下方に力を入れることが困難となり,患者に対する矯正施術に支障をきたしている。本件事故後,整体院としての売り上げが減少していることが認められる。 
  3. 「原告の職種,就労内容,後遺障害の部位,内容,程度等にかんがみると,頚部の神経症状が残存していることに加え,左手関節の疼痛及び可動域制限が整体師である原告の労働能力に対する影響は小さいものであるとはいえず,原告の後遺障害による労働能力喪失率は14%とする」 
  4. 「労働能力喪失期間は67歳までの30年間である」

 
 労働能力喪失率は,「後遺障害別等級表・労働能力喪失率」という表に記載の喪失率をとることが多いです。たとえば,後遺障害等級14級であれば5%,12級であれば14%です。
 ただし,本裁判例のように,同表の数字を参考に,被害者の職業,年齢,性別,後遺症の部位,程度,事故前後の稼働状況等を総合的に判断して喪失割合が決められることも少なくありませんので,よく検討することが重要です。

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2016.10.20 「行動調査の違法性」
  大阪地裁平成28年2月25日判決(自保ジャーナル1973号) 
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 この裁判例は,交差点を横断中の歩行者が四輪自動車に衝突された事故において,歩行者であった被害者が損害賠償請求を行った事案です。

 争点は複数ありますが,ここでは,任意保険会社が調査会社を使って被害者の行動調査を行って尾行や写真撮影などをしたことが,生活の平穏を侵害する違法なものであるとして慰謝料請求がされたことについてお書きします。

 注目の裁判例「行動調査」にお書きしましたとおり,任意保険会社が被害者の訴える症状などに疑問をもって被害者の行動調査を行うことはあります。

 この件では,調査会社の従業員が5日間,朝の通勤中に被害者を尾行して歩行状況を撮影しました。
 これについて裁判所は,次の点を指摘し,尾行や撮影が違法であるとはいえないとし,慰謝料請求を認めませんでした。

  1.  被害者が自宅を出たところから通勤途中や駅などの公共の場所にいるときのみ,尾行や撮影が行われた。
  2.  尾行や撮影の態様が,不当に被害者の生活の平穏を害するものであったとは認められない。

 たとえば自宅内部を望遠レンズで撮影したというのであればプライバシー侵害の程度は高いといえるでしょうけれども,道路や公共交通機関などにいるときにされた尾行や写真撮影はプライバシー侵害の程度はそれほど高くないと,この裁判例は判断しました。

 なお,この尾行や写真撮影が行われたのは,交通事故による損害賠償請求訴訟が提起された後です。自賠責保険の後遺障害等級認定手続では,足関節の可動域制限が10級11号に該当するとされましたが,治療中に突然可動域が悪化したという経過があることから,任意保険会社は争い,最終的に裁判所は被害者に10級11号の後遺障害が残ったと認めませんでした(残った後遺障害は12級13号にとどまると判断しました。)。

 この行動調査は,被害者が歩行に不自由があるかどうかを確認するために行われたものだと考えられます。実際,加害者側は,尾行の結果,被害者は健常者と同様に歩き,階段の昇り降りも問題なく行っていることが確かめられたことを主張しました。裁判所は,行動調査の結果を10級11号を否定する根拠にはしませんでしたが,結論に事実上影響を与えた可能性は否定できません。

 治療中に関節の可動域が突然悪化した理由は分かりませんが,通常は考えられない治療経過です。被害者の訴える症状などに任意保険会社が強い疑いを抱けば,行動調査が行われることも考えられます。 行動調査が行われたことを知った被害者の方は当然心情を害されます。ですが,そのこと自体を理由に慰謝料の請求が認められるのは困難だといえます。

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2016.10.11 「75歳女性主婦の休業損害・逸失利益」
  東京地裁 平成28年1月22日判決(自保ジャーナル1972号) 
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 高齢女性主婦の休業損害・逸失利益については,基礎収入をいくらと算定するかが争点になることが多いです。

 本件では,75歳女性主婦が,横断歩道を横断中に自動車に衝突され,股関節機能障害から10級の後遺障害等級が認定されました。裁判では,特に,休業損害と逸失利益の算定方法が争点になりました。

 これについて,裁判所は,以下のような判断をしました。



  1. 休業損害について
  2.  事故前は炊事,選択,掃除等の家事を主として行っていたこと,退院後も,それらの家事をやっていたが,いずれも事故前より簡易な方法によらざるを得なかったことに鑑みて,基礎収入は賃金センサス女性全年齢平均賃金を基礎とした上で,入院期間中は100%,退院後は症状固定までの期間を50%の割合で,休業損害を認定した。
  3. 逸失利益について
  4.  女性の年齢や身体状況,生活状況を考慮すると,休業損害の場合とは異なり,生涯を通じて,賃金センサス女性全年齢平均賃金に相当する労働を行い得る蓋然性は認められないとして,基礎収入は賃金センサス女性70歳以上平均を基礎とした上で,労働能力喪失率を27%(後遺障害等級10級相当)として,平均余命まで逸失利益を認めた。


【コメント】
 高齢女性主婦の休業損害及び逸失利益の算定にあたっては,基礎収入をどのように評価するかが大きな争点になります。
 一般的には,高齢女性主婦については,賃金センサスの女性全年齢平均賃金以下で評価されることが多いとされております。
 もっとも,本件のように,家事労働の実態を重視して,高齢女性主婦であったとしても,賃金センサス女性全年齢平均賃金が採用されることもあります。このように,裁判では,年齢だけでなく,具体的に事故前後を通じて,どのような家事労働を行っていたかが重要になります。

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2016.09.27 「脊柱の変形と労働能力喪失率」
  名古屋地裁 平成28年3月18日判決 自保ジャーナル1974号 
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 後遺症として脊柱の変形が残った場合,脊柱の変形が被害者の労働能力にどの程度の影響を与えているかという点が争点になることが多いです。
 今回紹介する裁判例は,第7・第8胸椎破裂骨折後の脊柱の変形(8級)の後遺症を負った被害者(症状固定時20歳・大学生)に対し,20%の労働能力喪失率を認めたというものです。なお,被害者側は45%,加害者側は14%の労働能力喪失率を主張していました。  確かに,8級の後遺症が認定されている場合,形式的な労働能力喪失率は45%となります。

 しかし,裁判所は,

  1. 将来の志望につき変更を余儀なくされたなどという事情もなく,後遺症による影響はまだ顕在化していないことや
  2. 労働能力に影響するのは胸椎周辺の疼痛であることから,45%もの労働能力喪失は認められない

と判断しました。

 一方,体幹の中心を支える脊柱が恒久的に変形してしまったことにより,今後,加齢により新たに痛みが生じたり,変形が悪化する可能性があるとして,現に生じている症状(胸椎周辺の疼痛)を12級13号と評価し,将来の悪化を見込み,1等級加えた11級の後遺症に相当するとして,20%の労働能力喪失を認めました。
 なお,労働能力喪失期間については,「将来症状が悪化する見込み」があるとして67歳までの47年間を認定しています。

 本件は,被害者が若年で,現時点では学生であることから,今後の加齢による影響を考慮して労働能力喪失率を定めている点が特徴的です。

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2016.09.20 「後遺障害認定後,復職した場合の労働能力喪失率」
  神戸地裁平成27年9月3日(自保ジャーナル1965号) 
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 今回は,交通事故により胸髄損傷等から自賠責1級1号認定の後遺障害を残して復職した被害者につき,労働能力が85%喪失したと認められた裁判例をご紹介します。

 本件は,交通事故によって胸髄損傷等の傷害を負い,345日入院して両下肢完全麻痺等自賠責1級1号後遺症を残したものの会社に復職した事案で,復職して働くことができていたことから労働能力の喪失率が大きな争点となりました。 原告は,本件事故間年度収入が539万7220円である一方,復職直後の年収が505万4125円と約6%の減収でしかなかったこと,裁判時には4年以上勤務していたこと,その間部署の変更も経験していたこと等の理由から,事務職での労働への影響は限定的であるとして労働能力の喪失率はせいぜい50%程度でしか無いという反論が被告からなされました。

 この被告の反論に対し,裁判所は以下の理由を挙げて原告の労働能力喪失率が85%であると認定しました。
 

  1. 現場作業員への復帰が不可能であり,実際には超過勤務や出張が制限され,事務職に限定されていたこと
  2. 職場にバリアフリー化がされたものの,車椅子での移動を余儀なくされており,職場での体操,清掃,排尿に支障があること
  3. これらの事情に照らすと,原告の勤務は本人の努力と勤務先である訴外会社の理解・配慮により継続できていること認めるのが相当であること

 労働能力喪失率は,後遺障害の等級に応じて14級の5%から1級の100%までの基準がありますが,この労働能力喪失率はあくまでも一応の目安としての基準となるに過ぎません。本件のように,自賠責1級の後遺障害認定をされたとしても,実際に働くことができているような場合,相手方は労働能力喪失率を争ってきます。本件のような場合には,復職前後の職場環境や労働状況などを丁寧に立証する必要があるといえます。

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2016.07.12 「既存の障害と新たな障害の関係について判断した事例」
  東京高裁平成28年1月20日判決(判例時報2292号) 
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 今回は,既存の障害を持つ方が,事故により新たな障害を生じた場合の,後遺障害の認定・賠償について新しい判断をした判例をご紹介します。
 本件の原告は,脊髄損傷により,両下肢麻痺等の既存障害を有する男性でした。車椅子で交差点を進行中,一時不停止の被告車両に衝突され,車椅子から投げ出されるほどの衝撃を受けました。

 この事故により,原告には,新たに頸部痛・両上肢の痛み及び痺れが発症し,パソコンを使ったキーボードへの入力作業等に支障が生じるようになりました。
 そこで,原告は,加害者及び相手方加入の自賠責保険会社を訴え,これらの新たな障害について,本件事故による後遺障害として賠償を受けるべきことを主張しました。
 被告側は,既存障害について「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,常に介護を要するもの(施行令別表第1の第1級1号)との認定を受けており,新たな障害について賠償が認められないと主張していました。

この点裁判所は,
「施行令2条2項にいう,「同一の部位」とは,損害として一体的に評価されるべき身体の類型的な部位をいうと解すべきであるところ,本件既存障害と本件症状は,損害として一体的に評価されるべき身体の類型的な部位にあたるとは認められないから,「同一の部位」であるとはいえない」と判断し,原告の主張を認めました。

 既存の障害と,新たな障害の関係について,自賠法施行令2条2項は,「自賠法13条1項の保険金額は,すでに後遺障害のある者が傷害を受けたことによって,同一部位について後遺障害の程度を加重した場合における当該後遺障害による損害については,当該後遺障害の該当する別表第1又は別表第2に定める等級に応ずるこれらの表に定める金額から,既にあった後遺障害の該当するこれらの表に定める等級に応ずるこれらの表に定める金額を控除した金額とする」と定めています。この「同一部位」の解釈については,労災補償における「同一系列」と同義であると考えられ,この考え方によれば,本件についても既存障害,新たな障害がともに「神経系統の機能又は精神の障害」という「同一系列」に包含されるものとも考えられます。

 しかし,本件の第一審判決では,「胸椎と頸椎とは異なる神経の支配領域を有し,それぞれ独自の運動機能,知覚機能に影響を与えるものであるから,本件既存障害と本件症状とは,損害として一体的に評価されるべき身体の類型的な部位に当たると解することはでき」ないと判断して,上記運用と異なる判断を示しました。そして,控訴審である本件判決でもこの判断を肯定しました。

 第一審判決で判示されているとおり,胸椎と頸椎とは異なる神経の支配領域を有し,それぞれ独自の運動機能,知覚機能に影響を与えると考えられ,現に,両下肢の機能障害を有していた原告が,事故により上肢にも障害を有するに至ったのですから,この新たな障害についての賠償を否定される理由はないように思います。

 今後の,後遺障害の認定実務にも影響を与える重要な判例になるものと思われ,ご紹介いたします。

 

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2016.06.27 「過失相殺なしの自転車事故」
  平成27年11月25日判決(自保ジャーナル1966号) 
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 今回は,自転車と歩行者の事故で,過失割合が争点の1つとなった裁判例をご紹介します。  
 被害者(女性 主婦)は,コンビニの出口から出て歩道に踏み出したところ,歩道を直進走行していた加害者(11歳 小学生)の自転車に衝突されたという事案です。被害者の左足と自転車の前輪が接触し,被害者は左下肢挫傷の傷害を負いました。

被害者は,コンビニの出入り口付近からとくに左右の歩道上を確認することなく歩き始め,左足を歩道上に踏み出しました。他方,加害者の自転車は,進路左側にあった電柱を回避して歩道右寄りを走行していたため,被害者の左足に衝突してしまいました。  

 本件では,被害者である歩行者に過失があるか,過失相殺をするべきかどうかが争点の一つとなりました。

 被害者の過失について,加害者側は次のような主張をしていました。
 被害者は,コンビニから出て歩道を横切るに際し左右の安全を確認する必要があるのにこれを怠った過失がある。被害者は,コンビニの店内からでも進行方向左側の歩道の状況は把握できたし,コンビニの出口から衝突地点までは数歩は歩く必要があったから,左側を確認することはできたはずである。本件事故直前,加害者の自転車は徐行していた。よって,本件では,むしろ被害者の過失のほうが大きいというべきである。  

これに対して,裁判所では,おおむね次のような判断がなされました。

  1.  加害者は,歩道の中央から車道寄りを進行せず,歩行者が進路上にいたにもかかわらず一時停止を怠り本件事故を発生させた過失がある。
  2.  他方,被害者は,路外の店舗から歩道に入る際に左右の安全確認を怠ったということはできる。しかし,そもそも歩道の車道側を走行していなかった加害者の過失が大きいうえに,歩行者は本来,歩道上で自転車に対し注意を払う義務を負っていないと考えられることや,人の出入りの予想されるコンビニ前の路上であったことなども踏まえると,本件事故について,被害者の過失をとらえて過失相殺を施すのは相当ではないというべきである。
  3.  よって,本件事故について被害者の過失による過失相殺は認められない。

 自転車事故の過失割合については,事故態様によって基本的な割合はありますが,具体的な事故状況によって基本割合を修正して決めることになります。
 そのため,自転車事故を起こしてしまった場合には,事故現場や自転車の写真を撮っておいたり,目撃者の連絡先をきいておく,警察に事故状況をしっかりと説明しておくなどの対処を事故直後にとっておくことが重要です。
 

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2016.06.13 「行動調査」
  名古屋地裁平成27年11月27日判決(自保ジャーナル1965号) 
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 この裁判例は,原告が,交通事故によって脊髄を損傷し,下肢機能全廃,左肩関節や左肘関節についても可動域制限が残ったと主張した事案です。

 この事案では,徒手筋力検査や知覚検査などの被害者の応答による検査結果に顕著な異常があり,反射検査や画像所見,筋電図検査などの検査結果には脊髄損傷を裏付けるものがありませんでした。

 これだけでも脊髄損傷の主張が認められるのは厳しいことが見込まれますが,さらに,保険会社は,被害者の行動調査を行い,それを裁判所に証拠として提出しました。

この行動調査によると,原告は,
① 左手にスーパーのレジ袋を持って駐車場から自宅マンションまで杖なしで歩いて移動した。
② 左手で携帯電話を捜査して左手で左耳に近づけて話しながら歩いた。
などといった行動を,治療中から症状固定後の2年間にわたってしてきたことが観察されています。

 さすがにこれでは下肢機能全廃の主張など認められるはずはありませんし,そもそも原告の主張自体信用されなくなってしまってもやむをえません。

 これは極端な例といえますが,誇張することなくありのままの症状を主治医に告げるべきであるという,いわば当然のことを思い知らせるものとして,ご紹介いたしました。

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2016.05.03 「14級と12級」
  大阪地裁 平成27年10月6日判決 自保ジャーナル1964号 
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 今回紹介する裁判例は,外傷性頚椎椎間板ヘルニア,外傷性頚部症候群,頚椎捻挫等の傷害を負った被害者が12級13号の後遺症を残したと主張した事案です(自賠責は14級9号を認定。)。

 裁判所は,自賠責が認定したとおり後遺症は14級9号であると判断し,被害者の請求を退けました。

 いわゆるむち打ち症(傷病名としては,頚椎捻挫,外傷性頚部症候群や腰椎捻挫など)で,12級13号の後遺症が認定される重傷なケースは極めて少ないです。

 12級13号が認定されるケースは,①自覚症状,②画像所見,③神経学的所見が一致し,神経症状が他覚的に証明される場合です。

 本件では,診断書に「C5/6レベルに脊髄髄内にT2で高信号を認める。脱出ヘルニアによる脊髄損傷と考えられる」との記載があるものの,画像上,明らかな脊髄圧迫の所見がなく,腱反射や病的反射に異常がないという点から,①自覚症状,②画像所見,③神経学的所見が一致しないとされています。  また,本件は被害者が乗っていたのが普通貨物自動車である一方,追突した車両が普通乗用車であり,事故による衝撃が極めて大きいとまでいえないという点も考慮されたのではないかと思います。

 12級13号が認定されるケースか否かは,受傷直後の自覚症状がどのように推移したのかや,画像所見,腱反射等の神経学的所見があるのか等の事情を詳細に検討する必要があり,注意が必要です。

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2015.04.18 「夫婦で店を経営していた場合の妻の休業損害」
  東京地方裁判所平成27年8月21日 
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 今回紹介する裁判例は,夫の経営する店で一日中働いていたが女子労働者の平均の収入を下回る妻が交通事故に遭って休業した場合の休業損害の算定方法について判断した裁判例です。

 一般的に,裁判所は,主婦が職業を有している場合,現実収入と女子労働者の平均賃金の高い方を基礎として休業損害を算定する傾向にあります。
 そして,本件において原告は,本件事件当時,店にいる時間外に掃除洗濯等を行う主婦でもあったので,税務申告上の給与を元に計算するのではなく,賃金センサスに基づいて休業損害を計算すべきであると主張しました。

 ところが,本件において裁判所は,原告の上記主張を排斥し,専従者として税務申告されていた月額8万円を休業損害算定の基礎収入として認定しました。
このように認定した理由として,裁判所は以下の事情を挙げており,賃金センサスを下回ることについても不合理ではないと。

  1. 被害者が夫の店で朝9時から夜11時過ぎまで1日中働いていたことが認められ,被害者が家事従事者に当たると評価することは困難であったこと
  2. 原告の給与については,専従者として税務申告上月額8万円と申告されており,実収入がこれを上回ると認めるに足りる証拠がないこと
  3. 被害者の夫がこのような申告をしていたこと

 家事従事者であると認定された場合,女子労働者の平均賃金を基礎として休業損害の算定が行われていたものと考えられ,現実収入よりも休業損害として認定される額について上積みが期待できた事案であるといえます。一日中働いていても,専業主婦の場合よりも損害が少なく認定されるケースとしてご紹介させていただきました。

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2016.04.10 「示談後に認定された後遺障害等級を前提とした賠償を命じた事例」
  東京地裁平成27年9月28日判決(自保ジャーナル1961号) 
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 今回は,示談後の異議申し立てにより新たな後遺障害等級が認定されたケースについて判断した裁判例をご紹介します。

 原告(女性)は,自転車で進行中,路外から左折進入しようとしてきた被告運転車両に衝突され,右中指の欠損傷害,頸部痛及び頭痛等の神経症状で自賠責併合14級が認定されました。
 原告は,「将来乙(原告)に本件事故を原因とする後遺障害等級14級を超える後遺障害が認定された場合は,それに関する損害賠償請求権を留保し,別途協議する。」という条項(以下「留保条項」といいます。)を含む内容の示談書を,被告側の保険会社と取り交わしました。 その後,原告の異議申し立てに基づき,右中指の傷害部分について,12級13号の後遺障害が新たに認定されました。

 今回の裁判では,新たに認定された後遺障害を前提とした賠償の請求(14級を前提とする賠償金額との差額の請求)が認められるかがひとつの争点となりました。
 原告側は,留保条項があることを主張して当然に差額の請求が認められることを主張しました。
 被告側は,差額請求は示談により既に放棄されており,認められないと主張しました。

 この点裁判所は,
「本件留保条項の文言からすれば,本件示談契約は,本件事故による原告の損害のうち,障害等級14級を前提とする後遺障害による損害および障害分の損害については確定的にその効力が生じているが,「障害等級14級を超える後遺障害による損害」に関する損害賠償請求権は本件示談契約後も留保されていると理解するのが自然であり,本件全証拠によっても上記解釈と異なる解釈を予定していたことをうかがわせる交渉経過等の事実は認められない」と判断し,原告の主張のとおり,差額の請求を認めています。
 今回の事例では,留保条項があり,特に差額の請求がされないという交渉の経緯をうかがわせる事情もなかったため,差額の請求を認めたことは当然の認定であったといえます。

 今回のポイントは,示談をするときには示談書の文言・条項によく注意していただきたいということです。示談書(免責証書)は,相手方の保険会社によって作成されることが多いです。そして,相手方保険会社の作成する示談書には留保条項のような条項は通常入っていません。例えば留保条項がないまま示談をした後に,差額や追加の請求をした場合に,今回の事例のように全ての請求が認められるとは限りません。(この点,最高裁昭和43年3月15日判決が,①示談契約が全損害を正確に把握し難い状況のもとにおいて,②早急に少額の賠償金をもって満足する旨の示談がされた場合においては,③その当時予想できなかった不測の再手術や後遺症がその後発生した場合その損害についてまで,賠償請求権を放棄した趣旨と解するのは当事者の合理的意思に合致するものとはいえない,と判断している部分が参考になります。)

 示談をする際には,可能であれば,全ての損害が確定した時点で(後遺障害の認定や再手術の可能性など状況が変わる可能性がない状況で),内容を専門家に相談した上で行うことが望ましいでしょう。
 

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2016.03.22 「死亡慰謝料の増額」
  福岡高裁 平成27年8月27日判決(自保ジャーナル1957号)
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 今回は,加害者の悪質性等から,被害者側の死亡慰謝料が増額された裁判例をご紹介します。
  被害者(68歳 男性 年金受給者)は,青信号交差点を自転車に乗って横断していたところ,赤信号で交差点に進入してきた加害者運転の乗用車に衝突されました。被害者は,重症の胸部外傷の傷害を負い,外傷性ショックによりお亡くなりになりました。
 その後,相続人である被害者の妻と子らの4名が訴訟提起したという事案です。

 本件では,加害者の悪質性が強かったために,慰謝料を増額するかどうかが争点の一つとなりました。

 損害賠償額算定基準(平成28年版・いわゆる「赤い本」)によると,死亡慰謝料の金額は,一家の支柱であれば2800万円,母親・配偶者であれば2500万円,その他は2000~2500万円という目安があります。なお,独身の男女,子供,現に職業に就いていない68歳以上の老齢者等は,上記でいう「その他」に該当します。  本件で第1審の裁判所は,加害者の不誠実な対応等から通常の高齢者の死亡事案と比べて慰謝料を増額するべきであるとして合計2700万円の慰謝料を認めました。

 これに対して,控訴審の本判決は,次のような事実を考慮して,本件事故による慰謝料を,相続人ら固有の慰謝料分も含めて合計3000万円(被害者分2150万円,妻分400万円,子らの分各150万円)と認定しました。

  1. 視機能が低下していた加害者による運転が有する危険性及びその本件事故との関連性
  2. 加害者は,本件事故後の捜査機関の事情聴取に対して,明らかに客観的事実と異なる事実を説明したところ,同供述は,単なる思い違いによる供述ではなく,被害者が赤信号で横断したと捜査機関に誤認させるためになされた意識的な虚偽の供述であると考えられ,その悪質性は顕著であること
  3. 被害者に本件事故の責任を転嫁する供述により被害者の名誉及び相続人らの心情が大いに害されたのみならず,真実発見のための情報収集活動を余儀なくされ,多大な労苦を被ることになったこと
  4. 刑事公判や本件での本人尋問を含めた加害者の不誠実な対応によって相続人らが被った精神的苦痛は大きいこと

 死亡慰謝料の金額については,目安となる一定の基準額はあるものの,具体的な事情によって増減額されることがあります。
 そのため,加害者の悪質性等の事情がある場合には,慰謝料の増額を求める主張を忘れずにする必要があります。
 

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2016.03.07 「過失の判断」
  東京高裁平成27年8月26日判決(自保ジャーナル1956号) 
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 過失の有無の認定やその責任割合の判断は,どのような形態の事故であったのかによって,ある程度定型化して行われています。事故形態によって基本過失割合が求められ,それを出発点として,その基本過失割合を修正する要素はないかという検討を行うというやり方で決められることが多いです。

 しかし,過失というのは,本来,結果を予見することができたか,予見することができたとして,結果を回避することができ,そのための行動をとったかという観点から判断すべきものです。基本過失割合は,こうした観点を考慮して定められているものですので,これを出発点とすることにはある程度の合理性はありますが,本来,事案ごとに異なるはずですので,常に妥当な結論に至るとは限りません。

 この裁判例での事案は,歩車道の区別のある道路において,道路を横断している歩行者とトラックが衝突したというものでして,別冊判例タイムズ38の【34】の図に近いです。そうであれば,基本過失割合は歩行者20・トラック80です。基本過失割合を出発点とし,修正要素を考慮するというやり方では,トラックの過失がゼロになることはなさそうです。

 ところが,この事案で裁判所は,トラック運転手に過失はないとしました。事故態様に関する事実認定は,次のとおりです。

  1. トラックは,時速約60キロメートルで走行していた。その停止距離は短くても32.75メートルである。
  2. 歩行者が道路を横断する意図があるとトラック運転手が予測できたのは,歩行者が車道へ入ったときである。この事案では,それは衝突の約0.8秒前から約0.6秒前だったが,その時点でトラックは衝突地点から約13.4メートルから約10メートル前の地点にいた。
  3. したがって,トラック運転手がこの事故を予見することができた時点では,その停止距離から考えても,衝突の結果を回避することはできなかった。

 このように事故当事者の位置関係やそこに至る時間を具体的に立証することによって,結果予見可能性や結果回避可能性がそもそもないという判断に導くことが可能だという,いわば当然のことを,改めてこの裁判例は教えているといえそうです。

 ところで,前記事実認定はかなり詳細で緻密だなと感じられるかもしれません。実は,トラックにはドライブレコーダーが設置されていて,これが証拠として大いに役立ちました。従来,事故態様の審理に用いる証拠といえば実況見分調書が主流でした。ドライブレコーダーは一般に普及しているとまではいえませんが,それほど高額なものではありません。ゆくゆくはドライブレコーダー映像を用いて事故態様に関する事実認定を行うというやり方が主流になっていくのかもしれません。
 

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2016.03.04 「死亡事件の慰謝料増額及び生活費控除率」
 福岡高裁 平成27年8月27日判決(自保ジャーナル1957号) 
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 今回紹介する裁判例は、青信号交差点を自転車で横断中、赤信号で侵入してきた加害者が運転する乗用車に衝突され死亡したという事案についてです。
 本件事故発生直後から、加害者は、被害者が赤信号であるのにそれを無視して横断をしてきたと供述していました。
 その加害者の供述が検察に影響を与え、刑事手続については、いったんは不起訴処分となり、捜査が終了することとなりました。
 しかし、その後、被害者らが独自に本件事故の目撃者を探し出し、その目撃者の情報による捜査機関の再捜査の結果、被害者は青信号で横断しており、加害者が赤信号で侵入してきたことが明らかになりました。

 裁判所は、

  1. 本件事故当時、加害者の視機能は相当程度低下しており自動車の運転には適しない状態であったことからそもそも自動車運転自体を差し控えるべきであったこと、
  2. 加害者の供述は単なる思い違いによるものではなく、意識的な虚偽供述でありその悪質性が顕著であること、
  3. 加害者の供述により被害者の名誉や遺族の心情が大いに害され、かつ、検察による不起訴処分をくつがえすために遺族が多大な労苦を被ることになったこと、
  4. 刑事裁判においても、その供述内容はあいまいで場当たり的なものが多く,加害者の本件事故と真摯に向き合っていない不誠実な対応によって遺族が被った精神的苦痛の大きいことにかんがみて、通常の高齢者の死亡事案と比べても、慰謝料を増額すべきである

として、被害者個人及び遺族を含めて合計計3000万円の慰謝料を認定しました。

 生活費控除率については、一般的に年金収入については、通常より生活費控除率を高くする例が多いといわれています。
 しかし、本判決では、被害者は死亡時68歳であって妻と二人暮らしで主に年金で生計を立てていたことに言及しつつも、持ち家であって家賃が不要であったことや、事故前は年金等による家計収入よりも相当程度少額の生活費で賄っていたことがうかがわれることからすると、生活費控除率は40%とするのが相当であると認定しました。

 このように裁判所は、慰謝料については加害者が虚偽を述べていたことが判明した場合には、被害者の精神的苦痛が通常の事故の場合と比べても大きいとして増額する可能性がありますので、主張漏れに気を付ける必要があります。
 また、生活費控除率については、一般論にとどまらず、事故前の被害者の生活状況が具体的にどうであったのかを把握したうえで主張をしていくことが重要です。
 

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2016.02.13 「下肢醜状の逸失利益」
  横浜地裁 平成27年8月31日判決(自保ジャーナル1958号) 
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 今回紹介する裁判例は,(1)脊柱変形の逸失利益と,(2)下肢醜状の逸失利益,(3)慰謝料の金額が争点になりました。かかる争点のうち,今回は,(2)下肢醜状の逸失利益について解説致します。

 本件では,20歳アルバイトの女性が,バイクに乗車し停止中,トラックに追突され,腰椎破裂骨折や下腿挫創等の障害を負い,自賠責11級脊柱変形,12級下肢醜状等の併合10級後遺障害が認定されました。裁判では,後遺障害逸失利益が争点となりました。

 裁判所は,脊柱変形については,脊柱の変形は軽微なもので,寛解の可能性があるとして,逸失利益を否定しましたが,下肢醜状については,以下のような判断をしました。

下肢醜状の逸失利益についての裁判所の判断
 本件女性の下肢の醜状痕(下肢前面に直径11.5cm×8.5cm大の傷痕など,大きなものであった)に関しては,女性が半ズボンの制服を着用して飲食店で接客等をしていたことに加え,症状からみて症状固定時23歳の女性である本件女性の職業選択の幅が狭められていることが認められる。

 したがって,本件の下肢の醜状痕は,本件女性の終了に影響を与えるものというべきであるが,年齢の経過とともに終了への影響が変化していくものと考えられる。そこで,他の障害も考慮した上で,症状固定日から10年間については20%,次の10年間については10%,その後の10年間については5%の労働能力を喪失したものと認めるのが相当である。

【コメント】
 醜状障害については,後遺障害等級が認定された場合でも,相手方保険会社から,逸失利益は認められないと主張されることが多いです。

 醜状障害の逸失利益について,裁判では一般的に,「被害者の性別,年齢,職業等を考慮した上で,醜状痕の存在のために配置転換されたり,職業選択の幅が狭められるなどの形で,労働能力に直接的な影響を及ぼすおそれのある場合には,一定割合の労働能力の喪失を肯定し,逸失利益を認める」とされています。

 醜状障害の逸失利益については,具体的に,どのように仕事への影響があるのかを丁寧に主張・立証することが重要になります。

 

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2016.01.29 「休業損害・逸失利益(高齢者の家事労働)」
  名古屋地裁 平成27年9月30日判決 自保ジャーナル1958号 
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 今回紹介する裁判例は,交通事故によって後遺症を負った80歳女性の休業損害及び逸失利益の算定方法(家事労働)について判断した裁判例です。

 一般的に,同居の家族のための家事労働をおこなっていた女性の休業損害や逸失利益を算定する場合,女性労働者の全年齢平均の賃金センサス(年収の統計資料のことです)によることが原則です(最高裁昭和49年7月19日判決)。平成25年のデータですと年収353万9300円が基準になります。

 一方,高齢者の家事労働については,被害者の方の状況に応じて基礎収入が認定されます。本件では,女性70歳以上の平均賃金を基礎収入とすべきとされました(基礎収入として年収289万6900円を認定しました。)。

 上記認定の理由として,裁判所は以下の事情を挙げています。

  • ①被害者本人は自立して日常生活をおくっていたこと    
  • ②孫と同居し,孫の身の回りの世話(食事の支度,掃除,洗濯など)をしていたこと 

 保険会社側は,「80歳と高齢であったことなどからすると,原告の家事労働はもはや自ら生活していくための日常的な活動と評価するのが相当」「仮に原告が家事従事者と認められた場合であっても,高齢であり,その労働が通常の主婦の労働量より少ない」などと主張していたようですが,いずれも裁判所は主張を退けています。

 保険会社側は,高齢者の家事従事者に対し,一律に上記のような主張をぶつけてきます。被害者側としては,被害者の方が具体的にどのような状況にあり,そのような家事労働を分担していたのかを詳細に主張立証していく必要があります。

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2016.01.19 「複数の事故と後遺障害」
  東京地裁 平成27年6月24日判決(自保ジャーナル1954号) 
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 今回紹介する裁判例は、追突された被害者である47歳男子が,首の痛み等で自賠責14級の後遺症が認定され(本件事故)、また、42日後に遭った別の交通事故(別件事故)でアキレス腱断裂の傷害を負い左のかかとの痛み等で自賠責14級の後遺症障害が認定されたという事案です。
 別件事故では、被害者はすでに損害額合計535万6793円の支払いを受けることで示談が成立しており、その状態で本件事故についての裁判が行われました。

 加害者である被告は、逸失利益や後遺障害慰謝料等の算定については、本件事故と別件事故による後遺障害を合わせた労働能力喪失率や後遺障害慰謝料を観念したうえで、各事故の寄与度に応じた損害額を算定すべきであると主張しました。
また、別件事故で支払いを受けた金額の一部は本件事故分も含まれているので別件事故固有の損害に対する填補であることが明らかでないものについては、本件事故についての既払金とすべきであり,支払う必要がない等と主張しました。

 これに対して、裁判所は、本件事故と別件事故とは、

  • ①日時、
  • ②受傷部位を異にする事故であるうえ、
  • ③本件事故が別件事故発生の原因となっていたり、
  • ④一方の事故が他方の事故による症状の憎悪化、治療期間の長期化または後遺障害の残存やその程度に影響を及ぼしていることを認めるに足りる的確な証拠はない

としました。

  そして、本件事故の加害者である被告と別件事故の加害者である被告との間に共同不法行為が成立するとは認められず、本件事故における逸失利益や後遺障害慰謝料は別件事故とは別個に算定するのが相当であり、また、別件事故にて支払われた損害金は本件事故の損害額から控除しなくてよいという判断をしました。
  つまり、被害者は、本件事故及び別件事故において、それぞれ別途,逸失利益や後遺症慰謝料を取得することができるという結論となりました。

 このように、特に発生日時が近い事故の場合は、両事故が一緒にされてしまい、逸失利益や後遺症慰謝料も1つの後遺症分しか請求できないと加害者側から反論されることも多々あります。

 しかし、あくまで、受傷部位や症状含めて別途のものであれば、今回の判例のようにそれぞれ別途に請求することができます。そして,別途に請求することができると,受け取ることができる金額も大幅に変わってくる可能性がでてきます。

 このようなことから、各事故において、どの箇所を負傷したのか、現在の症状はどの事故から生じたものなのか、双方の事故が影響を及ぼしあっているのか等を具体的に検討していくことが大切です。

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2016.01.05 「高次脳機能障害と入院付添費,将来介護費,家屋改造費」
  大阪地裁 平成24年7月25日判決(自保ジャーナル1884号)  
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 今回紹介する判例は,高次脳機能障害と①入院付添費,②将来介護費,③家屋改造費について判断をしたものです。今回の裁判例では,高次脳機能障害(遷延性意識障害等1級1号)を残す29歳男子につき,①入院付添費,②将来介護費,③家屋改造費が損害として認められるか,認められるとして,その損害額はいくらとすべきかが争点の一つとなりました。

 裁判所は,各証拠や裁判における全ての事情を考慮して,争点につき,以下のとおり判断しました。いずれの損害についても賠償を命じました。


①入院付添費について
 被害者が入院した各病院は,完全看護体制が取られており…,医師が親族に対して付添を指示したと認めるに足りる証拠はなく,主要な看護は,病院スタッフが行っていたと認められる。

 しかし,証拠によれば,親族は毎日のように面会に訪れ,被害者のそばに付添い,ときには声をかけたり,体をさするなどしたこと,食事の介助をしたり,被害者に刺激を与えるために被害者を車で散歩に連れて行ったりしたことが認められる。これらの事実に照らせば親族・近親者の付添い看護について一定程度の相当性や必要性及び付添い看護の実体があると認められ,近親者の付添費としては日額6000円を相当と認める。


②将来介護費について
 自宅介護を受けるようになって以降も,症状としては,さらに回復はみられたものの,障害は依然として残り,意識レベル・集中力・意欲の低下が慢性化していること,四肢の運動障害があることにより,日常生活全般について常時介護が必要な状態であることについては変わりがないと認められる。

 (このような)被害者の本件後遺症の内容及び程度,必要な介護の内容,現在の介護体制に照らすと,被害者の配偶者が67歳になるまで,おおむね近親者の介護で足りるが,被害者の配偶者の負担(被害者の配偶者は当時3人の子供を養育していました)を考えると,職業付添人の介護も必要であると認められる。

 以上の事情を総合考慮し,近親者介護費用及び職業付添人介護費用として月額36万円を相当と認める。


③家屋改造費について

 (被害者宅の間取り,被害者の将来の介護の計画について詳細に検討した上で)以上のように被害者を自宅で介護するには,車いすの移動にスペースが必要であることも併せ考慮すると,旧居宅を改造によって対処することが全く不可能とまではいえないものの,困難であるといわざるを得ない。したがって,被害者の介護のために居宅を新築することについて必要性及び相当性が認められる。

 (次に,新居宅の設計,配置について詳細に検討した上で)以上総合考慮し,上記費用(新居宅の被害者の介護関連の設備に要する工事費1396万円)の65%である907万4000円を被告に負担させるのが相当である。


【コメント】
①入院付添費について

 入院の際に近親者が付き添う必要があることがあります。この場合,医師の指示等により必要がある限り損害として賠償されます。今回,加害者側は,病院における看護体制が整っているため賠償の必要がないと主張しましたが,親族が実際に付き添いの際に行っていた内容を検討して,必要性を認定し,一定額を損害として認定しました。


②将来介護費について

 後遺障害が残った後も,近親者を中心に,被害者を自宅等で介護をしていくことになります。この際の介護に要する費用も損害として賠償されますが,その金額の評価が争われることが多くあります。近時,本件のように,(ⅰ)職業介護と親族介護の併用や(ⅱ)親族介護者が老齢化した場合に職業介護に移行することを前提として算定を行う裁判例が増えています。


③家屋改造費について

 将来の介護の際に,現在の居宅では介護が不可能ないし,困難で,改造の必要がある場合には,事故により改造を余儀なくされたものである以上,賠償がされます。この際には,後遺障害者向け仕様にしたことによる工事代金増額分が賠償の基本とされることが多いです。もっとも,本件のように改造の必要性と相当性(そのような改造が過大なものでないか)を検討した結果,あるいは工事部分により同居人も利益を受ける場合,一定割合の減額がなされることがあります。エレベーターの設置などはその例です。

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2015.12.26 「高次脳機能障害と症状固定後の将来付添費」
  名古屋地裁 平成25年3月19日判決(自保ジャーナル1898号)
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 今回は,被害者である8歳の少年について,後遺障害等級を5級相当と認定したうえ,介護費用について,入院中は日額6,300円,退院後から症状固定までは日額4,000円とし,症状固定後から余命までは日額3,000円の将来付添費を認めた裁判例をご紹介します。

  被害者(小学3年生)は,自転車で走行中に乗用車に衝突され,びまん性軸索損傷,顔面骨折,呼吸不全等により84日間入院し,658日通院したのち,自賠責5級2号高次脳機能障害の後遺障害を残しました。

 本件では,被害者の損害額が争点の一つとなりました。損害額のうち,今回は介護費に関する争いについてご紹介します。

 原告は,介護費について,入院中の付添看護費約54万円,退院後から症状固定までの介護費約427万円,将来付添費約4581万円を請求しました。
 これに対して,被告は,事故から約4か月後に小学校に復帰していることから日常生活状況からして復学以降の介護は必要ないとして,症状固定後の将来付添費は必要ないという旨の主張をしました。

 裁判所は,被害者の損害額のうち,介護費について,概ね次のように判断して,入院中の付添看護費約52万円,退院後から症状固定までの介護費約263万円,将来付添費約2114万円を認めました。
 

  1.  被害者は,事故当時8歳であり,症状からすれば,少なくとも両親のうち1名の付添いが必要である。入院中の付添看護費は日額6,300円。
  2.  退院後から症状固定までの間,被害者の母親が通院に付添い看護していたことから,介護費を認めるのが相当であるが,被害者が小学校に復学していることを考慮すると,日額4,000円を介護費として認めるのが相当である。
  3.  症状固定後は,被害者は,重篤な高次脳機能障害を負っており,日常生活にも重大な障害があるから,今後一生にわたり,随時看視,声かけを要する。その付添費は,日額3,000円が相当であり,症状固定日における被害者の平均余命である69.52年の間,必要となる。


 高次脳機能障害などの重度後遺障害者については,将来における付添費が損害として認められる場合があります。
 事故時から症状固定までの期間に加えて,被害者の平均余命までの将来付添費も損害に含まれる場合には,付添費用が高額になります。
 最終的な損害金額に大きく影響を与えるため,将来付添費が損害として認められる可能性がある事案については,裁判例を踏まえた適切な主張をする必要があります。
 

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2015.12.21 「遠方の医療機関における治療関係費」
  横浜地裁平成25年3月26日判決(自保ジャーナル1895号) 
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 現在,普通の被害者の方でも,医療機関についての情報を入手することが比較的容易になっています。そして,困難な治療にも取り組んでいる医療機関があると知ったとき,そこを受診したいと考えるのは当然のことです。ですが,それが遠方に所在する医療機関ですと,治療費のほか,交通費や宿泊費なども必要になってきます。保険会社はそれらを否認し,因果関係について争ってきます。

 この件では,関東在住の被害者が山口県の医療機関を受診したのですが,その医療機関での治療費のほか,通院に要した交通費,入院雑費,付き添った親の付添費や宿泊費が問題となりました。ポイントは,その医療機関での治療が必要なものだったのか,それとも必要もないのに被害者が山口県まで行ったのかです。

 裁判所は,次のことを理由に,山口県の医療機関での治療も必要な治療であったと判断し,治療費,通院に要した交通費,入院雑費,付き添った親の付添費や宿泊費(両親が付き添ったのですが,認められたのは1人分でした。)を,損害と認定しました。

  1.  被害者は事故による負傷のため肩から指先まで右腕が全く使えない状態になったが,手指の機能再建治療まで行っている医療機関は,被害者が探した限り,関東地方にはなく,山口県にしかなかった。
  2.  山口県の医療機関を受診する前に,その医療機関の院長にメールで問い合わせた。
  3.  山口県の医療機関で治療を受けた結果,肘が胸のところまで上がったり,指を少し動かせるようになったりするなど,ある程度の改善がみられた。


 裁判所が山口県の医療機関での治療費等を認めた理由として挙げたのは上記の3点なのですが,治療中の被害者にとっては,実際に治療が奏功して症状が改善するかどうかはその医療機関を受診しないと分からないことです。実際に遠方の医療機関を受診するかどうかを決める際には,本当に近隣の地域には同様の治療を行っている医療機関がないのか調査すること,実際に受診する前には問合せを行うことは最低限必要であるということを,この裁判例は教えているといえそうです。

 他の裁判例ですが,医師は入院の必要はないと判断したのに,被害者が入院を強く希望して転院したという事例や,転院前と転院後に行われた治療内容はほぼ同じだったという事例では,裁判所は,いずれも転院後の治療費の全部または一部を損害として認めませんでした。

 私が過去に取り扱った事例では,九州の被害者が関東の医療機関を受診し,セカンドオピニオンを取得したというものがあります。その被害者の方は,事前に関東の医療機関にメールで相談をし,その回答を受けて画像データを送るなどの準備をしたうえで受診の予約をしておりました。こうした段階を経ずに突然遠方の医療機関を訪れると,損害として認められるのは容易ではなさそうです。
 

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2015.12.11 「事故後9ヶ月後の手術と症状固定時期」
  大阪地裁 平成27年3月12日判決(自保ジャーナル1951号) 
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 今回紹介する裁判例は,(1)事故態様及び過失相殺,(2)症状固定時期及び後遺障害の内容,(3)損害額が争点になりました。かかる争点のうち,今回は,(2)症状固定時期について解説致します。

 本件では,原告は平成22年12月17日に交通事故の被害に遭い,拇指側副靱帯損傷等の傷害を負いました。平成23年3月15日の診断時に原告拇指MP関節側副靱帯のゆるみが認められ,同年4月5日の診察時に医師との間で手術時期の相談がなされました。しかし,実際に手術が行われたのは,同年9月29日でした。
 これに対して,被告は,原告の拇指MP関節の靱帯再建術は適切な手術時期を逸しており,遅くとも平成23年9月27日までに症状固定に至っていると主張しました。

 裁判所は,症状固定時期について,以下のような判断を下しました。
 原告の拇指MP関節側副靱帯の再建手術は,本件事故から約9ヶ月を経過してから実施されたものであるが,  

  1. 手術を検討し始めたのが事故から4ヶ月後だったこと
  2. 原告は平成23年6月末までは仕事をしながら通院治療を続けており,手術時期については,仕事の状況もみながら検討せざるを得なかったこと
  3. 病院のカルテ上,医師が早期の手術を勧めたような記載はないこと
から考えて,手術時期が遅きに失するということはできないとして,原告の主張する手術から3ヶ月後の平成12月20日を症状固定の時期としました。


【コメント】
 治療期間が長期になると,相手方より症状固定の時期を争われることがあります。特に,本件のように手術の時期が事故から空いている場合には,問題になります。本件の裁判例は,手術に至った経緯のみならず,被害者の仕事の状況も考慮した上で判断がなされており,評価できる裁判例であると考え,ご紹介致しました。
 

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2015.11.20 「醜状痕(12級)神経症状(14級)事例について逸失利益を多く認めた事例」
  神戸地裁平成27年1月20日判決(自保ジャーナル1953号) 
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 今回は,逸失利益(後遺障害の存在によって失う労働能力・利益)を具体的な主張に基づいて増額した判例をご紹介します。

 原告(男性・会社員)は,自動車二輪車で進行中,車線変更をしてきた被告運転の原付自転車に衝突され,14級9号右膝痛,12級右上肢瘢痕,併合12級の後遺障害認定を受けました。

 今回の裁判では,これらの後遺障害が,原告の労働に及ぼす影響,逸失利益がひとつの争点となりました。
 裁判所は,症状固定後の原告の勤務状況や,具体的な主張に基づいて以下のように判断しました。

 「(原告が)右膝痛のため,通勤時バス電車に乗り込むのが容易でなく,職場でも立ったり,座ったりする動作,階段の昇降等に支障を来していること,原告は本件事故当時,E株式会社に勤務し,システム設計・製作,現地での据え付け調整,顧客との折衝といった業務に従事していたが,本件事故後,前記瘢痕のため(シャツの腕をまくったり,半袖を着用することができない。),原告の希望に沿わない生産関連の部署に配属され,社内のOA設備その他備品の運用・管理の仕事に従事するようになったこと,現在従事している業務は,備品の運搬・設置のためにかがんだり,立ち上がったりすることや階段の昇降が多いが,右膝痛のため,これらの動作に困難が伴い,作業能率が上がらないことから,本件事故後,基本給が減額されたこと,本件事故の前年である平成21年の原告の年収は556万9829円であったこと,原告の勤務先は60歳定年であるが,現在65歳定年に移行しつつあることなどが認められる」

とし,

「(原告の右膝痛は)本件事故後4年以上を経過した現在でも継続していることや,本件事故による原告の受傷の内容や程度からすると,将来的に原告の症状が軽快ないし消失する可能性も乏しいと考えられる。
このような事情を総合すると,原告は,症状固定時である47歳から就労可能年齢である67歳までの20年のうち,55歳までの8年は10%,その後の12年は5%の労働能力を喪失するもの」

と判断しています。

 14級9号に基づく神経症状は,労働能力喪失期間が少なくとらえられることが多いです。(むち打ち症の場合は5年程度とされることが多いです。)
 また,瘢痕(醜状痕)に伴う後遺障害についても,その後の労働には影響を与えないと(労働能力の喪失がない)と反論されることが多いです。

 これらの点について,本件判例は,右膝痛に伴う労働への具体的影響を判断し,瘢痕の影響も加味して,多めの逸失利益を認めた判例といえます。
 本件では,裁判中に症状固定から既に4年が経過しており,この時の症状についても,具体的に主張立証したことが功を奏したとも考えられます。後遺障害の等級や一般論にとらわれず,個別具体的な事情を斟酌し,被害者に有利な判断内容を示したものとして評価できるでしょう。
 

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2015.11.16 「既往障害を有する場合の後遺症認定と訴因減額」
  さいたま地裁 平成27年3月20日判決(自保ジャーナル1950号) 
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 今回紹介する裁判例は、脊髄損傷による両下肢麻痺等の既存障害を有する48歳男子である原告が、車いすで移動中に一時不停止の被告乗用車に衝突され、首の痛みや両上肢の痛み・しびれが残存したという事案です。

 裁判前の自賠責の認定では、原告には既存障害があり、その症状は加重障害とはいえず後遺症等級については非該当とされました。また、裁判において,被告は、既往障害により8割の訴因減額(人身損害の2割しか払わない)をすべきであると主張しました。

 裁判所は以下の理由で、自賠責の判断とは異なり、14級9号の後遺症が残存していると認定し、また、既往症による訴因減額を否定しました。

 まず、裁判所は、本件事故前の原告の状態につき、車いす利用者のテニス大会で上位入賞する等スポーツ競技に積極的に取り組んでいたと認定しました。

 そして、首の痛みについては,継続的に通院して鎮痛・消炎薬であるロキソニン等の処方を受け、マッサージ等の消炎鎮痛治療を受けていたことから原告は首の痛みを継続的に訴えていたと思われること、その症状と整合する客観的な検査所見が存在すること、事故前には首の痛みはなかったこと、事故により一定程度の衝撃を受けたことが認められることからすると、本件事故との間に相当因果関係がある後遺障害と認められるとしました。

 また、両上肢の痛み・しびれについては、原告が日常的に車椅子を使用するなかで、首の痛みをカバーしようとしたため、腕や手に過度に力が入り、筋肉の緊張が生じて、結果的に手のしびれにつながったと考えるのが自然かつ合理的であるとして、本件事故により発症した首の痛みが契機となって発症したもので、本件事故との間に相当因果関係がある症状と認められると認定しました。

 訴因減額について、裁判所は、神経にはそれぞれ支配領域があり、脊髄損傷の場合、脊髄損傷の生じた高位(部位)以下に不全あるいは完全横断麻痺が生じる。本件既存障害は第9胸椎圧迫骨折による脊髄損傷で支配領域としてはT9にあたり、運動機能としては腹筋・傍脊柱筋以下に障害が残り,知覚機能としては臍より少し上の部分以下に障害が残るものであるので,頸椎や上肢に運動障害又は知覚障害を及ぼすことはないとしました。

 そのため、本件既存障害が本件症状の内容を重篤化させるなどして損害の発生に寄与しているとは認められないとして訴因減額を否定しました。

 事故前からの既存障害があると、相手からは,後遺障害は否定されるべきであるとか、訴因減額すべきであると主張されます。しかし、既存障害が考慮される「同一の部位」については、既存障害の原因の支配領域やそれによって生じる障害の内容を具体的に検討して、既存障害が本当に本件事故による症状に影響を与えているのかどうかを具体的に検討すべきといえます。
 

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2015.11.13 「高次脳機能障害と自宅付添費・将来介護費」
  東京地裁 平成27年3月26日判決(自保ジャーナル1950号) 
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 今回紹介する裁判例は,高次脳機能障害と自宅付添費・将来介護費について判断したものです。 今回の裁判例では,高次脳機能障害(自賠責3級3号)を残す41歳男子につき,自宅付添費と将来介護費が認められるか,認められるとしてその金額はいくらとすべきか,が争点の1つになりました。

 裁判所は,各証拠や裁判におけるすべての事情を考慮して,自宅付添費と将来介護費につき,以下のように判断しました。

(1)自宅付添費について
 A病院を退院したときには,原告は,一応の日常生活動作をすることができたものの,高次脳機能障害による注意力の低下等や言語障害(失語症)が依然として見られ,新しい行動や作業の習得,コミュニケーションをとることが困難であり,右半身の不全麻痺のため転倒の危険もあったというのであるから,自宅内でも見守り,外出時等に看視等をする必要があったと認められる。
 よって,退院日の翌日である平成23年5月21日から症状固定日である平成24年2月22日までの278日間について,1日当たり4000円の自宅付添費を認めるのが相当である。

(2)将来介護費について
 原告は,症状固定日当時において,一応の日常生活動作をすることができたものの,更衣動作,入浴動作,階段昇降及び公共交通機関の利用にはときどき介助・見守り等が必要とされ,注意力の低下等や言語障害(失語症)が依然として見られ,意思の疎通は,簡単な単語の発語によりかろうじて可能であるが,混乱や失敗も多く,新しい行動や作業の習得,コミュニケ-ションをとることも困難であり,右眼が半盲で,右半身が不全麻痺であるため転倒の危険もあったということであるから,時に看視や声掛けを要し,外出の際には送迎や付添が必要であると認められる。

 このような障害の程度及び内容等に鑑み,原告の症状固定時から原告の妻が67歳になるまでの25年間は近親者による介護,それ以降の(平均寿命までの)14年間は職業介護人による介護が必要であり,近親者による介護は1日当たり3000円,職業介護人による介護は1日当たり7000円の将来介護費を認めるのが相当である。

コメント

  •  自宅における付添費については,必要があれば認められますが,その必要性の判断は,一般的には,入院付添費の場合よりも厳格な判断になると言われています。そして,自宅における付添費の金額については,病院で付き添う場合に比べて,付き添う人の拘束時間などに融通性があると考えられるので,入院付添費の金額よりも低額になるという傾向があります。
  •  将来の介護については,親族介護が行われている場合でも,被害者が若年者の場合などは,親族による介護を平均余命まで受け続けることを期待できる訳ではありません。介護にあたる親族の稼働可能期間までは近親者による介護の水準の金額で,それ以降は,職業介護人による介護の水準で金額を算定する例が多いといえます。
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2015.11.09 「男性の外貌醜状と後遺障害逸失利益」
  さいたま地裁平成27年4月16日判決(自保ジャーナル1950号) 
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 かつての後遺障害等級基準では,男性の外貌醜状は,女性の外貌醜状よりも軽い等級となっていました。これが平成23年に改正され,外貌醜状については男性・女性の区別がない等級が設定されるようになりました。なお,外貌醜状とは,手足以外で人目に触れる部分の人目につく傷跡のことです。

 この裁判では,改正後の基準で後遺障害等級9級に相当する外貌醜状(口唇部に残存した5センチメートル以上の線状痕)を残した被害者(男性)が,9級に相当する35パーセントの労働能力喪失を喪失したとして逸失利益を主張しました。それに対して加害者は,外貌醜状は,労働能力に影響を及ぼす機能的障害ではないことや,被害者の貨物自動車運転手という職業においては,外貌が業務の遂行に影響を及ぼすようなものではないことを理由して,逸失利益が発生したこと自体を争いました。

 たしかに,外貌醜状で後遺障害が残ったとき,加害者からは,労働能力の喪失や収入の減少につながるものではないとして,逸失利益の発生を争われることはよくあります。実際に裁判所が逸失利益の発生を認めない判決をしたという事例も多く報告されています。

 ところが,この裁判例で,裁判所は,
「男性においても外貌醜状をもって後遺障害とする制度が確立された以上,職業のいかんを問わず,外貌醜状があるときは,原則として当該後遺障害等級に相応する労働能力の喪失があるというのが相当」であるとし,本件の被害者には,労働能力の喪失を否定するような特段の事情があるとまでいえないからという理由で,35パーセントの労働能力を喪失したと判断しました。逸失利益の請求を認めたことになります。

 通常,逸失利益の請求を行う側が,業務にどのような支障が生じるのかなどの具体的な証明を行わなければならないと考えられています。一方,この裁判例は,外貌醜状の等級認定基準に男女の区別がなくなったことを理由として,この被害者は労働能力を喪失していないのだということを加害者側が証明しなければならないと判断したもので,いわば証明責任をどちらが負うかという点を逆転させたともとれます。

 この裁判例の考え方が即座に一般化できるとは考えませんが,被害者の証明のハードルを下げたものとして評価できる裁判例であると考え,御紹介することとしました。

 

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2015.11.04 「後遺障害1級の将来介護費(施設入所費)」
  広島高裁岡山支部 平成27年4月23日判決(自保ジャーナル1952号)
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 今回紹介する裁判例は,交通事故により1級1号の後遺障害(遷延性意識障害・四肢麻痺)を負った33歳男性の被害者について,平均余命まで月額20万円の将来介護費(施設入所費)を認定した事例です。
 被害者側は,施設に入所してから6ヶ月の費用が約385万円であったことから,1年間にかかる入所費用がその倍額であり,平均余命まで同額がかかると計算し,約1億3800万円を請求していました。
 第1審裁判所(岡山地方裁判所)も,概ね被害者側の主張を採用し,約1億2400万円の将来介護費(入所費用)を認容していました。

 しかし,広島高裁岡山支部は以下のように判断し,将来介護費(入所費用)を約3300万円と判断しました。

 まず,被害者側が主張する入所費用については,一部に家賃や食費が含まれており,「本件事故による遷延性意識障害,四肢麻痺という後遺障害が残存しなくても,必要となる生活費である」として,全額を傷害介護費として認定することはできないとしました。
 また,その上で,被害者が障害者総合支援法によって,入所費の一部の支払いを免除されており,今後1年間については多額の負担が生じる可能性はないことや法改正によって入所費の本人負担額が増額する可能性があること等を考慮し,月額20万円(年額240万円)の将来介護費(入所費用)が相当と判断しました。

 なお,加害者側の「将来介護費については定期金賠償(1度ですべての賠償金を支払うのではなく,1年にいくらなどと決めて定期的に賠償金を支払う方式)によるべき」との主張については,退けられています。

 重度の後遺障害が残存した場合,将来介護費をどのように算定すべきかという点は,大きな争点となります。被害者にとっては,今後の生活を支える重要な費用であり,自宅介護を選択するのか,施設介護を選択するのかという点を含め,十分な検討が必要です。
 

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2015.10.30 「高次脳機能障害と自宅付添費・将来介護費」
 東京地裁 平成27年3月26日判決(自保ジャーナル1950号) 
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 今回紹介する裁判例は,高次脳機能障害と自宅付添費・将来介護費について判断したものです。 今回の裁判例では,高次脳機能障害(自賠責3級3号)を残す41歳男子につき,自宅付添費と将来介護費が認められるか,認められるとしてその金額はいくらとすべきか,が争点の1つになりました。
 裁判所は,各証拠や裁判におけるすべての事情を考慮して,自宅付添費と将来介護費につき,以下のように判断しました。

(1)自宅付添費について
 A病院を退院したときには,原告は,一応の日常生活動作をすることができたものの,高次脳機能障害による注意力の低下等や言語障害(失語症)が依然として見られ,新しい行動や作業の習得,コミュニケーションをとることが困難であり,右半身の不全麻痺のため転倒の危険もあったというのであるから,自宅内でも見守り,外出時等に看視等をする必要があったと認められる。
 よって,退院日の翌日である平成23年5月21日から症状固定日である平成24年2月22日までの278日間について,1日当たり4000円の自宅付添費を認めるのが相当である。

(2)将来介護費について
 原告は,症状固定日当時において,一応の日常生活動作をすることができたものの,更衣動作,入浴動作,階段昇降及び公共交通機関の利用にはときどき介助・見守り等が必要とされ,注意力の低下等や言語障害(失語症)が依然として見られ,意思の疎通は,簡単な単語の発語によりかろうじて可能であるが,混乱や失敗も多く,新しい行動や作業の習得,コミュニケ-ションをとることも困難であり,右眼が半盲で,右半身が不全麻痺であるため転倒の危険もあったということであるから,時に看視や声掛けを要し,外出の際には送迎や付添が必要であると認められる。

 このような障害の程度及び内容等に鑑み,原告の症状固定時から原告の妻が67歳になるまでの25年間は近親者による介護,それ以降の(平均寿命までの)14年間は職業介護人による介護が必要であり,近親者による介護は1日当たり3000円,職業介護人による介護は1日当たり7000円の将来介護費を認めるのが相当である。

コメント

  •  自宅における付添費については,必要があれば認められますが,その必要性の判断は,一般的には,入院付添費の場合よりも厳格な判断になると言われています。そして,自宅における付添費の金額については,病院で付き添う場合に比べて,付き添う人の拘束時間などに融通性があると考えられるので,入院付添費の金額よりも低額になるという傾向があります。
  •  将来の介護については,親族介護が行われている場合でも,被害者が若年者の場合などは,親族による介護を平均余命まで受け続けることを期待できる訳ではありません。介護にあたる親族の稼働可能期間までは近親者による介護の水準の金額で,それ以降は,職業介護人による介護の水準で金額を算定する例が多いといえます。
     
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2015.10.14 「専業主夫の休業損害」
  横浜地裁平成26年2月28日判決(自保ジャーナル1924号)
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 今回は,実母介護の事情により退職した,「専業主夫」の原告の休業損害を,主婦としての休業損害計算に準じて算定した判例をご紹介します。

 原告(夫・男性)は,自転車を押して,横断歩道を通行中,被告運転の普通貨物車に衝突され,頚椎捻挫等による自賠責14級9号の後遺障害が認定されました。原告は,実母を介護する必要性がああり,退職の上家事に従事していました。また,配偶者は派遣社員として勤務していました。ただ,原告は求職活動をしているという事情もありました。

 裁判所は,「今日の社会では,夫婦の経済生活のあり方は多種多様であり,妻が就労して賃金を得ることで経済基盤を支え,夫が「専業主夫」として家事に専念する形態もあり得ることであるから,「専業主夫」が交通事故により家事労働が不可能ないし困難になった場合には,その損害を休業損害として請求できるというべきである」として,原告の事故前まで行っていた家事を具体的に検討した上で,「専業主夫」として主婦と同視できる程度の家事労働に従事していたと判断しました。

 その上で,原告の休業損害の算定にあたっては,女子学歴計の賃金センサスに従って,治療期間の平均的労働能力喪失率を4割と認定して,計算を行いました。

 本裁判例では,主夫であっても,主婦の休業損害に準じて休業損害等の計算がなされることが,確認されました。この判断は当然のものといえるでしょう。ただ,判決中でも述べられているとおり,今日の社会では,夫婦の経済生活のあり方は多様であり,共働きであったり,家事を分担していたりする場合があります。そのような場合,主婦としての休業損害を主張するためには,具体的に行っている家事と,事故が家事に与えている影響を丁寧に主張立証する必要があります。
 

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2015.10.04 「無職者の休業損害」
 松山地裁 平成26年2月7日判決(自保ジャーナル1922号) 
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 求職中に事故に遭ってしまった被害者の休業損害を,前職収入の8割を基礎として,症状固定日までの全期間について認めた裁判例をご紹介します。
  被害者は自転車走行中,被告自転車に衝突されて転倒し,右手首負傷,右大腿骨骨折等を負って右手首12級6号,右股関節10級11号の併合9級の後遺障害を残しました。
 本件事故当時,被害者は,長年勤務していた幼稚園を退職して無職の状態で,ハローワークに通うなどして求職中でした。

 原告は,本件事故当時,就労の意欲も能力もあったため休業損害が認められるべきであると主張して,前職給与の平均額を本件事故日から症状固定日までの13ケ月分,休業損害として請求しました。

 これに対して,被告は,「原告は,本件事故当時,仕事をしておらず,現に収入を得ていないため,休業による収入減は生じていないから休業損害はない」という旨の主張をしました。
 裁判所は,被害者の休業損害について,次のように判断して220万4702円の休業損害を認めました。

  1.  原告は,幼稚園教諭2級普通免許及び小学校教諭2級普通免許を有していたこと,昭和55年4月から平成23年3月まで教諭として幼稚園に勤務していたこと,平成23年3月幼稚園を退職し,本件事故当時(平成23年5月18日)原告は無職ではあったがハローワークに通うなどして求職中であったこと,原告は本件事故後である平成24年9月から11月までパン屋で稼働したこと,原告は平成25年3月からは学童保育に従事するようになったことの各事実が認められる。
  2.  本件事故当時,原告には,就労の意欲及び能力があったことが認められ,本件事故がなければ原告は,実際よりも早期に就職し,収入を得ていた蓋然性があったことが認められる。
  3.  原告が直ちに就職していたかや,早期に就職していた場合の収入は必ずしも明らかではないことから,休業損害の算定の基礎収入は,原告の平成14年から平成22年までの平均収入額の8割に相当する203万5110円をもって相当と認める。
     休業期間については,本件事故の翌日から症状固定日までの1年1ケ月の全期間について休業の必要性があったものと認める。


 裁判例のなかには,通院期間中に再就職できた蓋然性があったとはいえないとして,無職の被害者の休業損害を否定するものもあります。
 失業中の被害者が休業損害を請求する場合,労働能力や労働意欲に関する具体的事実をあげたうえで,事故がなければ早期に就職できた可能性が高いことを主張する必要があります。
 

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2015.09.17 「脊柱変形と労働能力喪失率」
  さいたま地裁:平成27年4月7日判決(自保ジャーナル1949号) 
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 今回紹介する裁判例は、20歳女子である被害者が,高速道路で停車中の乗用車の助手席に乗っていた際に、普通貨物車に衝突された事故についてのものです。

 被害者は胸椎圧迫骨折等の傷害を負い、1年後に脊柱変形傷害で自賠責8級の後遺症認定を受けました。

 本件では、被害者の後遺症による逸失利益について,労働能力喪失率が争点となりました。
 被害者側は赤本通りの自賠責8級の労働能力喪失率である45%を主張しました。

 一方、加害者側は、椎体変形によって後彎変形を生じたとしても、それらはある程度は脊柱の他の部位で代償される。そして,本件程度の変形では、被害者本人から局所の多少の痛みや脊柱のこわばりを訴えられることはあっても、そのために労働能力や日常生活能力が半分程度に低下するとは到底考え難いという医師の所見を証拠として提出して反論しました。

 また、加害者側は、被害者が若年者であることから、今後、その症状が改善され、あるいは消失する可能性があることや,加齢による生理的な変形についても考慮すべきであると主張しました。

 その上で,加害者側は,労働能力喪失率を,期間毎に徐々に減少させるのが相当であるとして,労働能力喪失率について,50歳までが10級相当の27%で、50~60歳が11級相当の20%、60~67歳が12級相当の14%と主張しました。

 これに対して,裁判所は、実際に被害者においてはアルバイト及び大学での授業に支障を生じているのであり(被害者側は,大学の専攻を負担の軽い専攻に変更したこと,重い物を持つことができないためアルバイトをやめたこと,同じ姿勢で座っていることができるのは1時間程度あること等を具体的に主張しました。)、胸椎圧迫骨折後の脊柱の変形が器質的異常により脊柱の支持性と運動性の機能を減少させ、局所等に疼痛を生じさせうるものであることを考慮すると、被害者の労働能力喪失率は、8級に相当する労働能力喪失率45%と認めるのが相当であると判示しました。

 脊柱の変形による逸失利益については、脊柱の運動障害による後遺症の場合と比較して,裁判でもその労働能力喪失率が争いになることが多く、実際に自賠責の目安としている労働能力喪失率よりも低く認定とされることもあります。

 しかし,一方で,裁判例においても、自賠責通りの労働能力喪失率が認められることも多くあり、職業等によっては、自賠責よりも高い労働能力喪失率が認められることもあります。

 そのため、脊柱の変形の場合の逸失利益の主張では,一般論を示すだけでなく、労働や日常生活において,どのような症状が原因となり,どのような支障が生じているかといった事情等を具体的かつ丁寧に主張・立証していくことが大事です。
 

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2015.09.25 「重大な結果と過失相殺」 
  名古屋地裁平成25年6月28日判決(交民集46巻3号856頁)  
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 バイクと乗用自動車が交差点で衝突し,バイクに乗車していた男性被害者が両下肢の全廃等の後遺障害を負い,自賠責の事前認定手続で後遺障害等級1級1号「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,常に介護を要するもの」に該当すると判断されました。
 この裁判では,過失割合,後遺障害逸失利益,将来介護費等が大きな争いになりました。ここでは,そのうち過失割合に関する裁判所の判断を御紹介します。

(過失割合)
 衝突時,バイクは直進中・乗用自動車は右折中という状況でした。この場合,別冊判例タイムスの表によると,過失割合は15対85になるはずです。当然,乗用自動車側はそのように主張しました。
 被害者は,乗用自動車がバイクの直近で右折を開始したと主張し(直近右折),過失相殺を行うべきでないと主張しました。

 裁判所は,被害者による乗用自動車の直近右折の主張は認めませんでした。しかし,乗用車が右折を開始したときに被害者がバイクの急ブレーキをかけても衝突が避けられなかった可能性が否定できないと述べ,被害者に軽度の前方不注視が認められるとしても,乗用車運転者の前方不注視の過失が著しく大きく,また,結果が重大であることから,過失相殺を行うべきではないと判断しました(加害者100,被害者0)。

 直近右折が認められなければ,本来,過失割合は直進二輪車15・右折乗用車85になるはずです。結局,裁判所が過失相殺を行わなかった理由は,結果が重大であることが重視されたからであるとみるべきです。

 たしかに,法律上,交通事故事案において裁判所は過失相殺処理を行ってもよいし,行わなくてもよいことになっています(民法722条2項)。しかし,交通事故事案において,被害者にも一定程度の過失があると判断したにもかかわらず,裁判所が過失相殺処理をしないということは非常に珍しいです。しかしながらこの裁判は,ある取扱いが通常だからといって,最初から諦めてしまうことは禁物であることを教えてくれます。
 ただし,前提として,被害者の過失が大きくないことは必要であるといえそうです。

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2015.09.07 「高次脳機能障害による等級認定と裁判」
  京都地裁 平成27年3月25日判決(自保ジャーナル1948号) 
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 今回紹介する裁判例は,交通事故による外傷が原因で高次脳機能障害と判断された男性について,自賠責保険においては後遺障害7級と認定されていましたが,その後の訴訟においては,裁判所から後遺障害12級相当との判断を受けたという事案です。

 事案の概要としては,52歳の男性が,バイクを運転し道路を直進中に,路外の駐車場に入るために対向車線から右折進入してきた被告運転の乗用車に衝突され,頭部外傷等の傷害を負い,くも膜下出血等で53日入院,174日通院して自賠責7級高次脳機能障害認定を受け,その後,提訴に及んだというものです。

 今回の裁判では,後遺障害の内容・程度と過失割合が争点となりましたが,後遺障害の内容・程度について,裁判所は以下のとおり判断しました。

〈後遺障害の内容〉

  1. 原告は,本件事故により,頭部外傷,中頭蓋窩骨折を負い,急性硬膜外血腫を生じたこと,
  2. 事故から1年間の間,頭蓋内血腫の状態が持続していたこと,
  3. 本件事故による受傷後,G.C.S.=14程度の意識障害が3日間ほど持続したこと,
  4. 退院後,日常生活の中で注意障害や記憶障害を示す事象が現れたこと,
  5. 事故から1年後に実施された神経心理学的検査において,注意障害,記憶障害,前頭葉機能障害を疑わせる結果が出たこと,

 に鑑みて,原告には高次脳機能障害の後遺障害が生じたものと判断しました。

〈後遺障害の程度〉

  1. 事故から2週間後に行われた神経心理学的検査の結果は高次脳機能障害を否定するものであったこと,
  2. 事故から1年後の神経心理学的検査の結果は,自発性の低下や抑うつが影響した可能性を否定できないこと,
  3. 原告は,復職後約2年間,職場や顧客とのトラブルなく稼働しており,退職後も,1人でバイクに乗り,目的をもって外出し,買い物,ATMの利用,給油,ダンス教室への参加等を支障なく行うなど,注意障害や記憶障害による社会生活上の支障は限られたものと解されること,
  4. 原告には,本件事故による外傷性頸部症候群に起因すると解される頭痛やめまい,頸部痛等が残存していたこと,

 を総合的に判断すると,原告の後遺障害の程度は,自賠責で認定された7級ではなく,「通常の労務に服することはできるが,高次脳機能障害のため,多少の障害を残すもの」として,後遺障害等級12級と認めるのが相当と判断されました。


 このように,自賠責保険で認定されていた後遺障害等級よりも,その後の裁判において低い後遺障害等級が認定されてしまうケースがあります。特に,高次脳機能障害においては,相手方から,症状固定後の勤務状況・日常生活の状況などを理由として,自賠責保険で認定された後遺障害等級より低い後遺障害等級を認めるのが相当という反論が出ることがあります。訴訟提起を含み,どのように相手方と賠償交渉を進めるのかについては,高次脳機能障害の事案に詳しい知識と経験を有する弁護士と事前によく検討する必要があるといえるでしょう。
 


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2015.08.31 「夫の介護をしていた主婦の休業損害」
  大阪地裁 平成27年3月3日判決(自保ジャーナル1948号)
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 今回紹介する裁判例は,人工透析を受けていた夫の介護をしていた被害者(77歳主婦)の休業損害等について判断したものです。

 本件事故は,被害者がバスに乗車して整理券を取ろうとしていたところ,運転手がクラッチ操作を誤り,バスが揺れて被害者が車外に転落したというものです。被害者は,腰椎圧迫骨折の傷害を負い,80日の入院,32日の通院治療を余儀なくされました。そのため,治療期間中,人工透析を受けていた夫を61日間,施設に預けざるを得ないという状況になってしまいました。

 裁判所は「夫が施設に入所していた期間の大半が原告の入院期間中であり,この期間中に夫が原告から介護を受けられる可能性は皆無であったこと,また費用としても約2ヶ月で60万円程度であり,著しく高額であるともいえない」として,夫の施設入所費を損害として認定しました。

 その上で,被害者の休業損害が発生している期間について「入院期間80日のうち夫が施設に入所していた61日を控除した19日間,及び実通院日数32日のうち夫が施設に入所していた1日を除く31日間の合計50日間である」と判断して,約31万円の休業損害を認めました。

 本件被害者の夫はいわゆる「間接被害者」ということになります。一般的に裁判所は間接被害者の損害を認めにくい傾向にあります。したがって,本件のように直接被害者である妻の入院等,やむを得ない事情がある場合には,個別具体的な事情を立証することが重要です。


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2015.08.04 「後遺障害の労働能力喪失率と慰謝料」
  札幌地裁 平成27年2月27日判決(自保ジャーナル1945号) 
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 今回は,後遺障害に基づく逸失利益(労働能力喪失率)と慰謝料について,被害者の具体的な状況を加味して大幅に増額した裁判例をご紹介します。

 被害者は,横断歩道を通行中,乗用車に衝突され,骨盤骨折等の傷害を負いました。そして,10ヶ月通院した結果,腰仙部痛・右手関節痛から自賠責併合14級の後遺障害が認定されました。

 裁判所は,「当該被害者の職業能力的諸条件を具体的に検討した上で労働能力喪失率を判断する必要がある。その検討の結果として,自賠責保険の後遺障害の一般的な労働能力喪失率と一致する場合も多いであろうが,この一般的な労働能力喪失率を形式的,画一的に適用すべきものではない」としました。そして,被害者の収入の減収の程度や,他の職業で事故前と同等の収入を得ることは難しいといった事情を考慮して,(被害者)60歳主婦ダンス教室・インストラクターの14級後遺障害逸失利益を,労働能力喪失率50%を基礎として判断しました。

 また,14級後遺障害の慰謝料として,「ダンスインストラクターを前提とした労働能力喪失率の程度,原告(被害者)が長年携わってきたダンスのインストラクターとして稼動できなくなり,他の仕事で相当の苦労を余儀なくされること等本件における一切の事情を考慮し」て後遺症慰謝料400万円を認定しました。

 本件裁判における,逸失利益(労働能力喪失率)や後遺障害慰謝料は,被害者の具体的な状況を加味して,通常の事例よりも大幅に被害者に有利な認定がされました。被害者としては,後遺障害による痛みが仕事にどのような影響をもたらすのか,後遺障害や仕事上の不利益がもたらす精神的なダメージはどのようなものであるのか,といった点を具体的に主張立証する事が重要です。
 


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2015.07.28 「硬性補装具を必要とする下肢の荷重障害」
  横浜地裁 平成27年1月22日判決(自保ジャーナル1944号)
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 今回は,自賠責12級認定の左下肢障害を常に硬性補装具を必要とする歩行障害等から8級後遺障害と認めた裁判例をご紹介します。

  原告は,本件事故により左踵部に荷重障害を負い(疼痛が生じるため左踵部に荷重をかけることができない),常に硬性補装具を必要とする状態でした。そこで,原告は,常に硬性補装具を必要とする下肢の動揺関節に準じて,原告の荷重障害は後遺障害等級8級に相当すると主張しました。

 これに対して,相手方は,後遺障害等級8級7号の機能障害は,動揺関節や偽関節等により,荷重支持性を失った状態に対して認定されるものであるところ,原告の左足の関節組織自体は何ら外傷を負っていないこと等から,後遺障害等級8級に相当するとはいえない。原告の症状は荷重時の疼痛であり,局部の神経症状として評価して,後遺障害等級12級13号に相当すると主張しました。

 裁判所は,上記の点について,次のように判断しました。

  1.  硬性補装具を必要とする下肢の荷重障害は,後遺障害等級表に規定する後遺障害には直接該当しないものの,各等級の後遺障害に相当するものは,当該等級の後遺障害として取り扱うべき。
  2.  下肢の動揺関節については,それが他動的なものであると,自動的なものであるとにかかわらず,常に硬性補装具を必要とするものを後遺障害等級表8級に準ずる機能障害として取り扱うべきこととされている。
  3.  原告の荷重障害は,常に硬性補装具を必要とする歩行障害をもたらす点で動揺関節の後遺障害と同様といえるから,後遺障害等級表8級に相当する機能障害と認められる。

 この裁判例では,荷重障害の8級相当と醜状障害の12級相当を併合して,併合7級後遺障害が認定されています。
 等級が1つ重くなるだけでも賠償金額が大幅に増額するため,適切な後遺障害等級を認定してもらうことが重要です。


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2015.07.22 「逸失利益算定における基礎収入」
  神戸地裁 平成26年10月31日判決(自保ジャーナル1939号)
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 今回紹介する裁判例では,19歳女子大学生であった甲が交通事故にて死亡した際に逸失利益について,甲の将来の基礎収入でどの基準を採用すべきかという点が争点となりました。

 甲側は,大学の学校教育教員養成課程・教育科学専攻(以下,「本専攻」という。)に在籍していた大学2年生であったこと等の理由から,賃金センサスで高等学校教員の全年齢平均賃金を基礎として,かつ,教員の給与については男女間の格差は考慮することは適当でないとして,男女合わせた平均値である年収715万9000円を基礎収入とすべきと主張しました。

 一方,その相手方は,教員として就職して仕事を継続できたかどうかは不明であるとして賃金センサスで大学・大学院卒かつ女性の全年齢平均賃金である448万2400円を基礎収入とすべきだとして争いました。

 裁判所は,主に以下の理由から,将来の蓋然性として,甲については高等学校教員として就職することまでは認めがたいが,小学校教員として就職することは認められるべきであり,かつ,男女間格差を考慮することは相当ではないとして,賃金センサスの各種学校・専修学校教員の全年齢平均賃金で男女合わせた平均値である503万7200円を基礎収入として認定しました。

  1.  甲は,中学生のころから生涯の仕事として,その父(高等学校教員)と同じく教員になることをめざし,本専攻に進学して2年生であったこと及び,甲が県内の小学校において3週間の教育実習を行っていたこと
  2.  本専攻卒業者は小学校教員免許を取得でき,卒業要件以外の単位を併せて履修することにより教科ごとの中学校及び高等学校教員免許を取得できること及び,甲は小学校教員免許に加えて英語の高等学校教員免許の取得を希望していたこと
  3.  平成23年度の本専攻(小学校教員養成課程及び中学校教員養成課程に分類)卒業生の60%が教員(ただし,小中高校等の内訳は不明)として就職をしていること
  4.  平成24年の本専攻卒業生の約65%が教員(期限付き行使等含む)として就職し,そのうち約13%が公立学校の高等学校教員,約87%が公立学校の小中学校教員及び公立学校以外の教員であること

  裁判所は,まだ学生であって就業前の場合には,通っている学校やその学校における活動,卒業生の就職データ,本人の希望,その職業の性質等を具体的に精査して判断しています。そのため,主張する将来の職業については,その職業につくことができる可能性が高いことを,多角的な視点で丁寧に主張・立証していくことが重要です。
 


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2015.07.14 「高次脳機能障害と通院付添費・将来介護費」
 東京地裁 平成27年3月25日判決(自保ジャーナル1945号)
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 今回紹介する裁判例は,争点になりやすい,高次脳機能障害と通院付添費・将来介護費用について判断したものです。

 今回の裁判例では,高次脳機能障害(自賠責5級2号)を残す33歳女子につき,通院付添費と将来介護費が認められるか,認められるとしてその金額はいくらとすべきか,が争点になりました。

 裁判所は,各証拠や裁判におけるすべての事情を考慮して,以下のように判断しました。

  1.  被害者が病院を退院した後の症状の内容,推移に照らし,通院について付添の必要があったものと認め,実通院日数106日のうち,100日分について,日額2000円の通院付添費(合計20万円)を認めました。
  2.  将来介護費については,「神経心理学的検査の結果は良好であり,IQの低下も認められないが,軽度の記銘力障害,コミュニケーション障害があり,食事動作,更衣動作については,ときどき声がけが必要であり,些細なことですぐ感情的になり,人混み等で過剰に反応することなどから,バスや電車に乗って1人で出かけることもあるが,1人で行動できる範囲にはなお制限があり,このような症状が将来回復する蓋然性を現時点では認めることはできない」とした上で,近親者による随時の声掛け,見守り等の介護が必要であるとして,日額1200円を平均余命(51年)の期間の分まで認めました(合計803万2482円)。
 高次脳機能障害では,特に3級以下の等級の場合には,将来介護費が争われることが多いといえます。その場合には,脳の損傷部位から考えてどのような症状が出やすいのかを医師に確認することや,家族による日常生活状況の詳細な報告が必要となってきます。このようなポイントを抑えて,丁寧に主張立証することが重要です。

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2015.07.06 「高次脳機能障害の逸失利益」
 横浜地裁 平成27年1月29日判決(自保ジャーナル1942号)
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 今回紹介する裁判例は,高次脳機能障害の逸失利益(労働能力喪失率)について判断したものです。

 被害者(事故時17歳)が,交通事故によって高次脳機能障害(後遺障害等級7級)の後遺症を負いました。

 被害者側は,7級の後遺障害が認定されていることから,裁判の基準に基づき,56%の労働能力を喪失したと主張しました。

 一方,加害者側は,被害者が事故後大学に進学し,優秀な学業成績を修めているから労働能力喪失率は基準よりも低いはずと主張しました。

 裁判所は
  1. 程度は低いものの,易疲労性や認知・情緒・行動障害が残っていること
  2. 自らの努力や周囲の協力により学業成績を維持していること
  3. 学業と労働において求められる資質が大きく異なり,現在の症状からすれば,就職や就労継続に支障を来す蓋然性は高いといえること
を認定し,基準どおり56%の労働能力喪失率を認めました。
 高次脳機能障害は一見してわかりにくい障害といえます。普通の生活を送っているように見えても,日常生活の様々な部分で不都合を強いられていることが多いです。被害者側としては,被害者に生じている事情をひとつひとつ丁寧に立証していくことが重要です。


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2015.06.29 「醜状痕と逸失利益の算定」
 東京地裁 平成27年2月13日判決(自保ジャーナル1944号)
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 今回は,顔面の傷跡(醜状痕)について,逸失利益が認められると判断した裁判例をご紹介します。

 原告は,事故により,右手間接の機能障害につき後遺障害等級表12級6号,左膝関節痛等につき12級13号,左膝蓋骨部の手術痕につき14級5号の後遺障害が認定されたほか,前額部左下,中央,鼻根中央部に線状の後(醜状痕)が残ったものとして9級16号の後遺障害が認定され,以上を併合して8級が認定されていました。

 裁判では,被告は,顔面部の醜状痕は何ら原告の仕事に影響を与えていないとして,右手間接の機能障害,左膝関節痛による逸失利益(労働能力喪失率14%)のみを主張しました。

 裁判所は,傷跡(醜状痕)が目立つ位置にあること,原告が外回りの営業職であることからすると,原告の性別及び年齢を考慮しても,その業務に相当の影響を及ぼしているものと認められ,加えて,これらの影響により,人事評定が低下し,昇給において不利益が顕在化していると認定し,醜状痕を加味した逸失利益(労働能力20%)が相当であると判断しました。

 醜状痕は,後遺障害等級が認定されたとしても,当然に逸失利益(将来の仕事に及ぼす影響)が認められるわけではありません。相手方から逸失利益がないと主張されることは非常に多いです。被害者としては,具体的な仕事の内容,醜状痕が与える影響,危険を丁寧に主張立証していく必要があります。


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2015.06.22 「後遺障害逸失利益の認定」
 福岡地裁 平成27年2月26日判決(自保ジャーナル1942号)
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 今回は,後遺障害逸失利益の認定方法について判断している裁判例をご紹介します。    

 今回の裁判例は,被害者が頸椎捻挫及び左外傷性内側半月板断裂等の傷害を負い,左膝痛による歩行困難等から自賠責12級13号の後遺障害を残したという事案で,後遺障害逸失利益を算定する際の労働能力喪失期間,労働能力喪失率が争点の1つとなりました。

 被告側は,原告の後遺障害は疼痛によるものであり,日常生活の慣れ等により回復していくと考えられるとして,労働能力喪失期間と,労働能力喪失率を限定すべきであるとの主張をしました。

 裁判所は,上記の点について,いずれも限定しないという旨判断しました。
  1.  症状固定後,他覚的に把握できる内側半月板損傷及び内側靭帯損傷による左膝痛が生じ,歩行等に困難を生じ,この後遺障害について12級13号の認定があるから,労働能力喪失率は14%と認める。
  2.  原告の各損傷が治癒することを認めるに足る証拠はなく,かえって医師が症状の改善が望めないとの診断をしていることに照らし,労働能力喪失期間は,原告が就労可能な67歳までの27年間と認める。
 逸失利益を計算する際,相手方から「症状の軽快可能性があるから労働能力喪失率及び労働能力喪失期間を限定すべき」との主張をされることがありますが,実際の症状を踏まえてしっかりと反論することが重要です。


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2015.06.16 「入院・通院・将来の付添看護費用」
 名古屋地裁 平成27年1月14日判決(自保ジャーナル1943号)
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 今回紹介する裁判例は,争点になりやすい入院・通院・将来の付添看護費用について判断したものです。

 今回の裁判例では,高次脳機能障害(2級1号)を残す55歳の女性について,入院時・通院時及び症状固定後の将来の付添看護費用が認められるかどうか及びその金額が争点になりました。

 裁判所は,各証拠や裁判におけるすべての事情を考慮して,以下のように判断しました。
  1. 入院期間中の付添看護については,夫の付添看護を必要としたといえ,日額6300円を認める。
  2. 通院付添看護については,通院に付添看護が必要であり,家庭内においても常時介護を必要とするものではないが,随時介護の範疇において比較的密接なケアを必要とするものといえ,家族介護・通院付添看護費として日額6000円を認める。
  3. 将来付添看護費については,職業介護を必要とするとは認められないが,親族による介護について日額5000円を認める。
 裁判所は,それぞれの時点での症状の内容や程度を踏まえて,各時点でどの程度の付添や介護が必要になるかという点を,具体的に精査して判断しています。
 付添看護費については,このように実際の症状を踏まえて,どのような付添・介護が必要となるかを具体的かつ丁寧に主張・立証していくことが重要です。


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2015.06.09 「死亡との因果関係」
 京都地裁 平成26年10月14日判決(自保ジャーナル1941号)
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 今回紹介する裁判例は,交通事故と死亡との因果関係について判断したものです。

 今回の裁判例では,心房細動の持病を持つ被害者が,脳梗塞及び肺塞栓症を発症し,それが直接の原因となって死亡した場合に,交通事故と死亡との間に因果関係を認めるかが争点になりました。

 交通事故から死亡までの経過としては,事故発生の5日前に心房細動の診断を受けていた女性が,交通事故により脳挫傷及び外傷性くも膜下出血を負い,それが原因で,心房細動の患者に対して本来投与されるべき抗凝固剤が投与できずにいたところ,脳梗塞を発症し入院し,ベッドで寝たきりの状態となったことも重なり,事故発生から6ヶ月後に肺塞栓症を発症し,それが原因で女性が死亡したというものです。

 裁判所は,心房細動の患者に対する抗凝固剤の投与という治療方法に高い有用性を認めた上で,本件交通事故による外傷が原因で抗凝固剤の投与を行うことができなかった結果,脳梗塞を発症し,肺塞栓症の併発により死亡したと認定し,交通事故と女性の死亡との間に,相当因果関係が認められると判断しました。

 また,その上で,女性について素因減額を認めつつも,その割合は1%とみるのが相当だと判断しました。

 持病をお持ちの被害者が,持病と関連する病名が原因で死亡した場合,加害者側から,交通事故と死亡の因果関係が否定されたり,過大な素因減額を主張されることがあります。この場合には,医学的な知識に基づき,しっかりと反論していく必要があります。


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2015.06.02 「会社代表者の逸失利益」
 横浜地裁 平成26年10月24日判決(自保ジャーナル1937号)
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 今回紹介する裁判例は,争点になりやすい会社代表者の逸失利益について判断したものです。
 今回の裁判例では,金型の製造・加工等を業務とする会社(従業員約15名)の代表取締役の逸失利益(後遺症:14級)が争点になりました。

 裁判所は,被害者(代表取締役)の業務について
  ①資金・労務・納期管理
  ②加工作業,図面作成業務,営業活動
  ③従業員とほぼ同じ時間帯に就労
  ④納期に間に合わない場合には休日も就労していた などの事実を認定しました。

 また,役員報酬については,「平成21年度の年収が805万円であったが,平成25年度の年収は約480万円に減少していることが認められ,役員報酬は会社の収益に連動するが,元々会社の収益については不確定的要素が強い」と判断しました。

 その上で,逸失利益の計算における「基礎収入」について,「労務対価部分については症状固定時年度(平成23年)の男性労働者の賃金センサス(高卒者の45歳から49歳)に従い,549万3500円と認めるのが相当である」と認定しました。

 会社代表者の逸失利益を主張する際には,実際の業務内容や役員報酬の変動などを丁寧に立証していくことが重要です。



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